• 作成日 : 2024年10月18日

行政のペーパーレス化が進まない理由|電子化のメリットや成功事例も解説

行政では紙での業務が多いため、ペーパーレス化をすることで情報の保管や共有、検索などが容易に行えるようになり大幅に業務効率化につながることが期待できます。しかし、紙文化が根強く、ペーパーレス化を意識する自治体が多いのに対して、導入は未だあまり進んでいません。

当記事では、行政のペーパーレス化が進まない理由や電子化のメリット、ペーパーレス化を進めるポイントなどを解説します。

行政のペーパーレス化はなぜ進まない?現状と理由

多くの企業ではペーパーレス化が進んでいる一方、自治体でもペーパーレス化の推進を行っています。総務省の2024年の資料によると、調査に回答した511の市町村のうち、75.7%がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に向けた取組の1つとして、ペーパーレス化を掲げています。しかし自治体の業務において、ペーパーレス化はまだ全体に行き届いていないことが現状です。

出典:「総務省」自治体デジタル・トランスフォーメーション (DX)推進計画 【第2.3版】

以下の見出しでは、行政のペーパーレス化が進まない理由を詳しく見ていきましょう。

導入コストがかかる

ペーパーレス化の推進には、まとまった初期費用がかかります。ペーパーレス化を進めるためには、紙の書類を電子化する機器とあわせて、情報管理システムや情報共有システム、電子契約システムなどの導入も必要なためです。

長期的な目線で見れば、ペーパーレス化は自治体のコストカットにつながります。しかし、目先の初期投資に抵抗を感じ、機器の導入に二の足を踏んでしまうケースは珍しくありません。

システムのセキュリティの不安がある

ペーパーレス化の過程では、システムセキュリティ上の不安も浮上します。紙での手続きに慣れている職員の場合、書類を電子データで保存するやり方に不安を感じるケースも多いでしょう。万が一情報が漏えいすれば、自治体の信用失墜につながりかねません。

しかし現在は、セキュリティリスクが適切に管理されていることを証明するISMS認証を取得しているサービスが多数あります。第三者機関の審査でセキュリティの安全性が証明されたシステムを導入することで、システムセキュリティへの不安は軽減可能です。

業務オペレーションの変更が難しい

職員の多くが紙での業務に慣れている場合、業務オペレーションの変更が難しいこともあります。ペーパーレス化を推進するには、電子機器の操作や新しい業務を覚える労力が発生するため、職員の理解・協力が不可欠です。

慣れない電子機器などを導入する場合、業務効率の低下を防ぐために、必要な職員に対してITリテラシーのサポートや研修も実施する必要があります。

行政でペーパーレス化をするメリット

ペーパーレス化を進めることで、大量の行政文書を収納していたラックが不要となり、オフィスのスペースを有効活用できるなど、さまざまなメリットが生じます。以下の見出しでは、行政でペーパーレス化をする代表的なメリットを3つ紹介します。

業務効率化が図れる

ペーパーレス化により、業務の効率化を図れます。電子機器の活用により、従来手書きしていた書類の作成時間を節約できるうえ、データ化された情報は共有や検索、閲覧も容易です。紙文書の場合、現物が保管されている場所に出向かないと確認できませんが、電子データなら場所を選ばず必要なタイミングで書類を確認できます。

コスト削減につながる

自治体がペーパーレス化に取り組むことで、以下のようなコストを削減できます。

  • 紙代
  • 印刷代
  • 印刷機の管理・維持費用
  • 書類の郵送費用
  • 書類の廃棄費用

ペーパーレス化をするには、電子機器の導入などの初期費用がかかりますが、長い目で見ればコスト削減につながる可能性が高いです。また、紙の文書の量を減らすことで、文書保管にかかる費用やスペースも削減できます。

情報漏えいや紛失リスクの防止になる

安全性の高いシステムを導入して電子文書を正しく管理すれば、情報漏えいや紛失のリスクを軽減可能です。紙の文書の場合、意図せず紛失するリスクがあるうえ、盗み見や持ち出しによって機密事項が外部に流出する可能性もあります。

一方、クラウドシステムを導入してデータを管理した場合、アクセス制限やパスワードを設定することで、アナログ文書より強固なセキュリティ性を確保できます。

失敗しない行政のペーパーレス化を進めるポイント

行政のペーパーレス化を推進するには、事前にいくつかのポイントを押さえておく必要があります。以下の見出しでは、行政の業務をペーパーレス化する際に意識すべきポイントを4つ見ていきましょう。

ペーパーレス化の意義や目的の理解

ペーパーレス化の推進には、実際に電子データや機器を扱う自治体職員の理解が不可欠です。特に紙ベースの業務による支障が生じていない職場では、職員が意義や目的を理解していない場合、ペーパーレス化が浸透しない可能性があります。

職員の理解を求めるには、DX推進・ペーパーレス化の意義や目的を明確にし、勉強会や資料共有などを行いましょう。ITリテラシーが高い職員に意義や目的を理解してもらい、全体的なペーパーレス化への土台を作ることも大切です。

紙業務内容とペーパーレス化業務の洗い出し

現在紙で行っている業務を洗い出してリスト化しましょう。リスト化する際は、全部署の業務を細かなものまですべて書き出すことがポイントです。

リスト化が完了したら、それぞれの業務が必要なものか、電子化できるかどうかを検討します。検討にあたっては、技術的な可否だけでなく、ペーパーレス化によって業務フローに問題が生じないかをチェックしてください。ペーパーレス化のプロジェクトメンバーだけで決めるのではなく、現場で働く職員の意見にも耳を傾けることが重要です。

導入システム・ツールの決定

ペーパーレス化に向けて、目的や実状に合ったシステム・ツールを選定しましょう。システム・ツールを選ぶ際は、コストや業務効率だけでなく、職員や利用者にとっての分かりやすさもチェックしてください。操作が難しいシステム・ツールを導入すると、かえって作業効率や利便性が下がるリスクもあるため要注意です。

部分的なペーパーレス化の導入

経費清算や勤怠管理、一部の契約書の電子化など、取り組みやすい業務から部分的にペーパーレス化を進めてください。いきなりすべての業務をペーパーレス化すると、職員や利用者への負担が大きくなり、現場の混乱につながります。

取り組みやすい業務や電子化の効果が大きい業務から優先的にペーパーレス化を進め、課題や成功例を収集しながら、徐々に電子化の範囲を広げましょう。

行政のペーパーレス化の成功事例

ペーパーレス化が遅滞する自治体がある一方、ペーパーレス化による業務効率の向上に成功した自治体もあります。以下で、行政によるペーパーレス化の成功事例を紹介します。

長野県長野市

印刷や配布に多大なコストと労力がかかる会議資料をペーパーレス化しました。政策会議・部長会議の資料を実証実験として段階的にデジタル化を進め、最終的に資料の準備にかかる時間を約6分の1に短縮、紙代約300万円の削減にも成功しました。

青森県 弘前市

幹部会議へのペーパーレス会議システムの導入により、2017年度に紙代・トナー代約142,000円、紙資料約14,000枚の削減に成功しました。ペーパーレス化により、資料品質やセキュリティ性の向上にもつながっています。

神奈川県

2018年度、電子決裁機能を備えた文書システムを採用し、幹部が率先して電子決裁システムを利用することで、全庁での電子決裁率が向上しました。また、完全ペーパーレス化が困難な一部の業務に配慮して、文書の一部に紙資料が含まれていても電子決裁ができる「併用決裁」にも対応しています。

ペーパーレス化を推進する際は、ぜひ他の自治体の成功事例も参考にしてみてください。

ペーパーレス化で行政の業務効率化とコスト削減を図ろう

行政では導入コストやシステムのセキュリティへの不安、業務オペレーションの変更の難しさなどの理由から、ペーパーレス化が全体に行き届いていません。ペーパーレス化を進める場合は、職員がデジタルでの作業に問題なく移行できるよう、ペーパーレス化の意義や目的を共有し、部分的にペーパーレスにしていくのがポイントです。


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