• 更新日 : 2024年12月12日

アパレル業界の縫製仕様書とは?活用できるテンプレートも紹介

縫製仕様書とは、アパレル製品の製造において欠かせない設計図のようなもので、縫製や素材に関する具体的な指示が記載されています。商品を設計通りに仕上げるために必要なガイドマップとして、縫製工場や生産現場とのコミュニケーションを円滑にし、不良品の発生を防ぐ役割を果たします。

当記事では、縫製仕様書の具体的な内容や作成する際の注意点、効率化を図るためのテンプレートについて詳しく解説します。

縫製仕様書とは?

縫製仕様書とは、洋服を組み立てるために必要な設計図であり、縫製の指示が記されたものです。アパレル商品を完成まで導く、ガイドラインやガイドマップとしての役割を持ちます。加工依頼書や縫製指示書などと呼ばれるケースもあります。アパレル縫製仕様書の主な役割は、以下の通りです。

縫製や生地・資材の指示アパレル製品の主要生地・資材に関する情報が記載されます。生地・資材の色や組成といった、製品の外観を決定する重要な部分です。
副資材の手配縫製仕様書には、ボタンやジッパーなどの副資材の情報が盛り込まれています。縫製仕様書に記載された、付属資材の種類や色、サイズをもとに、副資材を手配します。
コストチェック縫製仕様書の生地・副資材明細において、それぞれ単価を明確にすることで、商品原価の算出にも利用可能です。
生産データの保管縫製仕様書は生産データとしてストックされ、納品後に問題が発生した場合の対応や、新しい製品の開発などに活用されます。

デザイン画やパターンとの関係

アパレル業界にとって重要な資料として、デザイン画やパターンが挙げられます。デザイン画は、服作りに必要なスタイル画や平絵といったデザイン資料のことです。アパレル製品を企画デザイン通りに完成させるための道標として不可欠なものです。

また、パターンは、服を作るために必要な型紙を指します。デザイン画通りのアイテムとして具現化する術がないと、素敵なファッションデザインが完成しても、消費者のもとまで正確に届けることができません。パターンは、デザイナーの企画イメージ通りに服を仕立てるための設計図として、重要な役割を持ちます。

しかし、デザイン画やパターンのみで製品を完成させるのは困難です。デザイン画を正確に再現したパターンをもとに、実際にどのように縫製するのかを指示する縫製仕様書が欠かせません。

縫製仕様書の重要性

縫製仕様書は、製品を作る現場とのコミュニケーションツールであり、トラブルや不良品を防ぐために重要な存在です。アパレル商品の生産自体は、他の生産工場で請け負う場合が多く見られます。

アパレル生産の現場で開発側が直接指示できる訳ではないため、生産担当者が確認する縫製仕様書の内容は、詳細で分かりやすいものである必要があります。縫製仕様書内には材料やプロダクトパターンのほか、生産現場の製造設備などを踏まえた留意点、数量・納期といったさまざまな情報が具体的に記載されるのが特徴です。

指示者側の意図が適切に伝わる縫製仕様書を作成することで、生産管理のトラブル防止や不良品数の削減につながる効果も期待できます。

アパレルの縫製仕様書の無料テンプレート

縫製仕様書作成を効率化したい場合は、あらかじめ記載内容などが固められているテンプレートを使用するのがおすすめです。必要な項目が仕様書フォーマットの中に落とし込まれているため、重要事項の抜け漏れ防止にも役立ちます。

縫製仕様書に記載する項目

縫製仕様書には、どのような項目を記載すればよいのかを解説します。具体的な記載内容は、以下の通りです。

表題関連表題関連には、工場名・シーズン・ブランド名・企画ナンバー・パターンナンバー・製品番号・納期・依頼日・指示者名といった、さまざまな情報が記載されます。指示者名には、企画・パターン・生産・検品などの複数の欄があります。いつ、誰が内容を指示したのかを明確にするために重要な項目です。
デザイン画アパレル商品の形を図に落とし込んだものです。前面図と背面図が記載されるケースが一般的です。刺繍やプリントなどの二次加工の内容も記載されます。
縫製の仕様縫製仕様書には、製品の生産に使用するミシンなどの設備や機械の種類の指示も必要です。縫い糸の種類と品番についても明記されます。
生地の明細製品のメイン素材である生地の明細を記載します。素材名に加えて、品番・仕入れ先・規格・混率などが明記されるのが一般的です。中には、生地を数種類明記できる縫製仕様書もあります。
副資材の明細製品に使用される副資材の品名・品番・規格・仕入れ先・使用部分などの記載も必要です。単価と要尺を掛け合わせて、着単価を算出するケースも見られます。説明文などで生地の特性が伝わりにくい場合は、実際に生地サンプルを添付します。
裁縫の指示アパレル製品の表地などの縫い方の指示も、仕様書の記載内容として欠かせません。「袖口・2本針・裏振り」というように、具体的に記載します。襟・裾などの始末方法や縫い代の倒し方についての指示も必要です。さらに、ステッチやカンヌキに使う糸番手・運針数を記載する欄もあります。パターンの展開図に縫い方や副資材の付け方などを細かく記載した縫製説明図を添付すると、より指示内容を明確にできます。
寸法表着丈・身幅・肩幅などの項目ごとに、製造サイズ展開や縫いあがりの寸法を記載します。サンプルサイズを明記する欄もあるため、寸法指示と合致しているかがチェック可能です。
裁断方法生地の柄や方向を考慮して、裁断方法に関する指示を記載します。中には、ベロア素材のように逆方向で裁断すると製品の品位が損なわれるものもあるため、注意が必要です。

縫製仕様書を作成するときの注意点

縫製仕様書を使ってトラブルや不良品の防止に向けて、いくつか気をつけたいポイントがあります。具体的な注意点として、次の2つを解説するので、縫製仕様書を作る際の参考にしてください。

記載内容は正確・明確に指示する

記載内容に、曖昧な仕様表現や抜け漏れがあると、トラブルにつながる可能性があります。不明瞭な部分を確認する手間が発生するため、現場の生産効率が悪化し、納期に影響が出るリスクも考えられます。

縫製仕様書を作成する際には、現場で縫製作業を担うスタッフの立場に立ち、正確・明確な指示を分かりやすく記載するのが重要です。「記載しなくても分かるだろう」という思い込みを捨てて、丁寧な仕様書作成を意識することで、スムーズな生産につながります。

また、縫製仕様書はアパレル製品の品質を守る、重要なガイドラインです。仕様書の不明瞭な生産指示が原因で、作業者ごとに細かい縫製方法が異なると、品質低下や一貫性を損なう原因になるため注意が必要です。

海外の工場に依頼する場合は言語の違いに注意する

アパレル製品の生産は、海外工場へ委託されるケースが少なくありません。特に、中国や東南アジア地域には大規模な縫製工場が多く、日本をはじめ世界中からアパレル商品の生産を請け負っています。

海外生産の場合は、縫製仕様書を外国語へ翻訳する作業が発生します。翻訳ミスや言語ニュアンスの違いによって、アパレル会社と生産現場との間で認識のズレが生まれるリスクも理解しておきましょう。

誤解や認識のズレを防ぐためには、パターン・図・写真・生地サンプルといった説明資料を使って、視覚的な解説を加えるのが大切です。また、補足として、数値やデータを用いるのが有効な場合もあります。

言葉や物理的な距離といった壁がある海外の生産現場との間で、製造・品質管理をスムーズに進めるために、仕様書内の言語表現が適切かどうかにも注意しましょう。

正確な縫製仕様書で業務を効率化しよう

縫製仕様書に正確で明確な指示を記載することで、トラブルの発生を防ぎ、生産現場とスムーズな連携を図ることができます。特に海外工場に委託する際には、言語の違いによる誤解を避けるため、視覚的な資料を効果的に活用しましょう。

また、縫製仕様書を効率的に作成するためには、テンプレートの活用が便利です。今後の製品開発や生産管理において、縫製仕様書の重要性を理解し、適切に作成することが品質向上につながります。


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