• 作成日 : 2024年10月18日

同意書をペーパーレス化するメリットは?医療業界を例に作り方も解説

同意書をペーパーレス化するには、PDF・Excel・Wordを活用したり、タブレット端末による電子サインや電子契約ツールを活用したりする方法があります。同意書をペーパーレス化することにより、紙代・印刷代などのコストを削減できるほか、紙文書による細々とした管理の負担や手間を軽減できるメリットがあります。この記事では、医療業界を例に同意書をペーパーレス化するメリットや方法を紹介するのでぜひご覧ください。

医療現場における同意書とは?

医療現場における同意書は、患者に提供する医療処置の内容やリスクを患者自身が理解し、かつ患者自らの意思で医療処置に同意することを示す文書です。

同意書は、インフォームドコンセントの観点からも欠かせません。インフォームドコンセント(informed consent)を直訳すると、「状況についてよく説明し、相手の同意を得ること」となります。医療現場におけるインフォームドコンセントには、次の2つの要素が必要です。

  • 医療従事者は、病状や治療内容などについて患者へ十分に説明する
  • 患者は、医療従事者による説明の内容を十分理解し納得した上で治療を受けることに同意する

患者の同意なく患者の体にメスや注射針を刺すなどの行為は本来傷害罪にあたるものの、同意書があればインフォームドコンセントを証明できます。患者が未成年あるいは認知症や意識障害などで本人の意思を確認しにくい場合は、保護者や代理人の同意を得て医療処置を進めます。

医療現場では同意書のペーパーレス化(電子化)が進んでいる

IT技術の進化や普及にともない、医療業界でも同意書を含むさまざまな文書のペーパーレス化が進んでいます。同意書のペーパーレス化による患者側の主なメリットは、「書き損じても修正しやすい」「複数の同意書へ署名する場合の手間を省ける」などです。端末によっては文字の拡大も可能であり、細かい字の読み書きが難しい患者の利便性向上に役立ちます。

同意書をペーパーレス化するメリット

医療従事者の立場から見ると、同意書のペーパーレス化には次のようなメリットがあります。

  • 医療従事者の業務負担が軽減する

紙文書には劣化・破損・紛失などのリスクがあり、またファイリングして保存するための手間やスペースも必要です。ペーパーレス化によってこれらの負担を軽減できる上、検索機能を使ってすぐに必要な情報を探せます。

  • 紙代・印刷代などのコストを削減できる

ペーパーレス化によって、紙代やトナー代などを節約できます。紙文書を患者の自宅などへ送る場合は郵便代がかかりますが、電子メールやタブレットの手渡しなどによって電子同意書を作成すれば郵送コストを節約できます。

  • 紙の同意書をスキャンする時間を削減できる

紙文書をスキャンしてペーパーレス化する方法もありますが、紙文書の管理やスキャニングに手間がかかります。はじめから電子文書を用いることで手間やコストを削減でき、スキャナーやプリンターなどの機器類も必要なくなります。

  • 他の医療システムとデータ連携できる

電子同意書の内容を電子カルテシステムやWeb問診システムなどと連携させることで患者の情報を一元管理でき、情報の確認や更新などにかかる手間を軽減できます。

  • 情報共有がスムーズになる

患者の状況によっては、複数の診療科での情報共有を要する場合が少なくありません。また、近年は多くの医療機関でチーム医療が推進されています。電子同意書やその他の医療情報を早めに共有することで、治療内容やスケジュールなどをスムーズに決定できます。

同意書をはじめとする医療文書のペーパーレス化は、医療機関側の業務効率化だけでなく患者にとっての満足度向上にも役立ちます。

ペーパーレス化した同意書の法的効力を得るには?

紙の同意書は、患者による手書きの署名や押印によって法的文書としての効力が生まれます。電子同意書が法的効力を得るためには、手書きの署名や押印と同等の効力を持つ電子署名が必要です。

電子署名法では、電子署名に必要な条件として「本人が署名したこと、かつ署名後に改ざんされていないこと」を定めています。一定の要件に基づいて本人による電子署名がなされた電子文書は、本人の意思によって作成された文書と見なされます。

出典:e-Gov 法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律」

電子同意書の情報漏洩防止には、公開鍵暗号方式による暗号化が欠かせません。公開鍵暗号方式では、患者が同意書に電子署名する際に秘密鍵を使ってデータを暗号化します。医療機関は暗号化されたデータを受け取り、秘密鍵と対になる公開鍵を使ってデータを復元し同意書の内容を確認します。患者に渡す前と受け取った後で同意書の内容が変わっていなければ、データが改ざんされていないことの証明が可能です。

電子契約の法的有効性を関連する法律と合わせて解説

同意書をペーパーレス化する方法・作り方

同意書をペーパーレス化する方法はいくつかあり、それぞれの方法に合わせてポイントを押さえることで法的効力を発揮できます。同意書をペーパーレス化するための主な方法は、次の通りです。

PDF・Excel・Word

紙文書の原本となるWordやExcelのデータをそのまま、あるいはPDF化して使う方法です。厚生労働省公式サイトから医療機関向けの同意書テンプレートをダウンロードできるほか、次の項目を盛り込みつつ自分で作成することも可能です。

  • 病名、手術名
  • 現在の病状
  • 手術の目的
  • 想定する手術や治療の方法
  • 手術予定日
  • 患者に記入してもらう欄(同意日、本人または代理人の氏名)

PDF・Excel・Wordは手軽な方法の1つではありますが、万が一内容にミスや抜け漏れなどがあると思わぬトラブルにつながる恐れがあります。また、電子ファイルにただ氏名や同意日を入力し電子印鑑を捺してもらうだけでは法的効力は得られません。Excel形式などの同意書に法的効力を持たせるためには、事前に認証機関からデジタルIDを取得しておく必要があります。

参考:厚生労働省「【手術名: 】に関する同意書」

タブレット端末による電子サイン

PDF化した同意書をタブレット端末に表示し、患者にタッチペンなどで手書きしてもらったサインを画像化して電子署名とする方法です。タッチペンによる手書き文字入力はクレジット決済などの際にもよく用いられており、多くの患者にとってなじみ深い方法と言えます。一般的な筆記具と同じ感覚で署名できるため、デジタル機器に不慣れな患者もさほど抵抗なく使えるでしょう。

ただし、電子契約ツールを用いずにタブレット端末上で署名してもらう場合は注意が必要です。電子署名の法的効力をより確実にするため、患者本人の筆跡データや本人確認書類のコピーなどが必要となる場合があります。

電子契約ツール

電子契約ツールの活用によって、同意書をはじめとするさまざまな契約書の作成・署名・管理をクラウド上で完結できます。医療現場に特化したツールや多言語表示が可能なツールも多く、現場の状況に合ったツール選びによって作業効率を向上できます。デジタルID取得や本人確認などの手間を省けることはもちろん、厳重にセキュリティ対策がなされており情報漏洩などの心配が少ない点もメリットです。

電子契約ツールの登録や運用にはいくらかのコストがかかるものの、コストに見合うメリットは十分にあると言えるでしょう。

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同意書をペーパーレス化した活用例

近年は、医療現場に限らず多くの業種でペーパーレス化が進んでいます。次に、医療機関や企業における電子文書の導入例について解説します。

ある医療機関ではもともと複写式の紙を用いて同意書を作成していたものの、複写紙に高いコストがかかっていました。また、同意書のスキャニングや文書保管業者への引き渡しなどに時間がかかることも大きな問題でした。しかし液晶サインタブレットを用いたペーパーレス化によって大幅なコスト削減に成功し、さらに文面の修正や画像挿入なども簡単になったことで、利便性が大幅に向上しています。

また、ある飲食店チェーンでは月に数十から数百人のアルバイトスタッフを採用しています。従来は紙の雇用契約書や機密保持契約書を使ってスタッフ一人ひとりと雇用契約を結んでいましたが、電子契約ツールの導入によって人事担当者の負担を大幅に軽減できました。

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同意書をペーパーレス化して医療現場の負担を軽減しよう

医療現場における同意書とは、患者に対して医療処置の内容やリスクを説明した上で理解してもらい、同意を得たことを示す文書です。同意書をペーパーレス化すると、医療従事者の業務負担が軽減するほか、紙の同意書をスキャンする時間を削減でき、他の医療システムとデータ連携できるといったメリットがあります。ペーパーレス化した同意書の法的効力を得るには、手書きの署名や押印と同等の効力を持つ電子署名が必要です。


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