- 作成日 : 2025年9月22日
スプレッドシートの条件付き書式を設定・解除するには?活用方法も解説
大量のデータを眺めている時、重要な情報を見落としてしまうことはありませんか?Googleスプレッドシートの条件付き書式を使えば、セルの内容に応じて自動で色やスタイルを変えて表示できるため、重要なデータをわかりやすく表示できます。例えば、売上や在庫、勤怠データなどを一目で把握することができます。
本記事では、条件付き書式の基本的な設定・解除方法から応用まで、実務で役立つ設定方法を詳しく解説します。
目次
スプレッドシートの条件付き書式とは
条件付き書式の基本概念
条件付き書式とは、セルの値や内容に応じて、自動的に書式(背景色、文字色、太字や取り消し線など)を変更する機能です。例えば、売上目標を達成したセルを緑色に、未達成のセルを赤色に自動的に色分けすることができます。この機能により、大量のデータの中から重要な情報を瞬時に見つけ出すことが可能になります。
従来の手動での色分けと比較すると、条件付き書式には大きなメリットがあります。データが更新されると自動的に書式も更新されるため、常に最新の状態を保てます。また、人為的なミスも防げるため、データの信頼性が向上します。さらに、一度設定すれば繰り返し使用できるため、定期的な報告書作成の効率が格段に上がります。
バックオフィス業務での活用シーン
経理部門では、予算と実績の比較表で差異を色分けしたり、支払期限が近づいている請求書を強調表示したりする際に活用されています。売掛金の年齢調べでは、30日、60日、90日超過といった段階で色を変えることで、回収リスクを視覚的に把握できます。
人事部門では、勤怠管理表で残業時間が基準を超えた従業員を赤色で表示したり、有給休暇の取得率が低い社員を黄色で警告表示したりできます。また、人事評価シートでは、評価点数に応じて自動的に色分けすることで、全体的な評価分布を一目で確認できます。
条件付き書式の種類
Googleスプレッドシートには、様々なタイプの条件付き書式が用意されています。最も基本的なのは「セルの値に基づく書式」で、特定の値と一致する、特定の範囲に含まれる、といった条件を設定できます。数値の大小比較、テキストの含有、日付の範囲指定など、多様な条件設定が可能です。
「カスタム数式を使用」では、より複雑な条件を設定できます。複数の条件を組み合わせたり、他のセルの値を参照したりすることが可能です。また、「カラースケール」では、数値の大きさに応じてグラデーションで色分けでき、データの傾向を視覚的に把握できます。
スプレッドシートで条件付き書式を設定する方法
STEP1:条件付き書式を適用する範囲を選択
まず、条件付き書式を適用したいセル範囲を選択します。単一のセル、行全体、列全体、または任意の範囲を選択できます。例えば、売上データのB2:B100を選択して、売上金額に応じた色分けを設定します。範囲選択は後から変更することも可能ですが、最初に正確に選択しておくことで設定がスムーズに進みます。
Ctrlキー(MacではCommandキー)を押しながらクリックすることで、離れた複数の範囲を選択することもできます。これは、飛び飛びの列や特定の曜日だけに書式を適用したい場合に便利です。大きな表の場合は、列のヘッダーをクリックして列全体を選択する方が効率的です。
STEP2:条件付き書式メニューを開く
範囲を選択したら、メニューバーの「表示形式」→「条件付き書式」を選択します。または、選択した範囲を右クリックして、コンテキストメニューから「条件付き書式」を選ぶこともできます。すると、画面右側に条件付き書式の設定パネルが表示されます。
設定パネルには、現在選択している範囲が表示されています。ここで範囲を修正することも可能です。また、既に設定されている条件付き書式がある場合は、その一覧も表示されます。新しい条件を追加する場合は、「条件を追加」ボタンをクリックします。
STEP3:条件の種類を選択
「セルの書式設定の条件」のドロップダウンメニューから、適用したい条件の種類を選択します。よく使用される条件には以下のようなものがあります。
- 空白セル/空白ではないセル:未入力のセルを強調表示する場合に使用
- テキストを含む/含まない:特定の文字列を含むセルを色分けする場合に使用
- 次より大きい/小さい:数値の大小で色分けする場合に使用
- 日付が次より前/後:期限管理などで使用
- カスタム数式を使用:複雑な条件を設定する場合に使用
例えば、売上目標100万円以上を達成したセルを緑色にする場合は、「次より大きい」を選択し、値に「1000000」を入力します。
STEP4:書式スタイルを設定
条件を設定したら、その条件に合致した場合の書式を指定します。デフォルトでは、薄い緑色の背景色が設定されていますが、これは自由に変更できます。「書式設定のスタイル」セクションで、以下の要素を設定できます。
- 背景色:セルの背景色を変更(最も視覚的効果が高い)
- 文字色:テキストの色を変更
- 太字/斜体/取り消し線:文字スタイルを変更
書式設定では、プリセットされた色の組み合わせから選ぶこともできますし、カスタムで色を指定することもできます。ビジネス文書では、赤は警告や注意、緑は良好や達成、黄色は要確認といった、直感的に理解しやすい色使いが推奨されます。
STEP5:複数の条件を組み合わせる
一つの範囲に複数の条件付き書式を設定することも可能です。例えば、在庫管理表で以下のような段階的な色分けを行う場合、
- 在庫数が0:赤色(在庫切れ)
- 在庫数が1-10:オレンジ色(要発注)
- 在庫数が11-50:黄色(適正在庫)
- 在庫数が51以上:緑色(過剰在庫)
各条件を個別に追加し、優先順位を設定します。条件の優先順位は、設定パネルでドラッグして並び替えることができます。上位の条件が優先されるため、より具体的な条件を上に配置することが重要です。
カスタム数式を使った高度な設定
より複雑な条件設定には、カスタム数式を使用します。例えば、行全体を条件に応じて色分けする場合、=$B2>100000のような数式を使用します。$マークを列番号の前に付けることで、列を固定しながら行は相対参照になります。
日付に関する条件では、=TODAY()-A2>30のような数式で、30日以上経過したデータを強調表示できます。また、=AND(B2>50000,C2<10)のように、複数の条件を組み合わせることも可能です。これにより、「売上が5万円以上かつ在庫が10個未満」といった複雑な条件も設定できます。
スプレッドシートで条件付き書式を解除する方法
特定の条件付き書式を削除
不要になった条件付き書式を削除するには、まず条件付き書式が適用されているセルを選択します。「表示形式」→「条件付き書式」を選択すると、右側のパネルに現在適用されている条件の一覧が表示されます。削除したい条件の右側にあるゴミ箱アイコンをクリックすることで、その条件を削除できます。
複数の条件が設定されている場合は、一つずつ削除する必要があります。条件の内容を確認してから削除することで、誤って必要な条件を削除することを防げます。削除は即座に反映されますが、Ctrl+Z(MacではCmd+Z)で元に戻すことも可能です。
範囲内のすべての条件付き書式をクリア
特定の範囲に適用されているすべての条件付き書式を一度に削除したい場合は、その範囲を選択してから「表示形式」→「書式をクリア」を選択します。これにより、選択範囲内のすべての条件付き書式が削除されます。
シート全体の条件付き書式をクリアしたい場合は、Ctrl+A(MacではCmd+A)でシート全体を選択してから、同じ操作を行います。ただし、この操作は元に戻すことができない場合があるため、重要なシートでは事前にバックアップを取ることをお勧めします。
条件付き書式の一時的な無効化
条件付き書式を完全に削除せずに、一時的に無効化したい場合もあります。残念ながら、Googleスプレッドシートには条件付き書式の有効/無効を切り替える機能はありませんが、条件を編集して適用されないようにすることは可能です。
例えば、数値条件の場合、閾値を極端に高い値(999999999など)に変更することで、実質的に条件を無効化できます。後で元に戻したい場合は、値を元に戻すだけで済みます。この方法は、季節的な条件や一時的なキャンペーンに関連する書式設定で有用です。
条件付き書式のコピーと移動
条件付き書式を他のセルや範囲にコピーしたい場合は、書式のコピー機能を使用します。条件付き書式が設定されているセルをコピー(Ctrl+C)し、貼り付け先で「編集」→「特殊貼り付け」→「書式のみ貼り付け」を選択します。これにより、値はコピーされずに条件付き書式のみがコピーされます。
ペイントブラシツール(書式コピーツール)を使用することもできます。ツールバーのペイントブラシアイコンをクリックし、コピー元のセルをクリックしてから、適用先のセルまたは範囲をクリックまたはドラッグします。大量のセルに同じ条件付き書式を適用する場合に便利です。
スプレッドシートの条件付き書式活用のポイント
過度に使用せずパフォーマンスを意識する
条件付き書式は便利な機能ですが、過度に使用するとスプレッドシートのパフォーマンスに影響を与えることがあります。特に、カスタム数式を使用した複雑な条件や、大量のセルに適用される条件は、計算負荷が高くなります。
パフォーマンスを維持するためのポイントとして、必要最小限の範囲に条件を適用する、シンプルな条件を優先的に使用する、不要になった条件は削除する、といった対策が有効です。また、volatile関数(TODAY、NOW、RANDなど)を含む条件は、頻繁に再計算されるため注意が必要です。
色を使い分ける
効果的な条件付き書式の設定には、適切な色使いが重要です。ビジネス文書では、以下のような色の使い分けが一般的です。
- 赤系:警告、エラー、要対応(例:期限超過、在庫切れ)
- 黄系:注意、確認必要(例:期限間近、在庫少)
- 緑系:良好、完了、達成(例:目標達成、処理完了)
- 青系:情報、参考(例:前年比較、補足情報)
色覚に配慮した設計も重要です。赤と緑だけでなく、アイコンや文字スタイルも組み合わせることで、より多くの人にとって見やすい表示になります。また、印刷時のことも考慮し、モノクロでも区別がつくような工夫も必要です。
テンプレート化して効率化する
よく使用する条件付き書式の組み合わせは、テンプレートとして保存しておくと便利です。例えば、月次売上レポート用のテンプレートシートを作成し、条件付き書式を事前に設定しておけば、毎月のデータ入力時に自動的に適切な書式が適用されます。
テンプレート作成時は、相対参照と絶対参照を適切に使い分けることが重要です。行全体に適用する条件では列を固定($A2)し、列全体に適用する条件では行を固定(A$2)します。これにより、データの追加や削除があっても条件が正しく機能します。
フィルターや他の機能との連携
条件付き書式は、他のGoogleスプレッドシートの機能と組み合わせることで、より強力なツールになります。フィルター機能と組み合わせれば、特定の色のセルだけを抽出できます。また、COUNTIF関数で特定の条件に合致するセルの数を数えることで、ダッシュボードの作成も可能です。
データ検証(入力規則)と組み合わせることで、入力ミスの防止と視覚的なフィードバックを同時に実現できます。例えば、プルダウンリストで選択された値に応じて、自動的に適切な色で表示されるような設定が可能です。
トラブルシューティング
スプレッドシートの条件付き書式でよくあるトラブル、条件同士が競合することです。複数の条件が同じセルに設定されていると、上にある条件が優先されるため、思った色にならないことがあります。その場合は、条件の順序を確認して調整しましょう。
範囲の指定ミスもよくあります。相対参照(A2 など)と絶対参照($A$2 など)の違いを正しく使い分け、狙った範囲にだけ条件が適用されているかチェックしてください。
また、数式の書き方の間違いや、参照しているセルのデータ型の不一致(数値なのに文字列扱いになっているなど)も原因になります。色がうまく付かないときは、これらのポイントを一つずつ確認すると解決しやすいです。
条件付き書式でデータを見える化する
Googleスプレッドシートの条件付き書式は、データを自動で色分けして視覚的に強調できる便利な機能です。売上目標の達成状況や在庫数のしきい値、勤怠の異常値などを瞬時に把握でき、業務効率が大幅に向上します。
基本的な設定は範囲選択と条件指定だけで簡単に行え、カスタム数式を使えば複雑な条件や行全体の色分けにも対応可能です。
不要になった条件は「書式をクリア」からクリアでき、コピーやテンプレート化で繰り返し活用できます。過度な設定はパフォーマンスに影響するため、必要最小限に抑えるのがポイントです。
効果的な色使いとルール設計を取り入れれば、データ分析やレポートの説得力を高め、チーム全体での情報共有もスムーズになります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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