- 更新日 : 2023年10月12日
デジタル化とは?意味やDXとの違い、実現方法を簡単に解説
簡単にいうとデジタル化とは、アナログな業務をデジタル技術で変えることです。こちらの記事では、デジタル化の意味や類似する言葉との違い、必要な理由などを解説しています。文中では、日本のデジタル化の後れについて総務省の資料をもとにご紹介します。また、デジタル化の進め方や具体例なども説明しているので参考にしてください。
デジタル化とは?
デジタル化とは、デジタル技術やデータを活用した新しいビジネス価値の構築につながります。デジタル化によるビジネス価値の構築の例として、以下のような行為が挙げられます。
- 紙の帳票類をペーパーレス化により廃止する
- 印鑑による署名押印を電子署名にする
- 紙媒体の社内報やマニュアルなどをクラウド上で共有する
- リモートワークにWebビデオ会議システムを活用する
簡単に言い換えると、デジタル化とは、アナログな業務をデジタル技術で変えることです。デジタル化は、「IT化」や「電子化」といった言葉と似ているため、その違いを正しく理解することが重要です。その点も踏まえて、ここでは言葉の違いと意味を解説しましょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)との違い
デジタル化と意味が混同してしまう言葉として、DXがあります。DXは、デジタル技術で変革する取り組みのため、デジタル化と同じように捉えるかもしれません。しかし、DXとデジタル化は違います。
DXは、企業によるデジタル技術を活用したビジネスモデルの変革です。デジタル化は、アナログからデジタルへ変える取り組みを表します。
また、DXはデジタル化も含めた企業が取り組む大きな事業活動です。総務省によると、デジタル化は、DXの概念となるデジタイゼーションのことと定義されています。
デジタイゼーション | 部分的なデジタル化:アナログな部分をデジタル形式に変換すること |
---|---|
デジタライゼーション | プロセス全体のデジタル化:企業のビジネスモデル全体の変革で、新しい価値を生み出すこと |
DX | 企業がビジネス環境の変化に対応する目的でデジタル技術などを活用し、顧客や市場ニーズに応えた製品やサービス、ビジネスモデルを創出することであり、企業全体の変革 |
出典:総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負 報告書」
DXは、デジタイゼーションだけではなく、デジタライゼーションも含めて業界全体に影響を与えて競争優位性の確立に取り組むことです。つまり、デジタル化はDXの一部要素として考えられます。
電子化との違い
電子化は、デジタル化にも当てはまる一つの手段です。例えば、紙媒体の電子化や紙の請求書を電子請求することなどが該当します。
デジタル化は、アナログの業務をデジタル技術に変換することです。一方の電子化は、デジタル化で活用されるデジタル技術の一つの手段として考えられます。
IT化との違い
IT(情報技術)化とデジタル化の場合も、電子化と同じ違いがあります。IT化は、アナログ業務のデジタル化に欠かせない情報技術の活用です。そのため、デジタル化を進める手段の一つとして考えられます。
例えば、アナログ業務として行っていた紙の伝票処理をデジタル技術で自動化するには、デジタルデータとして抽出する必要があります。紙の伝票に記載された情報をデジタルデータとして抽出するには、スキャンしてOCR(光学式文字読取装置)でテキストデータに変換します。変換したテキストデータは、インターネットやツールによってオンラインで保存・共有が可能です。
IT化は、デジタル化を実現するためにインターネットなどの情報技術を活用することです。これはデジタル化に欠かせない要素です。
ビジネスでデジタル化が必要な理由
ビジネスにおいてデジタル化の重要性やメリットは増しています。ここではデジタル化が必要な理由について詳しく解説していきます。
日本のデジタル競争力が低下傾向
ビジネスにおいてデジタル化を進める理由は、日本のデジタル競争力の低下傾向も要因として考えられます。国際経営開発研究所(IMD)がランク付けを行っている「2020年世界デジタル競争力ランキング」によると、2020年の時点で日本は世界63カ国中27位でした。
2020年世界デジタル競争力ランキング |
---|
1位:アメリカ 2位:シンガポール 3位:デンマーク 4位:スウェーデン 5位:香港 6位:スイス 7位:オランダ 8位:韓国 9位:ノルウェー 10位:フィンランド ・ ・ ・ 27位:日本 |
出典:総務省「令和3年情報通信白書」のデータを参考に作成
紹介したデジタル競争力ランキングでは、「知識」と「技術」、「将来への備え」などの要因を基準にして国際経営開発研究所がランク付けしています。
日本のデジタル競争力は、前年の2019年より4位下がっているため、低下傾向になっています。特に日本は「技術」や「将来への備え」といった要因でのスコアが低く、これがランキングの低下につながっています。
日本では、将来的なデジタル化への備えに対して、企業の意識向上が求められます。
データ参照:総務省「令和3年情報通信白書」
日本におけるデジタル化の導入水準を上げるために、中小企業庁では「IT導入補助金2023」などの補助金の申請を募集しています。中でも会計ソフトや受発注ソフトなどの導入費用やハードウェア導入費用まで支援が期待できる「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」も定期的に募集しています。
データ参照:中小企業庁
ペーパーレスによるコスト削減
デジタル化では、ペーパーレスによるコスト削減を実現します。ペーパーレスは、紙からデジタルデータへの移行により、書類の保管場所が削減できます。また、デジタルデータとして保管や提出をすることで、人が行っていた保管や提出業務が不要です。
ペーパーレスは、紙の保管場所や人による作業コストなどを削減できます。また、紙を使わなくなることから、紙の資源コストや印刷によるインクコストの削減も可能です。デジタル化は、ペーパーレスによるコスト削減メリットを得られるため、導入の必要性があります。
業務の効率化や生産性の向上
デジタル化は、業務効率化を実現します。これにより、結果的に生産性の向上も期待できるでしょう。
手作業で行っていた業務をデジタル技術に置き換えることで、業務の自動化にもつながります。自動化された業務は、人の手を介さずシステムで稼働するため、効率化が可能です。その結果、長時間労働や残業時間の削減が可能です。
デジタル化は、あらゆる業務の可視化が期待できるので、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」となる部分を削減し、生産性向上にも役立ちます。
多様な働き方の実現
厚生労働省によると、今日の日本では以下の課題を抱えているため、国家レベルで働き方改革が進められている状況です。
- 少子高齢化
- 労働人口減少
- 企業の人材不足
働き方改革は、長時間労働是正や非正規雇用の一掃などを目的に、子育てや介護が理由で働けない方の働き方を創出する法制度の制定(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)です。
働き方改革により副業や兼業などを認める企業が増えています。経済団体連合会の調査によると、社員の社外送出(副業・兼業)を認めている企業は、急激に増加している傾向です。
- 2019年:46.0%
- 2020年:50.6%
- 2021年:60.9%
- 2022年:83.9%(66.7%が認めている+17.2%が認める予定)
出典:一般社団法人日本経済団体連合会「副業・兼業に関するアンケート調査結果」
多様な働き方を可能にする手段として、コロナ禍で増えたリモートワークの導入が考えられます。リモートワークの導入には、デジタル技術が不可欠です。導入することで次のメリットが考えられます。
- 外出先で資料が必要な場合に会社に戻らなくても資料を入手できる
- 資料の作成や共有なども遠隔でできる
リモートワークでは、会議や商談などもビデオ会議システムを利用すればオンラインで開催できます。そのため、移動時間や場所の準備なども不要です。
リモートワークの導入でデジタル化が進めば、働き方の幅が広がります。その結果、子育て中や親の介護などで出社できない方も働けるようになるでしょう。
デジタル化の進め方・実現方法
デジタル化は、やみくもにデジタル技術を導入するだけではうまくいきません。ここでは、成果の出やすいデジタル化の進め方や実現方法について解説します。
ルーティン作業に含まれるアナログ業務の洗い出し
デジタル化を進めるには、現状の課題を洗い出すことが必要です。課題は、既存のアナログ業務から検出します。アナログのままで続けている業務をデジタル技術で解決するには、現状の理解が欠かせません。ルーティン作業に含まれるアナログ業務は、デジタル化しやすい業務と考えられるでしょう。
課題点をピックアップする
現状の把握では、課題点をいくつかピックアップします。ピックアップした課題にある問題点は、デジタル化する必要があるか、もしくは不要かの検討が必要です。具体的な課題と実現したい状態から、デジタル化する内容を明確にします。ここで注意すべき点は、全ての業務をデジタル化することであり、既存業務の難易度を高くしてしまうことです。
全てのデジタル化を基準に考えるのではなく、アナログからデジタルに変えることで明確に業務効率が上がる部分的な取り組みから始めましょう。
システムやツールの導入を検討する
デジタル化を実行するには、システムやツールの導入が必要です。導入には、デジタル化を実現するツールの選定から始めます。選定では、「自社のみで対応が可能なシステムなのか」または、「外部ベンダーに依頼する必要があるのか」などを基準に判断します。
デジタルツールの導入で注意すべき点は、既存社員のITリテラシーへの配慮です。社員のITリテラシーが低い状態でシステムやツールを導入した場合、使いこなせず本来の機能が発揮できないことも考えられます。
デジタルツールは、操作性や既存システムとの連動性などを社員の能力に応じて選定することが大切です。
導入効果の検証と改善
ツールやシステムの導入は、実際の業務で検証する必要があります。検証と改善の繰り返しで、業務との適合性が高められるでしょう。
検証と改善では、社員へのヒアリングも実施後の効果測定として有効です。導入後は、ヒアリングや実施データなどの定期的な効果測定により、改善点を検出し使いやすく調整します。この検証と改善を繰り返すことが、システムやツールの精度向上につながるでしょう。
デジタル化の具体例
デジタル化は、実際のビジネス現場においてあらゆる場面で使われています。ここでは、具体的な活用例をいくつかご紹介しましょう。
契約書や請求書類などのデジタル化
契約書や請求書などのデジタル化では、電子契約が活用できます。紙で行う契約業務の場合は、大量の紙の書類から目的の契約書を検出やファイリング、保存、書庫への移動などの手間がかかります。また、契約時においても契約日時や場所などを擦り合わせて、署名押印する必要があるでしょう。
それらの手間や時間を削減できる方法が電子契約です。クラウド上で交わす電子契約サービスは、契約する際の時間や場所を相手と擦り合わせる必要がありません。クラウド上に用意された契約書を確認して電子署名するだけとなります。
また、請求書類などのデジタル化に関しても、クラウド上に保管することでリモートワークの効率化を高めることができます。場所や時間を問わず請求書の発行や保管を行えることは、多様な働き方にも役立つでしょう。
会議やコミュニケーションのデジタル化
会議のデジタル化は、オンラインで開催するビデオ会議システムが有効です。コミュニケーションのデジタル化は、ビジネスチャットの活用が考えられ、いずれも利用に適した状況があります。
時系列で相手とのやり取りをテキストに残しておきたい場合は、ビジネスチャットが効果的です。相手の反応を視覚的に察知するリアルタイムな打ち合わせの場合は、オンラインで実行するビデオ会議システムが適しています。
会議やコミュニケーションをデジタルツールで実行することは、場所の確保や移動などのコスト削減につながるでしょう。また、リアルタイムで行う会議や打ち合わせよりも時間短縮にもなるため、1日に対応できる商談件数を増やすことが可能です。
プロジェクトの進捗管理やタスク管理のデジタル化
デジタル化の強みの一つは、プロジェクトの進捗管理やタスク管理などの業務を効率化することではないでしょうか。大規模なプロジェクトや大量のタスクを管理する場合は、データ量の多さにより全体が把握できなくなることも考えられます。
プロジェクト管理では、スケジュールや案件、進捗状況などの情報を素早く確認することが必要です。その解決策となるプロジェクト管理ツールであれば、案件やタスクの進捗状況や優先度などを一目でわかりやすく表示できます。
プロジェクトの進捗管理やタスク管理などの情報は、一元管理することにより社内全体で共有が可能です。それにより、迅速な情報入手を実現できます。
名刺に記載されたデータのデジタル化
名刺に記載されたデータのデジタル化は、オンライン上の一元管理により、手作業にかかるコストを削減できます。名刺管理ツールを活用すれば、名刺に記載されている名前や企業名、所属部署、連絡先などのオンライン保存が可能です。
名刺管理ツールを使用すれば、アナログ管理のような物質的な保管は必要ありません。名刺記載の情報をオンライン上で保存できるため、社内の一元管理にも役立ちます。名刺交換した相手の必要な情報を検出する手間が省けます。
また、名刺管理のデジタル化は交換した名刺の情報や顧客情報をオンライン上で社内共有できるため、担当者の引き継ぎにかかる負担も軽くなるでしょう。
デジタル化は自社の課題に適した部分的な取り組みから始めよう
デジタル化は、アナログ業務をデジタル技術に変換することであり、IT化や電子化を含めたデジタル技術による業務変革といえます。さらに、デジタル化による物質的な変革と、事業プロセスの変革も合わせた考え方としてDXが存在します。
DXは、デジタル化から生まれる新しい価値の創出を追求します。そのため、日常のアナログ業務一つひとつに対して、デジタル技術へ置き換える考え方が必要です。とはいえ、業務の全てをデジタル化するというわけではありません。
デジタル化は、自社の業務における課題と適合していることが重要です。デジタル技術を導入するには、自社の課題に適した部分的な取り組みから始めましょう。部分的なデジタル化で結果を出せれば、その成功体験が次の導入に役立ちます。まずはスモールスタートで始めてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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