- 作成日 : 2025年10月27日
スプレッドシートでフローチャートを作成するには?図形描画から便利アドオンまで完全解説
Googleスプレッドシートでフローチャートを作成することで、業務プロセスの可視化、システム設計の共有、意思決定フローの文書化を効率的に行えます。専用ツールを使わずとも、スプレッドシートの図形描画機能やアドオンを活用することで、プロフェッショナルなフローチャートを作成できます。
本記事では、基本的な作成手順から便利なアドオンの活用、見やすいフローチャートを作るための実践的なテクニックまで、スプレッドシートでフローチャートを作成する全ての知識を詳しく解説します。
目次
スプレッドシートでフローチャートを作成する基本手順は?
スプレッドシートでフローチャートを作成するには、「挿入」→「図形描画」→「新規」で描画エディタを開き、図形を配置してコネクタで接続することで視覚的な業務フローを構築します。
スプレッドシートの図形描画機能は、シンプルながら十分な機能を備えており、基本的なフローチャートであれば問題なく作成できます。共同編集も可能なため、チームでの作業にも適しています。
図形描画エディタの起動と基本操作
「挿入」メニューから*「図形描画」→「新規」を選択すると、新しいウィンドウで図形描画エディタが開きます。このエディタ内でフローチャートを作成し、完成後にスプレッドシートに挿入する仕組みです。エディタには図形、線、テキストボックスなど、フローチャート作成に必要なツールが揃っています。
図形を追加するには、ツールバーの「図形」アイコンをクリックし、「図形」カテゴリから目的の形状を選択します。フローチャートの基本記号例:プロセス(四角形)、判断(ひし形)、入出力=I/O(平行四辺形)、開始/終了(端子)。図形をクリックしてドラッグすることで、任意のサイズで配置できます。
配置した図形をダブルクリックすると、テキストを入力できます。フォントサイズや色、配置も調整可能で、各ステップの内容を明確に表示できます。図形のサイズは後から変更できるため、まずは大まかな配置を決めてから細かい調整を行うのが効率的です。
コネクタによる図形の接続
フローチャートの要となるのが、図形間を結ぶコネクタ(接続線)です。ツールバーの「線」ツールから「コネクタ」を選択すると、図形を自動的に認識して接続点にスナップする線を描画できます。これにより、図形を移動しても接続が維持される動的なフローチャートを作成できます。
コネクタには直線・角(エルボー)・曲線があり、レイアウトに合わせて使い分けます。矢印のスタイルは始点/終点を個別に設定でき、フローの方向を明確に示せます。一般的には終点側のみに矢印を付けると、読みやすい図になります。
分岐や合流では、同じ図形に複数のコネクタを接続できます。条件分岐のラベルは、線を選んだ状態で直接入力するか、テキストボックスを近接配置して「Yes」「No」などのラベルを追加すると判読性が上がります。
スプレッドシートへの挿入と配置
図形描画エディタで作成したフローチャートは、「保存して閉じる」ボタンをクリックすることでスプレッドシートに挿入されます。挿入されたフローチャートは一つの画像オブジェクトとして扱われ、ドラッグで移動したり、角をドラッグしてサイズを調整したりできます。
フローチャートを編集する場合は、挿入された図をダブルクリックすると図形描画エディタが再度開きます。編集後は自動的にスプレッドシートに反映されるため、バージョン管理の心配はありません。複数のフローチャートを作成する場合は、それぞれを別の図形描画として作成し、シート上で整理して配置します。
フローチャートの基本記号と使い方は?
フローチャートには標準化された記号があり、プロセス、判断、データ、開始/終了など、それぞれの記号が特定の意味を持つため、正しく使い分けることが重要です。
一般的に用いられるフローチャート記号(プロセス/判断/入出力/開始・終了など)に沿うことで、誰が見ても理解しやすいフローチャートを作成できます。
主要な記号の意味と用途
フローチャートで最も頻繁に使用される記号とその用途を理解することが、明確な図の作成には欠かせません。
四角形(プロセス) は最も基本的な記号で、処理や作業を表します。「データを入力する」「計算を実行する」など、具体的なアクションを記述します。サイズは内容に応じて調整しますが、同じレベルの処理は同じサイズに統一することで見やすくなります。
ひし形(判断) は条件分岐を表し、Yes/Noや真/偽などの判断を示します。「在庫は十分か?」「承認済みか?」といった質問形式で記述することが一般的です。ひし形からは通常2本以上の線が出て、それぞれの条件に応じた次のステップへ進みます。
入出力(平行四辺形)は、‘データの入力・出力’や‘レポート出力’などを表します。「顧客情報を読み込む」「レポートを出力する」といった、システムとのデータのやり取りを表現する際に使用します。
角丸四角形(開始/終了) はフローの開始点と終了点を明確にします。通常、フローチャートには一つの開始点と、一つ以上の終了点があります。「開始」「終了」「完了」などのシンプルな文言を使用することが多いです。
補助記号の活用
基本記号以外にも、フローチャートをより詳細に表現するための補助記号があります。
円(コネクタ) はページをまたぐ場合や、離れた位置にある処理を接続する際に使用します。同じ番号や文字を持つコネクタ同士が接続されていることを示します。大規模なフローチャートでは、レイアウトを整理するために重要な役割を果たします。
書類記号(波線の下辺を持つ四角形) は、物理的な書類や帳票を表します。「注文書を作成」「請求書を発行」など、紙の書類が関わるプロセスで使用します。デジタル化が進んでいても、まだ多くの業務で紙の書類は使用されているため、この記号は依然として重要です。
フローチャート作成に便利なアドオンは?
スプレッドシートのフローチャート作成を効率化するアドオンとして、Lucidchart Diagrams、draw.io、Creately などがあり、それぞれ高度な機能と豊富なテンプレートを提供しています。
これらのアドオンを使用することで、より複雑で洗練されたフローチャートを短時間で作成できます。
Lucidchart Diagrams – プロフェッショナル向けツール
Lucidchart Diagramsは、最も人気のあるフローチャート作成アドオンの一つです。Google Workspace Marketplaceから無料でインストールでき、基本機能は無料で利用できます。プロフェッショナルな図表作成に必要な機能が網羅されており、企業での利用実績も豊富です。
このアドオンの最大の特徴は、豊富なテンプレートライブラリです。業務フロー、システム設計、組織図など、様々な用途のテンプレートが用意されており、これらをベースにカスタマイズすることで効率的に作成できます。また、自動レイアウト機能により、図形の配置を自動的に最適化できるため、見やすいフローチャートを簡単に作成できます。
共同編集機能も充実しており、リアルタイムで複数のユーザーが同時に編集できます。コメント機能を使ったフィードバックのやり取りも可能で、チームでの図表作成に適しています。有料版では、より高度な機能や無制限の図表作成が可能になります。
draw.io (diagrams.net) – 無料で高機能
draw.ioは無償で使えるプランがあり、商用ツールに匹敵するような機能を提供するアドオンです。オープンソースプロジェクトとして開発されており、プライバシーを重視する組織にも適しています。
データの保存先:図面ファイルは Google ドライブ(または選択した保存先)に保存され、保存/読み込み時に図面データを draw.io のサーバーへ送信しない設計です。なお、認証やテンプレート取得等の目的で外部通信は発生する場合があります。
豊富な図形ライブラリには、フローチャートだけでなく、UML図、ネットワーク図、電気回路図など、技術文書に必要な様々な記号が含まれています。また、カスタム図形の作成や、SVG形式での画像インポートも可能で、独自のデザイン要素を追加できます。
オフライン利用:Google ドライブに図面を保存して使う場合は、Google Docs Offline 拡張機能で Drive のオフライン編集を有効化すると、接続がない環境でも編集でき、再接続時に Drive を介して同期されます。あるいは draw.io デスクトップ版/PWAを使えばローカル編集が可能です(Drive と連携する場合は再接続後に保存・同期)。
Creately – コラボレーション重視
Createlyは、視覚的なコラボレーションに特化したアドオンです。フローチャート作成だけでなく、ブレインストーミングやプロジェクト計画にも活用できる多目的ツールです。
リアルタイムカーソル機能により、他のユーザーがどこを編集しているかが一目でわかり、効率的な共同作業が可能です。また、ビデオ会議機能も統合されており、図を見ながらディスカッションできます。これにより、リモートワーク環境でも対面と同様の協働が実現します。
AIアシスタント機能(有料版)では、テキストの説明からフローチャートを自動生成することも可能です。「新規顧客の注文処理フロー」といった説明を入力すると、基本的なフローチャートの骨組みを提案してくれます。
見やすいフローチャートを作るデザインのコツは?
見やすいフローチャートを作成するには、一貫性のあるレイアウト、適切な色使い、明確な文言、論理的な流れの4つの要素に注意を払う必要があります。
これらの要素を意識することで、複雑なプロセスも分かりやすく表現できます。
レイアウトと配置の基本原則
フローチャートは基本的に上から下、または左から右に流れるように配置します。開始点は最上部(または最左部)、終了点は最下部(または最右部)に置くと、直感的に理解しやすくなります。
図形間の間隔は一定に保ち、グリッドスナップ機能を活用して整列させます。Googleスプレッドシートの図形描画エディタでは、「表示」→「グリッドにスナップ」を有効にすることで、図形を規則正しく配置できます。標準的な間隔は、図形の高さの50-75%程度が適切です。
階層構造がある場合は、インデントを使って視覚的に表現します。メインフローは中央に配置し、サブプロセスや例外処理は左右に配置することで、主要な流れと補助的な流れを区別できます。
色彩設計と視認性の向上
色は情報を整理し、重要度を示すための強力なツールです。ただし、使いすぎると逆に見づらくなるため、3-4色程度に抑えることが重要です。
基本的な色の使い分けとして、通常のプロセスは青系、判断は黄色やオレンジ系、エラーや例外処理は赤系を使用することが一般的です。開始と終了は緑系で表すこともあります。ただし、組織のブランドカラーがある場合は、それに合わせて調整します。
背景色と文字色のコントラストは十分に確保し、色覚多様性にも配慮します。薄い背景色に濃い文字色を使用し、色だけでなく形や配置でも情報を区別できるようにすることが重要です。印刷時のことも考慮し、グレースケールでも理解できるデザインを心がけます。
テキストの記述方法
フローチャート内のテキストは、簡潔で明確であることが最も重要です。各図形内には、そのステップの本質を表す短い文言を記載します。動詞で始まる能動的な表現を使用し、「〜する」という形式で統一することで、アクションが明確になります。
文字数は極力抑え、1つの図形内に2-3行以内に収めます。詳細な説明が必要な場合は、番号を振って別途説明欄を設けるか、コメント機能を活用します。専門用語は必要最小限に留め、使用する場合は凡例や用語集を添付します。
フォントサイズは、A4印刷時に読みやすい10-12ポイントを基準とし、重要な要素は太字にして強調します。ただし、装飾的なフォントは避け、可読性の高いゴシック体や明朝体を使用します。
複雑なフローチャートの管理テクニックは?
大規模で複雑なフローチャートを管理するには、階層化、モジュール化、バージョン管理の3つのアプローチを組み合わせて、保守性と理解しやすさを両立させます。
適切な管理手法により、フローチャートの品質を長期的に維持できます。
階層化による複雑性の制御
複雑なプロセスを一つの図に詰め込むと、かえって理解しづらくなります。階層化アプローチでは、概要レベルのメインフローと、詳細レベルのサブフローに分けて作成します。
メインフローでは、主要なプロセスのみを5-7個程度に絞って表示し、全体像を把握しやすくします。各プロセスには番号や識別子を付け、対応する詳細フローへのリンクを設定します。Googleスプレッドシートでは、別シートに詳細フローを作成し、ハイパーリンクで接続することができます。
サブフローでは、特定のプロセスを詳細に展開します。サブフロー内でさらに詳細化が必要な場合は、3階層目を作成することもありますが、あまり深くなりすぎないよう注意が必要です。各階層で10個以内の要素に収めることを目安とします。
スイムレーンによる責任の明確化
スイムレーン(水泳レーン)は、フローチャートを横または縦の帯で区切り、各レーンに部署や担当者を割り当てる手法です。これにより、誰がどのプロセスに責任を持つかが一目で分かります。
Googleスプレッドシートでスイムレーンを作成する場合、背景に薄い色の帯を配置し、上部または左側にラベルを付けます。プロセスが部署をまたぐ場合は、コネクタがレーンを横切ることで、部門間の連携を視覚化できます。
スイムレーンは特に、承認プロセスや部門横断的な業務フローの表現に有効です。ただし、レーン数が多くなりすぎると複雑になるため、5-6レーン程度に抑えることが推奨されます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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