- 作成日 : 2025年8月25日
エクセルでの発注管理表の作り方!初心者でも分かる手順とプロ級テクニック
エクセルを使った受発注管理表の作成から効率的な運用まで、業務効率化を実現する完全マニュアルです。
基本的な項目設定から、VLOOKUP・SUMIF関数を活用した自動計算機能、テンプレート化の手順まで、5つのステップで解説します。
エクセルでの受発注管理表の作り方
発注管理表とは、商品や原材料の発注から仕入れに至るプロセスを記録・管理するためのツールです。適切に活用することで、過剰在庫や品切れのリスクを回避し、発注から納品までの進捗状況を一目で把握できるようになります。
エクセルで作成する発注管理表は、多くの企業が日常的に使用しているソフトウェアを活用するため、追加のコストをかけずに導入できる点が最大の特徴です。テンプレート機能や関数を駆使することで、手作業による計算ミスを防ぎ、業務の標準化を図ることができます。
※エクセルライセンス未導入の場合は別途ライセンス費が必要です。
ステップ1:必要項目の設定
受発注管理を効率的に行うため、まず管理表に含める項目を明確に定義します。一般的に必要とされる基本項目は以下の通りです。
- 発注日:いつ発注したかの記録
- 発注番号:管理用の一意識別番号
- 商品コード:商品を特定するための識別コード
- 商品名:商品の正式名称
- 発注先:取引先企業名
- 単価:商品1個あたりの価格
- 発注数量:発注する商品の個数
- 合計金額:単価×数量の計算結果
- 納期:商品が納品される予定日
- 担当者:発注を行った責任者
- ステータス:発注中、納品済み等の進捗状況
これらの項目を横方向(行)に配置し、各発注案件を縦方向(列)に記録していく形式が一般的です。企業の業態や取り扱い商品の特性に応じて、項目の追加や削除を行ってください。
ステップ2:関数と数式の活用
エクセルの強力な関数機能を活用することで、手作業による計算ミスを防ぎ、作業効率を大幅に向上させることができます。
SUMIF関数の活用
特定の条件を満たすデータの合計を自動計算できます。例えば、特定の発注先への月間発注総額を算出する場合(セルB1に対象月の任意の日付、セルB2に発注先名が入っている想定):
=SUMIFS(金額範囲, 発注先範囲, B2, 発注日範囲, “>=”&EOMONTH(B1,-1)+1, 発注日範囲, “<=”&EOMONTH(B1,0))
※対象月の開始日/月末日は EOMONTH で動的に計算しています。テーブル化している場合は構造化参照(例:=SUMIFS(発注表[合計金額], 発注表[発注先], B2, 発注表[発注日], “>=”&EOMONTH(B1,-1)+1, 発注表[発注日], “<=”&EOMONTH(B1,0)))にすると扱いやすくなります。
VLOOKUP関数の活用
商品コードを入力するだけで、商品名や単価を自動表示できます
=VLOOKUP(商品コード,商品マスター範囲,取得したい列番号,FALSE)
自動計算式の設定
合計金額欄には単価と数量を掛け合わせる数式を設定
=単価のセル*数量のセル
これらの関数を組み合わせることで、データ入力の手間を大幅に削減し、計算精度を向上させることができます。
ステップ3:運用ルールの策定
効果的な受発注管理を実現するためには、明確な運用ルールの策定が不可欠です。
- 入力担当者と入力タイミングの明確化
- 必須入力項目と任意入力項目の区別
- データ形式の統一(日付形式、商品コード形式等)
- 更新履歴の記録方法
- 発注権限者の設定
- 承認プロセスの明文化
- 緊急発注時の特別ルール
- ファイルの保存場所と命名規則
- バックアップの頻度と方法
- アクセス権限の設定
これらのルールを文書化し、関係者全員で共有することが重要です。
ステップ4:テンプレート登録
作成した受発注管理表をテンプレートとして登録することで、毎回一から作成する手間を省くことができます。
- 完成した管理表を開き、サンプルデータを削除(数式・書式・データ検証は残す)。
- (重要)「ファイル → オプション → 保存」で**[既定の個人用テンプレートの場所]**を確認/設定する(未設定なら「ドキュメントCustom Office Templates」等を指定)。
- 「ファイル → 名前を付けて保存」→ ファイルの種類:Excel テンプレート(*.xltx) を選択し、上記のテンプレート用フォルダーに保存。※マクロを含む場合は *.xltm。
- 「ファイル → 新規 → 個人用」に保存済みテンプレートが表示されます。そこから選択すると元ファイルを上書きせずに新規ブックが作成されます。
- 「個人用」に出てこない場合は、保存場所がテンプレート用フォルダーか、[既定の個人用テンプレートの場所]設定を再確認してください。
- 必要に応じてテンプレートを更新し、部門別・商品カテゴリ別に複数用意します。
ステップ5:実際の運用と改善
テンプレートを活用して実際の受発注管理を開始し、運用しながら継続的な改善を行います。
- 小規模なテスト運用から開始
- 入力作業の標準化と効率化
- 定期的なデータの分析と活用
- 利用者からのフィードバック収集
- 業務フローに応じた項目やルールの見直し
- 新機能や関数の段階的な導入
運用を通じて発見された課題や改善点を定期的に見直し、より使いやすい管理表に育てていくことが重要です。
受発注管理に役立つエクセル関数
受発注管理に便利なエクセルの関数を紹介します。
SUMIF関数による条件付き集計
SUMIF関数は、指定した条件を満たすセルの値のみを合計する強力な機能です。発注管理においては、以下のような場面で威力を発揮します。
基本構文
=SUMIF(範囲, 検索条件, 合計範囲)
実践的な活用例
① 特定の発注先への“月間”発注総額(B列=発注日、A列=発注先、C列=金額。G2=対象月の任意の日付、H2=発注先名)
=SUMIFS(C:C, A:A, H2, B:B, “>=”&EOMONTH(G2,-1)+1, B:B, “<=”&EOMONTH(G2,0))
※対象月の月初・月末は EOMONTH で動的算出。テーブルを使う場合は構造化参照に置換すると安全です。
② 期間別の発注トレンド分析(任意の期間)(G3=開始日、H3=終了日)
=SUMIFS(C:C, B:B, “>=”&G3, B:B, “<=”&H3)
→ 月ごとの推移を出す場合は、各月の月初・月末を行見出しに並べて同式を横展開するか、ピボットテーブルで日付グループ化(月/四半期/年)すると効率的です。
③ 補助列を使って SUMIF で月別集計(SUMIF を使いたい場合)
E列に補助列「年月」を作成:=TEXT(B2,”yyyy-mm”) を下方コピー
その上で、J2 に対象“yyyy-mm”を入力し、
=SUMIF(E:E, J2, C:C)
※発注先も同時に絞る場合は SUMIFS を使ってください。
④ 特定の会社への“期間指定なし”の総額(単一条件なら SUMIF で可)
=SUMIF(A:A, “○○商事”, C:C)
※範囲(A:A と C:C)の行数は一致させること。必要に応じて絶対参照やテーブル化で参照ずれを防ぎましょう。
VLOOKUP関数による自動データ参照
VLOOKUP関数を活用することで、商品コードを入力するだけで関連情報を自動表示できます。
基本構文
=VLOOKUP(検索値, 範囲, 列番号, FALSE)
商品マスターとの連携
商品マスターテーブル(商品コード、商品名、単価、発注先等)を別シートに作成し、発注時に商品コードを入力するだけで必要な情報を自動取得できます。
エラー対策
IFERROR関数と組み合わせることで、該当データが見つからない場合の処理を設定
=IFERROR(VLOOKUP(検索値,範囲,列番号,FALSE),”データなし”)
INDIRECT関数による動的参照
INDIRECT関数を使用することで、プルダウンリストの内容を動的に変更できます。
- 商品カテゴリを選択すると、該当する商品のみがプルダウンに表示
- 発注先を選択すると、その会社が取り扱う商品のみを表示
- 動的な絞り込み機能の実装
条件付き書式による視覚化
数値や日付の条件に応じて、セルの色や書式を自動変更する機能です。
- 納期が近づいた案件の強調表示
- 発注金額の大小による色分け
- ステータスに応じた背景色の変更
- 遅延案件の警告表示
これにより、重要な情報を一目で把握できるようになります。
エクセルで受発注管理を行うメリット
低コストでの導入が可能
エクセルは事務作業において広く普及しているソフトウェアであり、多くの企業では既にライセンスを保有しています。そのため、受発注管理のために新たなシステムを購入する必要がなく、追加コストを最小限に抑えて管理システムを構築できます。
Microsoft Excel Onlineを活用すれば、無料版でも基本的な管理機能を利用することができ、スタートアップ企業や個人事業主でも気軽に始めることができます。
操作性の高さと学習コストの低さ
社会人の基本スキルとしてエクセルの操作経験を持つ人が多いため、新しい受発注管理表を導入しても短期間で習得できます。複雑な専用システムとは異なり、従業員への研修時間も最小限で済み、即座に業務に活用することができます。
エクセルの直感的なインターフェースにより、表計算やデータ入力に慣れ親しんだユーザーであれば、誰でもスムーズに操作できる点が大きなアドバンテージとなります。
柔軟なカスタマイズ性
各企業のニーズに応じて、管理表を自由に調整することができます。商品の種類や取引先の特性に合わせて項目を追加・削除したり、視覚的に分かりやすくするための色分けや条件付き書式を設定したりすることが可能です。
マクロ機能やVBAを活用すれば、さらに高度な自動化処理を組み込むことができ、繰り返し作業の効率化を図ることができます。将来的に業務が拡大した際も、段階的に機能を追加していくことができます。
豊富な関数による業務効率化
エクセルには数百種類の関数が用意されており、発注管理に特に有効な計算や検索機能を活用できます。SUMIF関数による条件別の集計、VLOOKUP関数による自動データ参照、条件付き書式による視覚的な管理など、手作業では時間のかかる処理を瞬時に実行できます。
これらの関数を組み合わせることで、発注管理表の作成と更新作業を大幅に効率化し、より複雑なデータ処理にも対応することができます。
エクセルで受発注管理を行うデメリット
同時編集の制約
同時編集の可否は保存場所とバージョンに依存します。Microsoft 365 の Excel は、OneDrive/SharePoint/Teams に保存すれば共同編集(リアルタイム共同作業)が可能です。一方、ローカルPCや社内ファイルサーバー上のファイルを直接編集する場合は、原則として1人が編集ロックするためリアルタイム更新はできません。
また Excel Online でも共同編集は可能ですが、非常に大きなブックや複雑な数式では動作が重くなる/一部機能が使えない場合があるため、データ量や機能要件に応じてデスクトップ版と使い分けるのが安全です。
手作業による入力ミスのリスク
受発注に必要な情報をエクセルファイルに手動で転記する必要があるため、入力ミスが発生しやすくなります。電話やFAXで受け取った情報をエクセルに打ち込む作業は二度手間となり、人的エラーの温床となる可能性があります。
特に大量の取引がある企業では、入力作業だけで相当な時間を要し、ミスによる発注漏れや重複発注のリスクが高まります。
大規模データの処理能力限界
取引量が増加してデータが膨大になると、エクセルファイルの処理速度が著しく低下します。ファイルの保存や読み込みに時間がかかるようになり、最悪の場合はファイルの破損やフリーズが発生する可能性があります。
一般的に、数万行を超えるデータを扱う場合は、エクセルでの管理に限界が生じると考えられます。
セキュリティとバックアップの課題
エクセルファイルには取引先情報や発注金額などの機密情報が含まれているため、適切なセキュリティ対策が必要です。ファイルの暗号化やアクセス権限の設定など、情報漏洩を防ぐための対策を講じる必要があります。
また、データの消失を防ぐため、定期的なバックアップ体制を整備することも重要です。
エクセル発注管理表で始める業務効率化
エクセルを活用した発注管理表は、初期投資を抑えながら業務の標準化と効率化を実現する優れた選択肢です。本記事で紹介した5つのステップに従って管理表を構築し、VLOOKUP・SUMIF関数などの強力な機能を活用することで、手作業による管理から脱却し、大幅な業務効率向上を達成できます。
重要なのは、完璧な管理表を最初から作ろうとするのではなく、基本的な構造から始めて段階的に機能を拡張していくことです。運用を通じて発見される課題や改善点を継続的に反映させることで、自社の業務に最適化された管理システムを構築できます。
ただし、エクセルによる管理には同時編集の制約や大規模データ処理の限界があることも理解しておく必要があります。業務規模の拡大や機能要件の高度化に応じて、適切なタイミングで専用システムへの移行を検討することが、持続的な業務効率化につながります。
まずはエクセルでの発注管理表作成から始めて、段階的に管理レベルを向上させ、将来のシステム導入に向けた基盤を整備することをお勧めします。適切に構築されたエクセル発注管理表は、業務プロセスの可視化と標準化を実現し、組織全体の生産性向上に大きく貢献することでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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