- 作成日 : 2025年8月5日
INTERCEPT関数とは?使い方やSLOPE関数と組み合わせて未来予測をする方法
ExcelのINTERCEPT関数(読み方:インターセプト関数)は、2組の数値データに基づいて回帰直線の「切片(y軸との交点)」を求める関数です。
売上予測や傾向分析など、統計処理やビジネスレポートの自動化にも活用できます。この記事では、INTERCEPT関数の使い方から実務での応用、よくあるエラーまでを初心者にもわかりやすく解説します。
目次
INTERCEPT関数とは?なぜデータ分析に重要なのか
INTERCEPT関数は、統計学における「単回帰分析」で算出される回帰直線の切片(Y切片)を求める関数です。回帰直線とは、散らばったデータ(散布図)の中に、最もフィットする形で引かれる直線のことです。この直線は、ある変数(目的変数:Y)が、別の変数(説明変数:X)によってどのように変化するかを示します。
切片(Y切片)とは、説明変数(X)が0のときに、目的変数(Y)が取るであろう値を指します。グラフで言うと、回帰直線がY軸と交わる点のことです。
INTERCEPT関数でわかること
INTERCEPT関数を使うことで、主に以下のことが理解できるようになります。
- 基準となる値の把握:ある要因が全くない状態(説明変数が0)で、目的変数がどのような値になるのかの目安が把握できます。
- データ間の関係性の基礎:回帰分析の重要な要素の一つである切片を理解することで、データ間の線形な関係性をより深く読み解けるようになります。
- 未来予測の基礎データ:切片と合わせて回帰直線の傾き(SLOPE関数で算出)を理解することで、将来の傾向を予測する際の重要な情報が得られます。
INTERCEPT関数の基本的な使い方
INTERCEPT関数の構文は、非常にシンプルです。
- 既知のy (必須):分析したい結果(目的変数)の数値が入力されているセル範囲を指定します。
- 既知のx (必須):結果に影響を与える原因(説明変数)の数値が入力されているセル範囲を指定します。
例:広告費と売上の関係から切片を計算してみよう
ある商品の月々の広告費と売上のデータがあるとします。広告費を全くかけない場合(X=0)に、理論上どのくらいの売上が見込めるのか、という「切片」を求めてみましょう。
| 月 | 広告費(千円) | 売上(千円) |
|---|---|---|
| 1 | 10 | 120 |
| 2 | 15 | 140 |
| 3 | 20 | 160 |
| 4 | 25 | 180 |
| 5 | 30 | 200 |
このデータを使ってINTERCEPT関数を入力してみます。
(B列に広告費、C列に売上が入力されていると仮定します。)
=INTERCEPT(C2:C6, B2:B6)
この式を入力すると、例えば「約80」のような数値が返されます。これは、「広告費が0千円(全くかけない)の場合、理論上80千円の売上が見込める」ということを示しています。もちろん、これはあくまで回帰分析に基づく予測であり、実際の売上を保証するものではありませんが、一つのベンチマークあるいは基準値として活用できます。
INTERCEPT関数の利用シーン
INTERCEPT関数は、ビジネスのさまざまな場面で活用できます。
1. 営業・マーケティング分野での分析
営業やマーケティングの分野では、広告費と売上、または広告費と顧客獲得数の関係を分析し、広告費がゼロの場合のベースとなる売上や顧客獲得数を推測する際に役立ちます。サービス改善施策の実施回数と顧客満足度の関係から、施策を全く行わない場合の顧客満足度の基準値を把握するといった使い方も考えられます。
2. 生産・在庫管理分野での分析
生産や在庫管理の領域では、生産量と生産コストの関係を分析し、生産量がゼロの場合に発生する理論的なコスト(主に固定費)を把握するために利用できます。在庫量と保管コストの関係を調べることで、在庫が全くない状態でも発生する基本的な保管コストを推測することも可能です。
3. 人事・教育分野での分析
人事や教育の分野では、研修時間と従業員の業務成績または生産性の関係から、研修を全く受けていない従業員の平均的なパフォーマンスレベルを推定するのに活用できます。勤務時間と残業時間の関係を分析し、特定の勤務時間における理論的な残業時間の基準値を把握する際にも有効です。基準値は、労務管理や時間外労働の予測のためのベンチマークを設定する際に役立ちます。
4. 財務分析
財務分析においては、投資額と将来得られるリターンの関係を分析し、投資額がゼロの場合に理論上得られると算出される基準値を考える際の参考にできます。
ただし、これは回帰分析上の数値であり、現実の投資における「最低限のリターン」を直接意味するものではない点に注意が必要です。投資がゼロでリターンが発生することは通常ありません。
INTERCEPT関数の応用
INTERCEPT関数は、単体で使うだけでなく、他の関数やグラフと組み合わせることで、より深い洞察が得られます。
1. SLOPE関数と組み合わせて回帰直線を完全理解
INTERCEPT関数が回帰直線の「切片」を求めるのに対し、「SLOPE関数」は回帰直線の「傾き」を求めます。傾きは、説明変数(X)が1単位変化したときに、目的変数(Y)がどれだけ変化するかを示します。
- SLOPE関数の構文:=SLOPE(既知のy, 既知のx)
ではINTERCEPT関数とSLOPE関数を組み合わせてみましょう。
Y (目的変数)= 傾き(SLOPE関数) × X (説明変数)+ 切片(INTERCEPT関数)
これにより、単回帰分析における回帰直線の方程式(y=ax+b)を完全に導き出せます。この式を使えば、任意のXの値に対するYの予測値を計算することが可能です。
2. 散布図とトレンドラインで視覚化
Excelの散布図を作成し、その上に「トレンドライン(近似曲線)」を追加することで、計算された回帰直線と切片を視覚的に確認できます。近似曲線のオプションで「グラフに数式を表示する」を選択すると、SLOPE関数とINTERCEPT関数で求めた数式がグラフ上に表示され、視覚と数値の両面から分析結果を理解するのに役立ちます。
3. FORECAST.LINEAR関数(線形予測)との関連
Excelには将来の値を予測する「FORECAST.LINEAR関数」というものがあります。実は、このFORECAST.LINEAR関数は、内部的に回帰分析を行い、INTERCEPT関数やSLOPE関数と同じ考え方に基づいて予測値を算出しています。INTERCEPT関数を理解することは、FORECAST.LINEAR関数の裏側にあるロジックを把握することにもつながります。
INTERCEPT関数のよくあるエラーと対策
INTERCEPT関数を使用する上で、初心者の方が遭遇しやすいエラーと、その対策について解説します。
1. #DIV/0! エラー
#DIV/0!エラーは、主に以下の原因で発生します。
- データ数が少なすぎる:既知のy、既知のxのどちらか、または両方のデータが1つしかない場合、回帰直線を計算するための十分な情報がないため、このエラーが発生します。最低でも2つ以上のデータペアが必要です。
- すべてのxの値が同じ:既知のxのセル範囲に含まれるすべての値が同じ場合、説明変数(X)の値がすべて同じ場合、標準偏差がゼロになり、傾き(SLOPE関数)の計算で分母がゼロとなるため、回帰直線を一意に定義できず、#DIV/0!エラーが発生します。たとえば、広告費のデータがすべて「10」だった場合などです。
- 対策:少なくとも2つ以上の異なるデータペアがあることを確認してください。また、説明変数(X)の値がすべて同じでないことを確認しましょう。
2. #N/A エラー
#N/Aエラーは、主に以下の原因で発生します。
- データ範囲の不一致:既知のyと既知のxのセル範囲のサイズ(行数)が異なる場合に発生します。例えば、既知のyが5行の範囲なのに、既知のxが4行の範囲になっている場合などです。
- 対策:既知のyと既知のxのセル範囲が、同じ行数、同じサイズのデータであることを確認してください。
3. #VALUE! エラー
#VALUE! エラーは、入力された値が数値として認識できない場合に発生します。
- 対策:指定したセル範囲に、数値以外のテキストや記号が含まれていないか確認してください。
4. 散布図と大きくかけ離れた値
エラーではありませんが、計算結果として得られた切片が、散布図の見た目から大きくかけ離れているように見えることがあります。これは、データが線形関係にない場合や、外れ値(特に説明変数X軸方向で極端に離れたレバレッジ点)が存在する場合に、最小二乗法に基づく回帰直線がこれらの点に大きく引っ張られるために起こりえます。
- 対策:計算の前に、まず散布図を作成してデータの分布を確認することをおすすめします。データが直線的な関係にあるかどうか、外れ値がないかなどを視覚的に確認することで、INTERCEPT関数の代わりに非線形モデルを適用すべきかどうかを判断しやすくなります。
INTERCEPT関数でデータから「気づき」を得よう
INTERCEPT関数は、回帰直線の切片を通じて「基準値」や「ゼロ条件下での予測値」を導き出す関数です。売上や費用など、ビジネスデータの傾向を見極めるうえで役立ちます。
SLOPE関数や散布図と併用すれば、数字の背後にある意味や関係性をより深く理解できるようになります。Excel初心者でも、データを可視化しながら分析を進めれば、有益な発見につながるはずです。
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