• 更新日 : 2024年9月11日

プロセスマネジメントとは?導入するメリット・流れも解説

プロセスマネジメントとは、業務の流れを細かくプロセスとして分解し、プロセスごとに分析・管理することで業務課題を可視化するマネジメント手法のことです。プロセスマネジメントを導入すると業務の標準化も進めやすくなり、特定の業務が属人化したりブラックボックス化したりするのを防げます。

この記事ではプロセスマネジメントを取り入れるメリットや、導入する流れ、導入にあたっての注意点について解説します。

プロセスマネジメントとは?

プロセスマネジメントとは、業務プロセスの分析・管理によって、成果の最大化を目指すマネジメント手法です。BPM(ビジネスプロセスマネジメント)とも言い、結果だけに注目するのではなく、プロセスを詳細に管理することで問題点や改善点を見つけやすくする目的で行われます。

たとえば、契約件数だけを評価して営業業務の成果を管理する場合、成功や失敗に至った原因の把握は困難です。しかし、プロセスマネジメントでは、商談・見積もり・契約といったプロセスを細かく分解して分析するため、段階ごとの課題が明確になります。課題さえ分かれば、戦略の変更や具体的な改善策を講じることも可能です。

プロセスマネジメントの導入により業務全体の流れが可視化されれば、成果を最大化するために最適なプロセスを構築できます。プロセスマネジメントは、業務手順が定まっている定型業務に特に効果的な方法です。非定型業務が混在している場合でも、業務を整理し定型化すれば効率化を図りやすくなります。

プロセスマネジメントの必要性

組織的な生産性を向上させるために、プロセスマネジメントは必要です。業務プロセスを細分化し、業務内容を共有すれば、個々のスキルに依存せずに組織全体の効率を上げることができます。

プロセスマネジメントが進んでいない企業では、業務についての各社員の習熟度合いによって進捗や生産性に差が生じます。しかし、人材を取り換えるだけでは根本的な原因解決には至りません。重要なのは、個々のスキルに依存しない業務の効率化です。

たとえば、手作業だったデータ入力やグラフ化をAIに任せたり、請求書を紙媒体から電子に切り替えたりすることで、業務効率化が図れます。また、プロセスマネジメントを導入することで、今まで隠れていた無駄な業務や課題も発見されやすくなり、早期改善も期待できるでしょう。プロセスマネジメントは、業務全体を見渡す視点を持って継続的な改善を図るために重要な手法です。

プロセスマネジメントを取り入れるメリット

プロセスマネジメントを導入することで、業務の可視化や属人化の防止、進捗管理の簡易化など、さまざまなメリットが得られます。以下では、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

業務の全体像を可視化できる

プロセスマネジメントを導入するメリットの1つは、業務の全体像を可視化できる点です。業務プロセスを細分化し、各プロセスのフローを明確にすることで、どの業務がどのように進行しているのかを把握しやすくなります。

可視化すると業務の進捗状況や問題点を迅速に発見でき、適切な改善策を講じられます。また、業務フローが明確になれば、メンバー全員で共通の認識を持ちやすくなり、部門間の連携が強化されるのもメリットです。

業務の属人化を防げる

プロセスマネジメントの導入により、業務の属人化の防止が可能です。業務が属人化していると、特定の担当者が不在の場合に業務が滞ることが少なくありません。

プロセスマネジメントでは、フローチャートや作業手順書を作成し、業務プロセスを明確にします。これにより、誰がどの業務をどこまで担当しているかが分かりやすくなり、担当者が不在でもすぐに業務内容を把握できます。

業務の透明性が高まれば、担当者が変更されてもスムーズに業務を引き継げる上、長時間労働やノウハウの喪失といったリスクの低減も可能です。結果として、組織全体の安定性と効率性向上が実現します。

進捗管理が実施しやすくなる

進捗管理が容易になるのも、プロセスマネジメントを導入するメリットです。業務をプロセスごとに管理するため、各プロセスの進捗状況を明確に把握できるようになります。

プロセスごとの課題や進行状況をリアルタイムで把握できれば、計画と実際の進捗を比較しながら迅速な対応が可能です。たとえば進捗遅れが発生した場合、ほかのメンバーがサポートに入って全体の進行が滞らないように調整するなど、チーム全体で目標達成に向けて協力できます。これにより、業務の効率化も図られ、プロジェクト全体の成功率が向上するでしょう。

組織的なリスクを軽減できる

プロセスマネジメントの導入により、組織的なリスクも軽減できます。業務の属人化を防げば、担当者の急な不在や退職による業務停滞の防止が可能です。また、業務プロセスを標準化し手順通りに作業が行われるようになれば、ミスやトラブルの発生率も低下します。

ミスやトラブルが起きた場合も、原因や課題の特定が容易です。さらに、定期的なプロセスの見直しにより、潜在的なリスクも発見しやすくなります。結果として組織全体の安定性に加え、業務効率と生産性の向上も期待できるでしょう。

従業員のモチベーションを高められる

プロセスマネジメントの導入により、従業員のモチベーションも高められます。業務プロセスが明確になることで、各従業員の役割や目標がはっきりするためです。

業務プロセスが可視化されれば、従業員は自分の仕事が全体にどう貢献しているかを理解しやすくなります。自身の貢献が実感できると、今の役割に対する責任感ややりがいが増し、業務に対する積極性が向上するケースが少なくありません。また、プロセスごとに目標設定や進捗管理が行われるため、達成感を得る機会も増えて仕事への満足度も高まります。

プロセスマネジメントを導入する場合の流れ

プロセスマネジメントを効果的に導入するためには、以下の手順を踏むことが重要です。業務プロセスの洗い出しからフローチャート・手順書の作成や目標設定、実行、分析・改善までの流れを、ステップごとに解説します。

業務プロセスを洗い出す

プロセスマネジメントを導入する最初のステップは、業務プロセスを洗い出すことです。担当者への聞き取りや議論、現場の観察などを通じて、具体的な業務内容を詳細に把握します。

特に、属人化されたプロセスは外部から理解しにくい場合が多いため、継続的なコミュニケーションが重要です。1対1の面談やアンケート形式で担当者から情報を収集し、業務の流れや手順を明確にしなければなりません。

ただし、現場の人間に詳細な報告書を作成させるような、負担を増やす依頼は避けましょう。このステップで得られた情報は、後のプロセス可視化や手順書作成の基盤になるため、できるだけ詳しく掘り下げるのが大切です。

フローチャート・手順書を作成する

業務プロセスを洗い出した後は、フローチャートや手順書を作成して可視化する作業です。フローチャートや手順書があれば、業務の流れや手順が明確になり、誰でも理解しやすくなります。

フローチャートは、業務全体のプロセスを視覚的に把握するのに有効です。手順書は、各プロセスの詳細な手順や注意点を記載するために使います。目的に応じてフローチャートと手順書を組み合わせて活用すると効果的です。

可視化作業によって、業務の全体像が明確になり、担当者間で共有しやすくなります。また、標準化された手順書を用いれば、新しいメンバーもスムーズに業務を遂行できるでしょう。

プロセスごとの具体的な目標値を設定する

次に、プロセスごとの具体的な目標値を設定します。目標値を設定すると、各プロセスの成果を定量的に測定でき、進捗状況をリアルタイムで把握しやすくなるためです。

目標は「見積もり依頼5件」「成約件数3件」など、具体的な数値で設定することが大切です。客観的にも理解しやすい数値で示されれば、担当者はやるべきことを明確に把握でき、達成すれば満足感を得られてモチベーションが向上するでしょう。

これにより組織全体の生産性が向上し、プロセスマネジメントの効果を最大化できます。業務の効率化と改善には、無理のない範囲での現実的な目標の設定と、達成度の定期的な評価が必須です。

プロセスを実行する

設定したプロセスを実行することで、プロセスマネジメントが本格的に始まります。このフェイズでは、事前に作成したフローチャートや手順書を基に業務を進めます。

プロセスを実行するときには、それぞれの目標値を意識しながら作業を進めることが重要です。業務の標準化に成功していれば、担当者が変わってもスムーズに業務が進行するでしょう。また、業務の進捗をリアルタイムでモニタリングし、必要に応じて調整を行うことも大切です。

この段階で得られるデータは、後の分析・改善に役立つため、しっかりと記録しておかなければなりません。

プロセスを分析・改善する

プロセスマネジメントの最後のステップは、プロセスを分析・改善することです。実行したプロセスを定期的に評価し、課題を発見して改善策を講じなければなりません。

各プロセスの目標達成度や全体の生産性を確認し、問題点を洗い出しましょう。分析結果に基づいて、業務の順序変更や不要な作業の削減、自動化ツール導入の検討などを行い、プロセスを改善したり、不要なプロセスを無くしたりします。

定期的な分析と改善を繰り返すうちに、全体最適が進み、組織全体の効率化と生産性向上を図れます。

プロセスマネジメントを導入する場合の注意点

プロセスマネジメントには多くのメリットがありますが、デメリットがある点も無視できません。適切に導入しないと、逆効果になる可能性もあります。以下では、プロセスマネジメントを導入する際の注意点を、5つ解説します。

向いている業務にだけ適用する

プロセスマネジメントは、向いている業務にだけ適用することが重要です。適合性のある業務を選ばなければ、効果が出にくくなります。

プロセスマネジメントが向いているのは、一定のパターンで繰り返される業務です。たとえば、システム管理や営業活動、工場での検品作業などが代表的です。これらの業務は、プロセスを整理して標準化すると、効率が向上しやすい傾向にあります。

一方、単発でしか行わないプロジェクトや毎回プロセスが異なる業務では、うまく機能しません。適切な業務を選定することで、プロセスマネジメントの効果を最大限に引き出せます。

目的を明確化する

プロセスマネジメントを導入する際は、目的を明確にすることが重要です。目的が不明瞭なままでは、効果的な導入は難しくなります。

プロセスマネジメントの目的は、業務プロセスの改善や無駄の排除、目標達成に向けた取り組みによる、業務の効率化と生産性の向上です。しかし目的を明確にしないと、導入後に何を達成すべきかが曖昧になり、効果が半減したりプロセスを整理しただけで終わったりしかねません。

たとえば、「どの業務をどれだけ効率化するのか」「改善すべき具体的な課題は何か」といった目標を設定しましょう。これにより、プロセスマネジメントの導入が効果的に行え、組織全体の生産性向上に貢献します。

経営層が積極的に関与する

プロセスマネジメントの成功には、経営層の積極的な関与が欠かせません。経営層が関与することで組織全体の協力が得られやすくなり、計画の実効性が高まるためです。

経営層が関与しない場合、プロセスマネジメントの計画は甘くなりがちで、実行しても効果が出にくくなります。また、現場のアウトプットに対する責任感が薄れ、PDCAサイクルがうまく回らないケースも少なくありません。

経営層が率先して行動すれば、プロセスマネジメントの重要性が全社的に認識されやすく、予算やリソースも確保できます。全従業員が一体となり、目標達成に向けて取り組む環境も整うでしょう。

現場の負担に配慮する

プロセスマネジメント導入に当たっては、現場や管理職への負担にも配慮しなければなりません。過度な負担は従業員のモチベーションを低下させ、業務効率にも悪影響を与える恐れがあるためです。

プロセスマネジメントの導入初期には、標準化や業務プロセスの変更によって一時的とはいえ業務量が増え、現場へ負担がかかります。現場の業務負荷を軽減するためには、段階的な導入や適切なサポートが必要です。

たとえば、業務管理ツールの導入や外部コンサルタントの活用で負担を分散させる手が考えられます。また、従業員の意見を積極的に取り入れ、導入プロセスを柔軟に調整するのも大切です。変化に伴う負担に配慮すれば、従業員の協力も得やすくなるでしょう。

現場とのコミュニケーションを活性化させる

プロセスマネジメントの導入には、現場とのコミュニケーションの活性化が重要です。円滑なコミュニケーションは、業務改善と組織全体の効率化に欠かせません。

現場とのコミュニケーションが不足すると、新しいプロセスが定着しにくく、業務改善の効果も半減します。現場の声を積極的に取り入れ、従業員が直面する課題や要望を把握することがポイントです。

たとえば、定期的なミーティングや意見交換の場を設けて従業員の意見を反映させると、プロセス改善のスピードが向上するでしょう。また、上層部と現場の間で情報共有を徹底すれば、組織全体の一体感が生まれ、プロセスマネジメントの効果を引き出しやすくなります。

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プロセスマネジメントで業務改善を進めよう

プロセスマネジメントによって業務全体を可視化するとともに、プロセス単位で課題を細かく分ければ、業務改善をこれまでよりスピーディーに行えます。また、プロセスマネジメントを進めると業務マニュアルを自然に作れることから、属人化防止にも役立ちます。特に定型業務の場合、プロセスマネジメントが高い効果を発揮するでしょう。

ただし、現場の担当者にプロセスマネジメントを丸投げすると、業務量が増え、改善がなかなか進まない点には注意が必要です。経営層がリーダーシップを取り、現場の負担を上手に分散しながら現場と連携してプロセスマネジメントを進めていくのが大切です。


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