- 更新日 : 2024年7月3日
「言った言わない」が起きたらどう対応する?原因や対処法、解決策を解説
スムーズに業務を進め、成果を上げる上で要となるコミュニケーション。上司‐同僚、社内‐取引先などコミュニケーションをとる接点は多様にありますが、その中で「言った言わない」という齟齬によるトラブルが起こりがちです。
トラブルが大事に至らないようにするにはどう対応すべきか、この記事では原因や対処法について解説します。また、コミュニケーションによるトラブルを防ぐITツールも紹介します。
目次
「言った言わない」が起こりやすい場面
ビジネスシーンで「言った言わない」が起こりやすい場面を、事例とともに確認していきましょう。
顧客との商談
ビジネスにおける顧客との商談では、製品やサービスの提供条件、価格、納期など、多くの重要な情報が交換されます。例として、ある企業の営業担当者(A)が顧客(B)と製品の購入に関する商談で起きたトラブルを見ていきましょう。Aは製品の納期を「約4週間」と伝え、Bも了承しました。
しかし、商談から4週間が過ぎた後、BからAへ連絡があり、「約束された4週間で製品が届かない」というクレームが発生しました。Aは「4週間前後」と伝えたつもりであったのに対し、Bは「最長4週間」と解釈していたのです。期待と実際が異なるため、不満を抱いてしまう事例です。
上司からの指示
社内の上司が部下に指示する場面でも「言った言わない」問題は発生しやすいです。例えば、「来週の定例会議の前日までにサービスの分析資料を共有できるようにしておいてほしい」と上司Aが部下Bに口頭で指示しました。しかしながら口頭での指示がある数日前にオンラインチャットでは、サービスの概要の資料を提出する記録が残っていました。
部下Bは上司Aに分析資料を付け加えるとなると、来週の定例会議に間に合わない旨を伝えますが、上司Aは部下Bを𠮟責し「言った言わない」の水掛け論に発展してしまう事例です。
「言った言わない」に法的な効力はある?
「言った言わない」はさまざまなトラブルを引き起こしますが、特に契約書に関する内容は重大なトラブルに発展することが多いでしょう。契約書を介さず口約束での契約をしている場合や、契約書に記載のない内容について、「言った言わない」が起こりがちです。
法的には民法522条2項のように、契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成を要しないことが明記されています。
しかしながら口頭で合意した内容を証明するのは、契約書での合意と比べると証明する難易度が高く、録音データややり取りの記録が示せなければ証拠として認められません。口頭での契約は客観的証拠が不十分となることが多いため、契約の存在を証明することが難しいといえるでしょう。
「言った言わない」が起きる原因
コミュニケーションの「言った言わない」が起こってしまう原因にはどんなものがあるでしょうか。ここでは主な原因について紹介しますので、日頃の業務と合わせてイメージしてみましょう。
口頭のみのやり取り
口頭のみのやり取りは、「言った言わない」が発生しやすいシチュエーションです。後になってから内容を正確に思い出すのが難しいかつ、人は自分の記憶を過信してしまう傾向があります。
そのため、時間が経つにつれて、実際には言われなかったことや、異なる方法で言われたことを、言われたと誤って記憶する可能性があります。
記録を残していない
口頭で話した内容の記録を残していないことも「言った言わない」問題に発展するリスクの一つです。コミュニケーションにおける指示や合意事項が文書化されていないと、後からそれらの責任を誰が負うべきかが不明確になりがちです。
特にプロジェクトの遅延やミスが発生した場合に、問題の原因を特定し、解決策を講じることを困難にしてしまいます。
確認不足
口頭でのやり取りや、非公式のコミュニケーションでは、合意された内容や指示が正確に記録されない場合があります。これにより、後日になってその内容を正確に思い出すことが難しくなり、双方の間での認識の違いが生じます。
またこれらの情報は、チームや部門間での情報共有を妨げる可能性があります。結果としてプロジェクトや業務において必要な情報がすべての関係者に届かず、誤解や作業の重複を招くこともあるでしょう。
聞き間違い・聞き逃し
コミュニケーションをとる上でありがちなのが、聞き間違い・聞き逃しです。会議中や通話中に他の作業を同時に行ったり、周囲の騒音に気をとられたりすると、重要な情報を聞き逃してしまう可能性が高まります。近年増加しているオンライン会議では、画面共有やチャット機能などの使用によって注意が散漫になりがちです。
また、話し手と聞き手の間での発音の違いや言語の理解度、専門用語の知識の有無など、コミュニケーションスキルの差異も、聞き間違いの原因となることがあります。
思い込み・解釈の違い
思い込みや解釈の違いも、コミュニケーションの齟齬を生む原因の一つ。話し手と聞き手が持つ前提や出発点が異なると、同じ情報を共有しても解釈が分かれる場合があります。例えば、特定の業界用語を使用している場合や、プロジェクトに関する背景知識が異なる場合には、受け取った情報の意味が異なる解釈となる場合があります。
また、感情もコミュニケーションにおける解釈に大きく影響します。ストレスフルな状況や感情的な対立がある場合、冷静な判断が難しくなり、誤解を招きやすくなります。
「言った言わない」が起きたらどう対応する?
原因を踏まえて、「言った言わない」が起きてしまった場合の対応方法について解説します。手順を細かく理解することで、対応時の参考としてください。
状況の整理
まずは、当事者双方が冷静になることが重要です。感情的になると、問題解決がさらに難しくなります。客観的な視点を保つことから始めることが大切です。上司や関係する社員が間に入り、問題の解決に向けた前提となる状況の整理を行いましょう。
事実確認
「言った言わない」の状況では、何が、どのような意図で話されたのかについて、双方の理解が異なることが多いです。まずは、双方がどのような情報を持っているのか、具体的な事実を確認します。メールのやり取り、会議のメモ、関連する文書など、具体的な証拠を基に行うことが望ましいでしょう。
対話を通じて問題解決
話し手の意図と聞き手の解釈がどのように異なっているのかを確認します。このプロセスでは、双方が自分の意図や理解を正直に共有し、誤解があればそれを明らかにすることが大切です。
そして、お互いの共通の理解を得たのちに、具体的な解決策を策定することで問題の解決を図りましょう。
反省と改善
最後に反省および改善する時間を設け、今後のコミュニケーションの改善策、必要なアクションの明確化、責任の所在の確認などを策定しましょう。
また、合意した内容や今後のアクションプランを文書化し、双方が確認することで、「言った言わない」の状況を未然に防げます。
「言った言わない」を防ぐには?
「言った言わない」を防ぐ方法をいくつか紹介します。業務の中にすぐに取り入れられる対策ですので、参考にしてみてください。
会議や商談は議事録をとる
まずは、議事録をとることを徹底しましょう。議事録は、会議の内容を記録することが目的ですが、合意内容や懸案事項が明確化することで、会議後のコミュニケーションも円滑に進みやすくなります。
議事録では、すべての会話を詳細に記録する必要はありません。主要な議題、決定事項、行動計画、担当者、期限など、重要なポイントを中心に記録しましょう。
仕事のやりとりのログを残す
仕事のコミュニケーションのログを残しておくことも有効です。会議、電話、電子メール、チャットなど、仕事上のコミュニケーションの内容を記録し、後から確認できるようにしておくことで、コミュニケーションの透明性が高まり、誤解や記憶違いを減らせます。
コミュニケーションツールを導入する企業も増えてきているかと思います。SlackやMicrosoft Teamsなどのチャットツールは、日常のやり取りを自動的に記録し、検索可能な形で保存できるため、後からいつでも振り返ることが可能です。
積極的にコミュニケーションをとる
コミュニケーションが不足していることも、「言った言わない」問題の原因となりやすいです。組織やチームで個人のコミュニケーションを活性化させる風土を作ることを意識しましょう。プロジェクトの進捗状況や任務の完了度合いについて定期的に確認し、報告したり、1on1を設け個人が話しやすい信頼関係の構築に努めたりすることが大切です。
また、話を聞く際には、相手の言葉だけでなく、非言語的なサインにも注意を払うことで、相手の意図を正確に把握しやすくなります。
情報共有のルールを決めておく
情報共有のルールを事前に決めておくことで、情報が集約されやすくなります。口頭でのコミュニケーションの内容をどのような手段で共有するのか、口頭以外の情報の共有方法を明確化しておきましょう。情報の機密性に応じて、適切な共有方法を選択することが重要です。
また、情報をリアルタイムで共有するのか、定期的なミーティングでのみ共有するのか、緊急度や情報の重要性に応じて適切なタイミングを設定しておくことも効果的です。
定期的にフィードバックを行う
定期的なフィードバックを通じて仕事に関する認識の齟齬を早期に発見し、解消する機会を設けましょう。
フィードバックは、仕事の進行状況、個人のパフォーマンス、チーム内のコミュニケーションの質など、多岐にわたる側面について、相互に意見を交換し合うプロセスです。上司は部下の意見を尊重し、信頼関係を深めることで、コミュニケーションがとりやすい風土を作っていくことを心がけましょう。
「言った言わない」に役立つITツール
ここからは業務のコミュニケーションの一助となるITツールについて紹介します。業務を効率化するという点にも着目しながら、コミュニケーションの円滑化を図ることも重要です。
ビジネスチャット
ビジネスチャットは今や多くの企業が導入しているのではないでしょうか。ほとんどのビジネスチャットでは、発信した内容は削除しない限りは蓄積されていきます。
ビジネスチャットをどのように運用していくかが、「言った言わない」をはじめとするコミュニケーションの効率性を高めるポイントとなるでしょう。
コミュニケーションプラットフォーム
前述のビジネスチャットをはじめ、メール、ビデオ会議、チャット、ドキュメント共有など、複数のコミュニケーション手段を一つのインターフェース内で提供するのがコミュニケーションプラットフォームです。
プラットフォームを導入するメリットの一つに、情報の一元化が挙げられます。メール、ドキュメント、会議記録など、あらゆる形式の情報を一箇所で管理することで、情報の散逸を防ぎ、必要な情報を迅速に検索してアクセスすることが可能になります。
注意すべき点としては、導入コストや管理コストがかかる点です。コストや人的な負担を考慮した上で、最適なツールを自社に取り入れましょう。
RPA
RPAは、ルーチン作業や反復的なタスクを自動化するテクノロジーです。人間の介入を最小限に抑えることで、作業の正確性を向上させると同時に、コミュニケーションに関連する誤解やミスを減らせます。
コミュニケーションが発生する業務自体を自動化させるため、導入する場合には効率化に貢献してもらえると思いがちです。しかし、RPA自体の運用に慣れていない場合は、管理する上でのコミュニケーションコストがかかることを想定しておきましょう。
「言った言わない」には証拠を残すことが大切!
昨今では、リモートワークが広まり働き方が変化してきていることから、コミュニケーションの齟齬が発生しやすい環境となってきています。
コミュニケーションの問題を解決したり、トラブルを予防したりするには、組織および個人に対してアプローチしていくことが求められます。「言った言わない」問題については、自動的に証拠が残るように仕組み化するほか、個人のコミュニケーションのとり方にも工夫の余地があるといえるでしょう。本記事を参考に、仕事におけるコミュニケーションのとり方を再度見直してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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