• 作成日 : 2024年9月10日

3M(ムリ・ムダ・ムラ)とは?作業を効率化するための方法と注意点

製造現場の作業効率や作業品質を低下させるものとして、3Mが挙げられます。3Mとはムリ・ムダ・ムラを表したもので、さまざまな要因で発生します。たとえば、特定の部署へ必要以上の人員を配置すると「ムダ」が発生し、人員が足りない部署は「ムリ」が発生するでしょう。このような現場では快適に働けないため、対策が必要です。

当記事では、3M(ムリ・ムダ・ムラ)が発生する原因や改善する方法、改善するときの進め方についてご紹介します。

3M(ムリ・ムダ・ムラ)とは?

3M(ムリ・ムダ・ムラ)とは、効率や品質を低下させる3つの要素です。製造業で発生しやすく、2文字目を取って「ダラリの法則」とも呼ばれます。

ムリ
能力以上の作業を強いることです。作業者や設備に過剰な負担がかかり、結果的に品質の低下や故障を引き起こします。
ムダ
作業者や設備が持つ能力に対して業務負荷が少ない状態です。人員の振り分けが偏って時間が余ってしまう場合や、不要な在庫が増える場合がムダに当たります。
ムラ
作業の不均衡が発生している状態です。ムリとムダが混在し、作業のばらつきが生じます。たとえば、生産ラインの一部レーンが過剰に忙しい一方で、ほかのレーンが暇を持て余している状態はムラに該当します。

3Mの改善は、製造現場の生産性向上やコスト削減、品質向上に関わるため、発生の原因を探ることが重要です。

3Mが発生する原因

3Mと呼ばれる状況が発生するのには、さまざまな要因があります。現場で3Mが増加する要因として特に多いのが、生産能力と負荷のバランスの不均衡です。

以下では、3Mの主な発生原因を解説します。

人材と作業量が釣り合っていない

人材と作業量のバランスが取れていない場合、3Mが発生しやすくなります。生産現場では、部門や工程によって人員に偏りが生じるケースは珍しくありません。

ある部門に必要以上に人員を配置すると、一部の従業員は手待ち状態になり「ムダ」が発生します。一方、人手が足りない部門の従業員には過剰な負担がかかり、「ムリ」が生じることになります。このような不均衡は「ムラ」を引き起こし、全体の生産効率を低下させます。

また、従業員それぞれのスキルや経験に見合わない仕事の割り当ても問題です。経験の浅い従業員に高度な技術が必要な作業を担当させるとミスが増え、結果として「ムダ」が発生します。反対に、熟練した従業員に単純作業ばかりを担当させるとモチベーションが低下し、効率が悪化する可能性があります。

生産計画が現実的ではない

現実的でない生産計画も3Mの大きな原因です。無理な納期設定や過密なスケジュールは、従業員に過度な負担をかけます。

生産計画を頻繁に変更することで「ムラ」が生じ、生産効率が低下します。また、従業員に短期間で大量の生産をさせるために過剰な労働を強いると「ムリ」が生じ、結果として品質の低下を招く場合があります。

さらに、生産計画が不明確なまま作業が始められると、必要以上に部品を発注してしまい「ムダ」が発生します。適切な生産計画は、従業員や設備の負荷を均等に配分し、無理なく効率的な生産を実現するために不可欠です。

需要が予測できていない

需要予測が不十分な場合も3Mが発生しやすくなります。需要を正確に予測できないと、生産計画がずれやすくなり、結果として過剰生産や在庫の積み上げといった「ムダ」が発生するためです。

市場の需要を過大評価して大量の製品を生産すると、売れ残りが発生し在庫コストが増大します。反対に需要を過小評価すると、供給が追いつかず製造スケジュールが圧迫されるため、「ムリ」が生じるでしょう。

適切な需要予測は、ムダやムリを最小限に抑えるために重要です。需要予測が的確であれば、生産計画も現実的になり、無駄な在庫や過剰な労働を避けることができます。

3Mを改善するために実施したい方法

3Mを解消するためには、状態に応じた対策の実施が必要です。

以下では、3Mを改善するための方法を3つ紹介します。いずれも、生産現場や物流現場での効率化と品質向上に有効な対策です。

人材の配置転換を行う

人材の適切な配置は、3Mを改善するための基本です。作業量に対して人手が過剰である場合、無駄な時間が生じます。反対に人手が不足している場合、作業が滞り負荷がかかります。これらの解消には、作業内容と人材の能力が合致するように配置を転換しなければなりません。

経験豊富な従業員を重要な作業に配置し、経験の浅い従業員を補助的な作業に配置すると、全体の効率を高められるでしょう。また、負担の大きな作業に従事する人をローテーションさせることで、過度な負担を1人に集中させずに済みます。人材のスキルを把握し、適材適所に配置するためのシステムを導入するのも有効です。

明確な目標を設定する

明確な目標設定は、3Mの改善に向けた重要なステップです。生産活動や作業工程において、具体的な目標を設定すれば、従業員が自分の役割と達成すべき課題を明確に理解できます。もちろん、目標は現実的で達成可能なものでなければなりません。同時に、進捗状況の定期的な評価も必須です。

毎日の生産目標や週単位の進捗目標を設定し、達成するための計画を立てます。従業員それぞれの目標達成度を評価し、丁寧なフィードバックを行うことで、モチベーションを維持しやすくなるでしょう。また、マニュアルなどで目標達成のための具体的なフローや作業手順を示せば、作業におけるムダの減少と効率的な生産活動が促進されます。

問題に適したシステムを導入する

問題に適したシステムの導入も、3Mの改善に大きな効果をもたらします。たとえば、「ハンディターミナル」や「RFID」などのITツールの導入です。

ハンディターミナルを使用すれば、在庫管理や検品作業を迅速かつ正確に行えます。手作業による確認作業のムダを省くことができるため、誤出荷も防げるでしょう。また、コードを一括で読み取れるRFIDを導入すれば、作業効率が向上します。これらのシステムは操作が簡単であり、経験の浅い従業員でも扱いやすいのがメリットです。

適切なシステムの導入は、従業員の負担を軽減するだけでなく、作業によるミスやムダを削減し、作業の標準化を促進します。システム導入により得られるデータを活用し、さらなる改善策を検討するのも大切です。

3Mを改善するメリット

3Mの改善は、企業にとって多くのメリットをもたらします。代表的なのは、業務効率の向上やコスト削減、働きやすい職場環境の整備です。

以下では、3Mを改善するメリットを3つ紹介します。

業務効率化・生産性の向上

業務の効率化と生産性の向上に期待できるのが、3Mを改善するメリットの1つです。ムリを減らせば従業員の過度な作業負荷が解消され、作業がスムーズに進みます。また、ムダを省くことで無駄な時間や資源の浪費がなくなり、全体の生産性も向上するでしょう。

在庫管理において過剰在庫を減らせば、保管スペースを有効活用できます。ムラを解消すると作業のばらつきが減少し、一貫した品質の製品を提供できる点もメリットです。

業務効率が向上して従業員が本来の業務内容に集中できるようになれば、企業全体のパフォーマンスが向上し、競争力も強化されます。

コストを削減できる

3Mを改善すると、さまざまなコストを削減できるのもメリットの1つです。ムリをなくせれば設備の過負荷が減り、メンテナンスや修理の頻度が低下します。

ムダな作業や資源の浪費を整理すると、経費の削減につながります。たとえば、製品の生産量が適切なら、在庫コストや廃棄コストの削減が可能です。

作業のムラをなくせれば生産計画が安定し、効率的に資源を配分しやすくなります。これにより、材料やエネルギーの使用量が最適化され、コスト削減がより進むでしょう。

また、労働コストの削減も期待できます。適切な人材配置と業務の標準化が実現すれば、労働時間の最適化と残業時間の削減が可能です。

従業員が働きやすい環境を作れる

3Mの改善は、従業員の働きやすさにも大きく寄与します。ムリをなくすことで従業員の過労やストレスが軽減され、健康リスクが低下します。また、ムダの削減により、従業員が本来の業務に集中しやすい効率的な作業環境の整備が可能です。

ムラを解消すると作業の一貫性が保たれ、チーム全体の協力体制を強化できます。職場の雰囲気もよくなり、従業員の満足度が高まるため、従業員のモチベーション向上や離職率の低下に期待できるでしょう。

3Mを改善する時の進め方

3Mを改善するためには、計画的かつ段階的なアプローチが必要です。3Mを改善する時の大まかな進め方は、以下の通りです。

  • 現状を把握する
  • 改善すべき点を特定する
  • 解決策を検討する
  • 実施計画を立てる
  • 検証と改善を繰り返す

まずは、現状を把握することが重要です。部署ごとに必要な人材・物資・スキル・工数などの情報を収集し、可視化します。この段階では、3Mが発生している場所や原因を明確にすることが求められます。

次に、特定した3Mに基づいて業務改善が必要なポイントをリストアップし、優先順位をつけます。改善ポイントが明確になったら、作業の自動化やシステムの導入、人材の再配置など、具体的な解決策を計画します。

解決策の実施には、必要なリソースや予算も考慮し、現場の負担を最小限に抑えられる計画を立て実施します。実施後は必ず効果を検証し、必要に応じて調整を行いましょう。このプロセスを繰り返すことで、継続的な改善が実現できます。

3Mを改善する時の注意点

3Mの改善に当たっては、以下のポイントに注意する必要があります。

  • 優先順位を決める
  • 個別最適化に注意する
  • 長期的視点を持つ

改善に取り組む際には、優先順位を明確にし、段階的に進めることが重要です。一度にすべての改善を試みると、現場の混乱を招く可能性があります。

また、個別の工程だけでなく、全体を見渡してバランスの取れた改善を進めましょう。特定の工程を改善するだけにとどまると、前後の生産工程や関連部署に負担がかかり、新たな問題が発生する場合があります。

3M改善は、短期的な成果を求めるのではなく、長期的な視点で計画を立て、持続的に取り組むのが大切です。経営者や管理者が率先して現実的な目標を設定し、少しずつ改善を進めましょう。

3Mを改善して業務効率化を図ろう

3Mが発生する要因として、人材と作業量が釣り合っていないことや生産計画が現実的ではないといったものが挙げられます。3Mが発生している状況は、製造現場の生産性向上やコスト削減、品質向上に関わるため、発生の原因を管理し改善することが重要です。

3Mを改善するためには、無理のない計画を立て段階的に進めましょう。長期的に改善することを目標とし、優先順位を決めて対策する必要があります。


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