• 更新日 : 2023年10月20日

デジタルデバイドとは?意味や企業にもたらす問題点、解決策を解説

デジタルデバイドとは、インターネットやパソコンを利用できる人とそうでない人の間に起こる情報格差です。デジタルデバイドの種類として、地域間格差や年齢間格差が挙げられます。

本記事では、デジタルデバイドが企業にもたらす影響や世界の取り組みについて解説します。

デジタルデバイドとは?

デジタルデバイド(digital divide)とは、IT技術の恩恵を受けられる人とそうでない人との間で起こる情報格差を意味します。

インターネットが幅広い用途で利用される現代においては、IT技術を利用できなければ、さまざまな弊害を受けてしまいます。たとえば、必要な情報にアクセスできなかったり、仕事を獲得できなかったりといった状況です。

企業としても、IT技術を利用できない社員が増えると生産性向上や業務効率化につながらないため、デジタルデバイドの対策が求められます。

デジタルデバイドの現状

デジタルデバイドの現状として、主に高齢者間で格差が広がっています。

総務省の「デジタル活用における課題」によると、13歳から59歳までのインターネット利用率は9割を超えています。しかし60歳から69歳は84.4%、70歳から79歳は59.4%と年齢層が上がるにつれてインターネット利用率が低下しているのは現状です。

「パソコンやスマートフォンは難しい」「新しい技術に慣れない」ことが原因で、デジタルデバイドが加速しているのです。

参考:総務省「デジタル活用における課題」

デジタルデバイドの主な種類

デジタルデバイドには、以下の3種類があります。

  • 地域間デジタルデバイド
  • 個人間・集団間デジタルデバイド
  • 国際間デジタルデバイド

住んでいる地域や経済状況、障害の有無により情報格差が広がります。

それぞれの特徴を理解して、課題を把握しましょう。

地域間デジタルデバイド

地域間デジタルデバイドとは、都市部や地方部などの地域ごとでの情報格差です。

総務省の「令和4年通信利用動向調査の結果」によると、インターネット利用者の割合は、都市部である東京が90.4%、千葉県は89.4%です。それに対し、地方部である岩手県は73.8%、青森県は75.2%でした。都市部と地方部によって、インターネット利用率の差が10%以上開いています。

地域間で情報格差が起こると、最新の情報にアクセスできず、利便性の低下にもつながります。

参考:総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」

個人間・集団間デジタルデバイド

個人間・集団間デジタルデバイドとは、学歴や収入の差や障害により、手に入れられる情報やデジタル機器の利用率に格差が生じることです。

とくに、所得によるデジタルデバイドへの影響が顕著です。総務省の「インターネットの利用状況」では、低収入であると、インターネットの利用率は低下することが示唆されています。

所得が低くなると、パソコンが購入できなかったりネット環境の整備ができなくなったりして、デジタルデバイドが生じるでしょう。

また、身体的な障害により、IT機器の操作ができない状況も起こります。現状を変えるためITに関する学習をしたくても、収入や学歴、障害に左右され、今の生活を変えられなくなる可能性があります。

参考:総務省「インターネットの利用状況」

国際間デジタルデバイド

国際間デジタルデバイドとは、国家の経済・社会的状況によって、個人がもつ情報に影響が出ることです。

たとえば、IT先進国であれば1人1台スマートフォンをもっているが、貧困国ではIT機器をもっている人がいないといった事例が挙げられます。

結果として、生活レベルを上げる情報の取得ができなくなり、IT教育を受けられない事態につながるのです。

デジタルデバイドが生じる原因

デジタルデバイドは、以下のような原因により生じます。

  • デジタル知識が乏しい層の孤立
  • ITスキルの有無による所得格差の拡大
  • セキュリティリスクの発生
  • デジタル化・DX化の遅れ
  • IT人材の流出・国際競争力の低下

デジタルデバイドの原因を理解して、対策を考えましょう。

IT教育の水準・収入の差

デジタルデバイドの原因として、IT教育が追いついていない点は挙げられます。企業や学校でIT教育が行われていなければ、自身のスキルを高められる情報にアクセスできなくなり、専門性の高い職種になれなくなります。

また、収入の差も原因の1つです。高い収入の世帯ほど、高度なIT教育が受けられます。

しかし収入が低ければ、IT機器の購入やデジタル教育を受けられず、就職しにくい状況に陥ります。それにより、収入増加を期待できなくなるでしょう。

IT人材の不足

デジタルデバイドは、IT人材の不足によっても引き起こされます。昨今、デジタル化のニーズは高まっていますが、ITツールを扱える人材が不足しています。

総務省の「ICT人材の不足・偏在」によると「IT人材が大幅に不足している」「やや不足している」と答えた企業は89%いると報告されました。さらに、経済産業省の調査では、2030年までにIT人材が79万人不足すると予想されています。

IT人材の不足により、情報格差を埋めるための政策が取りにくいというデメリットが生じてしまいます。さらに、業務効率化を目的としたシステム開発やインフラの整備ができない状況になるのです。

参考:総務省「ICT人材の不足・偏在」

都市や地方のインフラ整備の差

デジタルデバイドは、インフラ整備の地域格差によっても生じます。

人口が多い地域ではインターネット回線のようなインフラ整備が即座に行われ、少ない地域は遅れる傾向です。

たとえば、昨今話題の5Gは、地域によって整備状況に差があります。デジタルデバイド解消のために、通信環境の整備に力を入れる取り組みが必要です。

年齢による情報格差

年齢による情報格差も、デジタルデバイドの原因です。とくに、高齢者のスマートフォンの利用率は低いことが大半です。

「端末の使い方がわからない」「新たに出てくるIT技術についていけない」などの理由が挙げられます。

実際に大阪市では、スマートフォンでの新型コロナウイルスワクチンの接種予約ができない人がいる事例はありました。

今後は、行政手続きのオンライン化が加速するため、年齢による情報格差は、IT教育により解決すべき問題の1つです。

障害の有無による格差

聴覚や視覚、知的障害があることで、インターネットの活用が難しくなり、デジタルデバイドが生じます。障害により生じる情報格差により、生活に必要な情報が集められなくなり、貧困問題に発展する可能性もあるのです。

例を挙げると「生活に必要な補助金を受け取りたいが、申請方法はわからない」といった点が挙げられます。

障害の有無による情報格差で、個人が活用できる情報にアクセスできなくなるのです。

デジタルデバイドが企業に与える影響、問題点

デジタルデバイドは、企業に対してさまざまな影響を及ぼします。

  • デジタル知識が乏しい層の孤立
  • ITスキルの有無による所得格差の拡大
  • セキュリティリスクの発生
  • デジタル化・DX化の遅れ
  • IT人材の流出・国際競争力の低下

以下の項で詳しく解説します。

デジタル知識が乏しい層の孤立

デジタルデバイドが深刻化すると、インターネットで情報を得られないため、社会的な孤立が生じる可能性はあります。家族や友人、コミュニティなどのつながりがなくなり、幸福度の低下にもつながります。

とくに日本は、世界トップレベルで孤立が多い国であり、デジタルデバイドも原因の1つでしょう。

企業としても、孤立している人を採用できなくなり人手不足が加速するデメリットがあります。また、IT知識のない層には仕事を任せられなくなり、社内で孤立する人が増える可能性もあるのです。

ITスキルの有無による所得格差の拡大

ITスキルがないことで、所得格差が拡大する可能性も考えられます。

経済産業省の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、IT関連産業の中堅人材の平均年収は576万円でした。日本の平均年収の443万円に比べて100万円以上高い傾向にあります。しかし、ITスキルがなければ高年収が見込めません。

企業としても、ビジネスを展開する際にITスキルをもっている人材がいなければ、売上向上につなげにくいデメリットが生じます。そのため、IT人材を育てる仕組みづくりが必要となるでしょう。

参考:経済産業省「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」

セキュリティリスクの発生

デジタルデバイドによりIT知識が少ない層が増えると、基本的なセキュリティ対策を知らない人が増えてしまいます。それにより、セキュリティリスクを防げず、重大なトラブルを引き起こす可能性が高いです。

具体的には、パスワードを使い回したり、マルウェアが入っているメールを開いたりといった事態が考えられます。

セキュリティ対策が取れない人材を抱えると、顧客データや企業情報の流失につながります。企業のイメージ低下を防ぐためにも、情報格差を解消し社員のセキュリティ知識向上する取り組みが必要です。

デジタル化・DX化の遅れ

デジタルデバイドにより、社内のデジタル化やDX化に遅れが生じてしまいます。

業務効率化のためにDX化したいと考えていても、社員がITスキルをもっていなければ対応が難しくなります。システム開発やAI導入をしたくても、対応できる社員がいなければ、DX化はできません。

IT機器を知らない層が増えることにより、社員が積極的に行動せず遅れる可能性もあります。

デジタルデバイドは、企業の生産性向上や業務効率化にも影響を及ぼすため注意が必要です。

IT人材の流出・国際競争力の低下

デジタルデバイドにより、IT環境が整わなくなると、優秀なIT人材の流出につながります。

優秀な人材は、より高度な専門スキルを身につけられ、ITスキルを活かせる環境を求める傾向にあるためです。日本国内のIT企業に転職したり海外のIT先進国に移住したりするといった対応が考えられるでしょう。

優秀な人材が離れてしまい、自社の生産性や売上低下につながる可能性もあるため、デジタルデバイドを解消する対応が必要です。

デジタルデバイドの解消に向けた解決策

デジタルデバイドを解消するためには、以下のような解決策が有効です。

  • ITスキルを養う教育の推進
  • IT知識に精通した人材の確保・採用
  • 企業によるテレワークの支援

企業ができる対策について、詳しく解説します。

ITスキルを養う教育の推進

企業は、デジタルデバイドを解消するために、社員のITスキルを高める教育が欠かせません。

具体的には、基本的なPCの操作やITツールの利用、プログラミング教育が挙げられます。このようなIT教育は時間がかかることは多く、早めに導入するのが望ましいでしょう。

具体的な事例として、ダイキン株式会社では、AIを活用できる人材を育成するための講座を開講しています。

今後多くの企業が導入するAIを使える人材を増やすことで、手がけられる事業が広がり自社の利益にもつながるでしょう。

IT知識に精通した人材の確保・採用

デジタルデバイド解消のために、IT知識に精通した人材の確保が求められます。

IT技術が進んだ現代において、競合他社に勝ち安定的な売上を出すためには、最新のデジタル技術やITの進歩に対応できる人材が必要です。しかし、多くの企業でIT人材は不足しており、積極的に採用していく姿勢が重要です。

求人サイトや転職エージェントを活用して、IT人材を採用する対応が求められます。

企業によるテレワークの支援

デジタルデバイドを解消するためには、テレワークの支援も重要です。テレワークを導入することにより、都市部だけでなく、地方部からも高度なITスキルをもった人材を確保できます。

顧客との打ち合わせや社内での会議など、オンラインで打ち合わせ可能であり、業務効率化にもつながるでしょう。

国や自治体、世界のデジタルデバイド対策

本項では、以下の観点からデジタルデバイド対策を解説します。

  • 国の対策
  • 自治体の対策
  • 世界の対策

デジタルデバイドを解消するために、IT教育やインフラの整備といったさまざまな対策が行われています。それぞれの対策を理解して、自社の取り組みに活かしましょう。

国の対策

総務省では、高齢者のようなIT機器活用に不安を抱いている方の解消に向けて、スマートフォンで行政手続きを行う方法に関する講習会「デジタル活用支援推進事業」を開講しています。

これにより、デジタル機器が活用できずに、弊害を受けることを防げるようになります。

高齢者がIT技術を身に付けるとシニア採用も可能になり、人材不足を解消する観点からも積極的に教えていく姿勢が求められるでしょう。

自治体の対策

各自治体では、IT技術を教えるためにさまざまな取り組みを行っています。

福岡県北九州市では、障害をもっている人にパソコンの利用方法を教える「障害者パソコンサポーター」を開講しました。パソコンの操作に支援が必要で外出が困難な人に向けて講座を開いています。

これにより、障害をもっている人でもIT技術を身に付けられ、就職が可能になります。

世界の対策

世界でもデジタルデバイドの対策がとられています。

具体事例として中国では、農村部と都市部の「同一ネットワーク同一速度」を実現しました。地域によって、ネットワークの速度に差がなくなり、必要なときに求めている情報にアクセスできます。

さらに、モバイルネットワーク通信料の平均料金を95%以上引き下げています。中国は、どのような経済状況の人でも、パソコンやネットワークを利用できる環境を整えている状況です。

企業はデジタルデバイドを解消する取り組みが必要

デジタルデバイドとは、情報技術を使える人とそうでない人の間で生じる情報格差です。

デジタルデバイドの加速により、IT人材が不足したりセキュリティに対するリスクが向上したりするデメリットが生じます。

デジタルデバイドを解消するためには、高度なIT知識をもった人材を採用する取り組みが欠かせません。

企業や自治体、世界各国で行われているデジタルデバイド対策を知り、自社のIT技術の格差を解消しましょう。


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