- 作成日 : 2025年5月7日
インシデント管理ツールとは?選ぶポイントやおすすめのツールを紹介
現代の企業ではITシステムの活用が欠かせません。しかし、システム障害やサイバー攻撃、人的ミスなどによって予期せぬトラブル(インシデント)が発生する可能性があります。インシデント発生時に迅速かつ適切に対処することが事業継続と信頼維持のために不可欠です。
専用のインシデント管理ツールを導入することで、担当者間で情報をリアルタイムに共有し、標準化された手順で効率よくインシデント対応を行えるようになります。
本記事では、インシデント管理ツールのメリットや活用事例、おすすめのツール、導入時の注意点を解説します。
目次
インシデント管理ツールとは
インシデント管理ツールとは、システム障害や業務上のトラブル(インシデント)が発生した際に、対応の記録や進捗の管理を一元化するためのソフトウェアです。インシデントを「チケット」として登録し、担当者への割り当て、対応状況の追跡、解決までのフローを可視化できます。情報の共有漏れや対応の属人化を防ぎ、迅速かつ適切な対応を実現するのが主な目的です。
社内のITヘルプデスクやカスタマーサポート部門など、部門を問わず幅広く活用されています。
インシデント管理ツールのメリット
インシデント管理ツールを活用することで、情報の可視化による迅速な対応や対応業務の標準化、過去の知見の蓄積など、さまざまなメリットが得られます。以下で詳しく見ていきましょう。
情報が可視化できる
インシデント管理ツールでは、インシデント情報を一元的に可視化できます。リアルタイムで状況を把握できるため、問題が発生している箇所を迅速に特定し、必要な対応に優先順位を付けてスムーズに対処することが可能です。複数のインシデントが同時に発生した場合でも、どの対応を優先すべきか判断しやすくなり、復旧までの時間短縮につながります。
さらに、インシデント対応状況が経営層や関係部門にもリアルタイムで共有されるため、必要に応じた支援やリソース配分の判断が容易になるという利点もあります。
インシデント対応が標準化され属人化を防止できる
インシデント管理ツールの活用により、対応フローを標準化できます。全ての対応がツール上で記録・共有され、担当者間で情報を共通認識できるため、特定の担当者だけにノウハウや状況が偏る「属人化」を防ぐことが可能です。万一主要な担当者が不在の場合でも、他のメンバーがツール上の記録を基に状況を把握して引き継ぎが可能であるため、対応の遅れを最小限に抑えられます。
結果として、組織全体でスムーズかつ一貫性のあるインシデント対応が可能となります。また、対応記録を全員で共有することで、メンバー間の知見共有や相互支援が促進され、チーム全体の対応力向上にもつながります。
過去データを蓄積しナレッジ活用できる
インシデント管理ツールには、これまで発生したインシデントと対応内容のデータが蓄積されていきます。過去の対応記録がナレッジ(知識)として蓄積されるため、同様のインシデントが再発した際に迅速な自己解決や適切な対処方法の検討が可能となります。過去に例のない事象であっても、関連する事例や対処法を検索し応用することで問題解決に活かせるでしょう。
また、蓄積されたデータを分析することで、頻発するインシデントの傾向や自社システムの課題を把握し、サービス品質の改善や再発防止策の立案に役立てることが可能となります。
インシデント管理ツールの活用事例
インシデント管理ツールは、社内のITサポートから顧客向けサービスの運用まで幅広く活用されています。ここでは、代表的な活用事例として、社内ヘルプデスク、顧客サポート、システム障害対応の3つのケースを見てみましょう。
社内ヘルプデスク
社内のITヘルプデスク業務にインシデント管理ツールを導入すると、社員からの問い合わせ対応が効率化します。従来はメールや電話でIT部門に問い合わせを行い、担当者が個別に進捗を管理していた場合、対応状況の可視化が難しく対応漏れも起こりがちでした。しかし、ツール導入後は問い合わせがチケットとして自動記録・分類され、担当者への割り当てや進捗の可視化が実現します。
問い合わせ内容をカテゴリごとに分類して優先度を設定したり、対応手順をあらかじめ定めたワークフローに沿って処理したりできるため、ルールに沿った一貫性のある対応が可能になります。その結果、社内の問い合わせ対応における対応漏れ防止や処理時間の短縮が期待でき、社員からの信頼向上にもつながります。
顧客サポート
顧客向けのサポート窓口でもインシデント管理ツールが活躍します。メール、電話、チャットなど複数チャネルから寄せられる問い合わせをツールで一元管理することで、対応漏れや重複対応を防ぎつつ迅速な対応が可能です。問い合わせ内容や過去の対応履歴も共有されるため、担当者は的確な情報に基づいて回答でき、顧客を待たせる時間を短縮できます。
途中で担当者が交代する場合でも、ツール上で情報が連携されているためスムーズに引き継ぎが行えます。対応品質のばらつきを抑え、一貫したサービス提供を実現することで、結果として顧客満足度の向上につながります。
システム障害対応
自社の提供するサービスや社内システムで障害(システムダウンや重大な不具合)が発生した際にも、インシデント管理ツールは威力を発揮します。監視システムと連携したインシデント管理ツールを導入すれば、障害検知と同時に自動的に担当チームへ通知が飛び、迅速な初動対応を可能にします。たとえばサーバーダウンが起きた場合、オンコール担当者にツールからアラートが送信され、関係者全員が同じプラットフォーム上で状況を共有しながら復旧作業に当たることができます。
状況のタイムライン共有や更新情報の一括通知といった機能により、「誰が何を対応中か」が明確になるため、対応の重複や連絡漏れを防ぎつつ、チーム全体で効率的に問題解決に取り組めます。大規模なITサービス企業では、専門ツールを活用して24時間365日の障害対応体制を構築しており、世界中で多くの企業がこうしたプラットフォームを導入しています。これによりサービスのダウンタイム(停止時間)を短縮し、ユーザーへの影響を最小限に抑えることが可能になります。
インシデント管理ツールの選び方
世の中には多数のインシデント管理ツールが提供されています。ここでは、インシデント管理ツールを選ぶ際に押さえておきたい基準について解説します。
必要な機能と連携性
まず、自社のインシデント管理に必要な機能を明確にしましょう。ツールによって得意分野や搭載されている機能は様々です。社内ヘルプデスク用途であれば、問い合わせ管理やナレッジベース機能が重要になる一方、システム障害対応が主目的であれば、アラート通知やオンコール管理、外部監視システムとの連携機能が求められます。
自社が解決したい課題を洗い出し、それを実現できる機能を備えたツールかどうかを確認することが選定における最優先事項です。
また、既存システムとの連携性も重要です。メールやチャットツール、監視ツールなどとの連携(インテグレーション)が可能か、API提供はあるか、といった点もチェックしましょう。可能な限り対応状況の可視化、レポート作成、問い合わせの振り分けなど多くの作業を自動化できるツールであれば、担当者の負担軽減と迅速な対処に役立ちます。
使いやすさとサポート体制
ツールの使いやすさも選定時の重要なポイントです。インシデント管理ツールは日常的に運用担当者が使うものですので、操作が複雑すぎるものは定着せず、せっかくの機能も十分に活用できなくなってしまいます。複数の候補を比較検討し、可能であれば無料トライアルやデモを利用して実際の担当者が使いやすいと感じるツールか確認するとよいでしょう。
また、提供ベンダーのサポート体制も重要な要素です。日本語でのサポートや問い合わせ対応の迅速さ、アップデート情報の提供など、安心して長期間利用できるサービスかどうかを見極めることも大切です。実績豊富なベンダーの製品であれば、機能の信頼性や将来的なサポート面でも安心感を得られるでしょう。
提供形態と費用対効果
インシデント管理ツールには、クラウド(SaaS)型とオンプレミス(自社サーバー設置)型があります。それぞれメリット・デメリットが異なるため、自社の方針に合った提供形態を選びましょう。
クラウド型は短期間で手軽に導入でき、初期費用やランニングコストを比較的低く抑えられる利点があります。一方、オンプレミス型は自社環境に構築する分、カスタマイズ性に優れますが、導入・運用に専門知識が必要で費用も高額になりがちです。近年では、クラウド(SaaS)型でも多機能なツールが増えており、特別な要件がない限りクラウド型で十分ニーズを満たせる場合が多くなっています。
ただし、自社の情報セキュリティポリシー上、クラウド利用に制約がある場合や、機密性の高いデータを取り扱う場合には、オンプレミス(自社サーバー設置)型の採用など、情報管理面での考慮も必要です。いずれにせよ、選定時にはツール提供元のセキュリティ対策やデータ管理体制(暗号化、アクセス権限の設定、認証方式、セキュリティ認証の取得状況など)を確認し、自社のコンプライアンス要件を満たしているかチェックしておきましょう。
また、機能とコストのバランスも重要です。高機能なツールほど費用も高くなる傾向にあるため、自社に本当に必要な機能は何かを見極め、不要な機能にコストをかけないことが大切です。各製品のプランや料金体系を比較し、導入・運用にかかるトータルコストと期待できる効果を検討しましょう。
費用対効果の高いツールを選ぶことで、無駄な投資を避けつつ、インシデント管理の品質向上を実現できます。
インシデント管理ツールおすすめ5選
ここでは日本語対応または国内提供のおすすめインシデント管理ツール5選を紹介します。自社に合ったツール選定の参考にしてください。
LMIS
LMIS(エルミス)は株式会社ユニリタが提供する、本格的なITサービスマネジメントプラットフォームです。ITILに準拠して設計されており、社内IT部門のサービスデスクや運用管理に最適です。インシデント発生から問題管理・変更管理・リリース管理まで、一連のプロセスを一貫して管理できるのが強みです。Salesforce基盤のCRM機能を搭載しており、問い合わせ時に顧客情報と紐付けた管理も可能なため、社内向け・顧客向けの両面で活用できます。
大規模企業での導入が多く、株式会社本田技研工業(Honda)では既存の大規模ITSMツールからLMISへのリプレースを約4ヶ月で完了するなど、短期間での切替導入事例もあります。住友生命保険相互会社、コニカミノルタ株式会社、株式会社テレビ東京システムなど多数の大手企業に導入実績があり、信頼性の高さがうかがえます。
料金
LMISサービス利用料は「LMIS 25ユーザー」というプランで月額100,000円(最小利用ユーザー数は25ユーザー)から利用可能。初期費用は300,000円です。大企業向けのエンタープライズ製品だけあり安価ではありませんが、充実した機能セットを考慮するとコスト相応と言えるでしょう。※無料トライアル等については要問い合わせ。
向いている企業
社内ITサービスデスクの効率化や、ITILに準拠した標準化された運用プロセスの構築を目指す企業に最適です。複数部署・多数のユーザーからの問い合わせ対応を統合管理し、障害対応とサービス改善の両立を目指す中堅~大企業で特に力を発揮します。金融、製造、通信など幅広い業界の大手企業に採用されており、信頼できる国産ツールとして評価されています。
Zendesk
Zendesk(ゼンデスク)はグローバルで広く利用されているクラウド型の統合サポート・チケット管理システムです。日本法人も存在し、日本語のインターフェースとサポートに対応しています。メール、チャット、電話、SNSなど多様なチャネルの問い合わせを一元管理できる点が特徴で、問い合わせが発生すると自動的にチケット化され、対応漏れを防止します。
ITILプロセスにも準拠しており、社内ITのインシデント管理にも応用可能です。FAQナレッジベースの構築、AIチャットボットによる自動応答、ワークフロー自動化など豊富な製品ラインナップにより、自社の規模や目的に合わせて柔軟にカスタマイズが可能です。世界160以上の国と地域、10万社以上の企業で導入実績があり、信頼性や拡張性の面で高い評価を得ています。
料金
エージェント(担当者)1名あたり月額19ドル(約2,700円)~から利用可能(Support Teamプランの場合)です。プランによって機能範囲が異なり、上位プランではナレッジベースやチャット機能などが含まれます。無料トライアルあり。
ユーザー数に応じた従量課金モデルのため、小規模チームから大企業まで規模に合わせて導入しやすいです。
向いている企業
顧客からの問い合わせ対応を効率化したいカスタマーサポート部門で特に有用です。複数の窓口を一元管理したいECサイト運営企業や、全国規模でサービス展開する企業のサポートセンターに適しています。世界中で利用されている実績から、外資系企業やグローバル展開する企業の日本法人でも導入が進んでいます。
また、社内ヘルプデスク用途にZendeskを利用するケースもあり、IT運用のインシデント管理ツールとしても汎用性があります。日本国内でも既に多くの企業(導入実績5,450社以上)に利用されており、安心して導入を検討できるでしょう。
メールディーラー
メール対応漏れ防止ツールの決定版として知られるメールディーラーは、株式会社ラクスが提供する国産のメール問い合わせ共有管理システムです。累計導入社数は8,000社以上を誇り、16年連続でメール共有管理システム市場シェアNo.1を獲得するなど、国内で圧倒的な実績を誇ります。メールディーラーはその名の通りメール対応に特化しており、複数担当者で共有メールボックスを利用する際に起こりがちな「対応漏れ」「二重返信」といった課題を解決する機能が充実しています。
受信メールは自動で「未対応」「対応中」「完了」にステータスに振り分けされ、対応状況が一目でわかる共有画面で管理できます。返信時には排他ロック機能が働き、別の担当者との重複返信を防ぐ仕組みも備わっています。顧客との過去のメール履歴や対応メモもチーム全員で共有でき、メール対応業務の属人化を解消する上で有効なツールと言えるでしょう。
料金
料金は非公開(要問い合わせ)となっています。利用ユーザー数や保存通数に応じて変動するため、個別見積もりとなるようです。大まかな相場感として、同種のクラウドサービスであるラクス社の他製品と同程度の月額料金体系が想定されます(約10万円~30万円~)。
なお無料トライアル期間(2週間程度)が用意されており、導入前に操作感を試せます。また、導入時にはラクス社のサポートチームによる設定支援も受けられるため、初めてでも安心です。
向いている企業
メール対応が中心の問い合わせ業務に最適なツールです。ECサイトのカスタマーサポート、通販・小売業の受注対応、法人営業部門の問い合わせ窓口など、メールでのやり取りが主体の現場で特に有効です。複数担当者がいる環境でも対応状況を統制できるため、コールセンターやサポートデスクでの利用も多く見られます。
国内シェアNo.1の実績があり、金融、不動産、人材、教育など様々な業界の企業8,000社以上で導入されています。メール対応業務の品質向上と効率化を目指す企業にとって、まず検討すべき定番ツールと言えるでしょう。
Re:lation
Re:lation(リレーション)は株式会社インゲージが開発・提供するクラウド型問い合わせ管理システムです。2014年のリリース以降、急成長を遂げ、2023年11月時点で導入企業5,000社を突破したと発表されています。メール、チャット、電話、LINE、Twitterなど多様なチャネルからの問い合わせを1つの画面で一元管理できる点が最大の特徴です。
問い合わせごとにチケットを発行し、担当者への自動振り分けやステータス管理(対応中・完了など)により、対応漏れや二重対応を防止します。さらに重要案件にはSMSで通知を送信する機能、対応漏れが発生しそうなチケットへのアラート表示、返信の二重送信を防ぐロック機能などきめ細やかなミス防止機能が豊富です。社内コメント機能や承認フローも備えており、複数担当者でのスムーズな協働・OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を支援します。
直感的で使いやすいUIが評価され2019年にグッドデザイン賞を受賞しており、頻繁な機能アップデートが行われるなど、常に進化を続ける次世代ツールです。
料金
無料のフリープランがある(永年無料)のも特徴の一つです。有償プランは月額18,000円~利用可能です。
月額料金はユーザー数やストレージ容量によって料金が変動しますが、小規模チームなら無料プランで開始し、必要に応じて有償プランに移行できる柔軟さがあります。
向いている企業
問い合わせチャネルがメール以外にも多岐にわたる企業に最適なツールです。たとえば顧客とLINEやチャットでやり取りするEC事業者、電話とメールの両方で問い合わせを受け付けるコールセンター、社内ヘルプデスクで電話・メール・Teamsなど複数の手段からの依頼を管理したいケースなどで効果を発揮します。最近ではNECや大手スーパーなどのバックオフィス部門でも導入が進んでおり、中小企業から大企業まで幅広く利用されています。
常に新機能が追加されるため最新テクノロジーを活用したい企業にも適しており、「チャネル統合+業務効率化」を目指す現場に最適なツールと言えるでしょう。
Backlog
Backlog(バックログ)は株式会社ヌーラボが提供する国産のプロジェクト管理・課題管理ツールです。開発プロジェクト向けのタスク管理サービスとしての側面が強いですが、メールからの課題登録機能を活用することでインシデント管理ツールとしても応用できます。バックログ宛ての専用メールアドレスに送信された問い合わせや障害報告を自動で課題チケットとして登録し、担当者をアサインして対応状況を追跡するといった利用方法が可能です。
Backlogは直感的に使えるシンプルなUIとオールインワンの豊富な機能が評価されており、有料契約企業数14,000社以上と国産プロジェクト管理ツールとしてトップクラスの導入実績を誇ります。カンバンボード、ガントチャート、バーンダウンチャートなど多彩な視覚化機能を備え、プロジェクト進行やインシデント対応の進捗を容易に把握できるのが魅力です。Wikiやファイル共有、コメント機能による情報共有も充実しており、チームでのコラボレーションを促進します。
ITエンジニアだけでなくマーケティング、人事、行政機関など業種・職種を問わず幅広い現場で利用されている実績があり、社内外を問わず様々なインシデント対応に柔軟に適用できると考えられます。
料金
クラウド版の「組織・チーム利用向け」の場合、スタンダードプランで月額17,600円(税別)です。スタンダードプラン以上ではユーザー数無制限となり、プロジェクト数やストレージ容量が拡張されます。小規模チーム向けには月額2,970円から利用できるスタータープランもあり、無料プラン(ユーザー数10名・プロジェクト1件まで)も提供されています。
全プラン初期費用は無料で、30日間の無料トライアルも利用可能です。オンプレミス版はありませんが、その分常に最新バージョンが利用できるメリットがあります。
向いている企業
IT以外の部門も含め、横断的にタスク・インシデント管理をしたい場合に適しています。情報システム部門が社内の各部署から受け付けるシステム不具合報告をBacklogでチケット管理したり、開発チームが顧客からの障害報告をプロジェクト課題として扱ったりといった利用方法が可能です。経済産業省をはじめとする行政機関でも標準ツールとして採用されるなど、ITエンジニア以外の現場での活用例も豊富です。
プロジェクト管理とインシデント対応を一元化したい中小~大企業や、社内外の関係者とスムーズな情報共有を図りたいチームにとって、有力な選択肢となるでしょう。既にBacklogをプロジェクト管理で利用している組織であれば、追加コストなしでインシデント管理用途にも流用できる点は大きな利点と言えます。
インシデント管理ツール導入時の注意点
せっかく優れたツールを導入しても、準備不足や運用方法の誤りによって十分な効果が得られない場合もあります。ここでは、インシデント管理ツール導入時に押さえておきたい注意点を解説します。
導入前の準備と社員教育を充分に行う
インシデント管理ツール導入の前段階として、十分な準備と社員への周知徹底が不可欠です。まずは現行のインシデント対応フローを洗い出し、ツール導入後にどのような運用に移行するかを明確にしておきましょう。その上で、関係する社員に対し、導入の目的や新しい対応プロセスについて事前に説明し理解を促すことが重要です。
現場担当者には研修やトレーニングの機会を設け、ツールの基本的な使い方から運用ルールまで丁寧に教育することが重要です。準備段階での社員の納得感とスキル習得が十分であれば、導入後の立ち上がりをスムーズにし、ツールの定着率を高めることができます。
業務プロセスとの適合を確認してカスタマイズする
導入するツールを自社の業務プロセスに適合させることは非常に重要です。インシデント分類の項目や優先度の定義、エスカレーションのルールなど、ツール上の設定を自社の運用に合わせてカスタマイズしましょう。既存のワークフローとツールの機能にギャップがある場合は、いずれかを調整して擦り合わせを行う必要があります。
ツールによっては高度なカスタマイズが可能ですが、その分、設定に工数がかかったり将来的なアップデート対応が複雑になったりする点にも注意が必要です。また、業種によってはツールだけでは対応しきれない特殊なケースも想定されます。自社システムが高度で複雑な場合には、標準機能で不足する部分を補う運用フローを検討したり、追加のツールや開発によって対処したりすることも視野に入れるべきでしょう。
ツール導入後に「想定していた業務に合わず使いにくい」といった事態を避けるためにも、事前に十分な検証を行い、自社の業務プロセスとの適合性を確認することが重要です。
導入後も継続的に改善を図る
ツールを導入した後は、その運用を職場に定着させ、継続的に改善を図っていくことが重要です。まず、導入直後は現場でツールが正しく活用されているかをモニタリングしましょう。従業員が以前のやり方(メールや口頭での報告など)に戻っていないか確認し、必要に応じて追加トレーニングやサポートを実施します。
また、一定期間運用した後には、インシデント対応の指標(対応時間、解決までの時間、対応漏れの件数など)を測定し、導入前と比較して効果を評価します。現場から寄せられる意見や要望も収集し、ツールの設定変更や運用フローの改善に反映させましょう。ナレッジの蓄積や活用状況も定期的にチェックし、必要であればナレッジの整理や検索性向上の施策を講じます。
インシデント管理ツールは導入して終わりではなく、運用を通じて徐々に自社に最適化していくものです。継続的な改善の姿勢を持つことで、ツール導入の効果を最大限に引き出し、より一層洗練されたインシデント対応体制を構築できるでしょう。
まとめ
インシデント管理ツールの導入は、業務の効率化のみならず、組織全体の対応力と信頼性を高めるための重要な取り組みです。顧客満足度の向上や事業継続性の確保につながり、社内外への信頼構築にも大きく貢献します。
現在は多様なインシデント管理ツールが存在し、機能・価格・操作性・連携性など、選定に際して考慮すべき要素も多岐にわたります。導入を検討されている方は、自社の課題や目的を明確にした上で、最適なツールを比較・検証することが重要です。
自社に合ったインシデント管理ツールを適切に導入し、継続的な運用改善を行っていくことで、トラブル対応に強い組織づくりが実現できます。ぜひ本記事を参考に、インシデント対応の質を高める一歩を踏み出してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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