- 更新日 : 2025年5月1日
デジタル化のメリットは?デメリットや導入の考え方、具体例を解説
近年のビジネスシーンは、あらゆる業務でデジタル化への取り組みが進んでいます。デジタル化には多くのメリットがある反面、デメリットもあります。十分に理解したうえで実行しなければ、失敗してしまうおそれがあるので注意が必要です。
本記事では、デジタル化のメリットやデメリット、導入の際にどのような点に注意すればよいのか解説します。
目次
デジタル化とは
デジタル化とは、アナログな業務や手続きをデジタル技術の活用により効率化・自動化することです。
たとえば、マイナンバーカードを保険証として利用する「マイナ保険証」は、従来の紙による保険証の代わりにマイナンバーカードを活用します。これにより、患者情報の一元管理や、マイナポータルによる医療費控除が可能になるなど、医療関係の手続きの簡素化が期待されます。
デジタル化は、業務の効率化やデータの精度向上、コスト削減を実現するために重要な手段のひとつです。
マイナ保険証の詳細については、下記をご覧ください。
また、デジタル化については下記の記事で詳しく紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
デジタル化とIT化、DX化との違い
デジタル化とIT化、DX化の違いを一覧にまとめると、次のとおりです。
デジタル化 | 属人化している業務や手続きを、デジタル技術の活用により効率化・自動化すること。 |
---|---|
IT化 | 属人化している業務に情報技術(IT)を活用すること。 |
DX化 | あらゆる業務にデジタル技術を活用し、ビジネスに変革をもたらし新たな価値を生み出すこと。 |
デジタル化・IT化は、技術を活用して業務効率化を図ることが目的なのに対し、DX化は業務効率化を図ったうえで、さらなる価値を生み出すことが目的です。
デジタル化の具体例
企業におけるデジタル化の具体例を一覧にまとめると、次のとおりです。
電子契約 | 紙の契約書を電子契約サービスで管理 |
---|---|
クラウドストレージ | 重要書類やデータをクラウドで保存・共有 |
オンライン会議 | オンライン会議ツールを活用したリモート会議 |
デジタルマーケティング | SNSやメールマーケティングを活用した顧客へのアプローチ |
経費計算 | 経費管理ソフトを使用して領収書をデジタル化 |
これらはあくまで一例です。また、スマートフォンやスマートウォッチ、AIを活用したチャットボットなど、身近なところでもデジタル化は加速しています。
デジタル化が遅れた場合の企業リスク
デジタル化は速やかな対応が求められています。しかし、経営層の知識不足や対応できる人材がいないなどの理由から、デジタル化が遅れている企業も多いです。
デジタル化が遅れた場合、次のようなリスクが考えられます。
2025年の崖
2025年の崖とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で示した課題です。
このレポートでは、日本企業が2025年までにデジタル化を推進しない場合、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しています。
出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ (サマリー)|経済産業省
2025年の崖にある2つの背景は、次のとおりです。
老朽化した基幹システム |
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デジタル人材不足 |
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2025年の崖に対応せずにレガシーシステムを使い続けると、業務効率の低下やセキュリティリスクの増大など、深刻な問題に対応できないおそれがあります。
市場での競争力の低下
企業のデジタル化が遅れた場合、他社との競争力の低下・業務効率低下による生産性の低下などの問題が考えられます。
近年は、AIやビッグデータを活用し、市場状況や顧客の興味や関心、購買傾向を分析することが欠かせません。しかし、ツールやデータを活用できないと、正確な市場状況や顧客ニーズが把握できず、取り残されるリスクが高まります。
また、デジタル化がされない業務は情報の検索や共有・分析に手間と時間が余計にかかることになり、生産性が低下することも想定されます。
生産性の低下も競争力に影響するので、業務の早期デジタル化が求められているのです。
デジタル化のメリット
今まで人の手に頼っていた業務をデジタル化することは、業務効率化や生産性の向上などのさまざまなメリットがあります。本章では、主な7つのメリットについて解説します。
多様な働き方の実現
オンライン会議やチャットツールなどを活用することで、出勤しなくても社内にいるのと同様の勤務ができるようになります。これにより、育児や介護・地域活動との両立、地方移住など、個々のライフスタイルに合わせた働き方の選択が可能です。
社内研修もオンラインで行えば、全国の社員が場所や時間を問わず参加できるようになり、社員を招集する手間や交通費の削減にもつながります。
デジタル化は、個々の能力やライフスタイルに合わせた働き方を可能にし、従業員の満足度向上やワークライフバランスの充実につながるのです。
生産性向上・業務効率化が図れる
書類整理やデータ入力などの事務作業がデジタル化により効率化されると、大幅な時間短縮が可能です。削減された時間は、より創造性や専門性を生かせるコア業務や顧客対応に振り向けられるため、従業員のモチベーション向上や顧客満足度向上にもつながります。
このようにデジタル化は、従業員の負担軽減や業務時間の短縮など、さまざまな側面から生産性向上と業務効率化を実現します。
社内の情報共有がスムーズ
紙の資料で情報が保管されている場合、検索に時間がかかる・情報共有がうまくいかないなどの問題が生じていました。しかし、情報をデジタル化し一元管理することで、必要な情報を迅速かつ正確に取得できるようになります。
さらに、ビジネスチャットや社内SNSなどのツールを活用することで、部署や時間帯の制約がなくなり、リアルタイムで情報共有や情報交換をすることも可能です。プロジェクトの進捗状況や最新情報を共有すれば、チーム全体の連携強化が期待できます。
コスト削減につながる
デジタル化することにより、たとえば次のようなコスト削減が可能です。
- 人件費:顧客対応やデータ入力などを自動化することにより、対応する人員を削減できる。
- 印刷代:ペーパーレス化することにより紙の使用量を減らせる。
- 郵送代:手続きを電子化することにより、書類郵送の費用を削減できる。
- 交通費:テレワークを導入することにより、社員の交通費削減につながる
人為的ミスを防ぐ
業務に合わせて次のようなツールを活用すると、人為的ミス(ヒューマンエラー)を防げるようになります。
定型的な業務を自動化するツール(RPAツール) |
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チェックリスト・タスク管理ツール |
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コミュニケーションツールおよびプロジェクト管理ツール |
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データを蓄積し活用できる
デジタル化によりデータを蓄積し活用すると、顧客のニーズや行動パターンの精密な把握・分析が可能です。ターゲットに合わせた効果的なマーケティングや製品開発により、顧客満足度の向上や売上増加が期待できます。さらに、データを活用して業務フローを分析すれば、余計な業務や工数を特定でき、業務効率化も可能です。
蓄積されたデータは、製品の在庫管理や最新の市場動向にもとづく迅速な意思決定や戦略の立案にも活用できます。蓄積されたノウハウやリスク管理方法を具体化し現場で共有することは、業務の質を向上させることにも役立つのです。
ビジネスの新規事業につながる
マーケティングツールや顧客管理ツールなどを活用することにより、ビジネスの新規事業につながります。デジタルツールによって収集・分析されたデータは、現在の状況を可視化することが可能です。これによりどのように事業を進めていくのか戦略を練りやすくなり、有利な状態で新規事業に参入できます。
ビジネスシーンは日々激変しています。市場での競争力を高めるために、業務のデジタル化は欠かせない要素となっているのです。
デジタル化のデメリットと解決策
デジタル化はメリットが多い一方で、デメリットも存在します。ここではデジタル化の3つのデメリットを解説するので、自社の業務や運用面と照らし合わせてみてください。
導入初期のコストが高額になりやすい
デジタル化の導入には、ハードウェアやソフトウェアの購入費用に加え、導入・設定、外部コンサルの依頼費用などがかかります。さらに、既存データの移行作業なども必要になるため、初期投資が高額になる傾向があります。企業規模や導入範囲によって費用は変動し、大企業では年間売上の数%を充てる場合もあります。
また、クラウドサービスの利用料やライセンス更新費、通信費、人件費など、運用面でもコストは継続的に発生します。セキュリティ対策や社員研修といった支出も無視できません。これらを見落とすと、想定外のランニングコストに悩まされるおそれがあります。
解決策
クラウド活用やオープンソースソフトの導入、業務自動化の推進などにより、全体的なコスト削減が可能です。さらに段階的な導入や既存システムの見直しによって、予算負担を抑えつつ確実な移行が進められます。社外の専門人材を一時的に活用する方法も、コスト管理に役立ちます。
セキュリティ上のリスクがある
業務のデジタル化が進む中で、情報資産を狙った攻撃やトラブルの発生件数が増加しています。顧客情報や企業機密が外部に流出するケースは後を絶たず、信頼失墜や多額の損害につながることがあります。また、マルウェアやランサムウェアによる攻撃も深刻化しており、システム停止や業務停止の被害に発展する事例も見られます。
外部からの攻撃だけでなく、従業員による不正行為や設定ミスなども大きなリスクとなります。アクセス管理の甘さが、不正ログインやデータ改ざんの原因となる場合もあります。
セキュリティの確保は、単なる技術的課題ではなく、経営戦略の一部として捉える必要があります。
解決策
ファイアウォールや侵入検知システムの導入により、不正アクセスの遮断や異常の早期検出が可能になります。ウイルス対策ソフトを最新の状態で運用するほか、通信や保存データの暗号化を徹底することで、万一の漏洩にも備えられます。システムの脆弱性は定期的なパッチ適用で抑え込む必要があります。
また従業員への継続的な研修を通じて、フィッシング詐欺や不審メールへの対応力を高めることが求められます。また、アクセス権限の適切な管理とログの監視体制を整えることで、不正行為の抑止につながります。
デジタル技術の導入は業務の効率化や利便性の向上につながる一方で、その推進を担う人材の不足が深刻化しています。とりわけ中小企業では、技術的な知見を持つスタッフの確保が難しく、導入効果を十分に得られないケースも目立ちます。
IT人材の不足
デジタル化においては、システム導入の設計段階から運用・保守に至るまで、すべての工程で適切なスキルを持つ人材が不可欠となります。IT人材の不足は、単に専門職が足りないという問題にとどまりません。人材が不足している状況では、外部に依存せざるを得ず、結果としてコストの増加やノウハウの社内蓄積の遅れを招きます。
さらに、ITリテラシーが社内で十分に広まっていない場合、新しいツールやシステムに対する理解不足から運用ミスが発生し、逆に業務効率を下げてしまうおそれもあります。
人材育成を自社で進めるには時間と費用がかかり、即戦力の採用も競争が激しいのが現状です。そのため、限られたリソースの中でどうITスキルを確保・育成していくかが、デジタル化を成功に導くうえでの大きな課題といえます。
解決策
IT人材の不足に対応するには、外部リソースの活用と内部人材の育成を並行して進めることが現実的です。専門性の高い業務は外部の専門家やベンダーに委託しつつ、社内では段階的なIT研修を行い、基本的なスキルの底上げを図ることが有効です。また、クラウドサービスやノーコードツールなどを取り入れることで、専門知識がなくても一定の業務デジタル化が可能となります。
限られた人材の中で効率的にIT環境を運用するためには、選定するツールや体制そのものをシンプルに保つ工夫も必要です。
既存システムとの連携と業務フローの変更が必要になる
デジタル化を進める過程では、既存システムとの接続や業務フローの見直しが避けられません。技術的な整合性と組織運営の両面に課題が生じやすく、慎重な対応が求められます。
新しいシステムと既存の環境とでは、データ形式や通信仕様が異なる場合があります。これにより、情報のやり取りがうまくいかず、変換や移行に手間がかかることがあります。
また、新しいツールを導入すると、従来の手順では対応できない業務も出てきます。業務の流れを再構成し、役割や責任を見直す必要が生じます。情報の共有がしやすくなる一方で、部門間での調整が増えることもあります。
解決策
既存システムとの連携に関する課題は、段階的な導入やツールの活用によって軽減できます。さらに、部門を横断する連携を円滑に進めるためには、業務プロセスの標準化と、関係者への丁寧な説明が欠かせません。段階的な対応と柔軟な設計によって、全社的な負担を抑えながらスムーズな移行を実現できます。
システム障害や故障が発生する可能性がある
業務のデジタル化が進むと、システム障害や故障が発生した際の影響は拡大しやすくなります。
ハードウェアの劣化やネットワーク機器の不具合は、物理的な障害としてシステムの停止を引き起こす要因となります。また、ソフトウェアの不具合やアップデートに伴う動作不良も、業務に支障をきたす原因となります。
基幹システムの停止は、受注や請求などの日常業務を中断させ、売上や信用に直結する影響を及ぼします。さらに、障害がデータ損失や顧客サービスの停止につながれば、顧客満足度や社会的評価にも悪影響が及びます。法令違反や情報漏洩が絡む場合には、罰則や信頼の失墜にも発展しかねません。
解決策
システムの信頼性を保つためには、障害発生時の迅速な対応を見越した準備が不可欠です。業務データや構成情報の定期的なバックアップを実施し、障害発生時の復旧手段として活用します。あわせて、復旧手順を文書化し、定期的な訓練を行うことで、現場での対応スピードを向上させます。事業継続計画においては、復旧の優先順位を明確にし、代替手段や外部ベンダーとの連携体制を整えることで、業務の早期再開と影響の最小化を目指すことができます。
デジタル化のメリットを最大限活用する取り組み
デジタル化のメリットを最大限活用するためのポイントを5つ紹介します。
目的を明確にする |
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課題を洗い出す |
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社内の理解を得る |
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適切なツールを選ぶ |
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導入後の効果測定をする |
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また、デジタル化の具体例とその効果として次のようなものが挙げられます。
ペーパーレス化の促進 |
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チャットツールの活用 |
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デジタル化は、ツールを導入してすぐに成果が現れるものではありません。定期的に見直しをしながら、継続的に取り組むことが重要です。
デジタル化を進める手順
企業がデジタル化を推進するには、単に新しいツールを導入するだけでは完結しません。経営戦略との整合性を保ちつつ、現場の業務に根ざした取り組みを進めることが求められます。
デジタル化を進めるステップを確認しましょう。
ステップ1:経営方針やデジタル化の目的の明確化
まず初めに、企業としての経営方針とデジタル化の目的を明確にし、全体像を描く作業から始める必要があります。どのような課題を解決し、どのような成果を期待するのかを可視化することが、戦略立案の出発点となります。売上拡大、業務効率化、顧客体験の向上といった目的を踏まえ、経営層と現場の間で共通認識を持つことが、後の導入プロセスを円滑にします。
この段階では、現在の業務プロセスやIT環境を俯瞰的に整理し、自社の強みと弱みを把握しておくことが有効です。すでに導入されているツールや、活用されていないリソースを見直すことで、新たな施策の方向性が見えてきます。
ステップ2:現場業務の可視化と課題の抽出
戦略を明確にした後は、実際の業務フローを詳細に把握し、どの業務にデジタル化の余地があるかを検討します。現場担当者へのヒアリングや業務観察を通じて、手作業で行われている業務や非効率な工程を洗い出します。業務ごとの処理時間や人員数なども記録し、可視化することで改善ポイントが明らかになります。
このフェーズでは、単なる業務のデジタル化だけでなく、業務プロセスそのものの再設計も視野に入れます。従来のやり方にとらわれず、より効率的なプロセス構築を目指すことで、単なるIT導入にとどまらない効果が期待できます。
ステップ3:デジタルツールの選定と導入計画の立案
次に、自社の課題や目標に適したデジタルツールを選定するプロセスに移ります。市場には多種多様なツールが存在するため、機能面だけでなく、既存システムとの互換性、操作性、拡張性なども考慮して比較検討を行います。
導入計画の立案においては、全社一斉導入ではなく、パイロット導入や段階的な展開が効果的です。特定の部署やプロジェクトでテスト的に運用を始めることで、実際の運用上の課題やトラブルを事前に把握できます。その結果を踏まえて必要な調整を加え、本格導入に向けた体制を整えます。
加えて、デジタル化に伴う業務フローや役割分担の変更も同時に検討します。従業員の負担軽減や生産性向上を図るためにも、導入にあたってのシミュレーションや事前説明を丁寧に行うことが重要です。
ステップ4:社内体制の整備と従業員教育の実施
ツールの導入と並行して、運用を支える社内体制の整備を進めます。運用管理者や問い合わせ対応窓口などの役割分担を明確にし、トラブル発生時の対応フローを構築することが必要です。また、日常的なメンテナンスやバージョン管理の体制も準備しておくと、長期的な運用が安定します。
従業員に対しては、単なる操作説明にとどまらず、なぜデジタル化を進めるのかといった背景や、導入後に期待される変化についても共有します。新しい仕組みに対する理解と納得が浸透することで、現場での活用が定着しやすくなります。初期段階では導入効果が実感しにくい場合もあるため、成功事例や活用法を社内で共有する取り組みも有効です。
ステップ5:データ活用による継続的な業務改善
システムを導入した後は、その活用によって得られるデータを基に、業務の改善を継続して行うフェーズに入ります。業務データや顧客データを分析し、現場の課題を可視化することで、改善ポイントを明確にしやすくなります。業務の効率性や顧客対応の質といったKPIを定め、定期的にモニタリングすることで、成果を検証しながら施策を見直していきます。
また、改善のサイクルを回す中で、新たな課題が見つかることもあります。そうした課題に対しては、追加機能の導入や他ツールとの連携によって柔軟に対応し、常に最適な業務体制を追求する姿勢が求められます。単発的な導入で終わらせず、継続的な運用と改善を組み合わせることが、真の意味でのデジタル化の定着につながります。
ステップ6:セキュリティ対策の強化
デジタル化の進展により、外部パートナーや顧客とのデータ連携も日常的になります。そのため、外部システムとの互換性やAPI連携の整備を図ることが欠かせません。また、情報共有が加速する一方で、サイバーリスクや情報漏洩のリスクも高まる傾向にあります。
セキュリティ対策としては、アクセス制限やデータ暗号化、多要素認証の導入などが基本となります。さらに、従業員の情報セキュリティに対する意識を高めるための研修や、定期的なシステム診断の実施も重要です。こうした取り組みによって、安全性と利便性を両立させながら、デジタル環境の整備を図っていきます。
ステップ7:全社的な浸透と企業文化の変革
デジタル化の本質は、単なるITツールの導入にとどまりません。業務の進め方や価値観そのものに変化を促すプロセスであり、企業文化の変革とも深く関わっています。成功の鍵は、経営層から現場までの意識と行動をそろえることにあります。
日々の業務における小さな改善を積み重ねながら、社内に前向きな変化への対応力を育てることが、持続可能なデジタル化の基盤となります。トップダウンとボトムアップの両輪で進める体制を築くことで、組織としての柔軟性と成長力が高まります。
デジタル化の成功事例
デジタル化を実施した企業の成功事例を紹介します。
株式会社オカムラの製造現場における業務改善
オフィス家具や物流機器などの開発・製造を手がける株式会社オカムラでは、製造現場の見える化と業務効率の向上を目的として、IoTやデータ活用を軸としたデジタル化を推進しました。従来は紙ベースで管理していた作業指示や進捗報告を、タブレット端末とクラウドシステムによってデジタル化することで、作業者がリアルタイムに情報へアクセスできる環境を整えました。
この取り組みによって、作業の進捗状況や品質管理データが即座に把握できるようになり、リードタイムの短縮や不具合の早期発見が可能になりました。加えて、過去のデータを活用した改善サイクルの構築も進み、現場ごとの課題を定量的に評価できる仕組みが構築されています。管理者にとっても、紙での集計作業が不要となり、分析にかける時間と労力が大幅に削減されました。
現場への導入にあたっては、段階的な展開と従業員向けの教育を重視し、現場からのフィードバックを積極的に取り入れながら運用改善を行ってきました。現場起点のデジタル活用が、単なる効率化にとどまらず、従業員の働きやすさや意欲向上にもつながっている点が、オカムラの成功の一因といえるでしょう。
株式会社カインズの小売業におけるDX推進
ホームセンター大手の株式会社カインズは、小売業におけるデジタル変革を先導する存在として注目されています。同社は「IT企業への変革」を掲げ、社内にテクノロジー本部を設立し、システム開発を内製化することで迅速なサービス改善と顧客体験の向上を図っています。
店舗業務では、従業員向けのアプリケーション「CAINZ WORK」を開発・導入し、発注や在庫確認、シフト管理などをスマートフォンで一元化しました。これにより、店舗スタッフが紙の帳票を使わずに業務をこなせるようになり、現場の業務効率と情報の正確性が大幅に向上しました。また、顧客向けには会員アプリを通じて購買履歴やおすすめ商品の提案など、パーソナライズされたサービスを展開しています。
システム導入の段階では、エンジニアが現場に常駐し、業務の流れや課題を直接観察しながら開発を進めるアプローチをとってきました。こうした現場密着型の手法によって、使いやすさと実用性を兼ね備えたシステムが実現されました。
結果として、業務時間の削減や接客品質の向上を達成し、顧客満足度の向上にもつながっています。カインズの事例は、デジタル化を単なるIT導入ではなく、企業文化や働き方の見直しと一体化させた好例として評価されています。
メリット・デメリットを考慮したうえでデジタル化に取り組もう
日々の業務にデジタル技術を活用し効率化を図るデジタル化には、多くのメリットがあります。企業がデジタル化を推進せずに現在の業務を続けた場合、2025年の崖や市場での競争力の低下などのリスクが考えられます。そのため、業務のデジタル化が急がれているのです。
デジタル化にはデメリットもあります。業務をデジタル化するメリット・デメリットを検討したうえで、自社に適したデジタル化を推進していきましょう。
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