- 更新日 : 2024年12月12日
シナリオテスト仕様書とは?シナリオテストの流れやテンプレートも紹介
シナリオテストは、ユーザーの実際の操作を想定し、システムやソフトウェアが適切に動作するかを検証する手法です。開発されたソフトウェアが、現実の利用シーンにおいて想定通りに機能し、業務運用に耐えうる品質であるかを確認するために実施されます。
テストを効率的に進めるためには、シナリオテスト仕様書を作成するとよいでしょう。当記事では、シナリオテストのやり方や仕様書の作成方法を解説します。
目次
シナリオテストとは?
シナリオテストとは、実際の使用現場を想定してシステムやソフトウェアの動作を検証するテストのことです。利用者がソフトウェアを操作する手順を想定してテスト設計を行い、要求通りにソフトウェアが動作するかどうかを検証します。
シナリオテストの目的は、開発したソフトウェアがユーザー視点で正常に動作し、業務運用が可能な品質を満たしているかを確認することです。
例としてECサイトのシナリオテストであれば、サイトの各機能が正常に動作することはもちろん、ページ遷移の速度や基幹システムとのデータ連携をチェックします。シナリオテストをクリアしたソフトウェアであれば、業務環境においても円滑な運用が期待できるでしょう。
ただし、実際のシステムやソフトウェアには数多くの機能があり、利用者の操作すべてに対応したシナリオテストを実施することは簡単ではありません。基本的にはシナリオに優先度を付けて厳選・抽出し、重要性が高いシナリオについてテストを実施する流れとなります。
シナリオテスト仕様書の無料テンプレート
シナリオテストを実施する際は、テスト内容と結果を記載する「シナリオテスト仕様書」を作成する必要があります。
シナリオテスト仕様書はテンプレートを使用するとスムーズに、手間なく作成できます。
シナリオテストを実施する前に、下記から無料テンプレートをダウンロードしてシナリオテスト仕様書を作成しましょう。
シナリオテストを実施する流れ
シナリオテストを実施するにはさまざまな準備が必要です。実施するときの流れを把握し、段取り良くシナリオテストを進めましょう。
以下では、シナリオテストを実施する流れを5つの項目に分けて解説します。
業務フローの可視化
最初にシステムやソフトウェアを導入する業務フローを可視化します。
業務フローの可視化には、フロー図などの図表を使うことがおすすめです。業務フローを図で表現することにより、ソフトウェアが提供する機能が業務とどのような関係性にあるかを明確にできます。
業務フロー中に作業手順の分岐が存在する場合は、分岐部分を別の分岐図にまとめて、業務の詳細な流れを把握できるようにしましょう。
業務フローの可視化を行うことで、後の工程であるシナリオの整理やテストパターンの洗い出しなどがやりやすくなります。
必要なシナリオの整理
次に、テストに必要なシナリオを整理します。
シナリオの整理では、可視化した業務フローをもとに、業務プロセスの流れを基準としたシナリオを作成します。各業務プロセスの関係性が分かるように流れに沿って線を引き、業務プロセスの詳細も記載しておくとよいでしょう。
業務フローの分岐がある場合は、分岐する各フローに共通する流れがないかを確認します。分岐するフローは、特定の業務プロセスを除いて同じ流れを辿るケースがあり、共通するシナリオが作りやすいためです。
シナリオの共通部分が分かれば、後に行うテストケースの作成を省力化できます。
テストパターンの洗い出し
シナリオの整理ができたら、テストパターンの洗い出しを行います。業務フローのどの分岐や操作でテストを行えばよいかを、整理したシナリオをもとに検討するフェーズです。
テストパターンの洗い出しでは、「利用者がソフトウェアを使用する目的」や「業務の完了地点」を踏まえる必要があります。テストパターンは一般的に複数あるため、ソフトウェアの目的などで優先順位を付けて、検証するべきテストパターンを決定します。
テストケースの作成
決定したテストパターンをもとに、テストケースを作成します。
テストケースとは、シナリオテストの実行方法を具体的に記載した文書のことです。テストケースの書き方は企業によって異なるものの、最低限として下記の項目は記載しましょう。
テスト対象 | テストで確認する対象はソフトウェアのどの部分か |
---|---|
テスト観点 | テストを行って何を確認したいか |
テスト条件 | テスト環境はどのような条件か |
テスト手順 | ソフトウェアへの入力から出力まではどのような手順で行うか |
期待値 | どのような結果が得られればテストを合格とするか |
テストケースはテスト実施者にとってシナリオテストの指示書となるため、読み手が理解しやすい書き方を心がける必要があります。
テストの実施と記録
準備した内容をもとに、実際にシナリオテストを実施します。
シナリオテスト実施後には分析を行う必要があるため、テスト結果はきちんと記録しましょう。テストの合否判定だけでなく、不合格だった場合に確認された事象や問題点、気になるポイントなどをシナリオテスト仕様書に記載します。
シナリオテスト実施後は結果の分析と評価を行い、ソフトウェアの改善などにつなげます。
シナリオテスト仕様書を作成するときのポイント
シナリオテストをスムーズに進行させるためには、テストの実態に沿ったシナリオテスト仕様書を作成することが重要です。
最後に、シナリオテスト仕様書を作成するときのポイントを4つ解説します。
テスト範囲を明確にしておく
シナリオテスト仕様書にはテスト範囲を明確に設定する必要があります。テスト範囲が不明瞭な状態ではどこからどこまでをテストすればよいかが曖昧で、テスト工数が膨らみやすくなります。結果としてテストに多くの時間・労力がかかり、シナリオテストの効率低下につながります。
テスト範囲を明確にするときは、ソフトウェアの機能単位での範囲設定を行いましょう。機能単位で範囲を設定することで無駄なテストを行わなくなり、シナリオテストの効率を向上できます。
利用者の行動・心理を分析する
システムやソフトウェアは従業員・顧客などが使用するものであるため、利用者の行動・心理を分析してシナリオテストの内容を決めることが大切です。
利用者の行動・心理からは想定される操作内容やユーザーニーズを把握でき、ソフトウェアの改善点が発見できるテストを実施できます。
利用者の行動・心理を分析するには、利用者のペルソナやカスタマージャーニーを作成するとよいでしょう。ペルソナは具体的な人物像を作り上げて、カスタマージャーニーは利用者の行動パターンを表せます。
想定外の操作をイメージする
システムやソフトウェアの運用時には正しい操作手順だけでなく、入力ミスや不正な操作などが行われる可能性もあります。1つのテストケースに対しては想定外の操作もイメージして、不具合を排除できるテストを実施しましょう。
想定外の操作は、テストする機能の要素を調べることでイメージしやすくなります。
例として会員登録フォームのテストであれば、登録情報の各項目への記入内容が想定外の操作につながる要素です。「必須項目が空欄のままで登録ボタンを押す」「氏名に数字のみを入力する」などの操作についてテストを行う必要があります。
網羅性を重視する
シナリオテストは利用者の実行したい内容に対応できるよう、網羅性を重視することが必要です。シナリオを時系列や条件別・優先度別で設定して、網羅性を確保するようにしましょう。
時系列でのシナリオ設定を行う場合は、基本的な操作処理の流れに沿ってシナリオを作ります。一連の操作で処理に問題がないか、期待通りの操作性があるかなどをチェックします。
条件別では、想定される条件の組み合わせを書き出したシナリオを作り、操作や行動の組み合わせで不具合が発生しないかを調べます。
優先度別では、作成したシナリオを優先度の高い順に並べましょう。シナリオの優先度を決めておくことで、網羅性を可能な限り確保しつつ、実現可能なシナリオテスト仕様書を作成できます。
シナリオテストを円滑に行うには?
ユーザーの操作フローを考慮したシナリオテストを行うことで、システムの品質を確保し、現実的な業務における円滑な運用が実現できます。
シナリオテストを成功させるためには、業務フローの可視化やテストパターンの洗い出し、テストケースの適切な作成が欠かせません。また、テストを漏れなく実施し記録するために、シナリオテストの仕様書も用意しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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