- 更新日 : 2023年9月15日
生産性とは?意味や計算式、生産性低下の原因をわかりやすく解説
生産性とは、労働力や資本などを投入することで得られる成果量の割合を指します。情報を可視化する、現状を把握し指示を明確にする、タスクを整理し優先順を付けるなどが、生産性を向上させる具体的な施策の例です。
本記事では、生産性の意味や向上させるために必要な仕事、労働生産性の計算式などを解説します。
目次
生産性とは?
生産性とは、仕事やビジネスに欠かせない言葉です。「当社の生産性を向上させなければならない」などの例文で使います。
ここから、生産性の意味や業務効率化との違いについて確認していきましょう。
生産性の意味や定義
一般的に、生産性は、労働力や設備などを投入したことで得られる成果量の割合を意味する言葉です。
また、ヨーロッパ生産性本部では、生産性を「生産諸要素の有効利用の度合い」と定義しています。生産諸要素とは、機械設備・土地・建物・エネルギー・原材料など、生産に必要なもののことです。
なお、生産性は一般的に英語で「productivity」と表現します。
生産性向上と業務効率化との違い
「生産性向上」と「業務効率化」の主な違いは、対象範囲です。
業務効率化とは、業務の「無理・無駄・ムラ」をなくして効率よく業務を進められるようにすることを指します。業務プロセスの中で効率の悪い部分を省くことが、業務効率化の具体例です。
生産性向上とは、生産性を高めて企業が効率よく利益を上げられるようにすることを指します。業務効率化は、生産性向上を実現するためのひとつの手段といえるでしょう。
ビジネスでよく使われる生産性とは?
生産性はビジネスでよく使われる言葉のひとつです。生産性のうち、労働生産性の概要や計算式などについて解説します。
生産性は「労働生産性」を指すことが多い
ビジネスで生産性について説明する場合、「労働生産性」を指すことが多いです。労働生産性は、労働者ひとりあたり、もしくは1時間あたりに生産できる成果を数値で示します。
日本は、先進国の中でとくに労働生産性が低いことで知られる国です。公益財団法人 日本生産性本部の資料によると、OECD加盟38か国のうち、日本の時間あたり労働生産性は49.9ドルで27位、ひとりあたり労働生産性は81,510ドルで29位でした。
参考:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022~日本の時間当たり労働生産性は49.9ドル(5,006円)で、OECD加盟38カ国中27位~」
労働生産性の計算式
労働生産性を求める際の計算式は、以下のとおりです。
産出量は成果や生産量、経営資源は時間や労働力のことです。産出量をoutput、投入した経営資源をinputと表現することもあります。
たとえば、20人の従業員で1億円分の成果を出した場合、(ひとりあたり)労働生産性は500万円(1億円 / 20人)です。
労働生産性の種類
労働生産性は、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の2種類に分類できます。物的労働生産性は生産量の効率性を数値化しているのに対し、付加価値労働生産性は付加価値に対する効率性を数値化したものである点が主な違いです。
物的労働生産性における産出量の具体例として、総生産額(売上高)が挙げられます。一方、付加価値労働性の産出量は、総生産額から原材料や外注費などを引いた金額です。
日本で生産性の向上が注目される背景
すでに説明したとおり、日本は他の先進国と比べて労働生産性が低いです。今後日本が国際競争力を高めるためには、生産性の向上が欠かせません。
また、日本が人口減少や少子高齢化により、将来的に労働力が不足する課題を抱えている点も、生産性の向上が注目される背景です。内閣府が発表した資料によると、2020年時点で約7,509万人の生産年齢人口が、2065年には4,529万まで減少するとされています。少ない労働力で成果を出すため、今まで以上に生産性の向上が求められるでしょう。
そのほか、企業価値の向上につながり、資金調達に有利にはたらくことも生産性の向上が注目される理由として挙げられます。
生産性が低下してしまう原因
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の遅れが、他の国や企業と比べて生産性が低下する原因です。DXとは、デジタル技術を積極的に取り入れて社会を良い方向に変えていくことを指します。
日本のハンコ・紙文化は、DXの遅れを示す具体例のひとつです。新しい事業や取引を始めようとしても、承認までに余計な手間や時間がかかることがあります。
長時間労働も、生産性低下につながる要因です。たとえ多くの時間を投入しても、それに値するだけの成果を生み出さなければ、労働生産性が低下します。
また、長時間労働が従業員のモチベーションを低下させることも、労働生産性低下の要因です。
生産性を向上させる8つの施策
生産性を向上させる具体的な施策として、以下が挙げられます。
- 情報を可視化する
- 現状を把握し指示を明確にする
- タスクを整理し優先順を付ける
- 適材適所に人材配置をする
- ITツールを活用する
- 人材育成・スキルアップに努める
- 業務マニュアルを作成し共有する
- 労働環境を整備する
ここから、8つの施策の内容について詳しく解説します。
情報を可視化する
情報(データ)を可視化することが、生産性向上につながります。情報の可視化(データ可視化)とは、情報やデータだけでは確認しにくいことを、グラフや図などを使ってわかりやすい形で表現することです。
たとえば、毎日どのように働いているかを可視化することで、労働実態を掴みやすくなります。その結果、どこに無駄があるのかも把握できるでしょう。
現状を把握し指示を明確にする
管理職やプロジェクトのリーダーが、現状を把握して指示を明確にすることも、生産性向上につながります。
たとえば、上司の出す指示が漠然としたものだと、部下も何から始めればよいかわからないでしょう。部下から上司に意味を確認したり、指示の意味を捉え違えてやり直したりすると余計な時間がかかり生産性が低下します。
その点、部下がすぐ実行に移しやすい明確な指示を出せば、業務効率化・生産性向上につながるでしょう。
タスクを整理し優先順を付ける
タスクを整理して優先順位を付けることも、生産性向上の施策のひとつに挙げられます。とくに作業量が多いときに優先順位を付けることで、都度悩む時間を削減できるでしょう。
なお、優先順位を付ける際は、「重要度高かつ緊急度高」「重要度高いが緊急度は低い」「重要度低いが緊急度高」「重要度低かつ緊急度低」の4種類に分類することが一般的です。
適材適所に人材配置をする
適材適所に人材配置することも、生産性向上に欠かせません。
ある特定の分野で優秀な従業員の能力を見誤り、苦手な部門に配置すると会社の生産性は低下します。また、従業員本人も、したくない仕事が続くことでモチベーションが低下し、最終的に転職・退職することにもなりかねません。
従業員の能力を正しく評価して人材配置すれば、会社全体の作業効率が上がります。そのためには、適切な人事評価が必要です。
ITツールを活用する
DXの後れを取り戻して生産性を向上させるため、ITツールを活用しましょう。
たとえば、今まで人の力で進めていた管理部門の作業をITツールに置き換えれば、人件費削減や時間の効率化につながります。投入する時間や労働力を減らしても、今までの水準の成果を保てれば、生産性が向上するでしょう。
ただし、ITツールによって費用が高額なこともあります。コストがかかると、生産性が低下につながりかねないため、あらかじめ各サービスのコストを比較することが大切です。
人材育成・スキルアップに努める
従業員の人材育成やスキルアップに努めることも、生産性向上につながります。なぜなら、従業員のスキルが伸びてひとりあたりの成果が増えれば、会社全体の生産量も増えるからです。
人材育成の具体例として、上司が知識や能力を部下に教えるOJTや、従業員に業務に関する検定試験の受験や通信教育などを促す自己啓発などが挙げられます。
業務マニュアルを作成し共有する
業務マニュアルを作成して従業員で共有することも、生産性を向上させる施策のひとつです。
業務マニュアルを作成して作業を標準化すれば、担当者が変わっても成果を落とさずに対応できます。引き継ぎに関する時間を短縮できることも、生産性向上につながる要因です。
なお、業務マニュアル作成にあたって、無駄な作業はないか、記載漏れしている業務はないか確認するようにしましょう。
労働環境を整備する
労働環境を整備することも、生産性向上のために大切なことです。労働環境には、オフィスの環境だけでなく、労働時間や給与、人間関係なども含まれます。
労働条件が良い環境で従業員のモチベーションを高めれば、仕事の成果も上がるでしょう。また、整理整頓や清掃などを徹底してオフィス環境を整えておけば、紛失した物を探すのに余計な時間を取られることも防げます。
利益を上げるには生産性向上が重要
生産性は、労働力や設備などを投入したことで得られる成果量の割合を指します。今後、日本で労働力の不足が予測される中で、ビジネスで利益を上げるために生産性を向上させることが重要です。
生産性向上の施策として、情報の可視化やITツールの活用、労働環境の整備などが挙げられます。生産性向上のため、この機会に従来のやり方を見直してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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