• 更新日 : 2024年9月11日

QC工程表とは?項目例や作り方を解説

QC工程表とは、原料の仕入れから製品の完成までの工程が漏れなく記載され、各工程での管理項目と管理方法を明らかにしたものです。QC工程図とも呼ばれます。主に、品質改善や外部への説明資料にする目的で作成されます。

本記事では、QC工程表の内容や使用するシーン、作り方を解説します。作成の際の注意点も説明しますので、参考にしてください。

QC工程表とは?

QC工程表とは、英語で「Quality Control Chart」といい、その名の通り「品質管理(Quality Control)のチャート図」です。製造工程の品質保証方式を定める一覧表であり、原材料の入荷から出荷までの工程で、誰が・いつ・どこで・どのように品質を管理すればよいかがひと目でわかります。

ここでは、QC工程表と作業標準書の違いなどを解説します。

作業標準書との違い

QC工程表と似たものに作業標準書があります。作業標準書とは作業の手順や注意点を記載した書類であり、QC工程表とは異なります。作業標準書に記載された作業内容は、QC工程表で定める品質を満たすものではありません。

まずQC工程表があり、それをもとに作業標準書を作成します。QC工程表は、基本となる品質管理の方法を定めたもので、作業標準書を作成する基準になるものです。

QC工程表とQC工程図の違い

QC工程表は、QC工程図と呼ばれることもあります。QC工程表のほかにQC工程図という別のものがあるわけではなく、どちらも同じものです。

QC工程表(QC工程図)があれば、一覧するだけで品質管理方法や品質を把握できるようになり、監督者が現場を把握しやすくなるといったメリットがあります。新人作業員が作業内容を理解する手助けになり、各工程の問題や改善点もわかりやすくなるでしょう。

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QC工程表を使用する場面

QC工程表を使用するシーンは作業標準書を作成するときをはじめ、多岐にわたります。それぞれのシーンについて、詳しくみていきましょう。

作業標準書を作成するとき

QC工程表は、作業標準書を作成する際の基準となります。作業標準書は実際に現場で作業員が作業をする際に必要な教育資料であり、誰が作業しても同じ製品ができるよう作業手順を定めるものです。

QC工程表は品質管理の土台となるもので、作業標準書はそれぞれの工程でQC工程表の管理基準・項目を満たすように作成されなければなりません。

不具合の原因を調べるとき

QC工程表は、製造工程で発生した不具合の原因を調べる場面でも使用します。製造工程ではさまざまな問題が発生し、それがどの工程で起きたか、どの作業で基準を満たさなかったのかを確認しなければなりません。

QC工程表には全工程のプロセスや管理基準が記載されているため、不具合が起こった工程や作業を特定できます。

不具合の原因を調べて特定することで改善策を講じ、再発を防ぐことが可能です。

外部に説明するとき

QC工程表は、外部に説明する資料としても利用されます。適切な品質管理が行われ、自社の品質管理体制が万全であることを証明するためです。QC工程表で品質管理の工程を示すことで、取引先からの信頼を得られます。

ただし、外部には社内で利用しているQC工程表をそのまま公表するわけではありません。品質管理体制が確認できる部分を抜粋し、説明資料として公表します。

設計変更に対応するとき

製造現場では、材料の変化や工程の見直しなどで設計変更が行われます。その際は、QC工程表の書き換えが必要です。設計変更だけでなく、製造条件や製造方法が変更になるときも書き換えなければなりません。

QC工程表に変更を記録することで、変更がいつ、どのような理由で行われたかがわかり、今後の変更や改善に役立ちます。

QC工程表の記載内容

QC工程表の様式は特に決まりはなく、基本的に自由です。製造する製品や作業内容によって最適な形式は異なりますが、次の3点は必ず記載しなければなりません。

  • 工程
  • 管理点
  • 管理方法

ここでは、3つの項目とその他の記載事項について解説します。

工程

工程は、原材料の受入から製品の完成までの流れを分割して記載します。工程は大きく「加工」「運搬」「停滞」「検査」の4つに分けられます。工程には作業内容により大きな枠組みと細かい部分があり、それぞれ程度は異なりますが、品質保証に必要な項目まで細分化が必要です。

工程はフローチャートで示し、それぞれ工程名と作業名を記載します。情報の記入にはJIS(日本工業規格)で定められている記号を使用することで、外部に公表する際も共通の理解が得られます。

管理点

管理点とは、管理特性と品質特性のことです。それぞれ、フローチャートに記入します。管理特性は品質に影響を与える条件を指し、機械の回転数や電流、加熱温度などが該当します。

品質特性とは、工程によって生じる品質のことです。形状や寸法、重量などを記載します。

求められる品質を維持するためには、管理特性と品質特性の基準をクリアしなければなりません。管理点を記入する際は、基準を満たしているのかを確認することが重要です。

管理方法

管理方法とは、品質を測定・管理する方法のことです。実際に作業する際に使う測定器や測定方法、測定頻度を定めます。また、人により管理方法が異なって管理にばらつきが生じるといった事態が発生しないよう、測定者や責任者も明確に定めなければなりません。

さらに、異常が発生した場合にどのように処理するのか、不良品に該当するものはどう対処するかの記載も必要です。

その他の記載事項

その他、QC工程表には製品や文書管理に関する情報を記載します。製品に関する情報は、製品コードや製品名称、製品の形状や寸法・重量などがあげられます。

文書管理に関する情報は、文書番号や作成日、改訂日・改定理由などです。

関連文書として、各工程で使用する作業標準書を示しておけば、作業をスムーズに進められます。

QC工程表の作り方

QC工程表の作成は、次の手順で行います。

  1. フォーマット・書式を決める
  2. 製造工程の情報を収集する
  3. 管理項目をリストアップする
  4. 項目の管理方法・基準を明確にする
  5. QC工程表を作成する
  6. 適時、変更管理を行う

QC工程表の作り方について、ステップごとに詳しくみていきましょう。

フォーマット・書式を決める

まず、QC工程表のフォーマット・書式を決めましょう。フォーマット・書式に特別な決まりはなく、製造製品や製造方法は会社により異なります。品質を管理するうえで自社に適したものを選んでください。

一般的に使用されているのは、エクセル(Excel)です。他の業務でも使用している会社が多く、コストをかけずに作成できます。エクセルを使い慣れていれば、初めてのQC工程表作成もスムーズに進むでしょう。

製造工程の情報を収集する

QC工程表に記載する製造工程の情報を収集します。情報は、製品設計や製品企画書、部品表、仕様書などを確認し、すべて漏れなく集めましょう。工程に関する情報の一例は、次のとおりです。

  • 工程番号
  • 工程名
  • 設備、機械、工具名
  • 作業方法

これはあくまで一例です。製品や業種により記載内容は異なるため、自社の業務に合わせて項目を適宜カスタマイズしましょう。

管理項目をリストアップする

管理項目の情報もリストアップします。各工程の管理のポイントである管理点について、管理特性と品質特性の管理項目を明確にしましょう。

QC工程表には必要な項目がひと目でわかるようにするという目的があるため、必要最低限の情報を簡潔に記載することも大切です。より細かい情報は、作業標準書に記載するようにしてください。

項目の管理方法・基準を明確にする

各工程における管理のポイントである管理点をどのように測定・管理するか、管理方法・基準を明確にします。

管理方法は、品質管理の要素である「生産の5M」を明確にすることが必要です。生産の5Mとは、「Man(担当者)」「Method(作業方法)」「 Measure(検査)」「Machine(設備)」「Material(材料)」の5つで、これらの項目を明確にすることが大切です。

管理方法には、管理基準から外れた異常事態が発生した場合の対処方法も明確にしなければなりません。

QC工程表を作成する

情報が揃ったら、QC工程表を作成します。収集した情報の記載漏れがないよう記載しましょう。

QC工程表を作成できたら、製造部の責任者がQC工程表の実施可能性を確認します。その後、品質保証部もしくは品質管理部が承認するという流れです。完成されたQC工程表は社内で共有され、製造現場で実施されます。

QC工程表は作成したらそれで完了ではなく、内容を見直しながら改善していくことが大切です。

適時、変更管理を行う

QC工程表作成後は、工程表の通りに実施されているかチェックが必要です。状況の変化や改善に合わせ、適宜変更を行いましょう。製造工程ではさまざまな問題が発生するため、随時見直していく変更管理が求められます。

その際、部門や担当者によって違う版のQC工程表を使うといった事態にならないよう、変更日や変更内容、担当者などを記載し、状況を明確にすることが大切です。

QC工程表を作るときの注意点

QC工程表の作成では、枚数を増やしすぎず、簡潔に記載するなどの注意が必要です。

ここでは、QC工程表を作成するときの注意点を解説します。

枚数を無駄に増やしすぎないこと

QC工程表の製造仕様を細分化すると、数百〜数千種類になることもあります。枚数が増えすぎると管理の手間やコストが増え、非効率な管理になるでしょう。また、不具合の発生時や設計変更などの際に適切な変更ができないことにもなり、QC工程表の円滑な運用が難しくなります。

工程のプロセスが同じものはグループにするなど枚数を減らす工夫を行い、多くても数十種類程度に抑える必要があります。

簡潔に記載すること

QC工程表は一覧表としての役割があり、簡潔に記載することが必要です。品質特性と管理基準が一覧で確認でき、工程全体の流れを把握できるようにすることがQC工程表の役割です。しかし、QC工程表が多くなりすぎるとかえってわかりにくくなり、本来の役割を果たせません。

そもそも工程表のスペースは限られ、具体的な作業内容を詳しく記載するのは難しいといえます。

工程ごとの具体的な作業手順は作業標準書に記載し、QC工程表には参照文書名を記載するにとどめるようにしましょう。

修正・改善を行うこと

QC工程表は、修正・改善を繰り返しながら精度を上げていくものです。精度を上げていくなかで不具合や改善点に気づけるようになり、さらに修正・改善を重ねて品質も向上します。

最初から完成形を目指して品質を高めるタイミングを逃すよりも、徐々に精度を上げていくというスタンスで取り組むことで、効率的に品質の改善を実現できるでしょう。

QC工程表を作成して品質管理の質を高めよう

QC工程表は、製造業で品質を管理するために欠かせない管理方法です。作成により監督者が工程全体を管理しやすくなり、品質管理体制が万全であることを外部に説明する資料にもなります。

QC工程表の作成では、工程の流れをフローチャートで記載し、管理点や管理方法の記入が必要です。

記事で紹介した作り方や作成時の注意点も参考に、QC工程表を作成して品質管理に役立てましょう。


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