- 作成日 : 2024年7月10日
業務過多とは?意味やリスク、原因、見分け方、解決方法について解説
業務過多とは、社員や労働者に課される仕事量や質が過度に高くなり、能力や体力を超えてしまう状態を指します。この状況は企業のコスト削減や業務配分の不適切さ、個人のタスク管理の不足などが原因で発生します。業務過多が続くと心身の健康に悪影響を及ぼし、生産性の低下や離職リスクの増加を招くため、企業経営者や管理者は早急に対応が必要です。
当記事では、業務過多の具体例や見分け方、そして効果的な対処法について詳しく解説します。
目次
業務過多とは?
業務過多とは、社員や労働者に要求される仕事量や質が、能力や体力を超えてしまう状態を指します。これは企業のコスト削減や業務配分の問題や個人のタスク管理の不足など、さまざまな原因で引き起こされます。業務過多が続くと心身への負担が増し、社員の体調不良や離職・休職につながるリスクが高まるため、企業経営者・部門管理者側は早急に対処しなければなりません。
業務過多の具体例
以下は、業務過多に陥っている状態の例です。
【業務過多の状態の例】
- 明らかに残業が常態化している
- 休みが取れない、あるいは取りにくい
- 仕事の質が低下している
- 常に時間に追われている
- ストレスや疲労が溜まっている
- 私生活に支障が出ている
このような状況が続くと、社員の心身に大きな負担がかかり、業務効率や生産性が低下する可能性が高まります。
業務過多の言い換え
業務過多の状態は、さまざまな言葉で表現できます。以下は、業務過多と同様の状態を表す言い換えの例です。
【業務過多の言い換えの例】
- キャパシティオーバー(キャパオーバー)
- 仕事が山積み
- 仕事量が多すぎる
- タスクが溜まっている
- 忙殺される
- 業務負荷がキツイ
- workload(英語)
上記の表現がなされている場合は、業務過多に陥っている可能性が高くなります。逼迫度は個々の状況で異なりますが、いずれにしても早期に対策を講じなければなりません。
業務過多が招くリスクやデメリット
社員が業務過多に陥っているにもかかわらず放置すると発生するのが、生産性の低下やミスの増加、社員の健康被害といったさまざまな問題です。
以下では、業務過多が招く主なリスク・デメリットを3つ解説します。
業務の生産性が落ちる
業務過多が続くと、職場全体の生産性が低下します。長時間労働が常態化することで、疲労が蓄積し、パフォーマンスが低下するためです。また、仕事量が多すぎれば、短時間で複数のタスクを同時にこなさなければならなくなります。結果として、ミスやトラブルが増えやすくなる上、仕事の質も低下するでしょう。
さらに、残業が増えれば必然的に人件費や光熱費も増大し、企業のコストがかさみます。このような状態では、売上や業績も落ち込むなど、企業全体に悪影響を及ぼすのは必至です。
ミスや事故につながる
業務過多の状態が長く続くと、心身の疲労が蓄積し、ミスや事故が増えるリスクが高まります。仕事量が多すぎれば、集中力が低下し、タスクの抜け漏れや対応漏れが発生しやすくなるためです。
もし取引先との重要なやり取りでミスが起これば、重大なトラブルに発展し、関係を切られかねません。また、作業中に大きな事故が起こった場合、社員や顧客の安全が脅かされるだけでなく、企業の責任問題にも発展します。
退職者、休職者が増える
業務過多が解消されなければ、社員の退職や休職が続く原因となります。長時間労働や過剰なストレスによって、体力やメンタルが限界に達し、仕事を続けるのが困難になるためです。
離職者や休職者が増加すれば、現場の人手不足が進みます。また、離職率が高まると企業の求心力も下がり、新たな人員補充も難しくなるでしょう。残った社員がさらなる業務過多に陥って疲弊すれば、過労死や自殺といった最悪のケースを招きかねません。
業務過多かどうか見分けるには?
仕事量が適切であるかどうかは、ワークライフバランスの改善や業務目標の達成において重要です。ただ、業務に対するキャパシティは社員によっても異なるため、単にタスクの量だけを比較しても判別できません。
以下では、実態調査で業務過多に陥っているか否かを見分ける方法を4つ紹介します。
他と比較して業務量が多くないか
業務過多かどうか見分けるためには、他の社員と比較して任されている業務量が多すぎないか確認することが重要です。他の社員と同じ職務・仕事内容であれば、担当している業務の数や時間を比較しましょう。
たとえば、同僚が休憩している間も仕事をしている、残業している日が多いといった場合は、業務過多の可能性があります。特に頼まれた仕事をすべて引き受けてしまう人や、周囲よりも優秀で期待されている人は、実力以上に業務量が増えるケースが少なくありません。
残業時間はどうか
業務過多かどうかを見分ける際、残業時間は重要な指標です。残業が常態化している場合、業務量が過多である可能性があります。心身に大きな負担をかける長時間労働は、生産性を低下させる原因の1つです。
また、残業続きでプライベートな時間が減り、ワークライフバランスが崩れれば、仕事へのモチベーションも下がります。毎日のように残業が発生している場合や休日出勤が多い場合、月の総残業時間が法定基準を超えている場合は、特に注意が必要です。
ストレス状態になっていないか
業務過多かどうかを見分けるには、ストレス状態にないか確認するのも有効です。過度なストレスは心身に悪影響を及ぼし、仕事の効率を大きく低下させます。たとえば、常にイライラしていたり、仕事に対する意欲が低下したりしている場合、ストレスが原因かもしれません。
また、睡眠不足や体調不良が続いている場合も要注意です。プライベートや職場の人間関係に大きな問題がないにもかかわらず、ストレス状態が続くのであれば、業務過多のサインである可能性が高まります。
仕事とプライベートのバランスがとれているか
業務過多かどうかを見分けるには、仕事とプライベートのバランスが取れているかも確認しましょう。残業や休日出勤が常態化し、プライベートな時間が十分に確保できていない場合、業務過多の可能性が高くなります。
また、仕事のストレスが原因で家庭や趣味に影響が出ている場合も要注意です。仕事とプライベートのバランスが崩れると、心身の健康に悪影響を及ぼし、業務効率も低下します。
会社側:業務過多の解消方法
会社側が業務過多を解消するためには、組織全体での取り組みが求められます。適切な人材配置や業務の再配分、目標・ノルマの見直し、業務効率化など、取れる方法はさまざまです。以下では、会社側の働きかけで業務過多を解消する対処法を5つ解説します。
人材確保に努める
業務過多の解消には、人材確保が有効です。人員不足が原因で業務量が過剰になっているのであれば、適切な人材を採用・配置して、現場の負担を軽減しなければなりません。特に専門知識やスキルを持った人材を確保できれば、業務の効率化が図れます。
さらに、フレックスタイム制やリモートワークなどの柔軟な勤務制度の取り入れや、パートタイムやフリーランスの活用も検討するとよいでしょう。人材確保は業務負担を減らすだけでなく、全体の生産性向上にもつながります。
業務を再配分する
業務過多を解消するためには、業務の再配分が必要です。特定の社員に業務が集中しないよう、適切に業務を分配します。業務分担表などを作成して、業務量やスキルに応じてタスクを配分し、各社員が均等に業務をこなせる環境を整えましょう。
ITツールを活用して業務内容を可視化し、定期的に進捗状況を確認することで、業務の属人化や偏りを防ぎやすくなります。これにより、全体の効率が向上し、社員の負担を軽減可能です。
目標やノルマを見直す
業務過多の解消には、目標やノルマの見直しが必要です。過度に高い目標やノルマは、社員に過剰な負担をかけ、モチベーションの低下や生産性の低下を引き起こします。ミスを起こしやすくなるだけでなく、不正の温床にもなりかねません。
ノルマを課す際は現実的な範囲に留め、社員が達成可能な範囲で業務を進められるように調整することが重要です。目標達成のための具体的な支援策やインセンティブを導入することで、社員のやる気が引き出されて自主的かつ積極的に動きやすくなります。
業務が効率的になるよう改善する
業務の効率化は、業務過多の解消に必須です。まず、業務フローを見直し、無駄な作業や重複する業務、システムを整理・削減しましょう。ITツールも活用して、タスク管理やコミュニケーションの効率化を図らなければなりません。
また、定期的に業務プロセスを評価し、改善点を見つけることが重要です。社員のスキルアップを促進し、業務の質と効率を向上させる取り組みを進めれば、全体の生産性を高められます。
業務委託やアウトソーシングを活用する
業務過多を解消する方法として、業務委託やアウトソーシングを活用するのも効果的です。特に専門的な知識やスキルを必要とする業務は、外部に委託・依頼することで業務の効率化が図れます。
外注となれば一時的にコストは上がるものの、長期的に見ればコストの削減になるケースも少なくありません。また、社内のリソースはコア業務に集中させられます。業務委託やアウトソーシングでは、適切な業務を選び、信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
社員側:業務過多の解消方法
業務過多は、企業側だけでなく、社員側の行動や習慣も原因となるケースが見受けられます。社員が自ら業務過多を解消するための方法を実践するのも大切です。
以下では、社員側で取り組める業務過多を解消する対処法を5つ解説します。
業務をマニュアル化する
業務過多の解消には、業務のマニュアル化が有効です。業務過多は、業務の流れが無駄に煩雑化したり、属人化したりすることで引き起こされるケースが少なくありません。
マニュアルがあれば、業務手順が標準化されるため、誰でも一定の品質で業務を遂行できるようになります。業務の進行がスムーズになり、ミスの防止や作業時間の短縮も期待できるでしょう。また、新人を育成する際にも役立ち、教育コストの削減につながるのもメリットです。
仕事を引き受けすぎない
業務過多に陥らないためには、仕事を引き受けすぎないことが重要です。自分自身のキャパシティを超える業務を無理に引き受けると、生産性が低下して仕事の質が低下し、ストレスや疲労が蓄積します。
まずは優先順位を明確にし、本当に重要な仕事に集中できるよう、必要なら断る勇気も持ちましょう。断ることに抵抗を感じる場合は、謝意を示した上で理由を明確に伝えると理解を得やすくなります。周囲の社員に余裕があるようであれば、自分の手に余る分を誰かにお願いしてもよいでしょう。
上司に相談する
業務過多の解消には、上司に相談するのも大切です。業務過多に陥っているのは、上司が部下のキャパシティを高く見積もりすぎているのが原因となるケースも珍しくありません。自分の業務量が多すぎると感じるのであれば、認識を改めてもらう必要があります。
上司が現状を理解すれば、業務の優先順位や人員配置を検討しなおして、業務過多の解消に向け動き出すでしょう。早期に相談すれば上司も対策を講じやすいため、職場全体の業務効率向上とストレス軽減につながります。
身の回りを整理整頓する
身の回りの整理整頓も、業務過多の解消には有効です。整理整頓された環境では、必要な資料や道具をすぐに見つけられるため、作業効率が向上します。たとえば、書類やファイルをカテゴリー別に分けて保管したり、使用頻度の低いものを処分したりといったことから始めるとよいでしょう。
業務に直接関係ないものは引き出しにしまうなどして、気が散る要因を取り除くことも大切です。清潔で整った作業環境は、ストレス軽減効果も期待できます。
プライベートな予定を入れる
業務過多の解消には、プライベートな予定を入れるのも効果的です。仕事後に趣味や家族との時間を予定に組み込むと、定時までに仕事を終わらせる目標ができます。
緊張感をもって仕事に取り組みやすく、集中力が高まって業務の効率化が進み、仕事の質も向上するでしょう。また、プライベートな時間が充実すると心身のリフレッシュが図れ、ストレスの軽減にもつながります。
業務過多の解消に役立つITツール
業務過多の解消には、ITツールの活用が非常に効果的です。負担が大きい業務の種類に適した自動化ツールやタスク管理ツールを導入すれば、業務の効率化を図れるでしょう。
以下では、業務過多の解消に役立つITツールを6つ紹介します。
タスク・プロジェクトの共有・管理
タスクやプロジェクトの共有・管理には「Stock」と「Microsoft Planner」がおすすめです。「Stock」はシンプルかつ使いやすいのが特徴で、社内の情報を一元管理してタスクの整理と進捗管理を簡単に行えます。
「Microsoft Planner」は、タスクの割り当てや進捗状況の管理が容易で、Microsoft Teamsと連携すれば円滑なコミュニケーションも可能です。
Stock(ストック)|最もシンプルな情報ストックツール
Microsoft Planner
ナレッジ共有・ビジネスチャット(情報共有)
ナレッジ共有やビジネスチャットにおすすめのツールとして「Slack」と「Qast」が挙げられます。「Slack」はリアルタイムでの情報共有が可能で、外部サービスとの連携も容易なビジネスチャットツールです。
「Qast」は社内専用のWikiと掲示板でのナレッジを一元管理し、質問や回答を共有することで情報の属人化を防ぎます。これらのツールを活用すれば、コミュニケーションが円滑になり、業務の効率化と負担軽減が期待できるでしょう。
Slack|ニーズに応えるプロダクティビティプラットフォーム
Qast|ナレッジプラットフォーム
会議・打合せツール
会議や打合せの効率化には、「Zoom」と「Microsoft Teams」が有効です。「Zoom」は高品質な音声・映像と簡単な操作性により、参加者同士の円滑なコミュニケーションを実現します。社内だけでなく、外部との会議にも適したツールです。
「Microsoft Teams」は、Microsoft 365との連携により、ファイルの共有や共同編集が容易にできます。会議中にも編集できるため、リモートワークでもスムーズに会議を進行できるでしょう。
あらゆるデバイスからの対面ミーティング – Zoom
ビデオ会議、ミーティング、通話 | Microsoft Teams
ファイル共有・オンラインストレージ
ファイル共有やオンラインストレージを活用するなら、「Box」と「Dropbox」がおすすめです。企業向けに設計された「Box」は、高度なセキュリティ機能や権限管理が特徴です。大容量のファイルも簡単に共有でき、チーム全体はもちろん、社内外でのコラボレーションを支援します。
「Dropbox」は使いやすさと柔軟性が魅力で、さまざまなデバイスからアクセス可能なストレージです。リアルタイムでのファイル共有や、バックアップ機能が充実しています。
Box|ドキュメント、写真、ファイルを保護するクラウドストレージ
Dropbox|クラウド ストレージとファイル ストレージ
会計・契約の電子化
正確性が重要で業務への負担が大きくなりがちな会計や契約業務の電子化は、業務過多の解消に非常に効果的です。「クラウドサイン」は、契約書の作成から締結、保管までを一元管理できる電子契約サービスで、ペーパーレス化により業務効率が大幅に向上します。
「マネーフォワード クラウド会計」は、会計業務の自動化と経理作業の効率化を支援します。銀行口座やクレジットカードの連携により、取引明細の自動取得や自動仕訳が可能です。時間と労力を節約しつつも手作業によるミスが減り、正確な会計処理が迅速に行えるでしょう。リアルタイムでのデータ確認も可能なため、経営判断も迅速に行えます。
RPAツール(事務作業の自動化)
事務作業を自動化するRPAツールなら、「UiPath」と「WinActor」がおすすめです。
「UiPath」は、自動化プロジェクトの全体管理やタスクの効率化を支援するプラットフォームです。プロセスやタスクの改善点を見つけ、自動化の実行状況を分析できます。
「WinActor」はNTTグループが開発した純国産のRPAツールで、プログラミングの知識がなくても直感的に操作できるのが特徴です。日本企業特有の業務プロセスへの対応力も高く、サポートやフォローも充実しています。
UiPath
WinActor® | 業務効率を劇的にカイゼンできる純国産RPAツール
業務過多の対策には業務のマニュアル化やITツールの活用もおすすめ
業務過多は、社員や労働者の心身に大きな負担をかけ、生産性の低下やミスの増加、さらには退職・休職といった深刻な問題を引き起こします。企業側は人材確保や業務の再配分、目標やノルマの見直し、業務の効率化などを通じて解決策を講じることが重要です。
一方で、社員側も業務のマニュアル化や上司への相談、整理整頓などの対策を講じることで、業務過多の状態を改善できます。また適切なITツールを活用することで、効率的な業務運営の実現が可能になります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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