• 作成日 : 2024年1月9日

建設業の2024年問題とは?課題や対策、働き方改革につながる事例を紹介

建設業の2024年問題とは?課題や対策、働き方改革につながる事例を紹介

建設業の2024年問題とは、適用猶予業種の建設業などを対象に働き方改革が提供されることで起こりうる問題です。2019年4月から導入された36協定では、残業や休日出勤などは時間外労働の規制対象となっています。働き方改革は、建築業界の労働環境への影響が小さくありません。今回は、問題に対して建設業が取り組む対策や事例などを紹介します。

建設業の2024年問題とは?

働き方改革は、2019年4月1日より順を追って施行されました。2024年4月1日には、適用猶予業種の規制が始まります。適用猶予業種の対象は、建設業や運送業、砂糖製造業、医師などです。

2024年問題は、適用猶予解除後の建設業にも影響を及ぼします。2024年4月1日から適用される働き方改革は、建設業の工期設定のハードルを上げるでしょう。建設現場では、悪天候やトラブルなどで予定通りに工事が進まないケースもあります。その遅れを取り戻すために、竣工前の長時間労働で対応することも珍しくありません。

今まで必然的に取り組んできた作業員の長時間労働は、2024年4月1日から規制対象となるでしょう。建設会社は、働き方改革を基準にした工期設定が求められます。

建設業の2024年問題のポイント

ここでは、建設業が影響を受ける2024年問題について具体的なポイントを解説します。すでに働き方改革で改正されている点や今後改正される点、改正とともに考えるべき課題や罰則などを説明しましょう。

建設業の時間外労働の上限が規制される

厚生労働省によると、法定労働時間を超える時間外労働は、労働基準法第36条で定める36協定(労使間協定)の締結と、所轄の労働基準監督署への届出が必要とのことです。

2019年4月(※中小企業は2020年4月より施行)から始まった働き方改革では、36協定で定める時間外労働が罰則つきの上限規制となりました。罰則つきの時間外労働の上限規制は、次の通りです。

  • 月45時間
  • 年360時間

特別条項(臨時的な特別な事情)以外は、時間外労働をこれらの範囲内に収める必要があります。また、特別条項であっても次の上限規制が設けられています。

  • 月100時間未満(時間外労働と休日労働の合計)
  • 年720時間以内(時間外労働)
時間外労働と休日労働の合計上限規制
  • 2カ月平均
  • 3カ月平均
  • 4カ月平均
  • 5カ月平均
  • 6カ月平均
1カ月あたり80時間以内

出典:工事発注者の皆様へ 建設会社の「働き方」が変わります。|厚生労働省

特別条項の場合は、「月45時間」を超えられる時間外労働は年6カ月までと定められます。

時間外割増賃金が引き上げられた

2023年4月1日の改正以降、月60時間を超えた場合の時間外労働の割増賃金が引き上げられました。割増賃金が引き上げられた部分は、次の通りです。

2023年3月31日までの時間外労働割増賃金2023年4月1日以降の時間外労働割増賃金
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率
大企業:50%
中小企業:25%
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率
大企業・中小企業ともに50%

年5日の有給休暇の取得が義務づけられた

2019年4月改正の労働基準法では、全ての企業を対象に年5日の有給休暇の取得が義務づけられました。年次有給休暇が年10日以上付与されている労働者は、そのうちの5日を年内に取得する権利を持っています。使用者は、労働者に対して年5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。

インボイス制度の適用による個人事業主の減少

建設業では、下請けの一人親方が個人事業主の場合も考えられます。免税事業者の個人事業主は、2023年10月から始まったインボイス制度の導入で廃業する可能性もあるでしょう。

個人事業主の一人親方は、適格請求書発行事業者となれば消費税の申告納税が求められます。インボイスの適用で消費税の免税を不服に思う個人事業主が減少するかもしれません。

2024年問題以前から抱える建設業の現状と課題

建設業では、2024年問題が取り沙汰される以前から長時間労働や労働環境の問題を抱えていました。ここでは、建設業の現状と課題について解説します。

深刻な人手不足と高齢化

建設業の労働力となる就業者の減少傾向

国土交通省の公開する資料によると、建設業では、労働力となる就業者の減少傾向がみられます。1996(平成9)年の685万人を境に2010(平成22)年の498万人まで減少しています。それ以降は、横ばいが続き2020(令和2)年で492万人という状況です。1996(平成9)年のピーク時に比べると、就業者人口の減少による人手不足が見受けられます。

建設業就業者の高齢化

また、同資料によると建設業就業者の高齢化も課題になるでしょう。2020(令和2)年においては、建設業就業者全体の約3割が55歳以上で、29歳以下は約1割という結果でした。

長時間労働と労働環境

長時間労働と労働環境 建設業就業者

日本建設業連合会が公開する2017年から2021年にかけての年間平均時間外労働の推移では、管理監督者の平均時間外労働は横ばいの状態です。非管理職や常用労働者に関しては、わずかな減少傾向となっています。

建設業の労働環境は、長時間労働やきついというイメージにより若い世代が定着しない状況でした。そのイメージを変えるために、週休2日制の導入や残業の抑止が必要と考えられています。時間外労働の上限規制は、状況を変える機会にもなるでしょう。

出典:建設業の働き方改革の現状と課題|国土交通省

デジタル化への遅れ

国土交通省の紹介するコラムによると、建設業のデジタル化が遅れている要因として、建設現場の閉鎖性を指摘しています。デジタル技術の接点になるIT人材の不足などもデジタル化の遅れの要因です。労働者の高齢化や人手不足は、今後も続いていく問題だけにデジタル技術の活用は不可欠な取り組みだと考えられます。

2024年問題に建設業が取り組むことと対策案

建設業は、2024年問題のポイントとして紹介してきた課題解決に取り組む必要があります。ここでは、2024年問題への対策案を解説しましょう。

長時間労働を是正する

建設業の問題となってきた長時間労働は、働き方改革の罰則つき規制により是正が期待されています。建設現場の長時間労働は、事前に作成する工期設定の影響が考えられるでしょう。

例えば、国土交通省の提唱するi-Construction(建設プロセスへのICT技術導入プロジェクト)では、BIM/CIMの導入を進めています。BIM/CIMは、建設事業で扱う調査・測量・設計・施工・維持管理などのデータを3次元モデルで効率的に活用する取り組みです。

建設現場における工期設定では、MR(Mixed Reality;複合現実)を使った事前調査や情報の共有などで効率性を高められます。建設現場で生じるミスや手戻りの抑制にもなるでしょう。作業がスケジュール通りに進めば、長時間労働の是正にも貢献できます。

給与や保険など労務環境の見直しをする

建設現場の労務環境は、給与や保険などの見直しも必要です。人手不足の要因は、就労環境だけではなく就業者の待遇面も関係するでしょう。例えば、下請業者を含めた社会保険加入の促進や労務費の現金払いなどです。

元請業者による下請代金の一部が手形発行の場合、下層の下請業者が雇用する技能者への給与(法定福利費を含めた)が支払えないことも考えられます。

元請けや一次下請は、二次下請業者に対しての下請代金の支払いの現金払いが必要です。下請代金は、適正な賃金水準や社会保険加入の原資となるため、手形ではなく現金払いへの見直しが求められます。

IT技術の活用で生産性を向上させる

2024年4月に改正される働き方改革では、予期せぬ残業や休日出勤を減らすための業務効率化が必要です。建設現場では、業務効率化の一つとして、IT技術の活用による生産性向上が注目されています。

例えば、IoT(モノのインターネット)技術などを活用した帳票作成の簡素化です。紙ベースの書類をタブレット上でやり取りすることや、ウエアラブルカメラの活用によるリモート管理などで業務負担は軽減できます。

働き方改革を実現している建設業の事例

建設業には、2024年問題に向けて働き方改革を実現した企業も存在します。ここでは、働き方改革に成功している事例を紹介しましょう。

ICT建機で休日を増やした働き方改革

従業員規模が50人未満の大津建設株式会社は、生産性向上で従業員の処遇改善に成功しています。建設業界を取り巻く、人材難や競合競争の課題がある中、働き方改革を実現しました。

働き方改革実現の原動力は、ICT建機の導入です。ICT建機の導入では、属人化の改善や現場の省人化により生産性向上へとつながっています。具体的には、作業員が3人必要だった現場を1人の作業員で対応可能となりました。ICT建機の導入は、土木作業の40〜50%ほどを削減し、作業効率と安全性を高めています。

同社では、作業時間を削減した部分を従業員の休日に充当する取り組みが行われました。従業員の休日の増加は、段階的に実現しています。

  • 2021年以前:4週6休(年間休日87日)
  • 2022年:4週7休(年間休日96日)
  • 2023年1月~:4週8休(年間休日105日)

同社は、段階的な休日の増加で従業員の働きやすい職場づくりを進めている状況です。

参考:大津建設株式会社

IT化による作業効率アップと労働時間管理で働き方改革

100年以上の歴史を持つ柄建設株式会社には、建設業界の人手不足という共通の課題がありました。課題解決には、社員一人ひとりの労働生産性向上が必要でした。

同社は、労働生産性の向上と労働環境の改善に向けて働き方改革を進めました。特にIT技術の導入は次の分野で効果を引き出しています。

  • 社内ワークシステムの活用で社員同士のコミュニケーション強化
  • 全社員貸与のPCやスマートフォンで出勤や労働時間を管理
  • ライブカメラやドローン、スマートグラスなどで現場施工管理の効率化

同社は、IT技術の導入で作業効率が向上しました。導入後の時間外労働時間は、全社平均月20.5時間という結果になっています。

参考:真柄建設株式会社

建設現場の画像整理を効率化した働き方改革

岩手県全域の公共事業を請け負う株式会社小田島組は、社員144名の半数以上が10代20代という若手精鋭の企業です。同社の課題は、IT化の進むオフィスではなく現場にありました。

建設現場で撮影した画像は、現場から帰社後に整理することが日課です。整理する画像の枚数は、5,000~15,000枚ほどあるため、必然的に残業が恒常化していました。この課題解決のために、現場作業と画像撮影の業務を切り離して取り組みます。具体的には、現場で撮影に使うパソコンやタブレットと、会社のパソコンを連携し、撮影した画像の処理をオフィススタッフが行うシステムへと切り替えました。このシステムを自社開発で作成し、現場監督が帰社後に画像整理する必要がなくなりました。

この取り組みは、長時間労働の削減だけではなく、現場で撮影した画像整理の悩みを持つ同業他社へのサービス提供の機会創出となっています。

参考:株式会社小田島組

2024年問題は業務効率化できた部分で対応しよう

建設業は、働き方改革が施行された2019年4月の時点で適用猶予業種とみなされていました。そのため、高齢化と人手不足が進む日本の労働者事情への取り組みも遅れ気味ではありますが、それでも建設業は、2024年問題により長時間労働の規制や、休日の確保などが求められます。

適正な人員配置や労働管理には、IT技術の力が不可欠です。事例でも紹介したように、IT技術の導入は、業務効率化を実現し、働き方改革との相乗効果をもたらすでしょう。


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