• 更新日 : 2025年2月12日

宿泊者名簿とは?必要な記載事項と注意点・無料テンプレートも

宿泊者名簿は、宿泊施設において宿泊者の氏名、住所、連絡先などの個人情報を正確に記録するための書類です。法律に基づき、緊急時の連絡・感染症の拡大防止・安全確保・犯罪抑止など、多岐にわたる目的で宿泊者名簿の作成が義務付けられています。

当記事では、宿泊者名簿の必要性や記載事項、さらには無料テンプレートの活用方法について詳しく解説します。法令順守と利用者の安全管理の両面から宿泊者名簿の意義を明らかにしますので、住宅宿泊事業者の運営者や責任者の方はぜひご一読ください。

宿泊者名簿とは?

宿泊者名簿とは、ホテルなどを利用する宿泊者の氏名・住所といった個人情報を記録する文書です。災害時の緊急連絡や保健衛生管理のために不可欠とされており、旅館業法第六条に基づき、施設運営者は名簿を備えて必要な情報を記載・保存する義務があります。

第六条 営業者は、厚生労働省令で定めるところにより旅館業の施設その他の厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、連絡先その他の厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があつたときは、これを提出しなければならない。
引用:e-Gov法令検索「旅館業法」

宿泊者台帳の記入を怠った場合、宿泊施設に50万円以下の罰金が科せられることがあります。同様に、民泊においても宿泊者名簿の備え付けは義務付けられており、違反すると30万円以下の罰金が科される恐れがあります。

宿泊者名簿の無料テンプレート

宿泊者名簿は、宿泊施設運営における法令順守の重要な一部となっています。法令に則った宿泊台帳を用意したい場合は、テンプレートを活用すると便利です。無料でご利用いただけますので、以下からダウンロードしてください。

宿泊者名簿のテンプレートのダウンロードはこちら

宿泊者名簿が必要な理由

宿泊者名簿が必要な理由は多岐にわたり、さまざまな目的が挙げられます。

  • 法律で定められている
    旅館業法や住宅宿泊事業法に基づき、宿泊施設の運営者は宿泊者名簿を作成し、必要な個人情報を記録することが義務付けられています。違反した場合には罰則が科されると定められているため、事業者にとって厳格な順守が求められます。
  • 感染症の拡大を防止する
    もともと宿泊名簿の作成を含めた法律が施行された背景には、感染予防があります。宿泊施設内で感染症が発生した場合、名簿を用いて宿泊者への連絡が可能となり、感染拡大のリスクを最小限に抑えられます。宿泊者名簿は、感染経路を追跡し、適切な保健措置を講じるための重要な手段になると言えるでしょう。
  • 忘れ物の連絡をする
    宿泊者が忘れ物をしたときは、名簿に記載された連絡先を通じて連絡を取れます。より速やかな返却が可能となれば、顧客サービスの質の向上だけでなく、顧客との信頼関係の構築にもつながるでしょう。
  • 宿泊者の安全を確保する
    火災や地震などの非常事態が発生した際、名簿を参照することで宿泊者や同行者の安否確認を行え、迅速な避難誘導や適切な救助活動につなげられます。また、施設内で事故や犯罪が発生した場合も、宿泊者を特定し、スムーズに対応できます。
  • 犯罪を抑止する
    宿泊者側の身元把握は犯罪抑止に効果的であり、不審者の侵入や不法行為を未然に防ぐ手段となります。たとえ偽名が記載された場合でも、筆跡などの情報が捜査の手がかりとなる可能性があります。

以上のように、宿泊者名簿は宿泊施設運営において安全・衛生管理、顧客サービスの向上、犯罪防止の観点からも必要性が高く、記載徹底が求められると言えるでしょう。訪日観光客が多い場合は、外国語に対応した宿泊者等名簿を用意することをおすすめします。

宿泊者名簿に必要な記載事項

宿泊者名簿に記載が必要な事項は、法律だけでなく、地域によって異なる自治体の条例にも基づく必要があります。宿泊事業者は各地の条例が設ける特別な要件にも注意を払いながら、宿泊者名簿に必要な情報を収集しましょう。

法律で定められた項目

法律で定められた宿泊者名簿に必要な記載事項は、以下の通りです。宿泊者氏名や住所は本人確認の際に身分証明書と一致しているかチェックする必要があるため、宿泊者自身に正確に記入してもらうよう徹底しましょう。

  • 宿泊者の氏名
  • 住所
  • 連絡先
  • (日本国内に住所を有しない外国人の場合)国籍と旅券番号

テロ発生に対する脅威が高まっていたことから、外国人宿泊者の場合は国籍及び旅券番号を併せて記載するよう、2005年に旅館業法が改正されました。これにより、外国人宿泊者の身元確認がより厳密に行われ、トラブル発生時やテロ対策など、国家の安全保障にも寄与する措置となっています。

また、2023年には宿泊者名簿の記載事項として「職業」が削除され、その代わりに「連絡先」が追加されるなど、時代の変化に対応した法改正が行われました。

条例で定められた項目

各自治体により定められる宿泊者名簿の記載項目は、法律上の義務事項に加え、地域独自の安全管理や感染症対策を反映した内容となっています。たとえば、東京都西多摩保健所では、以下の情報が宿泊者名簿に必要としています。

  • 氏名
  • 住所
  • 連絡先
  • 性別
  • 年齢
  • 前泊地
  • 行先地
  • 到着日時
  • 出発日時
  • 室名

一方、京都府では以下の記載を求めています。

  • 氏名
  • 住所
  • 連絡先
  • 性別
  • 年齢
  • 前泊地
  • 行先地
  • 到着日時
  • 出発日時

各自治体の条例により求められる記載事項は、地域ごとの事情や防災・安全対策に応じた上乗せ規定となっているため、事業者は該当地域の条例を十分に確認し、正確な記録管理を行う必要があります。

宿泊者名簿を作成する際は、法令だけでなく条例も併せて確認し、必要な記載事項の記入欄を設けましょう。

宿泊者名簿に関する注意点

宿泊者名簿に関しては、全宿泊者の情報取得、正確な本人確認、法令で定められた保管・保存期間などの留意事項が存在します。ここからは、各注意点について詳しく解説します。

宿泊者全員分の情報が必要になる

旅館業法に基づき、宿泊施設は宿泊滞在者全員の情報を正確に取得する必要があります。代表者のみの記載では法令に違反するだけでなく、トラブル発生時の迅速な対応や身元確認が困難になります。代表者だけの情報を記録する宿泊施設もありますが、これはグレーゾーンとなり、行政からの指導や罰則のリスクが高まります。宿泊者名簿には、宿泊者一人ひとりの氏名・住所・連絡先などを漏れなく取得しましょう。

本人確認が必要になる

宿泊者名簿に記載された情報が虚偽でないことを保証するため、パスポートなどにより本人確認を実施する必要があります。有人施設ではフロントでの対面確認が可能ですが、無人施設ではICT機器を利用し、ビデオ通話や撮影で本人確認を行ってもよいとされています。ICT機器を活用する際は「宿泊者の顔や旅券を画像で鮮明に確認できる」「画像が施設の近傍から発信されていると確認できる」という2つの条件を満たすことが求められています。

これにより、虚偽の記載防止や、万一の犯罪・事故発生時の対応、感染経路の特定が可能です。宿泊者が情報提供や旅券提示を拒否する場合は、最寄りの警察に連絡するなどの対応措置を講じましょう。

保管・保存期間が義務付けられている

宿泊者名簿は、旅館業における衛生等管理要領に基づき、最低3年間の保管が義務付けられています。宿泊者名簿には個人の特定につながる個人情報が含まれているため、漏えい・紛失が起きないよう適切に管理しましょう。紙媒体の場合は施錠できる書類保管庫に、デジタルデータの場合はパスワード保護されたシステムで管理し、必要に応じてディスプレイ表示やプリントアウトが可能な状態を維持することが求められています。

宿泊者名簿を適切に管理するために、従業員や関係者にセキュリティ対策に関する教育を行うのも有効です。廃棄に関する規定は特に設けられていませんが、個人情報保護の観点から宿泊者名簿を長年保管するのは好ましくありません。保存期間終了後は遅滞なくシュレッダーで処理するなど、宿泊者名簿を適切に廃棄しましょう。

宿泊者名簿をテンプレートで作成し、宿泊施設の健全な運営につなげよう

宿泊者名簿は、宿泊施設運営の安全性と信頼性を支える重要なシステムです。法令に基づく厳格な記載義務を守ることで、緊急時の連絡体制が整備され、感染症の拡大防止や災害発生時の被害軽減に寄与します。また、正確な本人確認と記録管理は、犯罪やトラブル時の迅速な対応を可能にし、利用者と施設の信頼関係を強化する役割も果たします。

各自治体の条例や最新の法改正に対応し、常に適切な運用が求められるため、定期的な情報のアップデートと管理体制の見直しは不可欠です。法令に則った宿泊者名簿を用意する必要がある場合は、無料のテンプレートをぜひご活用ください。


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