• 更新日 : 2024年9月11日

ファシリテーターが上手い人とは?特徴や行動例、上達するコツを解説

ファシリテーターに向き不向きはありますが、ファシリテーターに必要な資質の全てを最初から備えている人はほぼいません。ファシリテーターが苦手な人でも、上手い人の特徴を真似ながら努力を積み重ねていけば、コツをつかんで上手くなる可能性が高まるのです。

そこで本記事では、ファシリテーターが上手い人の特徴や行動例、上達するコツについて解説します。

ファシリテーターとは?

ファシリテーター(facilitator)とは、中立的な立場で参加者の発言を促し、会議の成果が実り多いものになるよう口添えする人のことです。ファシリテーターは、目的を持って話し合う会議において、物事が前に進むように働きかけるファシリテーション(facilitation)の役割を果たします。

主な役割は、次のとおりです。

  • 会議の目的やゴールを共有する
  • 意見交換しやすい開かれた議論の場を形成する
  • 会議の時間配分を管理する
  • 参加者の発言や主張を適切に整理する
  • 合意を形成する

具体的な仕事内容は、発言者が偏らないように配慮しながら個々に発言を促し、多様な意見を整理して要点をまとめつつ議論を広げ、合意形成を目指すことです。 ここでは、ファシリテーターの必要性や司会との違いについて見ていきましょう。

ファシリテーターはなぜ必要か

ファシリテーターが必要とされる理由は、ビジネス上の会議において参加者が「腹落ち」する必要性が従前より増したからです。

組織としての意思決定力や課題解決力を向上させるためには、人を動かす原動力となる腹落ちが重要になります。会議の流れや結論が特定の参加者に影響されたり、上下関係などが原因でアイデアを持つ人が発言できなかったりすると、自ら主体的に動いてくれる人を増やすことは不可能です。

近年では政府が推進するDXや働き方改革、サイバーセキュリティや気候変動に関連した情報開示などの新しい難題に、企業は全社をあげてチャレンジする必要があります。一方的な指示だけでは解決できない課題が多くある中、経営陣のリーダーシップのもと、部署の垣根を超えて協力しながら解決にあたらなくてはなりません。

価値観の異なる部署や立場を超え、知恵ややる気を引き出すためにも、参加者の想いや実務上の懸念を調整しながら会議を進めるファシリテーターが必要とされているのです。

司会との違い

ファシリテーターと司会は、スムーズに会議を進行する点では共通していますが、求められる役割が異なります。

司会者の役割は、場を円滑に進行させる役割がメインです。ファシリテーターのように、場を観察しながら適切に介入することは求められていません。

一方、ファシリテーターは参加者が本来の目的・目標からブレずに建設的な話し合いができるように、支援する役割を担っています。

ファシリテーターが上手い人の行動例

ここでは、ファシリテーターが上手い人の行動例を見ていきましょう。

アジェンダの作成と共有

ファシリテーターが上手い人は、会議の質を向上させるためにアジェンダを作成し、事前共有を徹底させていますアジェンダの中で会議の目的やゴール、全体の流れを明確にして、余裕を持って共有することが会議を成功させるコツです。

時間的な余裕を持って共有されていれば、アジェンダをもとに参加者は解決方法を考えたり、関連資料を読み込んだりして、万全の態勢で会議に備えられます。

時間の管理

ファシリテーターが上手い人は、限られた時間内に会議を円滑に進行するスキルを持ち合わせています。会議の目的を達成するためには、適切な時間配分を行うことで効果的に議論を進め、参加者のモチベーションを維持することが重要です。事前におおまかなタイムスケジュールを設定しておくことで、スムーズに会議を進行できます。

場の雰囲気作り

ファシリテーターが上手い人は、誰もが安心して発言できる場の雰囲気作りに取り組んでいます。会議前には挨拶など参加者への声がけを行い、会議中は感謝の言葉を交えながら堂々と場を進行させ、威圧的にならないように注意を欠かしません。

意見の引き出し

ファシリテーターが上手い人は、より質の高い議論を求めて、部署や立場の異なる参加者全員の意見を引き出します。参加者が能力の高さを十分に発揮できるように、質問の方法や発言の促し方を工夫し、萎縮することなく発言できる環境を整えています。

意見の整理と共有

ファシリテーターが上手い人は、議論を進めながら参加者の意見を整理し、会議の成果をまとめ上げて共有します。参加者の意見を整理し共有することで、参加者はプロジェクトの方向性を理解し、共通認識を持ちながらスムーズに次のステップへ進めるのです。

次回会議に向けたフィードバックの収集

ファシリテーターが上手い人は、参加者からのフィードバックを受け入れて、会議を改善しています。フィードバックを収集する際には、会議の終了後に参加者に用紙を配布したり、オンラインツールを使用したりするとよいでしょう。フィードバック収集後に内容の分析を行い、改善案を実施するなどしてPDCAサイクルを回すようにしてください。

ファシリテーターが上手い人の特徴

ここでは、ファシリテーターが上手い人の特徴について見ていきましょう。

会議のゴール設定をしている

ファシリテーターが上手い人は、会議が始まる前に会議の目的やゴール設定を明確に行います。会議を開催する目的や議題について参加者の理解が不足していると、議論の方向性が本来の主旨から逸れがちだからです。

各会議の時間配分を決めている

ファシリテーターが上手い人は、定められた時間内で効果的に結論を出せるように、時間配分を決めておきます。会議の目的の共有に〇分、まとめに〇分など、各ステップの時間配分を決めず流れに任せていると、発言が多くなり収集がつかなくなるからです。

発言しやすい雰囲気を作れる

ファシリテーターが上手い人は、発言者に敬意を払いながら、誰もが発言しやすい雰囲気を作ります。役職者など企業の上層部が出席する会議では、参加者は発言を躊躇しがちです。そこでファシリテーターは、場の空気を和ませたり、異なる意見を歓迎する姿勢を見せたりする必要があります。

分け隔てなく対応できる

ファシリテーターが上手い人は、人物や意見に対して分け隔てなく対応でき、参加者から信頼されています。参加者の意見を平等に聞いたり、参加者全員に考えさせる時間を作ったりして場の連帯を醸成し、会議の成果を高めているのです。

高い観察力を持っている

ファシリテーターが上手い人は、高い観察力を生かして、参加者の貢献を最大化しています。対立を防ぎ適切に対応するためには参加者の発言、感情や思考を緻密に観察した上で、グループのダイナミクスを理解する必要があるからです。

議論の整理と結論をまとめる

ファシリテーターが上手い人は、適切に議論の整理をした上で結論をまとめます。結論を誤った方向に導かないためにも、発言によって得られたアイデアや情報を箇条書きや図解などで可視化して活かすことが重要です。

ファシリテーターが上手い人がいるメリット

ファシリテーションが上手い人がいると、互いが尊重し合える場が確保されるために、会議における参加者の心理的安全性が高まります。ここでは、ファシリテーションが上手い人材がいることのメリットについて見ていきましょう。

時間管理が効率良くできる

議論を整理するファシリテーターがいると、会議の時間管理が効率良く進み、結果として時間短縮につながるメリットがあります。分け隔てなく参加者全員の意見を尊重しながら傾聴する姿勢は、会議への参加意欲を高めることから、限られた時間内に参加者が腹落ちする結論を導きやすくなります。

議論が適切に整理される

本題に沿った議論を促すファシリテーターの存在は、会議の迷走を防ぎます。議論の流れを適切に整理することによって、有意義な場が形成されるために会議の無駄が減り、参加者の発想が広がりやすくなります。

参加者のモチベーションが向上する

会議で発言が脱線したり論点がズレたりした際に、適切に軌道修正するファシリテーターがいると、ゴールが明確になり参加者のモチベーションが向上します。時間が長いにもかかわらず、何も生まれない会議は生産性が低く、参加意欲が低下する原因になります。

新しいアイデアが生まれる

ファシリテーターの存在によって安心感が高まり、 議論が活発に行われるようになれば、新しいアイデアが生まれやすくなります。参加者全員で課題について考えたり意見交換をしたりすれば、新しいアイデアはもちろん、今まで気づかなかった課題も見つかりやすくなるでしょう。

ファシリテーターが上手い人になるには?

ファシリテーターが上手い人は、場の連帯を醸成し、参加者全員が安心して話し合いに参加できる環境を作り出す能力に長けています。ここでは、ファシリテーターとしてのスキルを向上させる方法について見ていきましょう。

会議の事前準備を十分に行う

まず事前準備として、これから開催する会議のスタートとゴールを決めます。会議の最終ゴールは、参加者間での合意形成です。そのため合意形成までの行程を考えると、イメージがしやすいでしょう。

合意形成のイメージは、次のとおりです。

  1. 特定の議論をこの場でする理由は何か
  2. なぜアクションが必要なのか
  3. 課題解決のためにどのようなアクションが必要か
  4. 合意したアクションプランを、誰が·いつまでに·何をするのか

スタートとゴールを設定することで、会議の進行方法、所要時間、参加者の選定や合意形成までの流れを事前に把握できます。

会議の目的と時間配分を把握する

当日の会議を効率化するためにも、アジェンダを作成し会議の目的と時間配分を把握・共有するようにします。

アジェンダに記載する内容は、会議の目的や日時・場所のほか、議題ごとにタイムスケジュールを設定するなど当日の流れがわかる情報です。会議の参加者全員が会議内容や当日の流れを把握できるよう工夫しましょう。

フラットな立場で会議に参加する

ファシリテーターは、議論が偏った方向に流れないように配慮しながら、フラットな立場で会議に参加する必要があります。それぞれの意見に対して、分け隔てなく良いところを評価したり疑問を投げかけたりして、参加者全体でより良い成果を作り上げていくように進行しましょう。

議論の状況をわかりやすく伝える

ビジネス会議で議論を行う理由は、適切な意思決定を行うためです。 誤った意思決定をしないためにも、ファシリテーターは議論の状況を参加者にわかりやすく伝える「論理的思考力(ロジカルシンキング)」を高めなくてはなりません。論理的思考力は簡単に言えば、「複雑な物事や情報を的確に分類し考える能力」のことです。

論理的思考力は、意識することで鍛えられます。具体的には日頃の会話においてわかりやすい言葉を選んで話すようにしたり、論理的思考力の基本を押さえた上で、資料作成の際などに情報のインプット·取捨選択·アウトプットの練習を行ったりしてみましょう。

上手なファシリテーターの育成方法

ここでは、自身や企業ができるスキルの向上方法や学習方法について見ていきましょう。

研修やワークショップの開催

ファシリテーターがどれだけ会議に貢献できたかは、独学では判断しにくいため、コツをつかむにあたっては専門家から直接学べる機会を設けると効果的です。仲間と共に学ぶことで、スキルを習得しやすくなります。

ロールプレイやシミュレーション

参加者が与えられた役割になりきってロールプレイやシミュレーションを行うことで、ファシリテーターを体感するのも効果的な育成方法です。ファシリテーター役1名のほか、他の参加者には「マイナス思考で発言」「前向きな発言」「分析をもとに発言」「思いつきで発言」などの特徴を持つ役割を与えた上で、複数の議題を使って演習を繰り返します。

フィードバックを基にした改善

ファシリテーターが上手い人は、フィードバックを受けることに苦手意識がありません。スキル向上を目的に、会議の参加者からのフィードバックを積極的に取り入れ、自身の改善点を見つけていくと良いでしょう。

経験を積み重ねる

ファシリテーターに求められるスキルには複合的な要素があり、短期間で習得できるものではありません。そこでファシリテーションを長期的な観点で実践し、場をまとめる経験を積み重ねることが重要です。

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参加者の意欲を高め、安心して発言できる場を提供しよう

ファシリテーターは中立的な立場であり、特定の誰かに肩入れすることはありません。安心して発言できる場を作り、議論を効果的に進めて意見をまとめ、会議の目的を達成する役割を果たします。

会議の参加者からスムーズに意見を引き出すためにも、事前のアジェンダ作成・共有や当日の時間配分にも注意しましょう。議論が目的から逸脱したときは、速やかに軌道修正しゴールへ再度コミットすることで、参加者のモチベーションを高められます。

事前準備を丁寧に行い、活発な議論が交わされる有意義な会議を行えるようにしましょう。


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