- 作成日 : 2024年8月9日
定型業務とは?具体例や自動化・外注化で企業にもたらすメリットを解説
定型業務の読み方は「ていけいぎょうむ」で、手順が明確に定められ、繰り返し行われる業務のことを指します。たとえば、データ入力や在庫管理、定期的な報告書作成などです。
この記事では、定型業務の具体例やメリット・デメリット、業務を定型化する方法、業務効率を高める自動化の例などを紹介します。
目次
定型業務とは?
定型業務とは、作業手順や方法が定まっている業務のことです。何度も同じ作業を繰り返すため「ルーティンワーク」や「定型化された業務」とも言い換えられます。具体的には、フォーマットにしたがって報告書・提案書を作成する書類作成業務や、商品の数を確認して注文量・在庫数を把握する在庫管理業務などがあげられるでしょう。
定型業務の反対語である非定型業務は、作業手順が明確になっておらず、その場の状況に応じて思考力や創造力が求められる業務を指します。
定型業務・非定型業務の具体例
定型業務や非定型業務の具体例を見ていきましょう。業界や業種に応じて、それぞれ異なる業務があげられますが、事務周りの業務では以下のように分類できます。
【定型業務と非定型業務の一例】
定型業務 | 非定型業務 |
---|---|
|
|
このように、定型業務はマニュアルや手順書があれば誰でもできる業務があげられ、非定型業務では経験や知識、柔軟な対応が求められる業務があげられるでしょう。
定型業務のメリット
業務を定型化する具体的なメリットは、以下の4点です。
- 業務を効率化できる
- 品質を安定させられる
- 時間の予測が立てられる
- 教育・トレーニングが容易にできる
業務を効率化できる
業務を定型化することによって、担当者は業務をどのように進めていけばよいのかが明確になるため、作業スピードが向上します。これにより、同じ業務内容であっても、定型化された業務の方が、効率的に実行できるでしょう。
また、業務の定型化によって担当者は作業内容を覚えやすくなるため、迅速に業務を完了させることが可能です。
品質を安定させられる
実際の業務内容をマニュアルや手順書で定めることで、担当者ごとに納品物の品質や作業品質のばらつきを抑えられます。これにより、誰が業務を担当しても、品質を安定化させることが可能です。さらに、作業手順が明確になるため、疲労具合やモチベーションによるミスも抑えられます。
業務を定型化することで、誰が、いつ業務を担当しても、作業結果を均一化できるでしょう。
時間の予測が立てられる
業務を定型化すれば、ひとつの業務を単純作業レベルにまで分解できます。これにより、各作業でどのくらい時間がかかるのかわかるようになり、業務それぞれで作業時間の予測が立てられるようになるでしょう。
時間の予測が立てられることで、どれだけの人数で分担すれば何時間で業務を完了できるのかがわかります。そのため、部下に任せた仕事が業務時間内までに終わらず、残業させてしまうということがなくなります。
業務の定型化によって、業務時間内に適切な仕事量を振り分けられるでしょう。
教育・トレーニングが容易にできる
定型業務は新入社員や転職者、部署移動してきた従業員への教育・トレーニングを容易にします。業務内容を定型化することによって、業務を実行するうえで知っておくべきことをマニュアルや手順書にまとめられます。
そのため、業務の進め方はもちろん、どのファイルやデータを参照すればよいのか、誰に相談すればよいのか、などが一目で理解できるでしょう。これにより、新規従業員でも、マニュアルや手順書を見るだけで、実際の業務を理解できるようになり、教育係の負担が軽減します。
定型業務のデメリット
定型業務には業務効率の向上など多くの利点がありますが、一方で次のようなデメリットも存在します。
- 定型化に手間がかかる
- 柔軟性が欠如する
- キャリアアップが制限される
- モチベーションの低下につながる
定型化に手間がかかる
業務の定型化には、実際の作業を細分化し整理する必要があり、時間と労力を要します。具体的には、業務を担当している従業員に対してヒアリングを行い、業務フローを図式化して可視化するなどです。
また、定型化された業務は、作成されたマニュアル・手順書を基に業務を進めていくため、マニュアル・手順書自体にミスや誤り、漏れがあってはいけません。単純な作業だからと考えず、一つひとつの作業を洗い出していくことが重要です。
柔軟性が欠如する
業務が定型化されると、従業員はマニュアルや手順書を見て業務を実施するため、自主的に判断する場面が少なくなります。
これにより、従業員の柔軟性が欠如し、イレギュラーな事態への対応力が低下する恐れがあります。また、新しい意見やアイデア、業務内容の変化を受け入れることに抵抗感を持つようになり、業務改善が難しくなる可能性もあるでしょう。
定型業務を導入する際は、定期的なアップデートを前提に、課題や不満点の報告を求め、改善案を受け入れられる社内風土を構築しておきましょう。
キャリアアップが制限される
定型業務の多くは、ルーティンワークです。そのため、定型業務を担当する従業員は、専門的なスキルが身につくわけではなく、キャリアアップが制約される可能性があります。
昨今は将来的なキャリアプランを考慮しながら職場選びをする人も多いため、キャリアアップを望めない職場では従業員の定着率が低下する恐れがあるでしょう。そのため、キャリアアップや自己成長が実現できるように、外部セミナーへの参加費用補助や、社内研修の定期開催などの法定外福利厚生を充実化させるのもおすすめです。
モチベーションの低下につながる
定型業務ではマニュアルや手順書通りに業務を行うことが求められるため、ルールの多さやルーティン作業の繰り返しに不満を感じる従業員も少なくありません。また、従業員自身の成長や努力が認められにくいため、将来的なキャリアアップや収入向上が見込めず、職場に従事する意義を見出せなくなる人もいるでしょう。
従業員のモチベーションの低下は、企業全体の生産性低下や定着率の低下をもたらします。定型業務の中でも一定の柔軟性を持たせて、スケジュールやタスクの管理を従業員に一任すると、従業員それぞれが責任感を持って日々の業務に向き合えるでしょう。
業務を定型化するフロー
似たような作業を行っている業務は、定型化できる可能性があります。定型業務にするには、まず業務の手順や流れを明確にし、マニュアルや手順書を作成しましょう。
また、作業内容や重要度に応じて、チェックリストも作成しておきましょう。押さえておくべきポイントを記載しておくことで、作業に慣れていない従業員が業務を担当しても、ミスや漏れを抑えられ、品質を安定化できます。
定型業務をさらに効率化するには?
業務効率化は、あまり複雑な取り組みをせずとも、業務を定型化するだけで実現します。定型業務をさらに効率化する方法を4点紹介します。
- 業務の標準化
- 課題の洗い出し
- システムで自動化する
- 業務を外注する
業務効率化を目的に定型業務に関心を持っている人は、これらの方法も把握しておきましょう。
業務の標準化
フローチャートや作業手順書を作成することによって、業務の進め方を明確にし、業務を標準化しましょう。これにより、定型業務の担当者が誰であっても、統一された方法や基準に沿って実行されます。
また、フローチャートなどを作成する過程で、作業の無駄な部分や重複箇所が見つかります。業務の標準化に伴い、改めて作業内容を見直すことで、業務を最適化できるでしょう。
課題の洗い出し
業務を標準化した後は、定型業務を実行するうえでの課題を再確認しましょう。具体的にチェックすべき項目として、以下のポイントがあげられます。
- マニュアルや手順書に沿って業務を行ったとき、どういった部分で作業ミスや遅れが発生しているのか
- 業務の効率を落としている暗黙の了解や慣習はないか
- 定型業務を行っている担当者や部署は適切なのか など
明らかになった課題を踏まえて、マニュアルのアップデートやチェックリスト項目の追加などを行いましょう。
システムで自動化する
業務内容によっては、システムやツールを導入して自動化するのもよいでしょう。具体的には、以下のような業務は自動化が可能です。
- データの計算や入力
- 会社説明会などの告知や面接に関するリマインドといった内容が同じメールの送信
- 顧客の問い合わせ内容に適した自動返信 など
定型業務の自動化により、業務負担が軽減されるだけでなく、ミスや漏れが減少し、さらなる効率化が実現できるでしょう。
業務を外注する
企業にとって重要度の高いデータや情報を扱わない定型業務ならば、外注するのもおすすめです。多くの定型業務はマニュアル化されることによって、誰にでもできる作業となります。そのため、わざわざ社内の従業員で担当する必要はありません。
単純作業である定型業務は外注化することで、従業員は専門的なスキルや経験が必要なコア業務に専念できるようになるでしょう。
定型業務の自動化の例
定型業務を効率化する方法として、システムやツールを用いた自動化が有効です。自動化ができる定型業務の一例として、以下の5点を紹介します。
- 伝票入力
- 請求と支払い
- レポートや報告書の作成
- メールの自動化
- データバックアップ
それぞれの業務で、どのような作業が自動化されるのかを解説します。
伝票入力
伝票入力業務では、顧客やクライアントとの取引で使用された注文書や納品書の内容を会計ソフトに入力します。決して複雑な作業ではありませんが、月末や年度末になると伝票の量も膨大となるため、業務を担う担当者の負担も大きくなるでしょう。
特定のツールを用いると、電子化された伝票の内容を自動で読み込み、会計ソフトに自動的に入力します。これにより、担当者は紙の伝票を電子化する作業のみになるため、作業時間が短縮でき、入力ミスも防げるでしょう。
請求と支払い
契約完了後の業務として請求と支払い業務があげられます。請求書業務システムを導入すれば、これらの作業をまとめて自動化できます。たとえば、定型化された顧客情報や商品情報を入力して請求書を作成する業務や、請求データを参照した支払い業務などの自動化が可能です。
請求と支払い業務は作業手順が多くミスが発生しやすいため、システムで自動化し効率化しましょう。
レポートや報告書の作成
業務の進捗状況、市場調査、会議資料の作成時には、レポートや報告書が必要となります。これらに含まれるデータ分析やグラフ作成は、適切なツールを用いることで自動化が可能です。
データの入力や計算式の設定といった時間と手間のかかる部分を省略でき、伝えたい主張の執筆に注力できるでしょう。
メールの自動化
顧客や関係者の対応を担当する従業員の中には、1日の大半をメール対応に追われているという人もいらっしゃるでしょう。送信するメールの内容やとるべき対応がある程度決まっている場合、システムやツールを用いて自動化することが可能です。
具体的には、受信したメールの内容に応じて、適切な対応が自動で実行されるという仕組みになります。
【メール対応の自動化の例】
受信したメールの内容 | システムやツールで自動的に実行される対応例 |
---|---|
「問い合わせ」に関するメール | 必要事項を記載した定型文のメールの送信 |
顧客からの請求書や発注書が貼付されたメール | 顧客ごとに対応したファイルへの保存 |
システムやツールに応じて実行できる作業は細かく異なるため、自社の業務に適したサービスを導入しましょう。
データバックアップ
企業では日々の業務で作成された、業務データや文書データなどを保管・管理しています。また、保管されているデータは、消失や紛失しないようバックアップがとられています。このデータバックアップ業務も自動化することが可能です。
データの保管場所、バックアップの頻度・保存期間なども指定できるため、適宜担当者が対応するよりもミスを抑えられるでしょう。ただし、システムやツール自体が誤作動する場合もあるため、バックアップが適切に行われているか定期的に確認する必要があります。
定型業務の自動化・外注化で企業が得られるメリット
定型業務の自動化もしくは外注化するメリットを5点紹介します。
- 専門性の高い業務に集中できる
- ワークライフバランスを改善できる
- 新しいスキルの習得に時間を充てられる
- ストレスを軽減できる
- コミュニケーションの質を高められる
それぞれ具体的に見ていきましょう。
専門性の高い業務に集中できる
定型業務が自動化・外注化されると、従業員が対応すべき業務量が削減され、専門性の高いコア業務に集中できるようになります。
たとえば、ソフトウェア開発担当のプログラマーが、日々の業務時間をコードの執筆に集中したいと所望していたとしましょう。しかし、プロジェクトの進捗報告が求められている場合、コードを入力する作業を中断して、報告書作成の時間を確保しなければいけません。
システムやツールで、報告書作成業務の一部を自動化することができれば、本来の業務に集中できる環境を整えられます。また、高い専門性が求められるコア業務は企業にとっても多くの価値を生み出すため、従業員が集中できる環境を構築することは、企業にとっても大きな利益をもたらすでしょう。
ワークライフバランスを改善できる
定型業務の自動化・外注化によって、対応する業務量が減れば、残業時間の削減にもつながります。定型業務が増えると、従業員が本来注力しなければいけない業務に時間を割くことができません。その結果、期日や納期に間に合わせるために、残業が必要になる従業員も少なくないでしょう。
残業時間が増えると、平日の自由な時間が減り、趣味や家族と過ごす時間の確保も難しくなります。定型業務の自動化・外注化で残業時間を抑えることで、従業員も余暇の時間を確保できるようになり、ワークライフバランスを改善できるでしょう。
新しいスキルの習得に時間を充てられる
残業時間を削減し、従業員が業務後の自由な時間を確保できるようになれば、新しいスキルの習得にも時間を充てられるようになります。これにより、従業員自身で将来的なキャリアアップや自己成長を狙えるようになり、モチベーションの向上につながるでしょう。
また、従業員が日々の業務に必要なスキルや知識、資格を習得すれば、会社にとってもコア事業の業績向上につながるでしょう。
ストレスを軽減できる
自動化・外注化により、定型業務の量を削減できれば、従業員のストレス軽減にもつながります。定型業務の多くは単純作業の繰り返しであり、対応する時間が長くなればなるほど、精神的な疲労やストレスが蓄積されます。
また、誰にでもできるような作業であっても、疲労がたまればミスの発生も避けられず、やり直しや修正対応によるストレスも無視できません。従業員が意欲的に日々の業務に取り組むためには、ストレスの原因となり得る定型業務の自動化・外注化が重要となるでしょう。
コミュニケーションの質を高められる
定型業務の自動化・外注化により、日々の業務が効率化されると、業務時間内でも余裕が生まれ、従業員同士でコミュニケーションがとりやすくなります。
定型業務に追われる環境では、同僚との会話機会が減少し、情報共有や連携に支障をきたすでしょう。
定型業務の自動化・外注化は、単なる効率化だけでなく、職場の人間関係を深め、新しいアイデアが生まれる環境づくりにもつながるのです。
定型業務で業務効率化を実現しよう
定型業務とは、作業手順や方法が定まっているルーティンワークを指します。まずは日常業務を見直し、定型化できるものを特定しましょう。マニュアルを作成して標準化することで、作業が可視化され、業務効率の改善につながります。
次のステップとして、自動化や外注化を検討しましょう。これにより、専門性の高い業務に集中できたり、ワークライフバランスの改善が図れるなど、多面的な効果が期待できます。定型業務の最適化で、企業の競争力を高めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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