• 作成日 : 2024年6月27日

デジタル化のメリットは?デメリットや導入の考え方、具体例を解説

近年のビジネスシーンは、あらゆる業務でデジタル化への取り組みが進んでいます。デジタル化には多くのメリットがある反面、デメリットもあります。十分に理解したうえで実行しなければ、失敗してしまうおそれがあるので注意が必要です。

本記事では、デジタル化のメリットやデメリット、導入の際にどのような点に注意すればよいのか解説します。

デジタル化とは?

デジタル化とは、アナログな業務や手続きをデジタル技術の活用により効率化・自動化することです。

たとえば、マイナンバーカードを保険証として利用する「マイナ保険証」は、従来の紙による保険証の代わりにマイナンバーカードを活用します。これにより、患者情報の一元管理や、マイナポータルによる医療費控除が可能になるなど、医療関係の手続きの簡素化が期待されます。

デジタル化は、業務の効率化やデータの精度向上、コスト削減を実現するために重要な手段のひとつです。

マイナ保険証の詳細については、下記をご覧ください。

マイナンバーカードの健康保険証利用|マイナポータル

また、デジタル化については下記の記事で詳しく紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

デジタル化とIT化、DX化との違い

デジタル化とIT化、DX化の違いを一覧にまとめると、次のとおりです。

デジタル化属人化している業務や手続きを、デジタル技術の活用により効率化・自動化すること。
IT化属人化している業務に情報技術(IT)を活用すること。
DX化あらゆる業務にデジタル技術を活用し、ビジネスに変革をもたらし新たな価値を生み出すこと。

デジタル化・IT化は、技術を活用して業務効率化を図ることが目的なのに対し、DX化は業務効率化を図ったうえで、さらなる価値を生み出すことが目的です。

デジタル化の具体例

企業におけるデジタル化の具体例を一覧にまとめると、次のとおりです。

電子契約紙の契約書を電子契約サービスで管理
クラウドストレージ重要書類やデータをクラウドで保存・共有
オンライン会議オンライン会議ツールを活用したリモート会議
デジタルマーケティングSNSやメールマーケティングを活用した顧客へのアプローチ
経費計算経費管理ソフトを使用して領収書をデジタル化

これらはあくまで一例です。また、スマートフォンやスマートウォッチ、AIを活用したチャットボットなど、身近なところでもデジタル化は加速しています。

デジタル化が遅れた場合の企業リスク

デジタル化は速やかな対応が求められています。しかし、経営層の知識不足や対応できる人材がいないなどの理由から、デジタル化が遅れている企業も多いです。

デジタル化が遅れた場合、次のようなリスクが考えられます。

2025年の崖

2025年の崖とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で示した課題です。

このレポートでは、日本企業が2025年までにデジタル化を推進しない場合、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しています。

出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ (サマリー)|経済産業省

2025年の崖にある2つの背景は、次のとおりです。

老朽化した基幹システム
  • 20年以上稼動しているレガシーシステムが多数存在する
  • 現代のビジネスニーズに対応できない
  • 維持管理コストが膨大する
デジタル人材不足
  • デジタル化に必要な人材が不足している
  • 人工知能やビッグデータ分析などの専門知識を持つ人材の大幅な不足している

2025年の崖に対応せずにレガシーシステムを使い続けると、業務効率の低下やセキュリティリスクの増大など、深刻な問題に対応できないおそれがあります。

市場での競争力の低下

企業のデジタル化が遅れた場合、他社との競争力の低下・業務効率低下による生産性の低下などの問題が考えられます。

近年は、AIやビッグデータを活用し、市場状況や顧客の興味や関心、購買傾向を分析することが欠かせません。しかし、ツールやデータを活用できないと、正確な市場状況や顧客ニーズが把握できず、取り残されるリスクが高まります。

また、デジタル化がされない業務は情報の検索や共有・分析に手間と時間が余計にかかることになり、生産性が低下することも想定されます。

生産性の低下も競争力に影響するので、業務の早期デジタル化が求められているのです。

デジタル化のメリット

今まで人の手に頼っていた業務をデジタル化することは、業務効率化や生産性の向上などのさまざまなメリットがあります。本章では、主な7つのメリットについて解説します。

多様な働き方の実現

オンライン会議やチャットツールなどを活用することで、出勤しなくても社内にいるのと同様の勤務ができるようになります。これにより、育児や介護・地域活動との両立、地方移住など、個々のライフスタイルに合わせた働き方の選択が可能です。

社内研修もオンラインで行えば、全国の社員が場所や時間を問わず参加できるようになり、社員を招集する手間や交通費の削減にもつながります。

デジタル化は、個々の能力やライフスタイルに合わせた働き方を可能にし、従業員の満足度向上やワークライフバランスの充実につながるのです。

生産性向上・業務効率化が図れる

書類整理やデータ入力などの事務作業がデジタル化により効率化されると、大幅な時間短縮が可能です。削減された時間は、より創造性や専門性を生かせるコア業務や顧客対応に振り向けられるため、従業員のモチベーション向上や顧客満足度向上にもつながります。

このようにデジタル化は、従業員の負担軽減や業務時間の短縮など、さまざまな側面から生産性向上と業務効率化を実現します。

社内の情報共有がスムーズ

紙の資料で情報が保管されている場合、検索に時間がかかる・情報共有がうまくいかないなどの問題が生じていました。しかし、情報をデジタル化し一元管理することで、必要な情報を迅速かつ正確に取得できるようになります。

さらに、ビジネスチャットや社内SNSなどのツールを活用することで、部署や時間帯の制約がなくなり、リアルタイムで情報共有や情報交換をすることも可能です。プロジェクトの進捗状況や最新情報を共有すれば、チーム全体の連携強化が期待できます。

コスト削減につながる

デジタル化することにより、たとえば次のようなコスト削減が可能です。

  • 人件費:顧客対応やデータ入力などを自動化することにより、対応する人員を削減できる。
  • 印刷代:ペーパーレス化することにより紙の使用量を減らせる。
  • 郵送代:手続きを電子化することにより、書類郵送の費用を削減できる。
  • 交通費:テレワークを導入することにより、社員の交通費削減につながる

人為的ミスを防ぐ

業務に合わせて次のようなツールを活用すると、人為的ミス(ヒューマンエラー)を防げるようになります。

定型的な業務を自動化するツール(RPAツール)
  • 繰り返し作業やルーティンタスクを自動化する。
チェックリスト・タスク管理ツール
  • 作業手順や優先順位を明確にできる。
  • 作業漏れや進捗把握が可能になる。
コミュニケーションツールおよびプロジェクト管理ツール
  • チーム間の連携強化や情報共有不足によるエラー防止もできるようになる。

データを蓄積し活用できる

デジタル化によりデータを蓄積し活用すると、顧客のニーズや行動パターンの精密な把握・分析が可能です。ターゲットに合わせた効果的なマーケティングや製品開発により、顧客満足度の向上や売上増加が期待できます。さらに、データを活用して業務フローを分析すれば、余計な業務や工数を特定でき、業務効率化も可能です。

蓄積されたデータは、製品の在庫管理や最新の市場動向にもとづく迅速な意思決定や戦略の立案にも活用できます。蓄積されたノウハウやリスク管理方法を具体化し現場で共有することは、業務の質を向上させることにも役立つのです。

ビジネスの新規事業につながる

マーケティングツールや顧客管理ツールなどを活用することにより、ビジネスの新規事業につながります。デジタルツールによって収集・分析されたデータは、現在の状況を可視化することが可能です。これによりどのように事業を進めていくのか戦略を練りやすくなり、有利な状態で新規事業に参入できます。

ビジネスシーンは日々激変しています。市場での競争力を高めるために、業務のデジタル化は欠かせない要素となっているのです。

デジタル化のデメリット

デジタル化はメリットが多い一方で、デメリットも存在します。ここではデジタル化の3つのデメリットを解説するので、自社の業務や運用面と照らし合わせてみてください。

システム導入にコストがかかる

デジタル化には、ツール導入のための初期費用や月額利用料などのコストがかかります。

導入前に自社の課題や目的に合ったシステムを選び、導入後の運用コストも考慮しましょう。そのうえで、トータルでどれだけの費用がかかるのか算出します。システム導入は、導入後にかかる費用や得られる効果も十分に検討することが重要です。

また、初期費用に関しては、「IT導入補助金2024」のような制度を活用することで負担を軽減できる場合があります。

※IT導入補助金制度:経営課題解決のためにITツールを導入する際に、補助金が受けられる制度

IT導入補助金2024の詳細については、下記のサイトをご覧ください。

IT導入補助金2024|IT導入補助金事務局

セキュリティリスク

デジタル化は、情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティリスクを伴います。適切な対策を講じなければ、企業にとって致命的な被害につながるおそれもあるので、注意しなければなりません。

主なリスクとしては、以下が挙げられます。

情報漏えいデータの改ざんや紛失・流出などにより、顧客情報や機密情報が外部に漏えいする。
不正アクセス不正なユーザーがシステムに侵入し、データを改ざんしたり盗み見したりする。
サイバー攻撃ウイルスやマルウェアによる攻撃を受け、システムがダウンしたり、データが破壊されたりする。

IT人材の必要性

デジタル化を成功させるためには、ツールを活用するIT人材が必要です。しかしIT人材は不足しており、確保が難しいのが現状です。経済産業省の「参考資料(IT人材育成の状況等について)」によると、2030年にはIT人材が40〜80万人不足するとも試算されています。

出典:参考資料(IT人材育成の状況等について)|経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課

IT人材不足を解消するためには、社内教育やアウトソーシングなどの活用も視野に入れると良いでしょう。

デジタル化のメリットを最大限活用する取り組み

デジタル化のメリットを最大限活用するためのポイントを5つ紹介します。

目的を明確にする
  • デジタル化を導入する前に、目的を明確にする。
課題を洗い出す
  • 現状の課題を洗い出し、デジタル化で解決できる課題なのかを検討する。
  • デジタル化は万能ではないため、ほかの解決方法も検討する必要がある。
社内の理解を得る
  • デジタル化は社内全体で進めていくことが重要となるため、経営層だけでなく、現場の社員もメリットを理解し、協力的な体制を整える。
適切なツールを選ぶ
  • コスト・機能・使いやすさなどを比較検討し、総合的に見て自社の課題解決に適したツールを選ぶようにする。
導入後の効果測定をする
  • デジタルツール導入後、課題解決に向かっているのか効果測定を行う。
  • 使用している社員からもフィードバックをもらい、操作が難しい・自社の課題解決に適していない場合には、ツールや業務体制の再検討を実施する。

また、デジタル化の具体例とその効果として次のようなものが挙げられます。

ペーパーレス化の促進
  • 今まで紙で行ってきた経理業務や契約などをペーパーレス化することにより、印刷代や郵送代のコスト削減ができる。
  • ツールを活用すると情報のやりとりにログが残るため、紛失や情報漏えいリスクの軽減につながる。
チャットツールの活用
  • チャットツールを活用することにより、電話やファックスによる煩雑なやりとりを軽減できる。
  • チャットツールを社内でも活用することにより、社員同士の情報共有やコミュニケーションが容易になる。

デジタル化は、ツールを導入してすぐに成果が現れるものではありません。定期的に見直しをしながら、継続的に取り組むことが重要です。

メリット・デメリットを考慮したうえでデジタル化に取り組もう

日々の業務にデジタル技術を活用し効率化を図るデジタル化には、多くのメリットがあります。企業がデジタル化を推進せずに現在の業務を続けた場合、2025年の崖や市場での競争力の低下などのリスクが考えられます。そのため、業務のデジタル化が急がれているのです。

デジタル化にはデメリットもあります。業務をデジタル化するメリット・デメリットを検討したうえで、自社に適したデジタル化を推進していきましょう。


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