• 更新日 : 2024年12月12日

査読回答書とは?効果的な書き方・マナーと便利なテンプレートを紹介

査読回答書は、査読者からのコメントや指摘に対して修正内容や意見を記載し、再評価を受けるための文書です。査読は、論文が学術雑誌に掲載されるかを決定する過程で行われ、論文の質を向上させるために必要なプロセスです。査読回答書の適切な作成は、査読者との良好なコミュニケーションを図るだけでなく、論文の完成度を高めるために欠かせません。

当記事では、査読回答書に記載すべき内容や注意点、作成時の具体的なコツ、さらには無料で利用可能なテンプレートを紹介します。

査読回答書とは

査読とは、研究者から提出された論文を専門家が評価し、学術雑誌(ジャーナル)に掲載する価値があるかどうか判断する作業です。査読者と呼ばれる専門家によって行われ、研究の重要性、新規性、信頼性などに重点を置いて評価されます。

査読回答書は、査読者からの指摘や意見に対応するための文書です。論文提出者は、査読者から寄せられたコメントを確認し、必要に応じて論文を修正や改訂する必要があります。各コメントにどのように対応したのかを明確に記載し、返送することで再評価を受ける流れです。

論文が学術雑誌に掲載されるかどうかの最終的な決定は、雑誌の編集者に委ねられます。掲載が決定すれば、世界中の研究者に向けて論文の発表が可能です。

査読回答書には、論文のタイトルや提出時の論文番号といった基本情報を記載します。また、査読者のコメントの引用し、それに対する意見・修正内容などの記載が必要です。

査読の指摘に対する回答姿勢

査読コメントには、批判とも受け取れるような厳しい意見が書かれる場合も少なくありません。しかし、こうした意見を個人的な感情で捉えると、コメントの意図を正しく理解できなくなり、必要な修正や改訂を見誤る可能性があるため、冷静な対応が重要です。

コメントを確認する際は、論文をより良くするための改善点がどこにあるのかを前向きに判断し、それに基づいて修正や回答に取り組むことが大切です。コメントの意図を冷静に読み取れると、論文の内容を充実させたり、読み手に伝わりやすい形に修正できたりします。

また、コメントで要求された修正が不要と判断した場合は、理由を明確に示した上で、その旨を回答するようにしましょう。査読者と健全な議論を交わすことは、論文の完成度を高めるだけでなく、研究分野全体の水準の向上につながります。

査読回答書の無料テンプレート

査読回答書を作成する際には、記載内容に漏れや抜けがないかの確認が重要です。また、文書のレイアウトや見やすさにも配慮する必要があります。作成には時間がかかる場合もあるため、早めに取り組むことを心がけましょう。

効率的に査読回答書を作成するには、テンプレートの活用がおすすめです。下記のテンプレートを活用すれば、回答書作成に要する時間を短縮できます。

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査読回答書の効果的な書き方

読回答書は、査読者がスムーズに確認できるよう、分かりやすく丁寧な作成が重要です。査読者の視点に立ち、修正点や対応内容を詳しく記載することで、信頼性の高い回答書を作成できます。

より効果的な査読回答書を作成するには、以下の4つのポイントを意識しましょう。

修正部分はどのように変更したかを具体的に説明する

査読回答書は、査読者のコメントに対して、どのように修正したのかが明確に伝わるように記載する必要があります。たとえば、修正文章を回答書にそのまま記載し、査読者が修正後の論文と回答書を比較せずとも内容を理解できるよう工夫しましょう。

修正に至った理由も具体的に書き、査読者に回答の意図を分かりやすく伝えるのが重要です。修正のために再度試験を実施したのであれば、その結果や記録も忘れずに追記し、論文内容の妥当性や改善プロセスを納得してもらいやすいようにします。

変更した部分は分かりやすいように明示する

査読者は、論文が回答書通りに修正されているか確認する必要があり、変更箇所を明確に示し、査読者に分かりやすく伝えることが重要です。たとえば、「○ページ・○行目」や「小見出し○の最後の段落に追記」といった形で具体的に記載します。

特に、軽微な加筆や羅列した数字の一部修正など、変更が分かりにくい部分は、工夫を凝らしましょう。変更前と変更後の部分の両方を回答書に記載するなど、査読者のコメントに対して何らかの対応をしたことが伝わるような形式が求められます。

指摘されたことを1つずつ丁寧に回答する

査読者のコメントには、1つずつ丁寧に対応し、修正内容と回答をすべて記載します。たとえば、1人の査読者から複数の修正箇所を指摘された場合、いずれか1つの回答にまとめるのではなく、すべての指摘について回答の記載が必要です。

また、複数の査読者から同様のコメントが提示された場合は、後の査読者への回答で先の査読者への対応を参照する形にすると効率的です。同様のコメントで回答が重複する場合も、一方の査読者への回答欄を省くのは避けましょう。

査読者が、自身のコメントに対する修正が反映されていないと誤解すると、論文が学術雑誌への掲載が不適当と判断される可能性があります。すべてのコメントに確実に対応することが重要です。

意見が分かれるコメントには判断した理由を記入する

複数の査読者から意見が分かれるコメントを提示された場合は、自身の判断を明確に示しましょう。自身と考えが近い査読者のコメントに沿って修正を行い、その判断と理由、修正内容を回答として記入する必要があります。

査読者のコメントに必ずしも同意する必要はありません。複数の査読者のコメントに曖昧に対応すると、最終的に論文提出者の評価や評判に悪影響を与える可能性があります。自身の判断は、明確に理由を示した上で主張するのが大切です。

査読回答書で守るべきマナーと礼儀作法

査読回答書には、文書作成に関する厳密なフォーマットは決まっていません。しかし、作成時には守るべきマナーや査読者に対する配慮が求められます。

査読回答書は、特に以下の2点に注意して作成しましょう。

査読してくれたことに感謝を伝える

基本的に査読は無償で行われます。無償で論文を確認してくれている査読者に対して、感謝の気持ちを忘れずに伝えましょう。コメントに同意できない場合でも、時間を割いてコメントいただいたことに対する感謝の気持ちを述べるのが大切です。

多くの場合、お礼の言葉は回答文の冒頭に記載します。「査読いただきありがとうございます」「コメントしていただき誠にありがとうございます」といった言葉で伝えましょう。

意見が異なる場合も丁寧に回答する

査読者と意見が異なる場合でも、感謝の言葉からコメントへの回答文まで、丁寧に記載することが大切です。査読の修正で重要なのは、査読者の意見をうまく取り入れ、研究そのものや論文内容の完成度を高めることです。査読者の意見に同意できなくても、なぜそう思ったのか理由を丁寧に記載し、修正しなかった旨を説明しましょう。

説明時には、自身の解釈をさらに詳しく記載し、文献の引用を使って補足することで、査読者に対して真摯に回答でき、論文の説得力も高められます。

査読回答書に困ったときの対処法

査読コメントの中には、修正が困難なものや、どのような修正が必要なのか、その意図を正確に掴むのが難しいケースも少なくありません。

対応が難しく、すぐに修正に取り掛かれなかったり、回答に悩んだりする場合は、数日待つのが効果的です。数日待つと冷静に考える時間ができ、コメントをさまざまな角度から客観的に読み取れるようになります。修正や回答が困難だと感じたまま勢いで取り組むより、落ち着いて判断できる時間を設けるほうが冷静に対応できるでしょう。

コメントへの疑問が大きく、修正が進められない場合は、査読者に連絡するのも1つの方法です。質問をまとめて編集者にメールすると、査読者にその質問内容を転送してくれます。査読者からの回答が遅くなる可能性も考慮し、修正した論文の提出期限を延ばせないか相談しておくと安心です。

まとめ

査読回答書は、査読者からのコメントに基づき論文を修正した内容や意図を説明する重要な文書です。記載すべき内容として、基本情報や具体的な修正内容、修正に至った理由が挙げられます。査読者が内容を確認しやすいよう、変更箇所を明確に記載することも重要です。さらに、意見が分かれる場合には、自身の判断理由を丁寧に示すことが求められます。

回答書の作成を効率化するためには、テンプレートの活用がおすすめです。査読コメントに冷静に対応し、論文をさらに高い水準に仕上げるために役立つでしょう。


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