• 作成日 : 2024年11月5日

ペーパーレスは意味がないと言われる9つの理由、向き不向きはあるか

ペーパーレス化は、スムーズに導入できれば大きなメリットが得られます。とはいえ、ペーパーレス化を進める企業では、現場から「意味がないように感じられる」「非効率なのでは?」という反対意見が出て、お悩みのケースも多いでしょう。

この記事では、「ペーパーレスは意味がない」と言われる理由や原因を紹介。効率よくペーパーレスを進めるポイントも解説します。

ペーパーレスは意味がないと言われる9つの理由

現場から「ペーパーレスは意味がない」と言われる主な理由を紹介します。

文字が読みにくい

ITツールやシステムを導入すると、現場から「ディスプレイに表示される文字が見にくい」と不満が出ることが多いです。情報量が多い書類や資料は、ディスプレイで全体を表示させると文字が小さくなり、一部を拡大表示すると全体が見えなくなってしまい、読みにくいと感じるケースがあります。

また、解像度が低いディスプレイを選んでしまうと、全体的に文字が読みにくくなり、業務の効率を妨げてしまいます。

ハンコ・押印文化が残っている

ハンコ・押印文化が残っていることも、ペーパーレス化が進まない理由となっています。紙媒体の契約や承認作業の優先度が高い企業もまだまだ多いのが現状です。

企業の経営層が中心となり、既存文化を刷新する必要があります。

スキャンの手間がかかる

スキャンの手間を考慮すると、ペーパーレスの意義を見出せない企業も多いです。ペーパーレス化を推進するためには、紙文書を電子化し、適切に管理する必要があります。

特に企業規模の大きい企業であれば、扱う書類も多く紙文書の電子化は大きな負担となるため、ペーパーレス化が非効率に感じられるでしょう。

スキャンの手間を考慮して電子化する書類の優先度を決め、段階的にスキャン作業を進めていくと負担が軽減できます。

電子契約書も印刷して保管している

電子契約書を印刷し、紙で保存するという慣習もペーパーレス化を妨げる要因です。電子契約書だけでは不安があり、印刷して保管しておく企業も少なくないのが現状です。

しかし、電子契約は基本的にデジタルデータのまま保存が求められており、電子帳簿保存法に基づく保管要件を満たしていれば紙で保管する必要はありません。

法的要件を確認し、電子契約書のみの保管で問題ない書類をペーパーレス化することが、業務の効率化につながります。

電子書類が探しにくい

電子書類は、探しにくいという不満も少なくありません。紙の書類と比較してデジタル形式の書類管理に慣れていないことや、適切なシステムが導入されていないことが要因です。

電子化された情報はフォルダ構造やファイル名、タグ付けが統一されていないと、必要な書類を見つけるのに手間がかかります。

管理方法を含む運用マニュアルを作成し、組織内に共有することで、書類を探す時間を削減できます。

費用対効果が見えづらい

費用対効果が見えづらい側面があるのも、ペーパーレス化が意味ないと言われる大きな要因です。ペーパーレス化の推進は、初期段階のコストが高いため、効果をすぐに実感できません。

ITツールやシステムの導入費用に加え、従業員のITリテラシー向上のための教育費用などがかかるため、運用開始後すぐにコスト削減や業務の効率化などの効果が得られるわけではありません。

そのため、長期的なゴールから逆算して費用対効果を見積もる必要があります。短期的にはコストや負担が大きくなってしまっても、長期で回収できる場合には、ペーパーレス化を検討すべきでしょう。

社員のITリテラシーが不足している

社員のITリテラシー不足は、日常業務でPCを使用しない社員の多い非IT系企業で顕著です。ペーパーレス化を進めるには、オンラインストレージや文書管理システム、電子署名ツールなど、さまざまなITツールを利用する必要があります。

しかし、社員がこれらのツールをうまく使いこなせないと、業務が円滑に進みません。また、ITリテラシーが低いと、ペーパーレス化の利点を理解せず、従来の紙を使った方法に固執してしまうでしょう。

社員の相談窓口を設置したり、定期的な教育研修を通じてITリテラシーを高める工夫をしたりして対策することがポイントです。

セキュリティのリスクがある

セキュリティリスクが高くなることも、ペーパーレス化を進めるうえで課題となります。デジタルデータは紙媒体と異なり、インターネットを介して容易にコピーや共有が可能です。そのため、外部からの不正アクセスや内部からの情報漏洩のリスクが高まります。

アクセス権限をかける、保管期限を決めて管理するなど、事前にしっかりと対策を講じておくことが重要です。

リモート勤務ができない

ペーパーレス化を実現したとしても、リモート勤務ができない環境が続くと、ペーパーレスの意義を考える社員が増えます。

紙の書類を扱う業務が完全にデジタルに移行していない状況では、重要な書類を確認・共有するためにオフィスに出社しなければなりません。

リモート勤務は社員にとってもメリットがあるため、ペーパーレス化とともにスムーズにリモート勤務ができる環境を整えていくことをおすすめします。

ペーパーレス化は意味がないと感じる原因

「ペーパーレス化は意味がない」と感じてしまう原因をいくつか紹介します。原因を把握できれば、適切な対策を検討できます。

デジタル文書の管理がばらばら

電子化された文書は適切な管理体制が整っていないと、書類が分散してしまうリスクがあります。また、管理システムが統合されていないと、書類が複数の場所に分散し、検索に時間がかかってしまうでしょう。

そのため、管理・運用マニュアルを作成したうえでペーパーレス化を進めましょう。マニュアルは社員の意見を取り入れつつ、随時更新していくことが重要です。

システムが使い慣れない

システムが使い慣れないこともペーパーレス化に異議を唱える従業員を増やす原因です。加えて、導入するシステムに関する研修や教育が不十分だと、システムを効果的に活用できないまま導入が進んでしまい、かえって混乱を招いてしまうでしょう。

直感的な操作が可能なシステムの導入を検討することや、システムの運用に関する研修や教育を充実させることが効果的です。

電子文書に関する法律の理解不足

電子文書に関連する法律の理解不足も、ペーパーレス化を妨げる要因です。電子化できる書類とそうでない書類を正しく判断するためには、遵守すべき法的要件について理解を深める必要があります。

たとえば電子帳簿保存法では、データの改ざんを防ぐためにタイムスタンプを付けることや、検索機能を確保する必要を定めています。このような要件に対する理解が不足していると、実務上の問題が発生します。

法律に詳しい専門家の意見を取り入れつつ、法律に準拠したペーパーレス化を推進することが重要です。

ペーパーレス化に向き不向きはあるか

ペーパーレス化は一見、企業が実施しやすい取り組みと捉えがちですが、業種・業態によって向き不向きがあります。ここでは、ペーパーレス化に不向きな場合と向いている場合の特徴を解説します。

ペーパーレス化に不向きな場合

ITツールやシステムの使用に不慣れな社員が多い環境では、ペーパーレスに準拠した業務の十分な教育やサポートが必要となり、運用がスムーズに進まない可能性があります。

また、手書きや大判図面など、紙による資料が業務に必須となる場合も完全なペーパーレスを実現するのは難しいでしょう。自社の業務特性も考慮したうえで、ペーパーレス化を検討することが重要です。

ペーパーレス化が向いている場合

リモートワークをはじめとした多様な働き方をすでに推進している場合は、ペーパーレス化にも取り組みやすいです。ペーパーレス化を実現することで、より多くの業務をリモートで遂行できるでしょう。

また、BCP対策に注力している企業もペーパーレス化が有効です。自然災害やシステム障害などの不測の事態が発生した際にも、デジタルデータがクラウドに安全に保存されていれば、速やかに事業を復旧できます。

スムーズなペーパーレス化の進め方

ここからは、ペーパーレス化を効率よく進めるポイントをいくつか紹介します。どのように進めるかを計画することが、ペーパーレスの実現に向けて重要です。

目標・ルールを定める

ペーパーレス化を成功させるためには、具体的かつ可視化できる目標を設定することが不可欠です。

たとえば、紙の使用を半年で50%削減する、特定のコスト(紙代や印刷費用)を3ヶ月以内に30%削減するといった具体的な数値目標を立てることで、進捗を確認しやすくなります。

また、社内で統一されたルールを定めることもポイントです。どの書類をデジタル化するか、どのツールを使用して書類を共有・保存するかを明確にし、全社員に周知徹底しましょう。

小さく始めて段階的に広げる

ペーパーレスを一度に全社的に推進すると、導入するITツールやシステムに慣れるのに時間がかかり、導入後の業務の進め方に戸惑いが生じます。

まずは会議資料や経費精算など、比較的簡単にペーパーレス化が可能な業務から始め、ツールの効果や課題を確認するようにします。慣れてきたら他の業務にも展開していくとよいでしょう。

従業員の理解を得る

ペーパーレス化によって業務フローが大きく変わるため、従来のやり方に慣れている従業員には抵抗感が生じてしまうことがあります。

そのため、経営層が積極的に関与し、ペーパーレス化の目的やメリットを丁寧に説明することが重要です。そして、従業員からのフィードバックを受けながら、現場に浸透するペーパーレス化に向けた業務体制を構築しましょう。

電子化する優先順位を決める

電子化する書類の優先順位を決めることも、施策をスムーズに推進するうえで重要です。大量に印刷される会議資料や、頻繁にやり取りされるFAXなど、コストがかかる書類の電子化を優先することで、コスト削減の効果を実感しやすいでしょう。

また、法的な理由で紙での保存が必要なものが混在しているため、電子化する範囲を決めておく必要があります。すべての書類を一度にデジタル化しようとするのではなく、優先順位の高いものから取り組みましょう。

拡張性のあるシステムを選ぶ

ペーパーレス化に導入するシステムの拡張性にも着目しましょう。業務量が増加した際にクラウドストレージの容量を追加したり、社内で利用するデバイスやユーザー数を増やしたりする場合、拡張性の高いシステムを選んでおけば、無理なく対応できます。

また、ペーパーレス化のシステムが他の業務システム(勤怠管理や経費精算など)と連携できるかも重要なポイントです。

定期的に見直しを行う

ペーパーレス化を進める過程で、新しい業務フローへの移行が伴います。初期段階の業務フローですべての業務が問題なく運用できるとは限りません。定期的に従業員からフィードバックを収集し、業務フローがうまく機能しているかを確認しましょう。

また、導入するITツールやシステムも時間の経過とともに技術の進化や業務の変化に対応するため、アップデートが必要です。

電子帳簿保存法に対応したペーパーレス化の方法

今からペーパーレス化を推進する企業は、電子帳簿保存法に準拠したペーパーレスを実現する必要があります。詳細内容は以下ページを参考にしてください。

参考:株式会社マネーフォワード「電子帳簿保存法とは?2024年からの改正内容・対象書類を簡単に解説」

ここでは、電子帳簿保存法の電子帳簿等保存における対象書類、保存方法、対象外となる書類の概要を解説します。

電子帳簿保存法の対象書類

電子帳簿等保存の対象帳簿・対象書類は、国税関係帳簿、決算関係書類、パソコンで作成した取引関係書類を紙で取引先に渡した際の控えの3種類です。

これらの書類は任意で電子保存が可能ですが、保存には一定の要件を満たす必要があります。

電子帳簿保存法の保存方法

電子帳簿等保存の保存要件の概要をまとめると以下のとおりです。

  1. 記録事項の訂正・削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認できる電子計算機処理システムを使⽤すること
  2. 通常の業務処理期間を経過した後に入力を行った場合には、その事実を確認できる電子計算機処理システムを使⽤すること
  3. 電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること
  4. システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること
  5. 保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
  6. 検索要件
    1. 取引年⽉日、取引金額、取引先により検索できること
    2. 日付又は金額の範囲指定により検索できること
    3. 2以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること
  7. 税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておくこと

引用:国税庁「電子帳簿保存法-はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存

「優良な電子帳簿」の場合と「その他の帳簿」の場合で保存要件が異なるため、詳細は国税庁で作成されている資料をご確認ください。

電子帳簿保存法の対象外となる書類

電子データとしての保存を許可されているのは、PCを用いて作成された国税関連の帳簿・書類のみです。

手書きで作成された総勘定元帳仕訳帳請求書などは電子帳簿保存法の対象外です。これらは電子化されても、電子帳簿保存法上の要件を満たさないため、紙の原本を保存することが求められます。また、電子データで取引が行われない場合も、電子帳簿保存法の適用外となります。

ペーパーレス化はマネーフォワードがサポート

社内のペーパーレス化の推進はマネーフォワードがサポート。経理・会計業務の効率化や自動化を支援するさまざまなサービスを提供しており、自社の課題に応じて、最適なシステムをご利用いただけます。

  • 請求書のペーパーレス化・電子化
  • 経理業務のペーパーレス化・電子化
  • 給与計算・勤怠管理のペーパーレス化・電子化
  • 契約・法務のペーパーレス化・電子化

「マネーフォワード クラウド」サービスはIT導入補助金にも対応

マネーフォワード クラウドは、IT導入補助金にも対応しています。IT導入補助金は、小規模事業者がITツールを導入する際に、費用の一部を国が負担する制度です。対象事業者や申請要件を満たすことで、利用料金の最大80%補助を得られます。

詳細は以下ページよりご確認ください。

意味のないペーパーレス化から脱却しましょう!

ペーパーレス化は、現場社員一人ひとりの協力が必要不可欠です。メリットや意義を共有して理解してもらうことが、ペーパーレスが浸透する初歩となります。

本記事を参考に、ペーパーレス化の成功に向けてポイントを押さえつつ、意味のないペーパーレス化にならぬよう計画を立てて推進していきましょう。


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