• 作成日 : 2024年2月2日

属人化とは?意味や業務に与えるデメリット・原因・解消方法を解説

属人化とは?意味や業務に与えるデメリット・原因・解消方法を解説

属人化とは、特定の社員に業務が依存している状態のことです。属人化は担当者が退職後に誰も業務の引継ぎができなかったり、担当者によってサービスの質に差が生じたりする原因になります。この記事では、属人化のデメリットやメリット、属人化が起こる原因、属人化の解消方法などを解説します。業務効率化を考えている方や、業務の属人化に悩んでいる方はぜひご覧ください。

属人化の意味とは?

属人化とは、特定の社員に業務が依存し、その担当者しか業務の進め方や進捗状況を把握していない状態のことです。属人化が起こると、他の社員は業務の内容や手順、必要な時間などを理解できず、業務がブラックボックス化します。属人化した業務は、属人性の高い業務とも表現されます。

業務の属人化が常態化すると、担当者が不在の際や退職した場合に業務が滞るリスクを伴うため、早急に対処しなければなりません。これまで、日本企業では終身雇用が一般的で、業務属人化は珍しいことではありませんでした。多くの人が属人化を前提とした環境に慣れてしまったため、リスクや問題を把握しつつもなかなか解消が進まないというケースがよく見られます。

属人化が引き起こすトラブルの例

業務の属人化が引き起こしやすいトラブルとしては、下記のような例が挙げられます。

  • 担当者が不在の日は業務に誰も対応できない
  • サービスの質が担当者ごとに大きく変わってしまう
  • 担当者の退職後、業務の引き継ぎができていない

たとえば、ある企業からの受注業務が特定の担当者に依存している場合です。担当者が急な事故や病気で出社できなくなると、受注業務が完全にストップしてしまうといったトラブルが起こり得ます。

属人化の対義語

属人化の対義語は「標準化」です。標準化は、業務が特定の担当者に依存せず、多くの社員が理解し代行できる状態を指します。業務が標準化されれば、担当者が変わったという理由では業務が滞りません。

業務を標準化するには、業務フローやノウハウをマニュアルなどで管理し、すべての社員に共有する必要があります。標準化への過程で、業務の最適化も行われるケースが一般的です。

属人化とスペシャリストの違い

属人化と混同されやすい言葉が、「スペシャリスト」です。どちらも「特定の業務が1人の担当者に集中する状態」という意味では同じですが、業務の進行方法や状況の可視化、および共有の有無に大きな差があります。

属人化した業務は特定の担当者に依存し、その業務実態や進行状況が他の社員には分からない状態です。そのため、担当者が不在の場合、業務が滞るリスクが非常に高くなります。属人化業務は専門性が高い内容だと誤解されることもありますが、実際は方法や状況さえ共有できれば誰でも遂行できる業務であるケースが珍しくありません。

一方で、スペシャリストは特定の分野において高い専門性を持つ人物のことです。スペシャリストは自らの知識やスキルをマニュアル化し、業務フローを他の業務担当者と共有する能力にも秀でています。そのため、スペシャリストが不在でも業務の継続やフォローが可能です。

属人化のデメリット

業務の属人化は、非常に多くのデメリットがあります。現状では一見問題なく業務が回っているようでも、属人化を放置し続けると業績悪化や組織力の低下などを招きかねません。

以下では、業務の属人化によって生じることの多いデメリットを、6つ紹介します。

業務フローが適切か判断できない

属人化した業務はブラックボックス化してしまうことが多く、担当者以外はその業務フローが適切かチェックできません。業務の手順や注意点が担当者の知識内にとどまるため、他の社員が業務の無駄や改善点を提案するのは困難になります。

また、担当者が独自に業務を進めることで、不正やミスが発生しても他の社員や管理者が気づきにくくなるのも、属人化のデメリットです。業務が属人化した状態では業務の改善や効率化が図りにくく、トラブルの発覚も遅れるため、結果として組織全体の生産性や顧客満足度の低下につながる可能性があります。

ノウハウが共有されない

属人化されている業務では、業務遂行に必要な知識やノウハウが担当者のみにとどまり、他の社員と共有されません。このため、担当業務を通じて得られるはずのスキルや知識が他の社員に伝わらず、組織全体の能力向上が妨げられるのは大きなデメリットです。また、業務への理解が高まりにくい状態では、新しいアイデアの創出も難しくなります。

組織力の低下を防ぐには、属人化された業務を標準化業務に転換するマニュアルの整備やナレッジの共有が不可欠です。ノウハウを共有すれば、業務の効率化や品質向上、さらには新たなアイデアの発掘につながり、組織全体の発展が期待できるでしょう。属人化は、個々の社員だけでなく組織全体の成長を妨げるため、早急に解消する必要があります。

品質の低下につながるリスクがある

属人化した業務では、製品やサービスの品質が担当者に左右され、ばらつきが生じるリスクがあります。手順書やマニュアルが整備されていなければ、担当者が不在の際、代わりに業務を行う社員や後続の社員が同等の品質を保つのは困難です。さらに、ミスや不良が発生しても、チェックできる人材がいないことで品質の低下を招きます。

このような状況は、顧客の不満を引き起こし、最終的には顧客満足度の低下やクレームにつながる恐れがあります。品質の一貫性を保つためにも、属人化は避けるべきです。

業務が滞るリスクがある

属人化した業務は、特定の担当者に依存する状態です。そのため、担当者の不在時に他の社員が対応できず、業務に大きな支障をきたします。

たとえば、担当者が多忙になったり、事故や病気で長期間出社できなくなったりすると、業務が完全にストップしかねません。関連業務が連鎖反応を起こし、社内全体の業務遅延を招くこともあるでしょう。担当者の退職により業務のノウハウ自体が失われ、事業再開の目処が立たなくなる恐れもあります。

属人化は業務の滞りを引き起こし、組織全体の効率を下げる可能性があるため、マニュアルの整備や複数の担当者を配置するなどの対策が必要です。

適正な人事評価が下せない

属人化した業務では、適切な評価が下せない可能性があります。業務がブラックボックス化すると、上司や他の社員が業務進捗や品質を正確に把握するのが難しくなるためです。結果として、社員間で評価の適切さに対する不信感が生まれ、人間関係にもネガティブな影響を及ぼすケースが珍しくありません。

さらに、特定の業務を独占する社員の業績を他の社員と比較する基準がなければ、評価の公平性が損なわれ、社員のモチベーションが低下する場合もあります。属人化の解消は、公正な人事評価体系を維持するためにも重要です。

退職につながるケースもある

属人化した業務は、特定の社員に業務負担が集中しやすくなります。担当者に替えが利かなければ1人で膨大な業務量を遂行せざるを得ず、長時間労働や休日出勤を余儀なくされるケースは少なくありません。長時間労働が常態化し、労働環境が悪化することで社員の心身に多大な影響を及ぼし、最終的には退職や労災訴訟につながる場合があります。

業務内容によっては担当者の権威が増大して社内コミュニケーションの不平等が生じ、社員の満足度の低下や離職率の上昇を招きかねません。属人化の解消は、社員の健康と職場環境の改善にも直結する課題です。

属人化のメリット

属人化は多くのデメリットをもたらす一方で、個人が専門性の高い成果物を出し続ける場合にはメリットも存在します。

属人化のメリットとして代表的なのは、以下の3点です

  • 担当者のスキルアップができる

    同じ業務を継続することで、自然とスキルが身に付き、スペシャリストとしての成長が期待できるケースもあるでしょう。専門性の向上は、個人のキャリアにとってもプラスになります。

  • 担当者のモチベーションが上がる

    特定の業務を一任されることで、担当者自身が自分の業務に対する自信や達成感を得られ、モチベーションの向上につながるでしょう。また、自分自身の裁量で業務を進められると、スケジュールを調整しやすくなるのもメリットです。

  • 高い専門性が生かせる

    突出した能力を持つスペシャリストは、「自分にしかできない技術」のブランド化が可能です。専門性を持つ社員は、「○○さんなら大丈夫」といった形で顧客と深い信頼関係を築ける場合があります。

また、個人の高いスキルを企業の売りにするビジネス展開も可能ですが、才能が突出している場合は独立する可能性を考慮して後続を育成しておかなければなりません。属人化のメリットを生かしながらも、組織全体の利益につなげるには、個々のスキルや専門性を組織全体で共有し、標準化する取り組みが重要です。

属人化が起こる原因

属人化が起こる主な原因は、情報の共有不足です。情報の共有不足が起こる要因として、以下の3つが挙げられます。

  • 人手不足や仕事量の多さから担当者が多忙になっている

    人手不足や業務の集中により担当者が多忙になると、マニュアル整備や資料作成、情報共有に割く時間を確保できません。結果としてさらに属人化が進み、担当者の負担が増大する負のループが生まれるケースがあります。また、そもそも担当者が1人のみの場合は既存システムを変更する必要性を感じにくく、属人化が悪化しやすい傾向にあります。

  • 業務の専門性が高く共有が難しい

    専門的な知識やスキルを要求される業務は、マニュアル化が困難です。社員教育のコストが高い上に、情報を共有しても他の社員が理解できないケースも多く、特定の知識やスキルを持つ社員に業務が集中しがちです。

  • マニュアルが整備されていない

    業務マニュアルが難解だったり、情報が古いまま更新されなかったりすると、属人化が生じやすくなります。簡単にアクセスできない、あるいは必要な情報が見つけにくいマニュアルも属人化を促進する要因です。

以上の要因を理解し、適切な対策を講じることが、属人化の解消につながります。特に、業務マニュアルの整備や情報共有システムの改善は、属人化を解消するための重要なステップです。

属人化してはいけない業務

特に属人化を避けるべき業務には、以下の3つが挙げられます。

  • バックオフィス

    総務や人事労務、経理など、業務に正確性と一貫性が求められるバックオフィス業務は、属人化してはいけない典型的な例です。担当者の不在で業務が停滞すると、組織運営に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。

  • 自社製品・サービスの説明やサポート

    自社の製品やサービスに関する説明やサポートは、常に同一の情報を提供しなければなりません。属人化してしまうと、顧客に対する情報提供に矛盾が生じる場合があります。

  • トラブルの対応

    顧客からの問い合わせ対応やトラブルシューティング業務、セキュリティインシデント対応業務などは、初動の対応がその後の被害の大きさを左右します。トラブル対応に属人化が生じると、担当者の不在や交代によって問題の悪化を招きかねません。

以上の業務では、誰が担当社員となっても同等の品質が求められます。すべての社員が共通認識を持ち、標準化された対応を可能とする体制の整備が必要です。

【5ステップで解説】属人化の解消方法

業務の属人化を解消するには、順を追って進めることが重要です。以下では、属人化解消に向けて踏むべき手順を、5つに分けて解説します。ステップに沿って進めれば、業務の効率化も図れ、組織全体の生産性向上につながるでしょう。

STEP1|属人化している業務内容を洗い出す

属人化を解消する最初のステップは、業務全体の現状を洗い出し、優先的に標準化すべき項目を決定することです。このプロセスでは、関連する業務を細分化し、どの業務が属人化しているか、現状の課題が何かを特定します。

業務プロセスを俯瞰的に把握するには、ワークフロー図の作成が効果的です。担当者全員へのヒアリングを通じて情報を収集し、業務内容や手順を可視化して整理します。ただし、リソースの制約も考慮しなければなりません。業績に直結する業務や既にトラブルが発生している業務を特定し、属人化を解消する必要性の高い業務から取り組めるよう、優先順位を明確にしましょう。

STEP2|業務の標準化(マニュアル整備)をする

属人化した業務の優先順位が決まったら、次は業務の標準化を進めるためにマニュアルを整備します。マニュアルは、担当者が未経験の社員でも理解できるよう、具体的かつ詳細に言語化することが重要です。図解や写真、動画なども活用しましょう。

マニュアル作成時には不透明な作業を明確にし、新しい基準やルールを設定する必要があります。保管や共有のルールを定め、社外に漏洩しないようにする対策も必須です。定期的な見直しと更新を前提とし、誰でも同じ流れで業務を行えるように整えれば、組織全体で業務品質の向上が期待できます。

STEP3|担当者の業務範囲を見直す

属人化の解消には、業務範囲の見直しも有効です。特定の担当者に業務が集中するのを避け、業務を複数の担当者で分担しても進められるようにしましょう。複数の担当者が業務に対応するようになれば、ノウハウの共有が促進される上、業務改善も期待できます。業務範囲の見直しで業務効率化や最適化が進めば、担当者の負担がさらに軽減されるのもメリットです。

また、業務範囲を見直すとともに業務工程のシンプル化に取り組めば、専門性が乏しい社員でも担当しやすくなり、マニュアル作成も容易になります。

STEP4|定期的に業務改善のアイデア出しをする

業務の属人化を解消した後でも、定期的な見直しと改善は欠かせません。業務標準化を達成した後でも、より効率的な方法が見つかる場合や、新たなムリやムダが発生する場合もあります。市場環境や技術の進歩、組織内の変化に柔軟に対応し、業務プロセスを適宜調整することで、組織全体が進化し続けられるでしょう。

そのため、新たな提案やナレッジを定期的に共有し、業務フローやマニュアルを常にアップデートしなければなりません。このプロセスでは、チームメンバー全員が関与し、フィードバックや意見を活用することが大切です。標準化された内容が実際の業務状況に合致し、より効果的なものとなれば、再び業務が属人化するのを防げます。

STEP5|ITツールやシステムの導入・活用をする

属人化を防ぎ、情報共有をしやすくするには、ITツールやシステムの導入と活用が効果的です。以下のようなツールがあれば、マニュアルの作成・管理・共有が効率化し、業務プロセスの可視化や自動化も可能になります。

  • 社内wikiツール
  • 社内FAQツール
  • マニュアル作成ツール
  • BPMツール
  • ナレッジマネジメントツール

これらのツールを活用すると、業務内容のアップデートが容易になり、組織全体でのナレッジ共有が促進されます。

属人化の解消に成功した企業事例

最後に、属人化の解消に成功した例として、浜崎海運株式会社/朝日石油株式会社とTMES株式会社の事例を簡単に紹介します。

浜崎海運株式会社/朝日石油株式会社
長年経理を支えた担当者の引退をきっかけに、紙での情報管理による属人化の問題を認識し、クラウド会計の導入を決意しました。これにより業務効率化や情報の可視化、共有が進み、コミュニケーションロスや社内の情報格差が解消されました。特に、経理業務のペーパーレス化が進んだのが大きな成果です。また、顧問税理士とも関係性が向上しています。

出典:「紙による経理の属人化をなくしたい」 クラウド会計でペーパーレス実現

TMES株式会社
建物施設設備のメンテナンスや管理事業を行うTMESでは、積極的なツール導入とDXの推進により、属人化の問題に取り組んでいます。社内の意識改革とデジタル変革を進める際には各種マニュアルを活用し、社員の教育時間の削減やサービス品質の向上に成功しました。ツールを活用して専門知識を分かりやすく伝えることで、マニュアル利用率は前年比150%に増加し、社員の技術力向上と属人化解消につながっています。

出典:人材不足による属人化に苦しむ現場を、わずか3年でどうデジタル化したのか? TMESに見た改革への軌跡:創業50年以上の企業事例

属人化の防止にはITツールの利活用が重要

属人化とは、特定の社員に業務が依存している状態のことです。業務が属人化すると、特定の社員が不在の日は誰も業務を担当できなかったり、サービスの質が担当者ごとに大きく変わってしまったりします。属人化を解消するには、属人化している業務内容を洗い出した上で業務を標準化し、定期的に業務改善のアイデア出しをすることが大切です。情報共有をしやすくするには、ITツールやシステムの導入・活用が効果的です。


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