- 作成日 : 2024年7月24日
情報管理とは?管理すべき情報や情報漏洩の原因、具体的な対策を解説
企業における情報管理とは、情報を必要なタイミングで取り出せる状態を保ちつつ、保護して流出を防ぐことです。情報管理は会社経営を進めるうえで重要なタスクですが、正しいやり方をしないと情報漏洩や企業イメージの低下につながってしまいます。この記事では、管理すべき情報や情報漏洩の原因、具体的な対策について解説します。
目次
情報管理とは?
情報管理とは、顧客情報や自社のノウハウといった情報を、いつでも利用できる状態にしながら、外部から保護して流出を防ぐことです。
日々の業務ではさまざまな情報が蓄積されていき、それらは企業の重要な財産となります。せっかく蓄えた情報財産であっても、すぐに利用できなければ意味がありません。また、情報漏洩すれば業務を妨げるだけでなく、深刻な問題に発展することもあります。
たとえば、2024年5月24日には、積水ハウス株式会社が約83万件の情報漏洩および漏洩懸念が判明したことを発表しています。会員制サイトの不正アクセスを受け、登録されていた顧客や従業員等の情報に影響がありました。※
※出典:サイバーセキュリティ.com「個人情報漏洩事件・被害事例一覧」
情報漏洩は企業へ大きなダメージを与えるリスクがあるため、情報管理を徹底することで、上記のような事件を未然に防ぐ必要があるのです。
企業が情報管理すべき種類
企業で情報管理すべき書類はさまざまですが、とくに以下の情報は重要です。
- 顧客の個人情報
- 社員の個人情報・人事情報
- 社内の機密情報
個人情報が社外に流出すると、取引先企業や顧客に被害が及び、企業の信頼を下げる恐れがあります。社内の機密情報が流出すれば、今後の経営に影響も出てくるでしょう。
以下では、それぞれの情報の特徴と適切な情報管理が必要な理由を解説します。
顧客の個人情報
個人情報とは、特定の個人を識別できる顧客の情報のことで、性別・年齢・生年月日だけでなく、商品の購入履歴なども含まれます。
個人情報が漏洩すれば、個人情報保護法によって罰則を受ける・企業の信用が低下するなど、企業に悪影響を及ぼします。
また、顧客の個人情報は、顧客のニーズや購買傾向を分析し、より良い製品やサービスを提供するために重要な情報です。効果的な顧客アプローチや既存顧客とのコミュニケーションには、適切な情報管理が必要となるでしょう。
社員の個人情報・人事情報
個人情報は顧客だけでなく、企業に勤める社員の個人情報も対象です。人事情報と呼ばれることもあり、入社年月日や所属部署・保有資格・表彰歴なども含まれます。
人事情報が漏洩すると、企業の信用が低下することによって離職者が増えたり、損害賠償を請求されたりすることもあります。
人事情報の管理は、漏洩を防ぐのはもちろんですが、人事担当者の業務効率も大きく向上させるものです。社員の個人情報が体系的に整理されていれば、効率的な人材育成やチーム編成ができるため、組織全体の生産性向上につながるでしょう。
社内の機密情報
社内の機密情報とは、外部に漏らしたくない企業にとって重大な情報のことです。顧客情報や人事情報も含まれますが、ほかにも財務情報やクレーム情報、開発中の商品情報なども該当します。
機密情報が漏洩すると、罰則を受けることがあります。もし、取引先の情報も一緒に漏洩してしまった場合、膨大な損害賠償を支払うリスクもあるので注意が必要です。
また、機密情報は自社のビジネスを守るためにも適切な管理が重要です。今後の経営戦略や革新的なアイディアなどの情報を守ることで、企業の成長や売上の上昇を目指せるようになるでしょう。
情報管理のポイント
情報管理は、以下3つのポイントを押さえて行いましょう。
- 情報を検索しやすく整理する
- 情報を保護し漏洩させない
- 情報を適切に役立てる
情報を検索しやすく整理する
まずは業務プロセスに沿って、社内情報を洗い出します。さまざまな部署に情報が存在することもあるため、部署ごとでわけずに全社的に行うとよいでしょう。
情報が洗い出せたら、整理をします。分類をする際には、情報の重要度や情報漏洩によって起こり得る損失の大きさなどを基準にし、重要度順に把握できるようにしましょう。
整理ができたら管理ルールを設定します。情報がどこに格納されているのか把握したうえで、分類方法や保存方法を決めて、誰でも検索しやすいように整理しましょう。
情報を保護し漏洩させない
情報が整理できた後は、きちんと保護して漏洩しないための対策を講じることが重要です。情報漏洩の対策として有効な手段は、主に以下の2つです。
- セキュリティソフトを導入する
- 社員への教育でリテラシーを高める
外部から情報を保護するには、セキュリティソフトの導入が有効です。信頼性の低いWebサイトを開こうとした際に遮断するなど、情報漏洩のリスクを未然に防ぐ役割を果たします。
また、社員一人ひとりの情報管理への意識を高めることも重要です。情報の扱い方をきちんと知ることで、人為的ミスによる情報漏洩を防ぎやすくなるでしょう。
情報を適切に役立てる
適切に管理された情報は、業務で利用しやすくなります。
たとえば、顧客情報を管理していれば、既存顧客のデータを元に新商品の開発や広告の運用が可能になります。人事情報は、年末調整の作成や住民税の更新など、定期的に発生する業務で役立つでしょう。
適切な情報管理は、必要な情報を取り出すための時間を短縮でき、各部署の業務効率を大幅に向上させます。
情報管理を怠った場合のリスク
情報管理を怠ってしまった場合、以下3点のリスクがあります。
- 情報漏洩やデータの改ざん
- データベースの破壊
- 企業イメージの低下
情報漏洩やデータの改ざん
情報管理を怠ると、情報漏洩のリスクが高まります。情報漏洩が発生すると、復旧作業や再発防止策の作成など、さまざまな対応に追われ、通常業務が停滞する可能性があります。
また、サイバー攻撃によるデータ改ざんの危険性も無視できません。自社のWebサイトの内容が勝手に変更されたり、拙い文章に改ざんされたりするリスクがあります。ほかにも、ログインに必要なデータが改ざんされ、管理者がアクセスできない状態に陥ることもああります。
データベースの破壊
情報管理を怠り、アクセス権限の管理やセキュリティ更新などが適切に行われていないと、データベースを構築するハードウェアの障害やサイバー攻撃によるデータ破壊のリスクが高まります。
企業の生命線とも言える顧客情報や取引履歴を含むデータベースの喪失は、業務が突然ストップしてしまうだけでなく、莫大な復旧コストと時間を要するでしょう。
さらに、情報流出で顧客の信頼を失うと、企業の評判が長期にわたって傷つきます。これは市場での競争力を弱め、場合によっては法的な問題にも発展し、企業経営に深刻な打撃を与える可能性があります。
企業イメージの低下
情報漏洩が発生し、ニュースに取り上げられるなどで世間に公表されると、企業イメージが低下してしまいます。場合によっては取引先や消費者が金銭的な損失を被ったり、損害賠償を請求されたりする恐れもあります。
そうなると企業への信頼が失われ、顧客は離れていくでしょう。顧客が離れれば売上が低迷して業績が悪化し、そして株価上昇にも影響が出るなど、悪循環が起こります。
企業イメージの低下は今後の経営に大きく影響し、信頼度を回復するには時間がかかります。企業イメージを担保するうえでも、情報管理の徹底を心がけましょう。
情報漏洩が生じる主な原因
適切な情報管理ができていないと、情報漏洩につながります。情報漏洩が生じる主な原因は、以下の5つです。
- 第三者からの不正アクセス
- 誤操作などのヒューマンエラー
- モバイルデバイスの紛失
- 不適切なWi-Fi接続
- セキュリティ対策の不足
第三者からの不正アクセス
第三者からの不正アクセスとは、SNS・Webサービスの乗っ取りや、ログイン情報を盗聴して不正に取得するなどの行為を指します。
株式会社東京商工リサーチによる2023年「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」調査によると、個人情報の漏洩・紛失事故は175件発生しており、そのうちの53.1%がウイルス感染・不正アクセスによるものでした。
半数以上は不正アクセスが要因であることに加え、事故件数は5年連続で最多を更新しています。
※出典:株式会社東京商工リサーチ「2023年『上場企業の個人情報漏えい・紛失事故』調査」
不正アクセスを回避するため、セキュリティ対策を強化していくことが求められるでしょう。
誤操作などのヒューマンエラー
誤操作とは、メールアドレスの流出事故が代表的な例です。複数の受信者にメールを送る際、「BCC」を使用すれば、各受信者は他の受信者のアドレスを見ることができません。しかし、誤って「TO」や「CC」を使用すると、すべての受信者のメールアドレスが他の受信者に表示されてしまい、意図しない情報漏洩につながります。
ほかにも、未公開の社内情報を誤って公開する、重要情報をシュレッダーにかけずにゴミ箱に破棄するなどもヒューマンエラーに該当します。
社員のリテラシー不足だけでなく、疲れやストレスなども要因になるため、情報管理の教育に併せて働き方の見直しが必要な場合もあるでしょう。
モバイルデバイスの紛失
企業から社員へ業務用のスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを支給するケースがありますが、紛失すると情報漏洩につながる恐れがあります。社内だけで利用しているだけならともかく、外出先に持ち出すと置き忘れや紛失のリスクが高まります。
また、電車など多くの人がいる中で社内情報やメールをチェックすると、他人に覗き見されて情報漏洩するケースもあるでしょう。
不適切なWi-Fi接続
不適切なWi-Fiとは、主に「フリーWi-Fi」のことです。飲食店や公共施設などで提供されているフリーWi-Fiは、ID・パスワードが不要で簡単に接続できます。
誰でも接続できて便利ですが、セキュリティ対策が不十分なため、同じフリーWi-Fiに接続している第三者へ情報漏洩するリスクがあります。知らない間に自身のパソコンやスマートフォンに侵入され、重要な情報が抜き取られるリスクがあるので注意しましょう。
ビジネス用で使用する機器ではフリーWi-Fiを利用せず、ID・パスワードが設定されていて、セキュリティ対策が施されたWi-Fiを利用するのがおすすめです。
セキュリティ対策の不足
不正アクセスから情報を保護するには、セキュリティ対策が重要です。適切なセキュリティ対策がされていないと、情報漏洩しやすい状態に陥ります。
信頼性の高いセキュリティソフトを導入し、「マルウェア感染」などのサイバー攻撃から情報を守りましょう。ただし、新しいセキュリティソフトの導入にはコストがかかります。
まずは、すでに導入しているセキュリティソフトを最新の状態にアップデートするなど、すぐに取り組めることから対策するとよいでしょう。
情報管理の具体的な方法
情報管理の具体的な方法を解説します。以下3つの方法に沿って情報管理をしましょう。
- 情報廃棄までのルールを確立する
- 情報セキュリティポリシーを定める
- 情報管理に役立つITツールを導入する
情報廃棄までのルールを確立する
適切な情報管理をするうえで、まずはルールを確立することが重要です。ルールが決まれば、社員の誰もが一つひとつの情報を管理しやすくなり、誤操作などのヒューマンエラーを防ぐことにつながります。
ルールを策定する際には、管理者を決めてルールが徹底的に守られるようにしましょう。責任の所在が明らかになることで質問がしやすくなったり、社員の情報管理への意識が高まったりします。
情報破棄をする際は、少量の紙であればシュレッダーにかけ、量が多ければ専門の業者に依頼して焼却処理などを行います。電子データの場合も、ファイルを抹消できるソフトを利用するなどできちんと処理しましょう。
情報セキュリティポリシーを定める
情報セキュリティポリシーとは、企業が実践する情報セキュリティ対策の方針のことで、これにより具体的な対策の順序や内容が明確になります。
情報資産をきちんと管理できるようになるだけでなく、その情報をなぜ守るべきかといった理由も示されるため、社員のセキュリティ意識の向上も期待できます。
万が一情報漏洩が発生した際にも、情報セキュリティポリシーによって対処法が決まっていれば、迅速な対応も可能になるでしょう。
情報管理に役立つITツールを導入する
ITツールを導入することで、情報が一元管理できるようになります。社内にはさまざまな種類の膨大な情報が存在します。一元管理することで社員が必要な情報を取り出しやすくなるでしょう。
ITツールにはいくつか種類があり、使用用途や目的によって利用すべきツールが異なります。たとえば、ドキュメント共有をするなら「Google Drive」などのファイル管理ツール、タスクの進捗管理をしたいなら「Backlog」のようなタスク管理ツールがおすすめです。
情報管理に役立つ資格
情報管理の実践において、情報セキュリティ資格の取得は重要な一歩となります。資格試験の勉強を通して、情報管理のスキルが身につき、キャリアアップにも有効です。ただし、情報セキュリティ資格は豊富な種類があるので、目的に合わせて資格を選びましょう。
たとえば、国家資格の「情報セキュリティマネジメント」は、社内のセキュリティを確認しながらマネジメントする管理職におすすめです。エンジニアであれば、ネットワークの保護に必要な知識が問われる「CCNA Security」を受験するとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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