• 作成日 : 2025年8月12日

共有フォルダの運用ルールの決め方や具体例とは?業務改善とリスク管理を解説

共有フォルダは、ルールがないとすぐに情報が散乱し、業務効率の低下やセキュリティリスクの原因となります。必要な情報がすぐに見つからなかったり、誤って重要なファイルを削除してしまったりする問題も起きるでしょう。特にリモートワークが普及した現在、社内外からのアクセスが増え、ルールの重要性はますます高まっています。

この記事では、共有フォルダの具体的な運用ルールを、フォルダ構成やファイル名の付け方から、削除・バックアップのルールまでわかりやすく解説します。ルールを整備し、組織全体の生産性向上と情報資産の適切な管理を実現しましょう。

なぜ共有フォルダに運用ルールが必要なのか?

共有フォルダの運用ルールは、業務効率の向上と、リモートワーク時代における情報セキュリティの強化に不可欠です。そもそも共有フォルダとは、社内サーバーやクラウド上に設置された、複数の従業員がアクセスできるファイル保管スペースのことですが、ルールがなければすぐに情報が散乱し、ファイルの所在不明や重複、削除ミスなどのトラブルにつながります。

この便利な仕組みがある反面、運用ルールがないと情報が散乱し、さまざまな問題を引き起こします。

とくに近年は、リモートワークや在宅勤務の普及により、オフィス外から社内データにアクセスする機会も増えています。それに伴いVPN機器などが攻撃の標的になるなど、情報漏えいにつながるリスクも高まっていると指摘されています。

共有フォルダによくある問題

ルールがない共有フォルダでは、以下のような問題が発生し、企業全体の生産性を大きく損なう要因となります。

  • ファイル検索の時間的損失
    フォルダの分類があいまいで、どこに何があるかわからない。ファイル名が作成者によってバラバラで、検索してもヒットしない。
  • 業務の属人化
    特定の社員しかファイルの保管場所を知らず、その人が不在だと業務が滞る。退職時に必要なデータが引き継がれず、紛失してしまう。
  • バージョン管理の失敗
    同じようなファイルが複数存在し、どれが最新版か判断できない。古い情報をもとに作業してしまい、手戻りが発生する。
  • ストレージ容量の圧迫
    不要なファイルが削除されずに溜まり続け、サーバーの容量を無駄に消費する。
  • セキュリティリスクの増大
    アクセス権限が不適切で、誰でも重要情報にアクセスできる。誤って重要なファイルを上書き・削除する事故が起きやすい。

共有フォルダ構成のルール例

共有フォルダを社内全体で使う場合、あらかじめ業務内容や部門別に分類し、階層や命名のルールを決めておくことで、情報を整理しやすくなり、管理負担も軽減されます。

一般的には、大分類として部門や機能別に分け、中分類でプロジェクトや年度、小分類で具体的な業務内容に分ける3階層が管理しやすいとされています。

階層が深すぎると目的のファイルにたどり着くまでに時間がかかり、浅すぎると整理が不十分になります。

業務効率を上げるうえでは、「誰が見ても、どこに何があるかがわかる」構成が基本です。特に一時フォルダと保管フォルダ、個人フォルダとの棲み分けは明確にしておきましょう。

部門別・プロジェクト別の構成例

部門別の構成例では、第1階層を「01_経営企画」「02_営業部」「03_製造部」「04_人事部」「05_経理部」のように部門コードと部門名で分類します。第2階層で年度や四半期、第3階層で具体的な業務内容に分けます。

プロジェクト別の構成例では、「プロジェクトA_新商品開発」「プロジェクトB_システム更新」のようにプロジェクト名で第1階層を作り、「01_企画書」「02_設計書」「03_進捗管理」「04_完成品」といった業務フェーズで第2階層を構成します。

機能別の構成例もあります。「10_契約書類」「20_会議資料」「30_報告書」「40_テンプレート」「50_アーカイブ」のように、書類の種類や用途で分類する方法です。どの部門でも共通して使用する文書がある場合に適しています。

時系列重視の構成では、「2025年_01月」「2025年_02月」のように月単位で分け、その下に部門やプロジェクトのフォルダを配置します。月次報告や定期的な業務で効果を発揮するでしょう。

一時フォルダと保存フォルダの管理

作業途中のファイルと、確定版ファイルは保管場所を分けましょう。

一時的に保存されたファイルが本番データと混在すると、最新版がわからなくなったり、誤って未完成のデータを共有してしまったりするリスクがあります。

そのため、「作業中」「確認待ち」など用途別の一時フォルダを設け、最終成果物は所定の保存フォルダへ移す運用が適しています。

たとえば、以下のように分けておくとわかりやすくなります。

  • 案件名フォルダ/一時保存(作業中)
  • 案件名フォルダ/確定データ(提出用)

フォルダの中に「一時」「確定」とラベルをつけるだけでも、誤操作を減らせるでしょう。

個人フォルダとの使い分け

共有フォルダと個人フォルダは明確に区別しておきましょう。

個人フォルダは、作業途中やメモ、下書きなどを保存する場として活用されます。これを共有フォルダに混在させてしまうと、必要のないファイルが大量に溜まり、探しにくくなります。

以下のルールを設けると混乱を防げます。

  • 個人作業用のファイルは、自分専用の「個人フォルダ」に保存する
  • 他者と共有するファイルは、内容確定後に共有フォルダへ移動する

組織でファイルの流れを明確にし、「どこに何を置くか」を共通認識として定着させることが、管理しやすいフォルダ構成につながります。

共有フォルダの名前のルール例

フォルダ名やファイル名のルールを統一すると、検索性が高まり、誤操作や混乱を防げます。共有フォルダの運用では、同じような名前のファイルが複数あったり、名前の付け方が人によってバラバラだったりすることがよくあります。

そのため、社内で一定の命名ルールを設けておくと、誰が作ったファイルでも内容をひと目で把握でき、同じファイルが重複して保存されるリスクも減らせます。

フォルダ名のルール

フォルダ名の命名ルールは、特に時系列で管理するフォルダやプロジェクトフォルダには、番号を振ると便利です。

  • 先頭に番号を振る
    01_営業部, 02_開発部, 03_管理部 のように番号を振ると、意図した順番にフォルダを並べられます。
  • 日付を入れる
    2025_プロジェクトA, 2026_プロジェクトB のように年度を入れると、時系列で管理しやすくなります。

ファイル名のルール

ファイル名には、「日付」「案件名・内容」「作成者名」「バージョン」などの要素を含め、その並び順をルール化します。ファイルの並び順を考慮し、日付を先頭に置くのが一般的です。

ファイル名のルール例

日付_案件名・内容_作成者名_vXX.拡張子

ファイル名ルールの一例
  • 20250704_A社向け提案書_田中_v1.0.pptx
  • 20250801_新商品開発MTG議事録_鈴木_v2.1.docx

日付は「20250704」のように8桁の西暦で統一します。単語の区切りにはアンダーバー _ を使うなど、使用する記号も統一しましょう。

バージョン管理では「最新」「修正版」といった曖昧な言葉は使用せず、v1.0、v1.1のように番号で管理します。

禁止文字や略称の定義

フォルダ名やファイル名で、使ってよい文字・避けるべき表現を明示しておきましょう。

Windowsや一部のクラウド環境では、フォルダ名やファイル名に以下の記号を使うと不具合が起こることがあります。

使用を避けるべき文字

  /  :  *  ?  ”  <  >  |  #  %  &

また、人によって解釈が分かれる略語(例:「定例」「MTG」「稟議」「見積」など)は、共通表現にそろえるとよいでしょう。略語は社内でリスト化し、使用ルールを文書化して共有するとよいでしょう。

共有フォルダの不要ファイル削除のルール例

共有フォルダをきれいに保つためには、定期的に不要なファイルを整理・削除しましょう。

保存期間と削除時期のルール化

社内ファイルの種類ごとに保存期限を決め、一定期間が経過したものは削除対象としましょう。たとえば、「見積書は作成後5年保管」「作業中フォルダのデータは1か月以内に移動または削除」など、文書種別やフォルダごとにルールを設定しておくと、判断がしやすくなります。

完了・不要ファイルの移動ルール

現在進行中でない案件のファイルや、参照頻度が極端に低いファイルは、「完了案件」や「保管用」といった別のフォルダに移動させましょう。

プロジェクトが終了したら、関連するフォルダごと「完了案件」フォルダに移動させます。そして、半年に一度など、定期的に各部署で担当者を決めて棚卸しを実施し、保管期間を過ぎたファイルを削除する作業を定例化することが望ましいでしょう。

法的なファイルの保管期間

文書の種類によっては、法律で定められた保管期間を守る必要があります。それ以外の社内文書についても、独自の保管期間を設定しましょう。

文書の法定保存期間の例

文書の種類保存期間根拠法
経理・税務関連書類

決算書請求書領収書など)

7年

欠損金の生じた事業年度は10年)

法人税法
人事・労務関連書類

(労働者名簿、賃金台帳など)

5年

(労働基準法の経過措置により当面の間は3年)

労働基準法
株主総会議事録10年会社法

出典:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁
労働基準法(第109条)|e-Gov
会社法(第318条)|e-Gov

共有フォルダのバックアップ・保管ルールの例

ヒューマンエラーやサイバー攻撃、災害などから企業の重要資産であるデータを守るためには、バックアップとアクセス権の適切な管理が不可欠です。特にリモートワークでは、オフィス外からのアクセスが増えるため、セキュリティ対策をより一層強化しなくてはなりません。

バックアップの周期と方法を決める

データの重要度や更新頻度に応じて、バックアップの周期を決めます。総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」においても、マルウェア(ランサムウェア)対策として、バックアップの取得と、定期的な復旧テストの実施が推奨されています。

万が一の事態に備え、自社の事業継続に最適な周期(毎日、毎週など)と方法(クラウド、NASなど)を選択しましょう。

出典:テレワークセキュリティガイドライン第5版|総務省

フォルダごとにアクセス権限を設定する

情報漏えいや誤操作のリスクを低減するため、フォルダごとにアクセス権限を適切に設定します。原則として、「必要最小限の権限」を付与することがセキュリティの基本です。

  • フルコントロール:管理者向けの権限
  • 変更(書き込み):ファイルの編集が必要な担当者に付与
  • 読み取り専用:情報の参照のみが必要な担当者に付与

例えば、「経理フォルダは経理部員のみが変更権限を持ち、役員は読み取り専用」「プロジェクトフォルダは当該メンバーのみアクセス可能」といった形で、実務に合わせて厳密に設定しましょう。

 バージョン管理を取り入れる

上書き保存による履歴の消失を防ぐには、バージョン管理を取り入れましょう。

たとえば、ファイル名に「_v1」「_v2」といったバージョン表記を付けたり、クラウドサービスの「履歴機能」を活用したりすることで、以前の状態に戻したいときにも対応できます。

クラウドストレージ(例:Google Drive、Dropbox Business、OneDrive for Business)には自動でバージョン履歴を残す機能があるため、誤って上書き・削除しても復元が可能です。

ファイルのバージョン管理の命名例
  • 【内容】_v1.xlsx(初版)
  • 【内容】_v2.xlsx(修正済)
  • 【内容】_final.xlsx(最終版)

「final」「最新」といった表記ではなく、バージョン番号で管理しましょう。

共有フォルダ運用ルールの作り方

共有フォルダの運用ルールは、明文化して社内で共有し、継続的に運用・改善できる体制を整えることが必要です。

ルールを決めても、実際に現場で活用されなければ意味がありません。実効性のある運用ルールを構築するには、現場の業務実態に即した内容にすること、全社員に周知すること、そして継続的に見直すことが欠かせません。

シンプルなルールから始める

まずは、最も課題となっている「ファイル名の統一」や「フォルダ構成の基本」など、守りやすく効果の大きいルールから始めましょう。影響範囲の大きいフォルダから試験的に導入し、成功体験を積むのが効果的です。

運用ルールを文書化し社内で共有する

作成したルールは、誰でもいつでも確認できるよう、社内ポータルなどでマニュアルとして明文化します。そして、社内研修会で説明したり、共有フォルダの最上位階層にルールを記載したテキストファイルを置いたりするなど、あらゆる手段で周知を徹底しましょう。

 ITツールと連携して効率化を図る

手作業による運用だけでなく、ITツールを活用することで共有フォルダの管理はより効率的になります。

以下のような対策が考えられます。

  • 自動バックアップ設定(NASやクラウドのスケジューラー機能)
  • ファイル名のテンプレート化(フォームやマクロとの連携)
  • 利用状況のログ管理(アクセス権や更新履歴の追跡)
  • アーカイブ化や期限付き削除の自動化

導入するツールの種類や設定方法は、自社のIT環境に合わせて柔軟に検討しましょう。IT担当と連携しながら仕組み化しておけば、ルールの実行力が一段と高まります。

定期的にルールを見直す

一度決めたルールが、事業内容の変化や組織の成長によって合わなくなることもあります。年に1回など、定期的にルールを見直す機会を設け、現状に合わせて柔軟に改訂していくことが、ルールを陳腐化させないための鍵です。

利用者からのフィードバックを収集する仕組みがあると、より実用的なルールへと改善できるのではないでしょうか。

共有フォルダ運用ルールを整えて業務効率を高めよう

共有フォルダを有効に活用するには、業務内容や社内体制に応じた運用ルールの整備が欠かせません。フォルダ構成の統一、命名ルールの明確化、不要ファイルの削除基準、バックアップ・保管方針などをあらかじめ決めておくことで、日々の業務がスムーズに進み、社内の情報共有が格段に効率化されます。

「探す時間」という目に見えないコストを削減し、組織全体の生産性を向上させます。

また、適切なアクセス権の設定やバックアップは、企業の重要な情報資産をさまざまなリスクから守るために重要です。

本記事で紹介したルール例を参考に、さっそく自社の共有フォルダを見直し、誰もが効率的に働ける環境を構築してみてはいかがでしょうか。


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