- 作成日 : 2024年8月2日
ナレッジ化とは?推進するメリットや活用に使えるツールを解説
会社組織が活動をする中で、知識や情報の共有は欠かせません。しかし、日本企業では終身雇用制度によって育まれた暗黙知が中心となっており、情報が共有されずタコツボ化している点が問題となっています。暗黙知を形式知に転換し、個人の知識を組織で共有するために必要になるのが「ナレッジ化」です。
この記事では、ナレッジ化とは何か、またメリットや知識の共有・活用に必要なツールについて解説します。
目次
ナレッジ化とは
ナレッジ化とは、個人が持つ知識や情報を共有して活用できる状態にすることを意味します。「ナレッジ(Knowledge)=知識・知見」という意味があり、新聞や本などから得る知識を指すのが一般的です。
一方、ビジネスにおける社内ナレッジは、「社員に活用されることで価値が生まれる知識」という意味で用いられます。
従業員個人が得た知識や情報は個人ナレッジであり、共有化されていない「暗黙知」です。価値のあるナレッジでも、組織で共有して形式知化しなければうまく活用できません。ナレッジ化は、知識や情報を企業の資産として活用するために欠かせない取り組みです。
ナレッジとノウハウの違い
ナレッジとノウハウは、企業にとって有益な情報である点は共通です。しかし、それぞれに定義があり、知識や情報を得るまでの流れにも違いがあります。
ナレッジとノウハウの違いは、下記の通りです。
ナレッジ |
|
---|---|
ノウハウ |
|
例えば、セミナーや講習会で得た知識や情報は、経験に基づいていないためナレッジに分類されます。現場研修で体験を通して学んだ情報や知恵は、業務ノウハウと表現されます。
ナレッジは文章や図などで共有が可能です。しかし、ノウハウは会得するために体験が必要となるため、共有は難しいと言えます。
ナレッジ化に関連する言葉
ナレッジ化に興味がある方や推進を検討している方は、ビジネスシーンでナレッジ化と関わりが深い用語についても同時に理解を深めておきましょう。
ナレッジ化に関連する言葉を4つ解説します。
ナレッジベース
ナレッジベースとは、知識や情報をデータベース化したものです。
有益な知識や情報を企業内でシェアできるように、データを1か所に集めて目に見える形で蓄積します。知識ベースとも呼ばれ、ナレッジを社内で共有するために欠かせない情報群です。
項目ごとに知識や情報が整理されており、必要なデータの抽出や共有をスムーズに行えます。必要に応じて知識や情報を編集したり、新しい情報を追加したりすることも可能です。
多くの企業がナレッジベースを所有しており、業務効率化や経営戦略に活用しています。情報漏洩のリスクが低いことも特徴です。
ナレッジシェア(ナレッジ共有)
ナレッジシェアは、ナレッジを社内で共有することを意味する言葉です。ナレッジ共有やナレッジコミュニケーションと呼ばれる場合もあります。
知識や情報を共有せずにいると、属人化が起こりやすくなるだけでなく、従業員の退職により外部にナレッジが流出する可能性もあります。優秀な人材だけでなくナレッジまで流出すれば、企業にとって大ダメージです。
人材の流動性が高まる中、ナレッジシェアは情報資産を守るために重要な取り組みと言えるでしょう。
ナレッジワーカー
ナレッジワーカーとは、自身が持つ知識や情報を活用して企業の付加価値を生み出す人材です。マニュアルに沿った単純作業を行う「マニュアルワーカー」の対義語で、専門的知識や情報から価値のある商品やサービスを生み出す人材を意味します。
近年、市場や消費者動向は急速に変化しており、企業の優位性を高めるためにナレッジワーカーの存在が注目されています。ナレッジワーカーには、情報収集力や発想力、問題解決力のほか、ITツールに関する知識も必要です。ナレッジワーカーは、コンサル業やコンテンツ制作業に多く見られます。
ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントは、企業が蓄積したナレッジを業務に有効活用する経営手法です。ナレッジを組織全体で活用するための取り組み全般を、ナレッジマネジメントと呼びます。
ナレッジ化によって業務効率化や新たな付加価値の創出を実現するには、知識や情報をどのように活用するかが重要です。作業内容をマニュアル化して新入社員への教育に活用したり、ナレッジシェアの仕組みを整えて従業員の異動・退職時の引継ぎに活用したり、有効活用する方法はさまざまです。
ナレッジを一元管理して取り組みに活用できるため、業務の質にばらつきが起こる心配もありません。
ナレッジ化を推進するメリット
ナレッジ化の推進は、企業の成長に深く関わる重要な取り組みです。ナレッジ化を推進するにあたり、まずはどのようなメリットが得られるのか把握しておきましょう。
ナレッジ化を推進するメリットを具体的に解説します。
業務を効率化できる
ナレッジ化の推進により、業務の効率化が実現します。業務効率が向上すれば、限られた人員と時間で生産性向上を目指すことも可能です。
ナレッジベースに蓄積された知識や情報を必要に応じて活用できるため、調査や質問にかかる手間と時間を大幅に削減できます。書類のフォーマットを活用することで、請求書や提案資料の作成にかかる時間も短縮できるでしょう。
削減できた時間と労力をほかの業務に使えるようになり、生産性が大幅に向上します。また、トラブルが発生した場合にも、ナレッジを活用して迅速に対応できます。
同じ失敗を繰り返しにくくなる
同じ失敗を繰り返しにくくなることも、ナレッジ化を推進するメリットの1つです。
企業にとって有益な情報は、成功事例だけではありません。失敗事例にはトラブルやミスの原因、対策に関する情報が含まれているため、共有により同じ失敗が起こりにくくなります。
失敗をゼロにすることは難しくても、「なぜミスが起こったのか」「どうすれば回避できたのか」など、学びを活かせば新たな失敗を防ぐことはできます。同じ失敗を繰り返さない仕組みを整えることで、業務効率の向上が期待できるでしょう。
業務の属人化を防げる
ナレッジ化を推進すると、誰でも業務をこなせるようになって属人化を防ぎやすくなります。
1つの業務を特定の従業員が担当していると、業務の知識や技術の差が大きくなります。欠勤や退職などにより特定の従業員が不在になった途端、業務が滞ったり売上が減少したりするケースも少なくありません。
ナレッジ化が実現すると、普段業務を担当している従業員が不在でも知識や情報を共有できるため、業務に支障をきたすことが少なくなります。業務の分散により、残業時間の減少や有給取得率の向上も期待できるでしょう。
新人を素早く戦力にできる
ナレッジ化の推進により、新人を即戦力化できます。人手不足が続く中、新人教育を強化できることは企業にとって大きなメリットです。
業務に関わる知識や情報をまとめて教育ツールとして活用する場合は、下記の内容を含めることがポイントです。
|
必要な知識を短期間で覚えられるため、新人でも効率よく業務をこなせます。指導にあたる従業員の経験やスキルによって、指導内容にムラが出ることもありません。ナレッジを繰り返し活用することで、教育コストの削減にもつながります。
イノベーションを促進できる
ナレッジ化は、イノベーションの促進にも効果的です。
イノベーションは、経済効果が大きく長期的な利益拡大が見込めることが特徴です。労働人口の減少やニーズの多様化などを受けて、多くの企業ではイノベーションの促進に力を入れています。
ナレッジは企業にとって価値のある資産で、競合との差別化や業務効率化など企業成長に大きく影響します。新たなイノベーションを起こすためにも、成功事例や失敗事例にアクセスしやすい環境を作ることが大切です。
過去に頓挫したアイデアも、蓄積された知識や情報がヒントになって再始動する可能性もあるでしょう。
ナレッジ化の推進に重要な「SECIモデル」
SECIモデルは、ナレッジ化の推進に重要なフレームワークです。個人が持つ知識や情報を形式知化して、組織全体で共有するために用いられます。
SECIモデルは、下記の4つのプロセスで構成されています。
共同化プロセス | 共通の体験を通じて個人ナレッジを他者に移転させる |
---|---|
表出化プロセス | 個人ナレッジを文章や図で形式知化する |
結合化プロセス | 形式知化したナレッジとほかの知識を結合させて新たな形式知を創出する |
内面化プロセス | 創出した形式知を学習して習得する |
共同化プロセスを行うには、言語化したナレッジを伝えるための環境が必要です。ランチ会を開催したりフリーアドレス制を導入したり、知識や情報を交換しやすい環境を整えましょう。形式知化するために、会議やミーティングでディスカッションを行うことも大切です。
ナレッジ化を推進するには、継続的にナレッジを循環できる仕組み作りが重要です。4つのプロセスを繰り返すことで、新たな付加価値が生まれてさらなるナレッジ蓄積につながります。ベテラン従業員が持つ表出化しにくいナレッジもあるため、インセンティブを設けるのも1つの方法です。
ナレッジ化に活用できるツール
ナレッジ化を推進するには、ナレッジの収集や検索の効率化を図ることも大切です。ナレッジマネジメントに役立つツールの導入も検討しましょう。
ナレッジマネジメントツールの特徴と具体例を解説します。
社内Wiki
社内Wikiは、自社の情報を集積して共有できるツールです。従業員による記事の追加や編集も可能です。
代表的な社内Wikiツールとして、下記の3つが挙げられます。
さまざまな機能を一元的に活用できるクラウド型ツールです。4段階のアクセス権限が設けられており、共有する内容によって権限を変更できます。
高精度な検索機能が特徴的なクラウド型ツールです。ナレッジ管理に特化しているため、シンプルで操作性に優れています。
リモートワークにも適したオンプレミス型ツールです。テンプレートの種類が豊富で業務効率化にも役立ちます。 |
出典:notion「Wiki、ドキュメント、プロジェクトがつながるコネクテッドワークスペース | Notion (ノーション)」
出典:Atlassian「Confluence | リモートに最適なチームのワークスペース」
Wikiツールには、クラウド型とオンプレミス型があります。特徴だけでなくコスト面やセキュリティ面も比較した上で、自社に適したツールを選びましょう。
ヘルプデスクツール
ヘルプデスクツールは、問い合わせ対応業務を効率化するためのツールです。スムーズに回答が得られるため、業務効率化に役立ちます。
代表的なヘルプデスクツールは、下記の3つです。
問い合わせや対応に関する情報を保管できるツールです。指定したメンバーへの共有ができるほか、検索機能を使って疑問を解消することもできます。
複数のチャネルから寄せられる問い合わせを一元管理できるツールです。自動返信機能やAI要約機能、社内FAQ機能も搭載されており、スピーディーな対応が期待できます。
AIによる業務サポート機能を搭載したツールです。「未対応」「対応完了」などのステータス表示により、対応漏れや二重返信が防げます。 |
出典:株式会社Stock「Stock(ストック)|最もシンプルな情報ストックツール」
出典:Zendesk「Zendesk: 統合型カスタマーサービスソリューション」
出典:株式会社インゲージ「Re:lation(リレーション)|使いやすさNo.1の顧客対応クラウド」
ヘルプデスクツールを選ぶ場合は、機能性だけでなく業務フローとの相性にも注目しましょう。
グループウェア
グループウェアは、社内コミュニケーションツールの1つです。
代表的なグループウェアとして、下記の3つが挙げられます。
Googleが提供するチャット・スケジュール管理など主要な機能を包括したツールです。セキュリティレベルが高く、24時間365日体制のサポートも受けられます。
Microsoftが提供するコミュニケーション機能に優れたツールです。WordやExcelを使い慣れている従業員であれば、スムーズに導入・活用ができます。
株式会社ネオジャパンが提供するコミュニケーションツールです。ワークフロー機能や安否確認機能、スケジュール管理機能も活用できます。 |
出典:Google「Google Workspace: ビジネスアプリとコラボレーションツール」
出典:Microsoft「Microsoft 365 – サブスクリプションで Office アプリを使用」
出典:株式会社ネオジャパン「【公式】desknet’s NEO – グループウェアの決定版」
グループウェアが現場に定着するように、機能性と使いやすさを兼ね備えたツールを選びましょう。
ファイル共有ソフト
ファイル共有ソフトは、大容量のデータのやり取りをスムーズに行うための共有ツールです。
代表的なファイル共有サービスとして、下記の3つが挙げられます。
中小企業から大企業まで利用可能なファイル共有サービスです。拡張ツールを使用しており、端末の種類を問わずオフラインでの作業にも対応できます。
ファイル共有に特化したサービスです。グループ機能を利用することで、メンバー管理やアクセス権限の付与がスムーズになります。
ビジネス向けに設計されたファイル共有サービスです。スマホからのアクセスが可能で、データの自動バックアップにも対応しています。 |
出典:Google「個人向けのクラウド ストレージおよびファイル共有プラットフォーム – Google」
出典:Dropbox「安全なチーム コラボレーション – Dropbox.com」
出典:Mircosoft「ビジネスのための OneDrive |クラウド ストレージとファイル共有」
ファイル共有サービスを活用すると、社内の情報を1か所に集約できます。情報漏洩を防ぐために、閲覧制限機能が付いているサービスを選びましょう。
ファイル共有ソフトのおすすめ7選!無料・有料・ビジネス利用の比較
ナレッジ化の推進にはDXとツール活用が必須
ナレッジ化は、属人化や同じ失敗の繰り返しを防止し、業務を効率化できるため、変化のスピードが上がっている現代社会において必須事項です。新人育成やイノベーション推進にも欠かせません。
社内のナレッジを共有するには、社内Wikiやヘルプデスクツール、グループウェア、ファイル共有ソフトといったツールが必要です。また、情報を抱え込まず共有するようなルール作りも求められます。暗黙知に頼った非効率な仕事から脱却し、誰もが継続的にナレッジを循環できるよう職場を変えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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