• 更新日 : 2025年6月10日

業務効率化とは?業種・職種別の例や手法、 進め方、計測方法を紹介

業務効率化とは、無駄な仕事をなくしたり非効率な業務の改善をしたりすることです。時間や労力の削減ができ、従業員のモチベーションアップにつながるメリットがあります。

企業の生産性向上にもつながるため、積極的な導入が求められます。

本記事では、業務効率化の意味や生産性向上との違い、アイデア・ツールについて解説します。

業務効率化とは?

業務効率化とは、無駄な業務をなくして非効率な作業を改善することです。ビジネスにおける生産性向上に役立つため、多くの企業で取り組まれています。

ディップ株式会社が行ったアンケートによると「勤務先で無駄な業務や作業がある」と答えた方は63%と報告されました。仕事において無駄を感じている人が多いため、業務効率化に対する需要は高い傾向です。

業務効率化においては、以下のように「ムリ・ムダ・ムラ」をなくす点が重要です。

ムリ能力に見合わない業務を行うこと
ムダ従業員の能力や社内の設備を有効活用できていない
ムラ業務効率が安定していない(不要な工程がある)

業務効率化を意識して取り組むと、1日の労働時間が短くなり売上向上につながります。

参考:ディップ株式会社

生産性向上との違い

生産性向上とは、少ない資源で多くの成果を生み出すことです。少ない労力で、多くの商品や利益を生み出せれば、生産性向上に成功したと見なせます。

一方で、業務効率化とは、非効率な作業の工程を見直し改善することであり、生産性向上を実現するための手段の一つです。

業務効率化した後に、生産性向上を目指す流れがよいでしょう。

業務効率化のメリット

業務効率化のメリットは、時間や労力の削減ができる点です。従業員の労力を減らせて業務負担の削減につながります。その結果、ワークライフバランスが整い、従業員の満足度向上にも役立てられます。

また、業務効率化により空いた時間は別の作業に取り組めるため、企業の生産性向上にも寄与するでしょう。

本項では、業務効率化のメリットを3つ解説します。

時間や労力の削減・短縮ができる

業務効率化によって、時間を短縮でき従業員の労力を減らせます。その結果、長時間労働が減り、働きやすい環境になるでしょう。

勤務時間が減少すると、企業は従業員満足度が高くなる傾向にあります。株式会社ワーク・ライフバランスの調査によると、アンケートに回答した方のうち、51%が業務効率化を含む働き方改革により従業員満足度が向上したと答えました。

従業員の離職を減らすためにも、業務効率化による時間や労力の削減が求められます。

参考:株式会社ワーク・ライフバランス

従業員のモチベーションアップにつながる

業務効率化により、従業員のモチベーションアップにつながります。みずほ情報総研株式会社によると、残業時間が増えるほど、労働者のメンタルヘルスは悪化すると報告されました。

したがって、いままで時間がかかっていた作業が短時間で完了すると、従業員のストレス軽減につながります。そして、長時間労働が減り、モチベーションが高まるでしょう。

参考:みずほ情報総研株式会社「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究」

生産性が向上する

業務効率化により、無駄な業務がなくなるため、本来必要な仕事に労力をかけられ生産性が向上します。

総務省によると、省力化(人の作業を見直して無駄を省くこと)や効率化ができれば、ビジネスの成果が出やすくなると報告されています。業務効率化で人間にしか行えないクリエイティブな仕事を従業員に割り振れば、生産性が向上するでしょう。

そのため、売上を上げたり顧客数を増やしたりしたい企業は、業務効率化への取り組みが勧められます。

参考:総務省「人口減少時代のICTによる持続的成長」

業種別・職種別の業務効率化の具体例

企業が業務効率化を図る際には、業種や職種の特性に即したアプローチを取ることが鍵となります。ここでは、現場レベルでの改善からバックオフィス業務の見直しまで、実際の手法とその効果を紹介します。

現場業務における効率化の事例

小売業

AIによる需要予測によって在庫の最適化が進めば、過剰な仕入れによるロスや欠品による販売機会の損失を防げます。モバイルアプリを活用したタスク管理や、セルフレジの導入により、接客や会計業務にかかる時間も削減され、スタッフの業務負担が軽減されます。

飲食業

テーブルオーダーシステムやモバイルオーダーの導入が進んでいます。ITツールの導入によって、注文や会計の待ち時間を短縮し、ピーク時の混雑を緩和することが可能です。配膳ロボットの活用やキッチンレイアウトの最適化によって、限られた人員でもスムーズな店舗運営が実現します。

美容・サロン業

POSシステムと電子カルテの連携により、顧客情報の一元管理が可能となり、施術や接客の質が向上します。オンライン予約やLINEなどによるリマインド配信は、予約管理の負担軽減とキャンセル率の低下に寄与しています。

士業(税理士・行政書士など)

RPAによる書類作成やデータ入力の自動化が進み、専門家が本来の付加価値業務に集中できる環境が整えられています。クラウド文書管理やAIチャットボットの活用も、業務効率化とセキュリティ向上の両方を実現させています。

バックオフィス業務の効率化

人事・労務

人事管理システムやRPAによって、入退社手続きや給与計算、勤怠集計が自動化され、人的ミスの削減と業務のスピードアップが可能となります。eラーニングやオンライン面接の活用により、教育・採用業務も効率的に進められます。

会計・経理部門

クラウド会計ソフトの導入により、記帳や財務レポート作成時の効率化が進みます。OCRと連携した請求書処理の自動化や経費精算の電子化により、紙ベースでのやり取りを大幅に削減可能です。

総務部門

ワークフローシステムやチャットボットを活用し、社内申請手続きや問い合わせ対応の自動化が進められています。デジタル化により、従業員の利便性が向上すると同時に、担当者の業務負担も軽減されます。

営業部門

CRMやSFAの導入によって、顧客情報の一元管理や営業活動の可視化が実現され、データに基づいた効率的な営業が可能になります。営業担当者の作業負担を削減するために、営業日報・実績の作成・管理はもちろん、契約書・見積書・請求書のデジタル化も進んでいます。

情報システム部門

RPAによるアカウント管理の自動化や、社内FAQの整備によって、サポート業務の省力化と迅速化が図られています。
このように、業務の性質に応じた最適なツールと仕組みを導入することで、業種・職種を問わず、継続的な業務効率化が可能となります。

業務効率化の進め方

業務効率化を行う際には、毎日の仕事内容を把握して効率化の優先順位を決めてください。この際には、自社ビジネスの成長に大きく寄与する部分から効率化する方法が効果的です。

効率化の手法を選んで実施した後には、効果検証をして改善していきましょう。

本項では、業務効率化の進め方について解説します。

①業務内容を把握する

業務効率化を行うには、自社で行っている業務をリストアップして把握してください。

まずは、既存の業務を見直す必要があります。リスト化した業務の中で無駄が隠れていないかを確認してみましょう。具体的には「誰が・どこで・いつ・どのような業務・かかっている時間」を確認することで、業務の詳細を把握できます。

そして「成果が出ていないのに時間をかけている業務はあるか」「人によってかかる時間に乖離がある仕事はないか」を確認してください。

候補に挙がった業務を中心に、効率化を進めましょう。

②効率化の優先順位を決める

すべての業務を一度に効率化すると、従業員の負担が大きくなってしまいます。そのため、どの作業を優先的に効率化したいのかを考えてみましょう。

業務効率化において優先するべき作業は、以下のとおりです。

業務効率化で優先するべき作業
  • 売上に直結する業務
  • 多くの人員や時間が投下されている業務

業務効率化の実施により、大きな成果につながる業務から先に着手しましょう。

③効率化の方法やツールを選ぶ

優先順位を決めたら、業務効率化の方法を選んでください。まずは、既存の業務を見直す必要があります。

総務省によると、業務の効率化には以下の方法を推奨しています。

業務の効率化の方法(総務省推奨)
  • 業務の標準化
  • マニュアル化
  • 不要業務
  • 重複業務の見直し
  • 業務の簡素化

とくに重複している業務を見直すと、従業員の工数を減らすことにつながります。1日に何回も同じ作業をしていないかを確認しましょう。

さらに、自社が実施したい業務効率化の目的に合うツール選択も必要です。チャットツールやRPA、タスク管理ツールなどがあります。

スマホアプリを提供するツールも数多くがあるため、積極的に利用してください。

参考:中小企業庁「深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命」

④業務の改善策を実施する

業務効率化の手法を選定したら、実行に移しましょう。スムーズに取り組めるように、部署のメンバーに対して、業務効率化の方法を細かく伝えておく必要があります。

この際に注意するべきポイントは、全社で一斉に実行しない点です。従業員に対して大幅な負担が生じてしまうため、スモールスタートを心がける必要があります。

慣れてきたら、別の作業の効率化に着手しましょう。

⑤業務効率化の検証を行う

業務効率化に着手したあとには、効果検証が欠かせません。「本当に効率化できているのか」「問題点の改善ができているのか」を確認するためです。

事前に立てた計画と実際の間に生じた乖離を調査してください。たとえば「20%の労働時間削減を目指していたが、10%しか改善できていない」といった状況です。

数値で効果を確認しながら、改善につなげていきましょう。

業務効率化を促進するアイデア

業務効率化をする際には、ITツールの導入が効果的です。さまざまなツールがあるため、自社の目的に合ったものを選ぶようにしましょう。IT導入補助金が支給される場合もあるため、積極的な導入が期待されます。

アウトソーシングの活用も効果的です。業務効率化の戦略策定まで行ってくれるアウトソーシング企業もあるため、うまく活用すれば、業務効率化にかかる時間を削減できます。

本項では、業務効率化に関わるアイデアを解説します。

ITツールを導入する

業務効率化には、グループウェアやチャットツール、タスク管理ツールなどのITツールの活用を推奨します。

これらのITツールを活用すれば、個人やチーム内での業務 の進捗管理ができるために、スムーズに効率化できるでしょう。

経済産業省によると、ITツールの導入には「IT導入補助金」の支給対象となる場合があります。

補助金を活用して、組織内でITツールを導入してみましょう。

参考:経済産業省「よくわかるIT導入補助金の「ITツール」

アウトソーシングを活用する

業務効率化には、アウトソーシング(自社の業務を外部に委託して効率化を図ること)も効果的です。

アウトソーシングに特化しているBPO企業に依頼すると、業務効率化の戦略策定まで行ってくれる場合もあるため、時間をかけずに効果を感じやすいでしょう。

自社のメイン事業に集中できるようになるため、アウトソーシングの利用も検討してみてください。

RPAを導入する

RPA(人間が行っている業務を、ロボットが代わりに自動化する技術)の利用により、業務効率化につながります。

RPAの特徴は、データ入力といった定型作業に強い点です。あらかじめルールを作成することで、自動的に作業を進めてくれます。

一方で、個別のルールが多い作業には向いていません。RPAの活用に適した業務をあらかじめ確認しておきましょう。

マニュアル・フローを作成する

業務を属人化させないためにも、マニュアルや業務フローを作成して、社内の従業員の誰かが作業できるようにしましょう。

マニュアルやフローを作る際には、業務のやり方を文章だけでなく、箇条書きや図、表などを活用しながら説明文を作成します。

誰が読んでも実践しやすいように、わかりやすく説明文を作成してください。

費用対効果の低い業務は減らす

業務効率化をする際には、費用対効果を意識して、投資したコストに対して得られた効果を把握しておきましょう。効果のない効率化にお金や時間をかけすぎると、本末転倒になります。

たとえば「RPAツールにより経理作業の効率化を試みたが、作業時間を削減できていない」という事例が挙げられます。

この際には、別のRPAツールに切り替える方法が考えられるでしょう。

導入したものの、効果を感じないツールないかも確認してください。

業務が効率化されたか計測する方法

業務効率化の施策がどれだけ効果を発揮しているかを把握するには、「成果の見える化」が重要です。あらかじめ設定した成果指標に基づき、効果測定をします。

定量指標による評価

基本的な方法として、施策の導入前と後で数値的な変化を比較することです。作業時間の短縮、人件費の削減、エラー率の低下、生産性の向上などは、すべて定量的に測定が可能です。たとえば「月間レポート作成にかかる時間が10時間から3時間に減少した」といったデータは、効率化の成果を明確に示します。

また、業務1件あたりの処理コスト、残業時間の削減率、処理件数の増加率といったKPIを設定し、定期的に追跡することで、効率化が定着しているかどうかを評価できます。

定性的なフィードバックの収集

数値では測りきれない現場の「実感」も重要です。従業員や顧客に対してアンケートやインタビューを行いましょう。「作業が楽になった」「顧客対応が早くなった」といった声を集めることで、定量データを補完し、現場の課題や新たなニーズも把握できます。

KPI設計と測定タイミングの工夫

評価にあたっては、SMART原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)に基づくKPIを設定することが推奨されます。

たとえば、「3か月以内に請求書処理時間を50%短縮する」「クレーム件数を20%減少させる」など、具体的で達成可能な成果指標を掲げます。

測定は、施策導入前にベースラインデータを収集し、導入直後、中間時点、そして一定期間経過後に再測定を行うことで、短期的な効果だけでなく中長期的な定着状況まで把握することができます。

業務効率化の成否を評価するには、数値と実感の両面から継続的に状況を可視化し、次のアクションに活かしていく仕組みづくりが不可欠です。

業務効率化の注意点

業務効率化を行う際には、注意点の把握が必要です。実際に、業務効率化を実施すると、商品や顧客対応の質が下がってしまう場合もあります。

そのほかにも、業務効率化を行うまでに手間やコストをかけすぎてしまう可能性もあります。そのため、あらかじめどのくらいの時間や費用をかけるのか確認しておきましょう。

本項では、業務効率化の注意点を解説します。

品質の低下につながらないようにする

業務効率化を意識しすぎて、品質が低下してしまっては本末転倒です。顧客からの信頼低下を避けるため、質の高い商品や対応を維持しながらも効率化の取り組みを進めましょう。

たとえば、RPAを導入して自動化した場合、最終的な確認は担当者が行うケースが多いのです。すべてをツールに任せるのではなく、例外の処理が多いケースや、状況に応じた判断が必要なケースは人が介入在するようにしましょう。

業務効率化に手間をかけすぎないようにする

業務効率化を実行する際には、時間をかけすぎない点も重要です。

よくある事例として、効率化する仕事のリストアップやツールの選定などに時間をかけすぎてしまう場合があります。その結果、労働時間がかえって増えてしまうこともあるでしょう。

そのため、事前に業務効率化の方法策定にどのくらい時間をかけるのかを考えてください。

業務効率化を成功させて生産性向上につなげよう

業務効率化は、従業員の労働時間を減らし、社内の生産性を上げられる点がメリットです。

業務効率化を行うためには、ITツールを導入したりRPAを活用したりする方法がよいでしょう。業務効率化を行う際には、品質の維持を意識しながらも、手間をかけすぎないようにしてください。

業務効率化を行い、自社の生産性向上につなげましょう。


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