• 作成日 : 2025年7月17日

回覧板の電子化はどう始める?メリット・デメリット、アプリの紹介

回覧板の電子化は、情報の伝達をより早く、効率的に行う手段として注目されています。紙を使った回覧板は時間や手間がかかり、特に急ぎの連絡には不向きです。近年では、社内や町内会を問わず、スマートフォンやパソコンを活用して情報を共有する取り組みが進んでいます。この記事では、電子化のメリット・デメリット、導入方法、ツール選定のポイントを具体的に解説します。

回覧板の電子化とは?

回覧板の電子化とは、紙で配布していた情報をデジタル形式に切り替え、パソコンやスマートフォンなどのデバイスで閲覧・管理できるようにする仕組みです。これにより、紙の配布・回収の手間がなくなり、情報の確認や更新が簡単になります。

社内では、会議の案内、稟議書、連絡事項などが対象となります。

町内会では、清掃活動の案内、防災訓練、イベントのお知らせなどが回覧されます。

電子化することで、全員に一斉送信でき、閲覧状況も把握しやすくなります。

確認方法は使うツールによって異なりますが、一般的には以下のような手順です。

スマートフォンやPCで専用アプリやWebサービスにログインし、回覧の内容を閲覧します。通知機能が付いたサービスなら、新しい情報が投稿された際にプッシュ通知やメールで即時に知らされます。閲覧履歴が残るため、誰が未読かも簡単に把握できます。

回覧板の電子化により、情報共有のスピードや正確さを高め、業務や地域運営の質を向上させる手段として有効です。

紙の回覧板のメリットや課題点

紙の回覧板は、地域コミュニティや社内で長年使われてきた情報伝達の手段です。顔を合わせて手渡しすることで交流が生まれ、誰にでも読みやすい点など、紙ならではの魅力があります。一方で、情報伝達の遅さやコストなどの問題もあり、電子化とのバランスを考慮する必要があります。

メリット① 近所付き合いの維持と防犯効果

回覧板を手渡しする際、近所の人と顔を合わせる機会が生まれます。この短いやり取りが地域のコミュニティ維持に役立ちます。例えば、日頃から顔見知りになることで、不審者の情報共有や地域の防犯意識向上にもつながります。特に高齢者が多い地域では、安否確認の一環となることもあります。

メリット② 高齢者にも優しい情報共有

スマートフォンやパソコンの操作に不慣れな高齢者にとって、紙の回覧板は親しみやすく、特別な知識や機器なしで情報を確認できる点が大きな利点です。文字が大きく、手元でじっくり読めるため、デジタルツールに抵抗がある方でも安心して確認できます。

メリット③ 情報確認のしやすさ

紙の回覧板は、物理的に手元に残るため、インターネット環境がない場所でも、いつでも内容を確認できます。災害時など、デジタル機器が使えない状況でも有効な情報源となります。また、必要な箇所に直接書き込みをしたり、マーカーで印をつけたりといった直感的な使い方もできます。

デメリット① 情報伝達の遅延

紙の回覧板は、手渡しで順番に回るため、情報が全員に届くまでに時間がかかります。特に回覧ルートが長い場合や不在者が多い場合、緊急性の高い連絡がタイムリーに届かないリスクがあります。災害時や急な会議変更など、迅速な情報共有が必要な場面では大きな問題になります。

デメリット② コストと手間の発生

紙の回覧板は、用紙代、印刷代、配布にかかる交通費や人件費などの隠れたコストが発生します。また、作成、印刷、配布、回収、集計といった一連の作業には、担当者の時間と労力が必要です。特に社内では、頻繁な情報共有が必要な場合、その負担は無視できません。

デメリット③ 情報の紛失・破損リスク

紙の回覧板は、回覧中に紛失したり、雨などで破損したりする可能性があります。これにより、一部の人が情報を受け取れない、あるいは誤った情報が伝わるリスクがあります。また、過去の回覧情報を探す際にも、紙の山から探し出す手間がかかります。

回覧板の電子化のメリット・デメリット

回覧板を電子化することには多くの利点がある一方で、検討すべき点もあります。これらを把握することで、より良い電子化の導入につなげることができます。

メリット① 情報共有のスピード

電子化された回覧板は、作成と同時に複数の人に情報を届けられます。紙の回覧板のように順番に回す必要がなく、緊急性の高い情報も瞬時に全員に共有できます。たとえば、社内で急な業務連絡を知らせたい場合や、町内会で災害時の避難情報を伝達したい場合に、その効果は明らかで、意思決定の迅速化やトラブル発生時の対応能力を高めます。遠隔地にいる従業員や、離れた場所に住む町内会メンバーにも均等に情報が届きます。

メリット② 作成から配布の効率化

担当者は回覧板の作成から配布、回収、集計といった一連の作業から解放されます。電子回覧板では、閲覧状況が自動的に記録され、未読者への催促も容易に行えます。これにより、担当者の管理負担が減り、本来のコア業務や地域活動に集中できる時間が増えます。

メリット③ 情報の一元管理

電子回覧板では、すべての情報がデジタルデータとして一元的に管理されます。これにより、必要な情報を素早く検索したり、過去の回覧内容を容易に参照したりできます。例えば、昨年のイベント告知や過去の会議資料をすぐに呼び出せるため、資料作成や情報確認の時間を大幅に短縮できます

メリット④ セキュリティの向上

紙の回覧板は、情報漏洩のリスクを常に抱えています。紛失や盗難の可能性があります。電子回覧板では、アクセス制限やパスワード設定、暗号化などのセキュリティ機能を利用できます。これにより、特定の関係者のみが情報を閲覧できるように設定し、情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。

デメリット① デジタル機器に不慣れな人への対応

特に高齢者が多い町内会では、スマートフォンやパソコンの操作に不慣れな方がいるため、デジタルデバイドが懸念されます。

電子化を進める際には、IT機器の操作に不安がある方への丁寧なサポート体制が必要です。例えば、操作説明会の開催、個別相談会の実施、紙媒体との併用期間を設けるなどが考えられます。社内でも、デジタルツールの利用経験に差がある従業員への配慮が必要です。

デメリット② ツールやシステムのコスト

多くの電子化ツールが存在するため、自社のニーズや町内会の状況に合ったツールを選ぶのが難しい場合があります。無料のツールから高機能な有料ツールまで価格帯も幅広いです。導入費用や運用コストも考慮しながら、機能性、操作性、サポート体制などを比較検討する時間が必要です。無料トライアル期間を利用して、実際に使い勝手を試すことも有効です。

デメリット③ 運用ルールの策定

新しいシステムを導入しても、運用ルールが曖昧だと混乱が生じます。誰が情報を発信し、誰が承認するのか、緊急時の対応はどうするのかなど、明確な運用ルールを策定し、関係者全員に周知徹底する必要があります。社内であればマニュアル作成や研修、町内会であれば説明会や回覧資料での告知などが有効です。

町内会の回覧板の電子化ツール

町内会で回覧板を電子化するには、住民の年齢層やITリテラシー、スマートフォンの普及率などを踏まえて、誰でも使いやすく、管理がしやすいツールを選ぶことが重要です。

LINEオープンチャット

日常的に利用しているLINEのオープンチャットは、手軽に導入できるツールです。

グループを作成し、そこにお知らせを投稿する形式で、すぐに情報を確認できます。

基本機能は無料で利用できるため、コストをかけずに導入できます。

ただし、誰がどこまで読んだかを詳細に把握することはできません。また、新しい投稿が増えると、過去の情報が埋もれてしまう恐れがあります。

Googleドライブ/ドキュメント

Googleドライブは、Googleアカウントがあれば無料で使えるクラウドツールです。回覧文書や画像を共有フォルダにアップロードし、リンクを伝えるだけで情報共有が可能です。ドキュメントやPDF、画像など多様な形式に対応し、複数人での同時編集もできます。

ただし、新着通知機能や閲覧状況の確認機能は限定的です。そのため、住民のITスキルやサポート体制を事前に確認し、無理のない運用が可能かどうかを検討する必要があります。

自治体提供のデジタル回覧板アプリ

一部の自治体では、デジタル事業推進の一環として、町会・自治会専用の回覧板アプリを提供しています。紙の回覧板の代わりにスマートフォンやタブレットで情報を閲覧でき、自治体からの通知と地域内の情報を一括で確認できることもあります。

自治体が導入を主導している場合、町内会が費用を負担しなくて済むケースが多く見られます。ただし、有料サービスを採用している場合は、一部費用が発生することもあるため、事前の確認が必要です。

参考:デジタル回覧板|東京都港区

有償で提供されているデジタル回覧板アプリ

町内会・自治会のニーズに特化し、有償で提供されているデジタル回覧板アプリもあります。機能の充実度や管理のしやすさが特長です。

Yumicom(ユミコム)

高齢者にも使いやすいシンプルなインターフェースが特徴の地域コミュニティ向けアプリ。デジタル回覧板に加え、既読管理、安否確認、会費集金、住民投稿機能など、多機能で地域運営をサポートします。

費用: 世帯ID数に応じた従量課金制です。料金プランの詳細は公式サイトをご確認ください。

URL:Yumicom(ユミコム)

JichiNavi(じちなび)

自治会・町内会・PTA・マンション管理組合など多様なコミュニティ向けアプリ。記事形式での情報発信に加え、データ入力代行サービス(オプション)も提供されており、導入・運用のサポート体制も整っています。

費用: 自治会・町内会向けは年間収入の2.2%、マンション管理組合向けは年間220円/世帯です。

URL:JichiNavi(じちなび)

クレアンスメアード「デジタル回覧板」

「個人情報無し」で利用でき、シンプル設定が特徴のDX推進支援アプリ。回覧板機能に加え、地域ペイやデジタルプレミアム商品券連携など、地域経済活性化機能も豊富です。

費用: 料金は個別見積もり。詳細は直接お問い合わせください。

URL:クレアンスメアード「デジタル回覧板」

ジチカン (Jichikan)

自治会・町内会の業務効率化を目的としたデジタル管理支援システム。多世代が円滑にコミュニケーションできるよう設計されており、運営の効率化をサポートします。

費用: 初期費用30,000円(税抜)、月額基本料3,000円(税抜)に加え、世帯数に応じたユーザー単価が発生します。2週間の無料トライアルがあります。

URL:ジチカン (Jichikan)

クローズドな掲示板システム

町内会や自治体で独自にウェブサイトを構築し、その中に回覧板機能や掲示板機能を設けるケースです。CMS(コンテンツ管理システム)としては、WordPressなどが一般的に利用されることが多いです。

社内回覧板の電子化ツール

社内で回覧板を電子化する際は、情報共有に加え、業務全体の効率化につながるツール選びがポイントです。既存のIT環境や企業規模に合わせて、使いやすく管理しやすいものを選ぶ必要があります。

グループウェアの活用

グループウェアは、回覧板機能のほか、スケジュール管理やファイル共有、承認フローなど、社内業務全般をカバーする統合ツールです。セキュリティ面も強化されており、社内利用に適しています。

また、回覧の閲覧・未閲覧を把握できるため、情報の伝達漏れを防ぐこともできます。回覧内容の承認が必要な場合には、システム上で承認フローを組むことも可能です。

ただし、 高機能な製品が多いため、初期費用や月額費用が発生します。多機能ゆえに、従業員が全ての機能を使いこなすまでに時間がかかる場合があります。

  • Microsoft 365:SharePoint OnlineやTeamsの活用で回覧板機能を実現できます。特にTeamsはチャットと情報共有を連携させやすいです。
  • Google Workspace:Google SitesやGoogle Chat、共有ドライブを活用することで、情報共有基盤を構築できます。
  • サイボウズ Office / Garoon:日本の企業文化に合った使いやすさが特徴で、多くの企業で導入されています。

ビジネスチャットツール

Slack、Chatwork、LINE WORKSなどのビジネスチャットは、回覧板のように「お知らせ」を投稿し、情報をすばやく共有できます。リアルタイム通知に対応しており、緊急連絡や資料の添付、意見交換もスムーズです。

小規模であれば無料プランから導入できるため、初期コストを抑えたい企業にも向いています。

ただし、投稿が増えると重要な情報が埋もれやすく、誰が閲覧したかの詳細な管理は難しい面があります。既読確認は絵文字のリアクションなどで代用されることが多く、承認フローや履歴管理はグループウェアに比べて限定的です。

回覧板電子化の進め方と注意点

回覧板を電子化するには、利用する組織の性質に応じて、適切な手順と配慮が必要です。ここでは「社内の場合」と「町内会・自治体の場合」に分けて進め方を紹介します。

社内での電子化の進め方

企業や団体では、IT環境が整っているケースが多く、比較的スムーズに電子化を進めやすいです。

  1. 課題と目的を明確にする
    「情報伝達の遅れ」「配布の手間」「紙コストの増大」など現状の課題を整理し、電子化で何を改善したいのかを具体化します。
  2. 担当者・チームの選定
    IT部門や総務を中心に、実務を把握している現場メンバーを含めたチームを構成し、導入と運用を主導します。
  3. ツール選定とテスト導入
    社内のIT環境や規模に合ったツールを選び、トライアルで操作性・機能性を確認します(例:Teams、Google Workspace、サイボウズなど)。
  4. 運用ルールと社内研修
    投稿ルールや緊急時の連絡方法を整備し、全社員に周知。使い方を社内研修やマニュアルでサポートします。
  5. サポート体制と改善の継続
    問い合わせ対応やフィードバックの受付窓口を設け、使いにくさや運用上の課題を継続的に見直していきます。

町内会・自治体での電子化の進め方

  1. 地域の実情を把握する
    スマートフォンの保有率やITリテラシーの状況を確認し、どの程度デジタル化が可能かを見極めます。
  2. 電子化の対象と範囲を決める
    すべてをデジタルにせず、「一部だけ電子化」「紙との併用」など段階的・部分的な移行方針を検討します。
  3. 協力者と支援体制の整備
    ITに詳しい若年層や地域の有志に協力を依頼し、導入時のサポートや高齢者への対応体制を作ります。
  4. 無理のないツール選びと試用
    LINEオープンチャットや地域向けアプリなど、手軽で導入しやすいツールを選び、住民に体験してもらいながら進めます。
  5. 並行運用と住民サポート
    最初は紙と電子を併用し、利用者が慣れるまで丁寧にフォロー。操作説明会や個別サポートで不安を減らし、徐々に移行します。

回覧板の電子化は段階的にすすめよう

回覧板の電子化は便利な手段ですが、全ての環境に適しているとは限りません。高齢者やスマートフォンを使わない人が多い町内会では、紙と併用する方法も現実的です。また、社内での利用においてもITリテラシーに差がある場合は、段階的な導入が必要です。大切なのは、使う側の状況に合わせて無理なく進めることです。電子化はあくまで選択肢の一つ。実際の運用に適した方法を見極めることが重要です。


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