• 作成日 : 2024年4月23日

ヒヤリハットとは?報告書の書き方や業界別の例文、事例を解説

ヒヤリハットとは?報告書の書き方や業界別の例文、事例を解説

重大なインシデントや労働災害につながりかねない事象は「ヒヤリハット」と呼ばれており、すべての業界において徹底した対策を講じる必要があります。対策を正しく行うためには、適切な報告書を作成することが欠かせません。

そこで今回は、ヒヤリハットの概要・原因から、対策の鍵となるヒヤリハット報告書の書き方・例文まで分かりやすく説明します。ヒヤリハットに対して適切に対応したいという方は、ぜひ参考にしてください。

ヒヤリハットとは?

ヒヤリハットとは、ヒヤッと・ハッとしたことが起きたものの、幸い重大な事故や災害に至らなかった事象のことです。基本的に労働中に起こり得る事案ですが、車の運転や料理、育児など、人々の身近な日常生活にもヒヤリハットは潜んでいます。

事故や災害につながらなかったことから、「大事に至らなくて安心した」と考える方も多くいるでしょう。しかし、アメリカの損害保険会社の安全技師だったハインリッヒの労働災害における経験則「ハインリッヒの法則」では、下記のように提唱されています。

「1件の重大事故の背後には、29件の軽微な事故が、さらに300件の異常がある」

ここで言う異常は、いわばヒヤリハットです。たとえヒヤリハットで済んだとしても、ヒヤリハットが起こりやすい状態を放置していると、同一人物による事故が「1:29:300」の比率で起きてしまうと予測されており、決して油断はできません。

ヒヤリハットが多ければ多いほど、重大な労働災害リスクが高まります。何らかのアクシデントやトラブルが生じてから原因を調査したり再発防止策を検討したりするのではなく、日頃から発生しているヒヤリハットの根本的な原因を探り、再発を防ぐ努力をすることが重要です。

ヒヤリハットの原因

労働中にヒヤリハットが起こる原因としては、下記の3つが挙げられます。

  • 情報の共有不足

社員同士や社員・上司間でのコミュニケーションがしっかり行われなかったことによって情報共有が不足すると、必要な作業手順がとられなくなり、ヒヤリハットが発生しやすくなります。

  • 設備や環境の不具合

普段から十分な点検・メンテナンスがされていない設備や、管理が行き届いていない労働環境では、不具合によってヒヤリハットが発生しやすくなります。

  • ヒューマンエラー

重機や設備の誤運転など、従業員の人為的なミスによってヒヤリハットが発生する事案も少なくありません。ヒューマンエラーによるヒヤリハットの多くは、疲労や劣悪な労働環境が背景に潜んでいます。

ヒヤリハット報告書はなぜ重要か

ヒヤリハットの再発防止に向けた手段としては、「ヒヤリハット報告書」の作成が有効とされています。

ヒヤリハット報告書とは、ヒヤリハット発生時の状況と原因を共有するための文書です。ヒヤリハットに遭遇した当事者が当時の状況や原因、さらに再発防止に向けた対策法までを整理し、部署・部門を越えた関係者全員に共有します。

ヒヤリハット報告書の作成・提出は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし、実際に発生したヒヤリハットを文書として残すため、口頭での報告よりも共有しやすくなるほか、再発防止に向けた分析もしやすくなります。重大事故を組織全体で防ぐためにも、ヒヤリハット報告書は極力作成すべきと言えるでしょう。

ヒヤリハット報告書の書き方

ヒヤリハット報告書に記載すべき基本的な項目は、下記の通りです。

  • 発生日時
  • 発生場所
  • 報告者(当事者)の名前
  • 概要
  • 発生可能性のあった事故
  • 原因
  • 再発防止策

業界・業種によっては、絵や図を書き加えられる項目も設けておくとよいでしょう。ヒヤリハットが発生した当時の状況を絵や図でまとめることによって、より分かりやすく共有できます。

ヒヤリハット報告書の書き方のポイント

ヒヤリハットの再発防止に向けて意義のある報告書を作成するためには、下記5つのポイントをおさえておく必要があります。

  • すぐに報告する
  • 5W1Hを意識してまとめる
  • 客観的に事実を書く
  • 原因は直接的と間接的の両方を記載する
  • 改善策は具体的に提示する

ここからは、それぞれのポイントについて分かりやすく説明します。

すぐに報告する

ヒヤリハットの発生後は、できる限り速やかに報告書を作成しましょう。

「忙しいから」「面倒だから」とヒヤリハット報告書の作成を後回しにしていると当時の記憶が徐々に薄れ、報告書を作成するころには発生当時の詳細状況を記載できなくなってしまいます。あいまいな報告では、原因を正確に分析したり適切な再発防止策を検討したりするのが困難となります。

しかし、「ヒヤリハット報告書をすぐに記載しなければ」と焦りを感じるとかえってミスを引き起こしやすくなることにも注意が必要です。

5W1Hを意識してまとめる

ヒヤリハット報告書を作成する際は、「5W1H」を意識して必要な情報をまとめましょう。

When発生日時
→いつ発生したのか・いつ気付いたのか
Where発生場所
→どこで発生したか
Who当事者
→誰がヒヤリハットを起こしたのか
What対象となった行動
→何をしようとしたときか・何がどうなったのか
Why発生原因
→なぜ起こったか
How対処・対策
→どのように対策したか・今後どのような防止策が有効となるか

5W1Hを抜け漏れなく記載することで、ヒヤリハットの発生内容を読み手により分かりやすく伝えられるようになります。

客観的に事実を書く

5W1Hを意識してヒヤリハット報告書を作成するときは、客観的な事実にもとづいて発生当時の出来事や様子をそのまま記載することが大切です。

中には、「責任を追及されたくない」という思いから、やや主観的な表現を交えて状況を書く方も少なからず存在します。

しかし、報告書の目的はあくまでも第三者に向けたヒヤリハットの情報共有と再発防止です。「~かもしれない」「~と思う」といった主観的な表現が含まれることで、他責的に見えてしまうほか、かえって読み手の混乱を招いてしまい、ヒヤリハット報告書の本来の役割を果たせなくなる可能性もある点に注意してください。

原因は直接的と間接的の両方を記載する

ヒヤリハットの発生には、業務環境や設備の管理状況、さらに労働者自身の労働環境など、さまざまな要素が関与していることも多々あります。

例えば、設備の故障によってヒヤリハットが発生した場合、「設備の故障」が直接的な原因となるものの、「使用前に動作チェックを行っていなかった」「長い間メンテナンスされていなかった」といった間接的な原因が背景にあるケースも少なくありません。

したがって、ヒヤリハット発生時は直接的な原因だけでなく、間接的な原因がないかもしっかり確認した上で、報告書には双方を必ず明確に記載しておきましょう。

改善策は具体的に提示する

ヒヤリハットの発生状況や原因を報告書に記載したら、最後に再発防止に向けた具体的な改善策を提示しましょう。

発生したヒヤリハットの事案によっても適切な改善策はそれぞれ異なりますが、「安全教育・KYT(危険予知訓練)の実施」や「動画マニュアルの導入」「ダブルチェック体制の導入」などが主な例となります。

ヒヤリハット事例の記入例(業界別)

最後に、ヒヤリハット報告書の記入例を、ヒヤリハットが発生しやすい「製造業・工場」「建設業」「医療・介護業界」「保育園」の業界別に紹介します。

ヒヤリハット報告書をスムーズに作成するためにも、ぜひ参考にしてください。

製造業・工場

下記は、製造業・工場において「従業員が運転するフォークリフトと歩行での作業中の従業員が接触しそうになった」場合のヒヤリハット報告書例です。

発生状況作業員Aがフォークリフトを操縦して原料用空箱を入荷場から外の空箱置き場に運搬していたところ、両者の不注意によってシャッター外脇から前を横切ろうとした作業員Bに接触しそうになった。
再発防止策フォークリフトを操縦する作業員は、シャッター前での一時停止と指差し呼称による安全確認を徹底する。

建設業

下記は、建設業において「足場上で作業する従業員が転倒しかけた」場合のヒヤリハット報告書例です。

発生状況作業員Aが建設現場の足場上を移動中、作業床に放置されていた結束の番線につまずいた。とっさに足場の筋交いにつかまり、転倒・転落によるケガや建築物の損傷は免れた。
再発防止策・足場での作業時は、必ず足元に注意して移動する。
・紐や番線、工具などは床に置かないことを徹底する。

医療・介護業界

下記は、医療・介護業界において「食事介助中に患者さん(利用者さん)が誤嚥しかけた」場合のヒヤリハット報告書例です。

発生状況看護師(介護職員)Aが患者(利用者)Bにベッド上にて食事介助中、姿勢保持が十分でなく、唾液によって当日の主食メニューだったおかゆがサラサラになったことで、強いむせ込みが生じた。
再発防止策・患者(利用者)Bの食事中におけるベッドの角度を〇度以上にする。
・体制による傾きが生じた場合は、クッションを使用する。
・水分量の多い食事メニューは、適宜とろみを追加する。

保育園

下記は、保育園において「保育室内に落ちていた異物を園児が飲み込みかけた」場合のヒヤリハット報告書例です。

発生状況乳児クラスの保育室内で、園児Aちゃんの近くに飾りのついたヘアゴムが落ちており、Aちゃんが口に運びかけた。直前に保育士Bが気付いたことによって、誤飲を未然に防いだ。
再発防止策・飾りのついたヘアゴム・ヘアピン・その他小物の使用を禁止する。
・保育室内に園児が誤飲しそうな物が落ちていないかを常にチェックしておく。

ヒヤリハットの再発防止には「報告書の作成」と「日々のルール化」が重要

ヒヤリハットが起こったときに「大事に至らなくてよかった」と安心しきっていると、やがて事故や労働災害が発生する可能性があります。重大な事故を防ぐためにも、ヒヤリハットが発生する度にヒヤリハット報告書を作成し、適宜再発防止策を検討しましょう。

また、ヒヤリハット報告書の作成はあくまでも情報共有が主な目的であり、再発防止に直接寄与するわけではありません。テンプレートやフォーマットを用いたヒヤリハット報告書の作成とともに、再発防止に向けたルールやマニュアルを策定し、すべての従業員が対応できるよう浸透させることも大切です。


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