- 更新日 : 2025年11月13日
発注者を英語でどう言う?ビジネスシーン別使い分けを解説
「発注者」を英語で表現する際、文脈によって “Client”, “Purchaser”, “Principal” など、さまざまな単語を使い分ける必要があります。日本語の「発注者」は広範な意味を持ちますが、英語ではその役割が、サービスの依頼者なのか、物品の購入者なのか、契約の主体者なのか、によって最適な表現が異なるためです。
特に海外支店とのやり取りや英文契約書の作成において、この使い分けを誤ると意図が正しく伝わらない可能性があり、ビジネス担当者は迷う場面も少なくないでしょう。
この記事では、「発注者」の英語表現をシーン別に分類し、それぞれのニュアンスと具体的な使い方を解説します。
目次
発注者の英語訳はなぜ一つではない?
日本語の発注者が指す役割(依頼者、購入者、契約主体など)が、英語では、文脈によって意味合いが変わるためです。英語では、サービスや取引によって単語を選ぶ傾向があります。
例えば、コンサルティングのような専門サービスを「発注」する場合と、工場で使う部品を「発注」する場合とでは、取引の性質が異なります。前者は専門家への「依頼」、後者は物品の「購入」という側面が強いでしょう。英語では、こうしたニュアンスの違いを単語レベルで区別します。
一般的に使われる発注者の英語表現は?
ビジネスシーンで「発注者」を指す際、特によく使われる3つの表現 “Client”, “Purchaser”, “Ordering party” があります。それぞれの使われる場面を見ていきましょう。
サービスやプロジェクトの依頼者は “Client”
コンサルティング、IT開発、設計、広告代理店の業務など、専門的なサービスやプロジェクトを依頼する「発注者」は “Client”(クライアント)と表現するのが一般的です。
単に商品を買う「顧客」を指す “Customer” と比べ、”Client” は専門的な助言やサービスを受けるために継続的な関係を築く相手、というニュアンスを含みます。
- 例文:そのプロジェクトの発注者は、仕様の変更を要求した。
- The client requested a change in the specifications for the project.
製品や商品を大量に購入する発注者は “Purchaser”
製品、部品、材料などを(特に大量に)購入する側の「発注者」や「購入者」は “Purchaser”(パーチェイサー)と呼びます。
これは文字どおり「購入する人・組織」を指し、企業の購買部門や調達担当者(バイヤー)がこれにあたる場合が多いでしょう。物品の売買契約においてよく使われる表現です。
- 例文:当社は、主要な発注者の要求に応える必要があります。
- We need to meet the demands of our key purchasers.
注文や依頼を行う当事者は “Ordering party” / “Orderer”
契約や取引において、法的に「注文」や「依頼」を行う当事者を指す場合、”Ordering party”(オーダリング・パーティ)が使われます。
“Orderer”(オーダラー)も「注文者」を意味する単語ですが、”Ordering party” の方が契約書などで使われる、よりフォーマルな響きがあります。
契約書や建設業界で使われる発注者の英語表現は?
より専門的な分野、特に契約書や法律、建設業界では、特有の表現が用いられます。
契約やプロジェクトの主体・責任者は “Principal”
契約やプロジェクトにおいて、法的な主体として発注を行い、財政的な責任を負う中心的な存在を “Principal”(プリンシパル)と呼びます。
特に建設業界や不動産取引、代理店契約などで頻繁に使われる用語です。代理人 (Agent) に対して、その権限の源泉となる「本人」や「主体」という意味合いを持ちます。
- 例文:発注者は、プロジェクトの工事期間全体を管理する責任者を選任する。
- The principal appoints a responsible person to manage the entire construction phase of the project.
請負契約(特に建設工事)における “Contractee”
請負契約、特に建設工事などにおいて「発注者」を指す言葉として “Contractee”(コントラクティー)が使われることがあります。
これは、仕事を請け負う側である “Contractor”(コントラクター:請負者)の対となる存在として、「契約の相手方(仕事を依頼する側)」を指す言葉です。ただし、添付画像のAIによる概要にもあるように、やや専門的な用語であり、文脈により解釈が割れるため、建設・工事では “Owner”や”Employer”を用いる方が安全です。、前述の “Client” や “Principal” の方が一般的な場合もあります。
日本の法律における「発注者」の英訳
日本の法律を英訳する際にも、「発注者」の訳語は文脈で使い分けられています。
例えば、建設業法における「発注者」は、公式の法令外国語訳データベースにおいて “Orderer” や “Ordering party” と英訳されています。これは建設工事の「注文者」としての立場を明確にするための訳語選択でしょう。
- 例(建設業法 第三条):
- 日本語:…当該建設工事の発注者から直接請け負つた…
- 英語:…directly contracted by the orderer of the said construction work…
発注者に関連するその他の英語表現は?
ここまでに挙げた主要な単語以外にも、「発注者」の役割や立場を示す関連表現がいくつかあります。
業務を外部委託する「発注者」は “Outsourcer”
業務の一部(経理、人事、ITサポートなど)を外部の専門業者に委託する側の「発注者」は、”Outsourcer”(アウトソーサー)と表現できます。
これは「アウトソーシング(外部委託)を行う企業や個人」を指す言葉です。委託を受ける側は “Outsourcee” や “Service provider” と呼ばれます。
発注業務の担当者を英語で言うと?
組織の中で、発注業務を具体的に担当している個人を指す場合、いくつかの表現が考えられます。
- Purchasing officer / Purchasing agent:
購買担当官、購買代理人。特に物品調達の権限を持つ担当者を指します。 - Person in charge of ordering:
発注担当者。より一般的な表現です。 - Contact person (for ordering):
(発注に関する)連絡窓口担当者。
発注先や請負者はどう表現する?
「発注者」の対義語となる「発注先」や「受注者」「請負者」の英語表現もセットで把握しておくと、ビジネスコミュニケーションが円滑になります。
- Contractor:
請負業者、請負人。建設工事やITプロジェクトなどで仕事を請け負う側。 “Contractee”(発注者)の対義語です。 - Supplier:
供給業者。部品や原材料などを供給する側。”Purchaser”(購入者)の対義語としてよく使われます。 - Vendor:
ベンダー、販売業者。”Supplier” とほぼ同義で使われることが多いです。 - Service Provider:
サービス提供者。業務委託などでサービスを提供する側。”Outsourcer”(委託者)の対義語です。
ビジネスシーン別:発注者から依頼がきたとき、英語でどう伝える?
実際のビジネスシーンでは、どのような「発注」なのかによって単語を選ぶ必要があります。
シーン別・発注者の英語使い分け早見表
「発注者」の英語表現を選ぶ際は、その取引の性質を見極めることが肝心です。以下の表は、状況に応じた使い分けの目安です。
| 日本語の文脈 | 推奨される英語表現 | ニュアンス・使われる業界 |
|---|---|---|
| IT開発やデザインを依頼する | Client | 専門サービスの依頼者(IT、コンサル、法務) |
| 部品や商品を購入する | Purchaser | 物品の購入者(製造業、小売業) |
| 建設工事を発注する | Principal / Orderer | 契約の主体、注文者(建設、不動産) |
| 契約書上で注文する側 | Ordering party | フォーマルな契約当事者(法務、契約全般) |
例文:「発注者から依頼がきました」
「発注者から依頼がきました」と社内や関係者に英語で伝える際は、その「発注者」が誰なのかをふまえて単語を選びましょう。
- (ITプロジェクトで)クライアントから依頼がきた場合:
- “We received a new request from the client.”
- (クライアントから新しい要求がありました。)
- (製造業で)購買企業から注文がきた場合:
- “We just got a large order from our main purchaser.”
- (主要な購入者から大口の注文が入りました。)
- (建設現場で)契約主体から指示がきた場合:
- “The principal has instructed us to change the schedule.”
- (発注者(主体者)からスケジュールの変更指示がありました。)
発注者の英語表現は、状況に応じて選ぼう
日本語の「発注者」は便利な言葉ですが、英語に翻訳する際は注意が必要です。ビジネスシーンや契約の文脈に応じて、”Client”(サービスの依頼者)、”Purchaser”(物品の購入者)、”Principal”(契約の主体者)、”Ordering party”(注文当事者)などを正確に使い分ける必要があります。
特に英文契約書や海外の取引先とのコミュニケーションにおいて、この使い分けは重要です。意図しない誤解を避け、スムーズな取引を行うために、その「発注者」が具体的にどのような役割を担っているのかを常に意識し、最も適切な英語表現を選択するようにしましょう。
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