- 更新日 : 2023年9月28日
OODAループとは?PDCAサイクルとの違いや導入手順、具体例を解説
OODAとは読み方を「ウーダ」といい、変化の激しい状況で成果を得るために用いられる手法です。後戻りすることができる手法ということで「 OODAループ」とも呼ばれ、PDCAサイクルに代わる手法として注目されています。
本記事では OODAの意味やPDCAとの違い、メリット・デメリットなどを紹介します。
目次
OODA(ウーダ)とは?
OODAは「ウーダ」という読み方で、変化する状況で成果を得るために使われるフレームワークです。
ここでは、 OODAの意味を解説します。
OODA(ウーダ)の意味
OODAはObserve(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字をとった言葉で、PDCAサイクルに似た、検証のための手法です。変化の速い状況で役立つ手法とされています。
OODAは、以下の4つのステップで行います。
- Observe(観察):置かれている状況を観察し、客観的な情報を集める
- Orient(状況判断):Observeで出た情報を分析し、状況判断を行って行動を決める
- Decide(意思決定):具体的な手段を設定して意思決定を行う
- Action(行動):決定した内容を行動に移す
OODAループとは?
OODAはObserve(観察)から始まりObserve(観察)に戻る手法です。PDCAサイクルは後戻りが難しい「サイクル」であるのに対し、OODAは途中で後戻りができる「ループ」であり、「OODAループ」とも呼ばれます。
OODAループでは「Observe」で客観的な情報を集め、「Orient」で現状を分析します。現状が変わらないうちに「Decide」で素早く意思決定を行い、その結果を「Act」で迅速に検証するという流れです。結果に基づいて、再度「Observe」へと戻ります。
OODAとPDCAとの違い
OODAとよく似たフレームワークに、PDCAがあります。PDCAは「Plan(企画立案)」「Do(実施)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字をとった言葉で、Plan(計画)に基づいた一連の意思決定・行動のステップです。
PDCAはPlan(計画)に基づいて一方向に回すサイクルであるのに対し、OODAループは必要に応じて前の段階に後戻りができます。自由度が高い手法で、変化に対応しやすいのが特徴です。
PDCAは品質管理など継続的に行われるビジネスの場面で、適宜改善を行いながら管理する手法です。Plan(計画)が重視されるため、想定外のことが起きたときに対応できないのがデメリットです。
これに対し、 OODAは変化の激しい時代において迅速性と柔軟性を備えています。PDCAでは対応できない外的要因による変化を考慮でき、途中で予想できない変化があれば、引き返して観察し直すことも可能です。
なぜビジネスでOODAが必要とされるか
OODAは刻一刻と変化する状況で成果を得る手法として、ビジネスシーンで注目されている手法です。
ビジネスで必要とされている理由について、みていきましょう。
技術の急速な進化によりビジネス環境が変化している
OODAがビジネスシーンで注目されているのは、技術の急速な進化によりビジネス環境の変化が激しくなっているためです。予測のできない変化が起きた場合、 OODAであればどの段階でも途中で前の段階に戻って対応できます。変化の流れに沿って方向性を変え、ループを再開することが可能です。
未来を予測のできない時代にあっては、周到な計画を立てるよりも状況を見てすばやく判断し、適切な意思決定ができる手法が向いているといえるでしょう。
PDCAが万能ではなくなった
OODAが注目されているのは、従来の手法であるPDCAが万能ではなくなったことも理由のひとつです。PDCAは多くのビジネスシーンで古くから活用されていますが、どの場面でも有効というわけではありません。
PDCAはもともと、予想できない事態が起こりにくい生産現場などで活用されていた手法です。綿密な計画を策定し、継続してサイクルを回しながら品質を向上させるという点では効果がありました。
一方で、新しいサービスを開発する場面では、素早く市場に出して効果を検証する方法が有効です。変化の激しい市場で生き残るためには、PDCAよりもOODAの手法がより適しているといえるでしょう。
OODAループの手順
OODAループは4つのステップで構成されています。それぞれの内容や具体例をみてみましょう。
Observe(観察)
市場や顧客、競合などの対象を観察・調査する段階です。現代の市場は変化が激しく、先日までニーズのあったものが別のものに変わっているということもそれほど珍しくありません。素早く変化に気づくためには、Observe(観察する)のプロセスが不可欠です。
「観察」とはただ見るということではなく、情報を集めることを指します。自分が置かれている状況や環境、市場の動向などの事実を幅広く集めることです。
観察の場面で大切なことは、「〇〇であれば〇〇に違いない」という固定観念にとらわれないことです。状況をありのままに見て、受け入れていかなければなりません。
Observeの具体例は、以下のとおりです。
- 他社が〇〇の地域に新しい店舗を増やすという情報があった
- 新発売のA商品は、今日で100個の売上があった。先月販売したB商品は、1日に平均で200個売れていた
Orient(状況判断)
Observeで集めた情報を分析し、どのような状況が起きているのかを判断して行動の方向性を定める段階です。状況判断次第で最終的な行動が大きく変わるため、OODAループの中で最も重要なステップとされています。
状況判断は、自分の経験からくる価値判断を含んだ情報として再構築します。OODAループは何度も回すことでゴールへと近づくため、2回目以降のループでは判断の誤りに気付くことが成功のポイントです。
前に紹介したObserveの具体例から導かれる、Orientの例をみてみましょう。
- それ以外の地域は穴場となっていないか
- 新発売のA商品は市場のニーズからずれている可能性がある
Decide(意思決定)
状況判断を踏まえ、どのような行動を取るかを意思決定する段階です。最終段階のAct(実行)に向けて何をするか、考えられる選択肢をリストアップし、一番効果的と思えるものを選択します。
観察で得られた情報やその状況判断により、最善と思える行動で最大限の効果を上げるために意思決定します。
Orientの事例で判断した内容から導かれるDecideの例は、以下のとおりです。
- 穴場の地域の出店を検討する
- A商品の品質には自信があるため、パッケージやネーミングを工夫する
Action(行動)
意思決定の段階で決めた行動を実行に移す段階です。実行の段階が終わったら、2周目のOODAループを開始します。観察の段階では、1回目の実行によって変化している場合もあれば、変わらない場合もあります。どちらにしても観察して得た情報を分析し、意思決定するという手順は変わりません。
Decideの具体例に基づくActの例をみてみましょう。
- 穴場の地域に出店する
- A商品のパッケージ・ネーミングを変更する
OODAループのメリット・デメリット
OODAループには多くのメリットがありますが、デメリットな側面もあります。ここでは、 OODAループのメリット・デメリットを解説します。
メリット1.問題に迅速に対応できる
OODAループは、迅速な判断を求められる場面で効果のある手法です。問題を素早く理解し、スピーディで効果的な対応ができます。
綿密な計画を立てて上層部の承認を経てから行動するPDCAと異なり、 OODAループは現場の状況に合わせて臨機応変に対応できるのがメリットです。刻一刻と変化する市場や顧客のニーズに合わせて商品・サービスの提供ができます。
メリット2.状況変化に柔軟に対応できる
OODAループは観察と状況判断から仮説の構築を行うため、実行までのプロセスが短いのが特徴です。そのため、現場の担当者が変化にも柔軟に対応できます。臨機応変に、現場に即して適切な行動ができる点がメリットです。
データをもとに何をすべきか即時に判断できるスキルがあれば、事前にトラブルを回避することもできるでしょう。
デメリット1.思い付きで行動しやすい
OODAループは個人が自ら考え、動くことが必要な手法です。そのため、OODAループに沿った行動をしていると思いながらも、実はその場の思い付きや感情で行動になりやすいという点がデメリットです。
また、個人の裁量が大きく、はじめに方向性を確認しておかないと誤った方向に進んでしまう可能性があります。
事前に十分なすり合わせを行い、同じ方向性をもつためにビジョンや目的の共有が欠かせません。
デメリット2.中長期には向かない
OODAループは、中長期的な計画策定などのPDCAが向いている場面には適しません。また、PDCAのような効果測定を行う段階がないため、効果を見ながら長期的に改善・見直しを行う業務には向いていないといえるでしょう。
中長期的な計画を立案するときは、結果を確認しながら試行錯誤できるPDCAを使い、補助的にOODAを活用するとよいでしょう。
OODAループの具体例
OODAループは幅広い場面で活用できます。具体的事例をいくつかみていきましょう。
商品・サービスのターゲットを変更する
30代の女性をターゲットにした商品を販売したところ、Obsereveでは50代女性の売上が伸びていることがわかったという事例をみていきましょう。
Orientでは、商品のデザインが落ち着いており、より50代の女性好みだったという判断をします。
Decideで、ターゲットを50代女性に変更することを決定しました。
Actionで商品の広告を50代女性向けの内容に変え、売上の動向をObserveで観察するというループを回します。
OODAループによって素早くターゲットを変更し、その後は順調に売上が向上しました。
メールで広報活動をする
メールによる広報活動をしているところ、Obsereveではメールを開いてくれる人の割合が先月より10%ダウンしたという事例を紹介します。
Orientでは、「読んでみたい」と思ってもらえず開封されなかった、内容がマンネリ化して興味を持ってもらえなかったと判断しました。
Decideでは、メールのタイトルをインパクトの高い内容に変え、内容もこれまでの趣向を大幅に変更すると決定します。
Actionで実際に変更したメールを配信し、メールの開封割合が上がりました。
受注数の増減に対応する
Observeで商品の急な受注増加があった場合の事例を紹介します。
Orientでは、納期までに受注分の納品ができないと判断し、外注先への委託を検討しました。
Decideで、外注先への発注を決定します。
Actionで実際に発注を実行し、無事に受注分の商品をすべて納品することができました。
OODAループにより欠品の発生を未然に防ぎ、売上に結びつけることができた事例です。
ビジネスシーンでOODAを上手に活用しよう
OODAは変化が激しく先が予測できない状況で迅速に対応し、成果を上げる手法です。PDCAと異なり途中で後戻りができ、臨機応変に対応できるなどのメリットがあります。
OODAは変化の激しいビジネスシーンで注目されており、上手に活用することで市場での競争力を高めることができます。記事も参考に、 OODAをビジネスに取り入れてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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