• 更新日 : 2024年9月11日

エスカレーションとは?ビジネスでの意味やルール、フローの作り方を解説

エスカレーションとは、一個人の知識や経験・責任範囲では解決が難しいインシデントの対応策について、上司への指示を仰ぐことを意味します。エスカレーションによってスムーズな初動対応を行い、インシデントの迅速な解決が可能です。この記事では、ビジネスにおけるエスカレーションの意味やルール、フローの作り方について解説します。

エスカレーションとは?

エスカレーションとは、元来「上昇」や「拡大」といった意味を持つ言葉です。このことから転じて、ビジネスにおいては「段階的に上司へとアプローチすること」という意味合いで使われます。

ビジネスにおいては、一従業員の立場だけでは判断を下せないトラブルやクレームなどが起こる可能性があります。このような場面において、適切なタイミングで上司にトラブルやクレームの内容を相談し、最適な判断を仰ぐのがエスカレーションです。

「報告」と似た意味に捉えられることがありますが、少し意味合いが異なります。「報告」は「現状を説明する」という意味であり、上司の判断を仰ぐ必要はない一方通行の行動です。それに対して「エスカレーション」は「現状を説明し、上司の判断を仰ぐ」という意味が含まれます。

エスカレーションの対応が必要なケース

エスカレーションの対応が必要なケースには、クレームが発生した場合やインシデントが発生しトラブル対応が必要な場合、自身の知識・経験・責任範囲では対応しきれない場合などが挙げられます。

ここでは、どのような場面でエスカレーションを行うべきなのか、具体的なシチュエーションについて解説します。

クレームが発生した場合

エスカレーションが必要な代表例の一つに「クレームが発生した場合」があります。

すでに自社に十分な対応実績がある「よくあるクレーム」であれば、マニュアルに記載されている対応策を実施するだけで解決が可能かもしれません。しかし、これまでに経験したことがないクレームや、内容が複雑で上層部の判断が必要なクレームが発生した場合は、速やかにエスカレーションを行い、上司の判断を仰ぐ必要があります。

個人の判断で安易にクレーム対応を行うと、顧客の信頼をさらに損なう恐れがあるため、適切なエスカレーションを行うことが大切です。

インシデントが発生しトラブル対応が必要な場合

現場で何らかのインシデントが発生し、トラブル対応が必要になった場合も、エスカレーションが重要です。現場の従業員だけで無理に解決しようとすると、最適な対応を取れずにトラブルがさらに拡大して収拾までに長い時間がかかったり、トラブルを隠していると判断されて従業員の評価が下がったりする可能性が生じます。

トラブルを適切に解決するためには、解決のための資金の投入や既存ルールの改訂など、上司の判断が不可欠な対応を行わなければならない場面があります。このような場面で迅速かつ的確な判断を行うためにも、エスカレーションが求められます。

自身の知識や経験・責任範囲では対応できない場合

従業員が自身の知識や経験・責任範囲だけでは業務に対応できない場合も、エスカレーションによって上司の判断を求める必要があります。

一般的に、上司はさまざまな業務を経験してきており、経験に基づいて多様なシチュエーションに対する解決策を持っています。まだ経験が不十分で、目の前にある業務を自身の知識や経験だけでは解決しきれないと判断したときは、速やかにエスカレーションによって上司の指示を仰ぐことが大切です。

迅速なエスカレーションによって、場面に応じた最適な対応を取れるだけでなく、最適な判断を学ぶこともできます。

エスカレーションが発生しやすい業界

エスカレーションはさまざまな業界で行われる対応ですが、特にコールセンターや接客業、営業部門などでよく発生します。ここでは、3つの業界におけるエスカレーションの特徴について解説します。

コールセンター

コールセンターでは、顧客からの問い合わせやクレームに対応する業務が主に行われるため、オペレーターだけでは判断しきれない案件をエスカレーションする場面が日常的にあります。

あらかじめ用意されているマニュアルやFAQだけでは対応しきれないトラブルやクレームが発生した際に、スーパーバイザー(SV)にエスカレーションして指示を仰ぎ、最適な対応につなげるのです。

コールセンターにおいては、オペレーターが個人で対応しきれない案件が生じた際に、誰にエスカレーションするのかを事前に決めておく必要があります。エスカレーション先を設定しておくことで、スムーズな初動対応につながり、顧客からの信頼向上を図れるでしょう。

接客業

接客業も、エスカレーションが行われる機会の多い業種です。例えば、「店員の態度が悪い」と顧客からクレームが入った際に、従業員だけでは対応しきれないと判断し、店長にエスカレーションして対応を引き継ぐなどのケースが挙げられるでしょう。

「○○という商品を新しく取り扱ってほしい」という意見を受けて、上層部にエスカレーションして意見を届けるなどの例もあります。

店にはさまざまなタイプの顧客が訪れるため、店員に求められる対応も多種多様です。一従業員の責任範囲だけで対応しきれないと感じたときは、速やかにエスカレーションを行い、スムーズに初動対応を行うことが大切です。

営業部門

営業部門においても、エスカレーションを行うことがあります。その一例として、営業担当者は取引先と商談を進める中で「提示した見積価格よりもう少し金額を安くできないか」という相談を受ける可能性があります。担当者個人の裁量で値引き可能な範囲であればその場で可否を判断できますが、個人の裁量を超えた大幅な値引きを打診された場合に、エスカレーションを行い上司の判断を仰ぐことが求められます。

また、取引先からのクレームを受けた際に、担当者個人で解決することが難しい場合は、上司にエスカレーションして指示を仰ぐことも大切です。トラブルの大きさによっては、上司が同行して取引先に謝罪したり、社内で賠償などのコストがかかる判断を下さなければならなかったりする可能性もあるためです。

スムーズなエスカレーションを行うには?

スムーズなエスカレーションを行うためには、エスカレーションフローを定めて従うことが大切です。また、エスカレーション報告者を責めることなく、ルールを定期的に見直して社内で共有することも求められます。

ここでは、エスカレーションをスムーズに行うための3つのポイントについて解説します。

エスカレーションフローを定めて従う

スムーズなエスカレーションを行うにあたって、エスカレーションフローを定めておくことが重要です。エスカレーションフローとは、「インシデントが発生してから、エスカレーションを行うまでの流れを規定したもの」を指します。

インシデントが発生した後にエスカレーションを行うべきかどうかの判断基準を取り決めておき、エスカレーション先となる人物を規定しておくことで、現場の従業員がエスカレーションの判断を行う際に迷わなくなり、迅速に対応できるようになります。

本来はエスカレーションを行わなければならないトラブルを現場で解決しようとしてしまい、トラブルを拡大させてしまう事態も防止できます。

エスカレーション報告者を責めない

エスカレーションを受けた際に、上司がエスカレーション報告者を責めないことも大切です。

エスカレーションを行うということは、トラブルやクレームを報告するということでもあります。そのため、インシデントを起こした当事者は「責任を取らなければならないのではないか」「叱責されるのではないか」と恐れを抱き、エスカレーションを行わずにインシデントを隠してしまうケースがあります。

インシデントを隠してしまうと、適切な初動対応を行えないために問題の解決が遅れ、さらに事態を深刻化させてしまう可能性があります。このような事態を回避するために、エスカレーションをしても責任を問わないことを周知し、従業員が安心して上司に判断を仰げる企業風土を作ることが重要になります。

ルールを定期的に見直し社内で共有する

エスカレーションフローは、企業全体で共有するルールです。そのため、作成者は「客観的な基準が守られているか」を公平な目線で判断し、明文化されたドキュメントで社内に共有する必要があります。その上で、ルールは定期的に見直しを行い、社内で共有することが求められます。

古いルールを適用し続けると、市場の変化などで最新のトラブルやクレームに対応できなくなったり、顧客が求めている対応をくみ取りきれず信頼の低下につながったりする恐れがあるため注意が必要です。

エスカレーションフローの作り方

エスカレーションフローを作成する際は、上司への報告事項と報告内容の優先度を決めたり、報告手段や報告ルートを明らかにしたりすることが重要です。また、過去に行われたエスカレーションの記録はデータ化して保存し、分析や将来の対応に活かしましょう。

ここでは、エスカレーションフローを作る際に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

報告事項と優先度を決める

エスカレーションフローを作成する際は、「報告事項」と「優先度」を設定する必要があります。報告事項とは「誰に対して、どのタイミングで、何を報告するのか」に関する規定です。報告内容が不足していると、エスカレーションによって判断を求められた上司も、最適な対応を取れない可能性があります。エスカレーションに不可欠な情報をあらかじめ規定しておくことで、迅速かつ確実な対応につながります。

「優先度」は、各インシデントの緊急性です。インシデントごとに優先順位を設定し、より緊急性が高いものから優先的にエスカレーションを行うことが大切です。

報告手段や報告ルートを決める

報告手段や報告ルートを決めることも、エスカレーションフローを作成するにあたり、重要な事項の一つです。

報告には電話・メール・社内チャットなど、さまざまな手段があります。どのような手段でエスカレーションを行うのかを規定することで、スムーズなエスカレーションが可能になります。「最初はメールで報告し、○○分経過して返答がない場合は電話で呼び出しを行う」など、段階的に設定する方法も考えられます。

また、報告ルートを定義しておくことも大切です。「従業員→所属部署の上長→所属部門の上長」などのルートを定義しておくことで、スムーズなエスカレーションを実現できます。

エスカレーションの記録をデータ化する

エスカレーションを行った記録は、必ずデータ化してナレッジとして蓄積しましょう。エスカレーションの実績を記録しておくことで、次に同様のインシデントが発生した際に過去の事例を参考にしながら対応できるようになります。場合によっては、現場の従業員だけで解決が可能になるため、業務効率化につながります。

また、エスカレーションの記録を分析することで、どのようなクレームが多いのかを客観的に判断し、業務改善の参考にするという使い方もあります。

経緯報告書のテンプレート(無料)

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エスカレーションフローを作成し、スムーズな初動対応を実現しよう

従業員だけでは解決しきれないクレームやインシデントに適切に対応するためには、上司への報告と指示を仰ぐ「エスカレーション」が必要不可欠です。いざというときにエスカレーションフローを作成し、エスカレーションをスムーズに行える体制を整えることが大切です。

エスカレーションフローを作成する際は、報告事項や優先度、報告手段、報告ルートなどのさまざまな要素を取り決めておく必要があります。事前に社内で万全のルール化を行い、従業員に共有しておくことが求められます。


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