- 更新日 : 2025年3月31日
ノウハウとは?ビジネスでの意味や例文、共有ツールの紹介
ビジネスを取り巻く環境が激しく変化し、将来の予測がしにくい昨今、持続的な成長を続けるために、企業はさまざまな施策に取り組んでいます。中でも注目されている取り組みが、個人が保有するノウハウを共有し、企業の資産として活用する施策です。
ところでノウハウとは、簡単に言うと具体的に何を意味しているのでしょうか?本記事ではノウハウの意味や活用メリットについておさらいし、その共有方法について紹介します。
ノウハウとは簡単に言うと何?
ノウハウとは、物事を行う手順などの知識全般を指す言葉です。
ここでは、一般的なノウハウの概要や言葉の由来をみていきましょう。
ノウハウの意味や語源
ノウハウとは専門的な技術や知識、その蓄積を指す言葉です。ノウハウの語源は英語の「know‐how」で、「知る」という意味のknow、「手順・方法」という意味のhowを組み合わせたカタカナ語です。
ノウハウは実践的な知恵や優れたやり方、物事をうまく行うためのコツや秘訣などを指して、日常生活からビジネスシーンまで幅広く使用されます。「料理のノウハウ」など、「〇〇のノウハウ」と表現されることが多いでしょう。幅広い分野において例えば、時間管理のノウハウといえば、タスク管理を行いながら日々の業務を効率よくこなすことができる技術を指します。
ビジネスにおけるノウハウの意味
ノウハウという言葉は、ビジネスシーンでもよく利用されます。ここでは、ビジネスにおけるノウハウの意味や、ノウハウを使った例文を紹介します。
ノウハウの2つの意味
ビジネスシーンにおけるノウハウとは、事業を継続、あるいは持続的に成長させるために必要な専門的な技術・知識という意味です。競争力の源泉となるノウハウは、特に「秘密情報」あるいは「営業秘密」と呼ばれることもあります。
事業運営や、社員の実務を通して培われるノウハウは2種類に分類されます。1つ目は、常に高いパフォーマンスを発揮するために各個人に必要な技術・知識という意味のノウハウです。
2つ目は発明などで生み出された知的財産や、商標・商号などの無形財産のことで、このような企業の財産を指してノウハウと言うこともあります。また研究・開発や営業活動を介して蓄積した顧客名簿や設計図面なども、ノウハウに含まれることを押さえておきましょう。
ノウハウの具体例
自社にとっては当たり前のノウハウでも、競合他社からすれば大きな価値がある営業秘密かもしれません。ここでは、さまざまなビジネスシーンにおけるノウハウの具体例について見ていきましょう。
製品・技術開発
製品・技術開発のノウハウとは、研究開発やものづくりから企業が取得した成果であり、競争力の源泉となるものです。例えば、金型や図面、独自の製法や原材料、製造工程はもちろんのこと、外注先や共同開発などのパートナー情報などが含まれます。
自社のオンリーワン、ナンバーワンの製品や技術には、情報が公開されることを危惧して特許や実用新案の出願がなされていないノウハウもあるでしょう。このように秘密であることに価値がある情報は、ノウハウです。そこで技術者の転職や企業の海外進出に伴い、技術ノウハウの流出を防ぐ施策が特に必要とされています。
接客・顧客サービス
接客・顧客サービスのノウハウとは、商品・サービスに付加価値を与え、企業イメージやブランドイメージを高める技術のことです。例えば顧客の立場に立って考え、一人ひとりの顧客に合わせた対応や、誰が担当しても接客のクオリティを一定に保つ仕組みの構築などが挙げられます。
接客・顧客サービスのノウハウは、新規顧客の獲得やリピート率・エンゲージメントの向上に役立つことから、ホテル、アパレル、飲食店など対面の接客だけでなく、近年ではオンライン上の取引においても注目されています。
データ分析
データ分析のノウハウとは、例えば解決したい課題に応じて適切な分析手法を効果的に選べることです。データ分析はビジネス上の課題やチャンスの発見、現状の把握や将来予測に使われており、合理的でスピーディな意思決定を行うためにその重要性が増しています。
しかし数多くの手法があることから、課題ごとに最適なデータ分析手法を選ぶことは容易ではありません。そこで競合他社との差別化を図るためにも、市場や顧客行動の変化をタイムリーに読み取るノウハウが必要とされているのです。
人材開発
人材開発のノウハウとは、例えば計画的な人材開発とは何かというアイデアや、人材の評価ポイント・要件を明確に言語化できることです。研修を実施する際には、レベルアップ企画を練り、関係者へ働きかけ、研修プログラムを作成します。
人材開発のノウハウは、全社員のスキル・レベルの把握や人材育成計画の立案時に大いに役立つでしょう。
ノウハウを使った例文
ノウハウは、実際の会話では次のような使い方をします。
- ノウハウを教える
- ノウハウを身につける
- ノウハウを共有する
- ノウハウを蓄積する
「ノウハウ」を使った具体的な例文をみていきましょう。
- 新入社員には営業のノウハウを教えることが慣例になっている
- 仕事で成果を出すためには、ノウハウを身につけなければならない
- 先輩の指導のおかげで、マーケティングのノウハウを身につけることができた
- 社内全体にノウハウを共有することが、生産性向上のために必要だ
- 企業が成長していくためには、ノウハウの蓄積が不可欠である
ノウハウの類語
ビジネスではスキルやハウツー、ナレッジなど、ノウハウと混同しやすい言葉があります。ここでは、ノウハウの類語について、意味やノウハウとの違いをみていきましょう。
スキル(Skill)
スキルとは、技能・技術という意味です。技術という点でノウハウと似ていますが、スキルは主に個人が身につけた専門的な技術という意味で使うのに対し、ノウハウは個人だけでなく、広く共有できる技術も含む言葉です。また、ノウハウには技術の使い方や手順などの意味合いも含まれています。
スキルは訓練して身につけるものですが、ノウハウは特別な訓練を必要とせず、通常業務に活かせるコツや効率的な手法を指して使われます。
ハウツー(How to)
ハウツーとは、「物事のやり方・方法」という意味です。ノウハウが専門的な知識・技術を指すのに対し、ハウツーは初心者向けの内容を指して使います。製品の説明書など、基本的な知識・手順について使われる言葉です。
例えば、「コミュニケーションのハウツー」といえば、人とコミュニケーションする際の初歩的な心得などを指します。一方で「コミュニケーションのノウハウ」というと、その一歩先にある、信頼関係を築いたり交渉を成功させたりするためのコツといった内容を指しています。
ナレッジ(Knowledge)
ナレッジとは、知識・学問を意味する言葉です。知識という点ではノウハウと共通していますが、ナレッジは一般的な常識やノウハウを含む幅広い知識を指して使われます。
ナレッジは企業にとって有益な知識や情報という意味で使われることが多く、ナレッジのもとに経験を積み、蓄積された情報をノウハウにできます。知識を得るための経験を伴うか否かの違いといえるでしょう。
ノウハウの活用で得られるメリット
ここでは、個人に蓄積しているノウハウをチーム内で活用することで得られるメリットについて見ていきましょう。
生産性の向上
パフォーマンスの向上に役立つノウハウを共有すると、業務が円滑に進み、生産性が向上します。一部のメンバーがノウハウを保有していると、ノウハウのないメンバーのモチベーションは下がり、結果としてチーム全体の生産性も低下しかねません。
ノウハウの活用によって無駄な残業を減らせるほか、業務効率化などの施策に取り組む時間を確保できるようになることから、より多くの収益を確保できるでしょう。
属人化の防止
属人化とは、特定業務に関する手順や情報を特定のメンバーだけが把握し、周囲に共有されていない状態です。ノウハウが属人化すると、そのノウハウを持つメンバーが異動したり退職したりすると失われてしまいます。
ノウハウをチームで蓄積・共有していれば、特定のメンバーが急に休んだり退職したりしても、代わりのメンバーが業務を担当できます。例えばセールスの現場で顧客を獲得・維持してきたノウハウが共有されていれば、どのメンバーでも適切に対応でき、顧客の離脱を防げるでしょう。
知識の共有による組織力強化
メンバー個人に蓄積されたノウハウは、共有されることで企業の財産となります。能力の高いメンバーの成功事例から得られる知識や技術は、具体的で現場に即しており、他のメンバーの業務遂行能力のバラつきを均質化する教材として最適です。
共有されたノウハウから学べば、チーム全体のパフォーマンスを向上できます。過去の事例をノウハウとして蓄積しておくことで、難しい局面においても有効な対応力が身につくなど、組織力の強化につながるでしょう。
顧客満足度の向上
チームメンバーの誰もが均質的な対応ができるようになれば、取引先や顧客からの信頼が高まり、顧客満足度の向上につながります。既存の顧客は、担当者が代わることにストレスを感じがちです。
そのため顧客が自社の状況を改めて説明したり、新たな担当者が過去と同様のミスを繰り返したりする状況を防がなくてはなりません。顧客との関係を強化し、持続的な収益につなげていくためにも、ノウハウの活用はメリットが大きいのです。
新しいアイデアや事業機会の創出
メンバーに蓄積されたノウハウがチーム内だけでなく、部門の垣根を越えて社内横断的に共有されるようになれば、新しいアイデアや事業機会の創出につながります。異なる部門が持つノウハウやインフラを積極的に掛け合わせることで、新たな価値や市場の創出に活かしましょう。
ノウハウの共有方法
ノウハウ共有の方法は3つのステップに大別できます。ここでは、それぞれのステップについて見ていきましょう。
目的を定める
ノウハウ共有によりどのような課題を解決したいのか、共有によって何を達成したいのかを考えます。目的を決めることにより、自社に適したノウハウ共有の方法や体制を決められます。
共有ツールや方法を検討する
ノウハウの共有には、情報共有ツールの利用が便利です。ツールによって共有方法は異なるため、自社の目的に合うものを慎重に検討しましょう。事前のリサーチはもちろん、無料トライアルを活用するなどして、実際に使用感を試すのがおすすめです。
ノウハウの蓄積を促進する
情報共有ツールを共有したら、チームのメンバーにノウハウの投稿を促します。投稿したメンバーが評価されるような仕組みを検討し、できるだけ多くのノウハウを蓄積していくことが大切です。
ノウハウの蓄積・共有ツールの紹介
ノウハウの蓄積・共有に欠かせないのが情報共有ツールです。ここでは、代表的な3つのツールを取り上げ、それぞれの特徴を紹介します。
welog(ウィーログ)
welog(ウィーログ)は、社員のノウハウやナレッジを見える化し、組織の属人化を解決する共有ツールです。業務に必要な情報を簡単に共有でき、動画や画像を用いたマニュアル作成により、属人的な業務をなくします。
Word感覚で使え、初心者でも簡単に更新できるのがメリットです。トライアルはすべての機能が30日間無料で使えるため、気軽に試してみるとよいでしょう。
Chatwork(チャットワーク)
あらゆる業種・職種のコミュニケーションを円滑化し、業務の効率化に役立つチャットツールです。シンプルな機能で、ITシステムが苦手な人でも簡単に使えます。社内だけでなく、社外メンバーが関わる仕事でも情報を共有できる点がメリットです。
普段使っているサービスと連携し、対話型のボット機能や各サービスとの通知情報をチャットに集約するなど、業務効率を高める使い方もできます。
Stock(ストック)
シンプルな操作でチームの情報をストックし、タスク管理やメッセージのやり取りができるツールです。自由にフォルダの作成ができ、フォルダ内に必要情報をまとめた「ノート」を紐づけ、目的別に必要な情報を分けて登録できます。
さらに、見たい情報へ素早くアクセスできるのも便利です。各ノートには関連するタスクを設定でき、情報共有と同時に必要な作業をスムーズに行えます。
ノウハウの保護
設計図や製法マニュアル、顧客・仕入れ先リストなど、競争力の源泉となるノウハウは、収益につながる企業の財産です。これらのノウハウが不正に取得され流出することは「営業秘密の侵害行為」と呼ばれており、ペナルティとして民事措置・刑事措置が規定されています(不正競争防止法)。
不正にノウハウを取得し、故意に漏洩させた人に対しては、差止請求、損害賠償請求が可能です。また刑事罰として、10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金が規定されています。
ここでは、ノウハウの流出・漏洩によって考えられるリスクや、ノウハウを保護するための対策について見ていきましょう。
ノウハウの流出・漏洩にともなうリスク
人や物を介してノウハウが漏洩すると、取引先からの発注がストップしたり、不正に流出したノウハウに基づいた発明の特許が他社の権利になったり、その損失は計り知れません。国内外のライバル企業や取引先はもちろん、外国政府機関から日本企業が保有するノウハウが狙われるケースもあります。
不正流出したノウハウが開示・公開されると、ノウハウを保有していた企業は競争力や信用を失うことになり、取り返しがつかなくなることもあるのです。
ノウハウ保護のためのセキュリティ対策
社外へ持ち出された図面や部品、打ち合わせの席での説明などから、ノウハウが漏洩する可能性があります。「ノウハウだと思わなかった」という事態を防ぐために、社員の認識を向上させる対策も必要です。
そこで、ノウハウ保護のために次のようなセキュリティ対策が考えられます。
ノウハウは蓄積と共有が大事
ノウハウとは物事を行う方法や手順に関する知識であり、ビジネスでは業務で得た専門的な知識や技術という意味です。意識的に蓄積・共有することで業務の効率化を図り、属人化を防止します。さらに、蓄積されたノウハウは企業の財産ともなり、組織の成長に役立つでしょう。
ノウハウの蓄積・共有にはまず目的を決め、情報共有ツールの活用が必要です。自社の目的に適したツールを選び、ノウハウを蓄積・共有していきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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