- 作成日 : 2025年11月25日
Microsoft 365におけるワークフローの作り方3つと作成のポイント
Office 365(現:Microsoft 365)では、Power AutomateやTeams、SharePointを使って、紙やメールで行っていた申請~承認フローを低コードまたはテンプレートを活用して自動化できます。当記事では、Microsoft 365でワークフローシステムを構築する3つの方法と、それぞれのメリット・デメリット、失敗しないための作成ポイントを具体的に解説します。
目次
ワークフローシステムとは?
ワークフローシステムとは、申請・承認・決裁などの業務プロセスを、デジタル上で自動的に流すための仕組みです。紙やメールに頼っていたフローをシステム化することで、承認漏れや滞留を防ぎ、業務の見える化・効率化を実現できます。
ワークフローと言うと難しく感じますが、内容自体はシンプルです。例えば「社員が休暇を申請する → 上長が承認する → 総務が勤怠システムに反映する」といった一連の流れを、システム上で1つのルートとして定義します。ワークフローシステムでは、このルートに沿って、入力された申請データを自動で次の担当者に回し、承認結果を記録・通知します。
紙やメール運用の場合、申請書の紛失・検索のしづらさ・ステータスの把握の難しさなどがネックになりがちです。ワークフローをシステム化すれば、
- 申請状況のリアルタイム把握
- 過去履歴の一元管理
- 承認ルールの標準化・明文化
といった効果が得られ、バックオフィス全体の生産性向上につながります。
ワークフローをシステム化する必要性
ワークフローをシステム化する最大の理由は、「承認にかかる時間と手間を削減しつつ、ミスと属人化を減らすため」です。特にテレワークや拠点分散が進むほど、紙やメールだけでは限界が見えやすくなります。
ワークフローをシステム化すると、
- あらかじめ承認ルートを定義できる
- 申請が来たら自動通知される
- スマホやブラウザから場所を問わず承認できる
- 誰のところで止まっているか、一覧で確認できる
といった仕組みで、業務が「人に依存しない状態」に近づきます。また、承認履歴がログとして残るため、内部統制や監査の観点からも有利です。誰が、いつ、どの申請を承認したのかを追跡できるため、不正防止やコンプライアンス強化にもつながります。
Microsoft 365でワークフローは作れる
Microsoft 365があれば、追加のワークフロー製品を導入しなくても、標準機能の組み合わせで多くの申請フローを自動化できます。代表的なのが、Power Automate・Microsoft Teams・SharePointの3つです。
Power Automateは「フロー(自動処理)」を作成するためのノーコードツールで、SharePointやFormsなどのアプリと連携して、トリガーとアクションを自由に定義できます。
Teamsはチャット・会議のプラットフォームですが、承認アプリやアダプティブカードなどを用いて、承認依頼や結果の通知を簡単に行えます。
SharePointはドキュメント管理・ポータルサイトの基盤であり、ワークフローで扱う申請データの“保管庫”として機能します。
これらを組み合わせることで、例えば「Formsで申請入力 → SharePointに保存 → Power Automateで承認ルートを自動回付 → Teamsに通知」といった、Office 365(Microsoft 365)内で完結するワークフローが構築できます。
Microsoft 365におけるワークフローの作り方【Power Automate】
Power Automateは、Microsoft 365内でワークフローを自動化する際の中心となるツールです。
ここからは、Power Automateを使って申請~承認フローを構築する方法や、メリット・デメリット、利用が向いているケースを紹介します。
Power Automateを使用した作り方
Power Automateを使用した基本的な流れは「トリガーを決める → 承認ステップを設計する → 通知・記録の処理を追加する」です。
ここでは、休暇申請フローを例に、代表的な作成手順をイメージできるように説明します。
STEP1:申請データの入り口を決める
まず、どこから申請を受け付けるかを決めます。代表的なパターンは次の通りです。
- Microsoft Formsのフォームに入力してもらう
- SharePointリスト(申請一覧)に直接入力してもらう
- Teams内のアプリから入力してもらう
初心者であれば、フォーム作成が簡単なMicrosoft Formsか、情報を一覧で管理しやすいSharePointリストから始めるとスムーズです。
STEP2:Power Automateで新しいフローを作成する
- ブラウザでPower Automateにアクセスし、「自動化されたクラウド フロー」を新規作成します。
- トリガーとして、「Microsoft Formsで新しい応答が送信されたとき」や「SharePointでアイテムが作成されたとき」など、先ほど決めた入り口に対応するイベントを選択します。
- フロー名を「休暇申請承認フロー」など、利用者に分かりやすい名称にします。
STEP3:承認アクションを追加する
続いて、「承認の開始と待機」などのアクションを追加し、
- 承認者(上長や部署長など)
- 通知先(申請者・総務など)
- 承認のタイトル・本文(申請内容を差し込み)
を設定します。承認者は、固定のユーザーを指定することも、申請内容に応じて動的に変えることも可能です。
STEP4:承認結果に応じた分岐処理を定義する
承認アクションの結果を条件分岐で判定し、
- 承認された場合:SharePointに「承認済み」と記録し、申請者にTeamsやメールで通知
- 却下された場合:理由を添えた通知を申請者に自動送信
といった処理を組み込みます。
STEP5:テスト・改善を行う
フローを保存したら、テスト用の申請を1~2件流し、
- 承認依頼が正しい人に届いているか
- 通知の文面やタイミングは適切か
- 申請一覧(SharePointなど)に正しく記録されるか
を確認します。運用しながら、承認者の追加・条件の微調整などを行い、実務に合った形に育てていくイメージです。
Power Automateのメリット・デメリット
Power Automateの強みは「柔軟性と連携の豊富さ」、弱みは「複雑になると設定・保守が難しくなりやすい点」です。
■ 主なメリット
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■ 主なデメリット
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中小企業や部署単位であれば、まずは「休暇申請」「経費精算」「稟議」など、標準的なフローから始めるのがおすすめです。難易度が高いワークフローは、テンプレートのコピーや、Microsoftの公式ドキュメントを参考にしながら少しずつ拡張すると失敗しにくくなります。
Power Automateの使用が向いているケース
Power Automateが向いているのは、「複数のアプリ間をまたぐワークフロー」や「将来の拡張を見据えた自動化」をしたいケースです。
具体的には、次のような状況で特に活躍します。
- 「Forms → SharePoint → Teams通知 → Outlookメール」といった複数アプリ連携が必要なとき
- 申請の種類や金額に応じて承認者を切り替えたいとき
- 承認後に別システムへの登録やファイル生成などを自動化したいとき
- 既にPower Automateを他業務(リマインド、定期レポート送付等)でも活用している組織
反対に、「シンプルな1段階承認だけ」「承認のやり取りをチャット上で完結させたい」といったニーズであれば、次に紹介するTeamsベースのアプローチの方が、現場感覚に合う場合もあります。
Microsoft 365におけるワークフローの作り方【Microsoft Teams】
Microsoft Teamsでは、日常的に利用しているチャット画面上で申請・承認を完結できるシンプルなワークフローを構築できます。
ここからは、Teamsを使った申請フローの作り方、メリット・デメリット、導入に向いているケースを紹介します。
Microsoft Teamsを使用した作り方
基本イメージは「Teams上で申請フォームを開き、その結果を承認アプリで回す」形です。
STEP1:承認アプリをTeamsに追加する
Teamsの左メニュー「アプリ」から「承認」を検索し、アプリを追加します。追加後は、任意のチームやチャットから承認リクエストを作成できるようになります。
STEP2:新しい承認リクエストを作成する
- 申請を行いたいチームのチャネルを開き、「…(その他)」から「承認」を選択します。
- 「新しい承認要求」をクリックし、
- タイトル(例:○月○日 有給休暇申請)
- 承認者(上長や管理職)
- 追加の詳細(理由や期間など)
を入力します。必要に応じて、Power Automateと連携し、承認要求の作成を自動化することも可能です。
STEP3:承認者がTeams上で承認・却下する
承認者にはTeams上で通知が届き、カード形式で内容と「承認」「却下」のボタンが表示されます。承認・却下の結果とコメントは、そのままチャネルやチャットに記録されるため、関係者全員が状況を共有しやすくなります。
STEP4:必要に応じてフロー化する
繰り返し発生する申請については、Power Automateで「特定のフォーム送信 → Teamsで承認依頼作成 → 結果を投稿」というフローを作っておくと、よりスムーズに運用できます。
Microsoft Teamsのメリット・デメリット
Teamsベースのワークフローは、「現場にとっての心理的ハードルが低い」一方で、「データの蓄積・分析には一工夫が必要」という特徴があります。
■ 主なメリット
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■ 主なデメリット
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Microsoft Teamsの使用が向いているケース
Teamsの承認機能が向いているのは、「とにかく承認レスポンスを早めたい現場」や「比較的シンプルなフローをチャットベースで回したいとき」です。
例えば、
- 日々の稟議・小口稟議・出張申請など、スピードが重視される承認
- 上長の出社・在宅に関わらず、スマホからサッと承認してほしいフロー
- チーム単位で完結する簡易的な承認(プロジェクト内のレビュー承認など)
一方で、申請データを長期的に蓄積・分析したい場合や、複数部門をまたぐ複雑な承認ロジックが必要な場合は、次に説明するSharePointリストを「申請データの母艦」として活用する方が適しています。
SharePointは、申請データを蓄積・管理する「ワークフローの基盤(データの母艦)」として活用できるツールです。
ここからは、SharePointを使ったワークフローの作り方や、メリット・デメリット、導入が適しているケースを紹介します。
基本の考え方は「申請データをSharePointリストに集約し、その登録・更新をトリガーにワークフローを動かす」ことです。
STEP1:申請用のSharePointリストを作成する
- SharePointサイト上で「新規」→「リスト」を選択します。
- 「休暇申請一覧」「経費精算一覧」など、用途が分かる名前を付けます。
- 申請に必要な項目(申請者名、日付、金額、理由、承認ステータスなど)を列として追加します。
このリストが、ワークフローで扱う申請データの“台帳”になります。
STEP2:入力フォームの用意
SharePointリストはそのまま入力画面としても使えますが、Microsoft FormsやPower Appsで専用フォームを作成し、入力しやすくすることもできます。
現場のITリテラシーに応じて、
- シンプルなリスト入力で済ませる
- 入力チェック付きのフォームを用意する
といった選択を行いましょう。
STEP3:Power Automateで承認フローを構築する
SharePointリストを前提に、Power Automateで
- 「SharePointでアイテムが作成されたとき」をトリガーに承認フローを開始
- 承認結果に応じて、リストのステータス列を「承認済み」「却下」などに更新
- 変更内容をTeamsまたはメールで通知
といった処理を組み込みます。
STEP4:一覧ビュー・権限を整える
SharePointリストでは、ビュー機能を使って
- 申請者別の一覧
- 承認待ちだけを表示するビュー
- 承認済みのみを表示するビュー
などを作れます。また、権限設定を調整することで、「自分が申請した分だけ見える」「管理者だけが全件見える」といった制御も可能です。
SharePointは「データの一元管理」と「ポータルとしての拡張性」に優れる一方で、「最初の設計に少し手間がかかる」点がデメリットです。
■ 主なメリット
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■ 主なデメリット
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SharePoint中心のワークフローは、「申請データを長期的に蓄積していきたい場合」や「複数部署・複数拠点にまたがる申請を一元管理したい場合」に特に向いています。
例えば、
このような用途では、「SharePointで申請データを集約 → Power Automateでフローを制御 → Teamsで通知・コミュニケーション」という構成を採ると、Microsoft 365内で完結した強力なワークフロー基盤になります。
Microsoft 365でワークフローを作成する際のポイント
Microsoft 365でワークフローを作るときは、「誰が何をするか」「どう見せるか」「どこまで書くか」「どう共有するか」を意識することが重要です。ツール選びだけでなく、業務フローの設計そのものが成否を分けます。
ここでは、Microsoft 365でワークフローを作成する際のポイントを解説します。
関係者ごとの役割とタスクを明確にする
最初にやるべきことは、「申請者」「承認者」「最終的な確認者」など、関係者ごとの役割とタスクを紙に書き出すことです。ツールを触り始める前に、人と流れを整理しておくと、ワークフロー設計がスムーズになります。
具体的には、
- 誰がどのタイミングで申請を起票するのか
- どの金額・内容なら誰が承認するのか
- 承認後にどの部署がどのような処理をするのか
- 例外パターン(緊急時、代理承認など)をどう扱うか
といった点を明文化します。
この作業を怠ると、「Power Automateは作ったが、現場の運用に合わない」といったミスマッチが起きがちです。まずは現状の紙やメールのフローを整理し、シンプルにしてからシステム化するのがおすすめです。
初見でも理解できる表現で書く
ワークフロー内の文言や通知メッセージは、初めて見る人でもすぐに意味が分かる表現にすることが大切です。専門用語や略語をそのまま使うと、誤解や入力ミスにつながります。
例えば、
- フィールド名を「申請日」「利用目的」「金額(税込)」など、具体的な表現にする
- 通知タイトルに「【要承認】○○申請が届きました」のようなステータスを入れる
- フォーム内に簡単な入力例や注意書きを添える
といった工夫をするだけでも、ユーザー体験が大きく変わります。
また、会社独自の略語やプロジェクト名は、初出の箇所で正式名称との併記をしておくと、異動者や新入社員にも親切です。
文書は必要十分な情報量に抑える
ワークフローの申請フォームは、「必要な情報だけ」に絞ることで、入力の負担とミスを減らせます。項目を増やしすぎると、結局は紙やメールに逆戻りしてしまうこともあります。
最低限、承認判断に必要な情報(目的・金額・期間など)と、後から検索・集計に必要な情報(部門名・プロジェクト名など)に絞り、
- 現状の紙の申請書の項目をそのまま持ち込まない
- 「後で使うかもしれない」情報は一旦外してみる
- 実際に運用してみてから項目を追加する
といった考え方で設計すると、現場に受け入れられやすくなります。
情報共有ツールを活用して認識齟齬を防ぐ
ワークフローを導入する際は、TeamsやSharePointなどの情報共有ツールと組み合わせて、「どこを見れば何が分かるか」を明確にしておくことが重要です。
例えば、
- 「申請方法・フロー図・Q&A」をまとめたページをSharePointで用意し、常に最新版を閲覧できるようにする
- Teamsの特定チャネルを「申請・承認のお知らせ専用」として運用し、通知の行き先を統一する
- ワークフローの変更点があれば、そのチャネルで必ずアナウンスする
といったルールを整えると、認識のズレや「聞いてない」という不満を抑えられます。
ワークフローは、単にツールを入れれば終わりではなく、「ルールをいかに浸透させるか」が成功の鍵になります。Microsoft 365の情報共有基盤をフル活用し、「誰もが同じ情報にアクセスできる状態」を作りましょう。
Microsoft 365で自社に合ったワークフローを育てていこう
Office 365(Microsoft 365)では、Power Automate・Teams・SharePointといった標準アプリの組み合わせだけで、多くの申請~承認業務を自動化できます。まずは現状のフローと役割を整理し、小さくシンプルなワークフローから試し、自社に合う形に少しずつ育てていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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