• 作成日 : 2024年11月5日

ペーパーレスの効果とは?5つのコストの算出例、高めるポイントを解説

ペーパーレスを実現することでさまざまな効果が期待できます。ペーパーレスの進まない企業は、ペーパーレス化による具体的な効果をイメージできていないことが多いです。

この記事では、ペーパーレス化により、どのような効果があるのかを徹底解説します。効果を高めるツールやポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ペーパーレスの効果とは?

ペーパーレスの効果を5つの観点から解説します。自社の業務課題を把握し、どのような効果が見込めるのかを考えることが大切です。

コスト削減の効果

ペーパーレス化により、紙の印刷が不要になります。紙の購入費用に加え、インク、トナー、プリンターのメンテナンス費用を大幅に削減できます。印刷関連の費用はかさむケースが多いため、これだけでも大きなコスト削減効果を得られるでしょう。

また、紙の物理的な保管スペースが不要になることも大きなメリットです。オフィスのスペースを節約できるだけでなく、大規模な保管場所のリース費用や保管に伴う管理コストも削減できます​。

人・働き方への効果

ペーパーレス化を実現すれば、書類の物理的な保管が不要になり、どこからでもデータにアクセス可能になります。これにより、オフィスに行かずとも自宅や外出先で仕事を進められるようになり、柔軟な働き方が実現します。

また、デジタル署名やオンライン承認の導入により、テレワーク時でもスムーズに業務を進められます。

モノの削減効果

紙媒体をメインとした業務では、プリンター、コピー機、FAX機などが必須でしたが、ペーパーレスではこれらの機器は不要です。

インターネットFAXやデジタル署名の導入により、FAXの送受信もデジタルで行えるため、紙を使わない効率的な業務を実現できます。

時間の削減効果

紙の資料を探すには、時間がかかります。場合によっては、該当資料が見つからず資料を作成し直すこともあるでしょう。デジタル化された資料ならファイル名やキーワード検索で瞬時に必要な情報を見つけられます。

また、ワークフローシステムやクラウドサービスを活用することで、書類の承認や共有などの業務が自動化され、手作業での処理にかかっていた時間を短縮可能です。

環境保護への効果

紙の消費を削減することで、紙の原料となる木材の伐採を抑えられ、紙の焼却時に発生するCO2の排出量の削減を期待できます。

ペーパーレス化は、SDGs(持続可能な開発目標)に深く関連しており、企業としての環境保護の推進や、持続可能な社会の実現に向けた国際的な取り組みに貢献できます。

ペーパーレス化によるコスト削減の効果を算出

書類1枚当たりの印刷代の目安は、A4サイズ・モノクロで3円〜4円です。10,000枚印刷すると、30,000円〜40,000円のコストがかかります。

印刷代に加えて、用紙代もA41枚あたり0.6円〜0.7円ほどかかるため、毎月一定の負担があります。ペーパーレス化することで、大幅なコスト削減を期待できるでしょう。

ペーパーレス化による働き方への効果を算出

ペーパーレス化は、リモートワーク導入のきっかけにもなります。リモートワークを実施できれば、社員の通勤にかかる経費や会議室の電気代などの節約につながります。

たとえば、通勤交通費が1ヶ月あたり20,000円/人かかる企業では、従業員10名のリモートワークを実現することで、200,000円の経費を削減できます。

多くの社員を雇用する企業であれば、リモートワークの導入で、1ヶ月あたりの経費を大幅に削減できる可能性があるでしょう。

ペーパーレス化によるモノの削減効果を算出

モノクロ文書を電子化すると、CD1枚に約10,000ページ以上を記録できるといわれています。厚さ約5cmの一般的なバインダーに換算すると、30冊~40冊になります。

1m幅以上のキャビネットをいくつも抱えていることになると、文書の保管にかかるスペース費用の負担も少なくないでしょう。書類の電子化を実現し、月額数百万円のコスト削減に成功することもあります。

ペーパーレス化による時間の削減効果を算出

ペーパーレスは、業務時間の削減にも効果的です。コクヨ株式会社によると、書類を探すのに1日あたり約20分、年間約80時間(営業日240日として換算)費やしているという結果が出ています。

書類をデジタル化することで、書類を探す時間を削減できるだけでなく、書類の郵送やファイリングなど数十分かかる業務も、PC上の作業なら大幅な効率化が望めます。

参考:コクヨ株式会社「書類を探す時間は“1年で約80時間”」

また、ペーパーレス化を実現しリモートワークが可能な環境になれば、通勤時間が不要になるため、ワークライフバランスの向上にもつながるでしょう。

ペーパーレス化による環境保護への効果を算出

ペーパーレス化が実現すれば、紙の焼却量の削減にもつながります。1kgあたりの可燃ゴミを燃やしたCO2排出基準値は0.34とされており、以下の式からCO2排出量を算出できます。

CO2排出量の目安=紙の重さ×CO2排出基準値(0.34)

1枚4gのA4サイズの普通紙1,000枚は約4kgとなり、1,000枚の紙を削減できれば、約1.36kgのCO2を削減できます。

また、50kgの紙を生成するには1本の木が必要といわれており、A4用紙を1万枚~1.5万枚削減できれば、木を1本保護することが可能です。森林の保全はCO2を削減し、地球温暖化の加速防止につながります。

ペーパーレスによる効果が実感できない要因

ペーパーレスに向けた仕組みを構築したけれど、なかなか効果を実感できないでいる企業も多いでしょう。ここでは、考えられる要因を解説します。

ハンコ・押印文化が続いている

ペーパーレス化の仕組みを整えたとしても、押印文化が変えられないと日常の業務にペーパーレスが浸透しません。書類にハンコを押すためだけに出社しなければならないケースが発生し、ペーパーレスの効果を実感できない要因となります。

特に複数の拠点を持つ企業では、押印のために移動が必要になるケースもあり、業務効率の低下や生産性阻害の原因になります。

ITリテラシーが不足している

ペーパーレス化を実現するにはPCやタブレットを使った業務の遂行が求められますが、IT機器やツール・システムの利用に慣れていない従業員が多い企業では、その導入がスムーズに進みません。

社員教育を充実させることが解決策の一つとなりますが、サポートが不十分な場合は操作ミスや業務の遅延が発生し、ペーパーレス化の効果を実感しにくくなってしまうでしょう。

システムの費用が高額

ペーパーレス化を進めるには、紙の書類をデジタル化するためのクラウドシステム、セキュリティ対策などのITインフラの整備が必要で、高額な初期投資がかかります。さらにクラウドストレージの利用料やソフトウェアの更新費用が毎月発生します。

特に複数のシステムを導入している場合、不具合や故障時のメンテナンスを含む維持コストが膨らみやすいため、費用対効果が見合わないように感じられます。

情報の検索に時間がかかる

デジタル化に向けた体制を整備したとしても、情報の検索に時間がかかると、ペーパーレスの効果を実感できないでしょう。ファイル名や保存場所に関するルールが統一されていないと、必要な書類を見つけるまでに時間がかかってしまいます。

また、システム障害やネットワーク環境の問題が頻繁に発生してしまうと、欲しい情報のアクセスに時間がかかり、紙の書類の方が便利だと感じてしまう従業員も少なくありません。

リモートに対応していない

ペーパーレスと並行で、リモートで仕事ができるように、働き方も整備していくことが大切です。せっかくペーパーレス化を進めても、リモートワークでスムーズにシステムを利用できないと、ペーパーレス化の効果を実感できません。

遠隔での業務でもシステムやツールに障害やトラブルが起こることなく業務を進められるかを、事前に検証する必要があります。

ペーパーレスの効果を高めるツールやシステム

「ペーパーレス化に伴う2024年度予算に関する調査」によると、ペーパーレス化を進めるシステムとして導入しているものの上位は、電子ワークフロー(稟議書・申請書)、見積書請求書発行システム、電子契約、経費精算システムという回答となっています。

参考:ペーパーロジック株式会社「【リサーチ】ペーパーレス化に伴う2024年度予算に関する調査」

ここでは、各システムのペーパーレスへの効果を解説します。

電子ワークフロー(稟議書・申請書)

電子ワークフローシステムは、従来の紙ベースの稟議書や申請書をデジタル化し、効率的な業務処理を可能にするシステムです。稟議書や申請書の作成から承認までのプロセスを自動化し、組織内の意思決定をスムーズに進められます。

電子ワークフローでは、デジタル化された書類が自動的に適切な承認者に送信されます。どこからでも承認可能となり、業務の停滞を避けられます。

見積書・請求書発行システム

見積書・請求書発行システムは、企業の見積書や請求書を効率的に作成・発行し、関連業務を自動化するクラウド型ツールです。

自動作成・送信機能を備えており、取引先情報や金額を一度設定すれば、毎月の請求書作成を自動化できます。また、誤送信や漏れを防ぐ仕組みも含まれており、万が一ミスが発生しても即座に訂正や再発行が可能です。

電子契約

電子契約システムは、契約書の作成、署名、保管をデジタル化することで、従来の紙ベースの契約業務の効率化を図るシステムです。

契約書の印刷や郵送といった作業が不要となり、契約締結までの時間を大幅に短縮できます。また、契約の進捗やステータスをリアルタイムで確認できる機能があり、誰がどの段階で承認したかを追跡可能です。

経費精算システム

経費精算システムは、企業の経費管理業務を効率化・自動化するためのツールで、申請から承認、支払いまでの一連のプロセスをデジタル化します。

システムの種類によって搭載されている機能が異なります。一般的に搭載されているシステムは以下のとおりです。

  • OCR機能
  • 路線検索機能
  • 交通費自動計算機能

スマートフォンで領収書を撮影し、日付や金額などを自動で読み取って入力できるOCR機能や、路線検索サービスと連携し入力した移動ルートに基づいて交通費を自動計算できる機能など、経費精算の手間を省く機能が充実しています。

ペーパーレスを効果的に進めるポイント

ペーパーレス化を検討する際には、実現した後に効果を最大化することが大切です。ここでは、ペーパーレスの効果を高めるポイントをいくつか紹介します。

スモールスタートから始める

まずはスモールスタートから始めることで、トラブルを最小限に抑え、スムーズにペーパーレス化を進められます。

扱う書類の数が少ない部署や特定の業務に限定して、システムを導入したワークフローを試しつつ、軌道に乗ってきた段階で、徐々に他の業務にも浸透させていくのがよいでしょう。

目的を明確にする

ペーパーレス化には多くのメリットがありますが、目的が不明確であれば、期待した効果が得られないこともあります。

たとえば業務効率化を目標とする場合は、紙ベースの業務をデジタル化することと並行して、リモートワークでの業務の進め方やマニュアルを整備するなど、業務課題の改善に努めることが大切です。

クラウドシステムを導入する

クラウドシステムの導入はペーパーレス化を進めるうえで重要なステップです。クラウドシステム導入により、データの更新が容易になり、また検索性も向上します。さらに、どこからでもアクセス可能になるので、リモートワークもしやすくなります。

自社の目的に応じて、必要な機能が搭載されているシステムを選びましょう。

従業員の意識を変える

従業員の意識改革もペーパーレス化の効果を高めるうえで重要です。全ての社員にペーパーレス化の目的を共有し、協力を仰ぐことが初歩です。

特に年齢層が高い従業員は、デジタルツールへの抵抗感を持つことが多いため、ペーパーレス化により得られる具体的なメリットを伝えることがポイントです。

セキュリティ対策を強化する

セキュリティ対策の強化も、ペーパーレス化を進めるうえで不可欠です。クラウドストレージを活用することでデータを分散して保管でき、災害時やシステム障害が発生した場合にデータが失われるリスクを軽減できます。

また、情報流出や不正アクセスを防ぐためには、二要素認証やデータ暗号化、定期的なシステム監査などを導入し、安全性を確保する必要があります​。

ペーパーレス化はマネーフォワードがサポート

社内のペーパーレス化の推進はマネーフォワードがサポート。経理・会計業務の効率化や自動化を支援するさまざまなサービスを提供しており、自社の課題に応じて、最適なシステムをご利用いただけます。

  • 請求書のペーパーレス化・電子化
  • 経理業務のペーパーレス化・電子化
  • 給与計算・勤怠管理のペーパーレス化・電子化
  • 契約・法務のペーパーレス化・電子化

「マネーフォワード クラウド」サービスはIT導入補助金にも対応

マネーフォワード クラウドは、IT導入補助金にも対応しています。IT導入補助金は、小規模事業者がITツールを導入する際に、費用の一部を国が負担する制度です。対象要件を満たすことで、利用料金の最大80%の補助を得られます。

詳細は以下ページよりご確認ください。

業務の課題を明確化し、ペーパーレスの効果の最大化を!

ペーパーレス化を実現することで得られる効果はさまざまです。ITツールやシステムを導入すれば、業務の効率化や生産性の向上につながると安易に考えがちですが、自社の業務における課題を把握し、目的を組織内で共有していくことが、ペーパーレス化の効果を高めるうえでのポイントです。

この記事を参考に、ペーパーレス化に向けて準備を進めてみてはいかがでしょうか。


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