• 作成日 : 2025年8月5日

エクセル(Excel)を開くのが遅い!原因と調べ方、軽くする対策を徹底解説

エクセル(Excel)を使っていると、ファイルを開くのに時間がかかったり、計算がなかなか終わらなかったり、セルを移動するだけで固まってしまったりと、動作が重くてイライラした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

この記事では、Excelの動作が遅くなる主な原因から、初心者でもすぐに試せる具体的な対策まで解説します。

Excelが遅くなる主な原因

Excelの動作が重くなる原因は多岐にわたりますが、多くの場合、複数の要因が絡み合っています。ここでは、代表的な原因を詳しく見ていきましょう。

1. 大量のデータと複雑な計算式

Excelのパフォーマンスに大きく影響を与える要素として、データ量や計算式の複雑さが挙げられます。シート内にあまりにも多くのデータが存在すると、それだけでExcelは多くのメモリを消費し、あらゆる処理に時間がかかるようになります。たとえば、何十万行ものデータが入力されたシートは、開くだけでもかなりの時間を要するでしょう。

また、数式の設計も重要な要素です。VLOOKUPやSUMIFSのような参照系の関数を多数使用していたり、あるいは配列数式や揮発性関数(NOW, TODAY, RANDなど、再計算のたびに値が変わる特性を持つ関数)を多用していたりすると、データが少しでも変更されるたびに広範囲で再計算が実行され、その結果、処理が非常に重くなることがあります。複数のシートやブックを参照する数式も、参照先のデータ量や複雑さに比例して、Excelのパフォーマンスに大きな影響を与えます。

さらに、条件付き書式やデータの入力規則といった便利な機能も、設定範囲が広範囲にわたっていたり、非常に複雑な条件が設定されていたりすると、セルの値が変更されるたびに再評価が行われ、動作の遅延につながる原因となります。

2. 書式設定とオブジェクトの過剰な使用

見た目を整えるための書式設定や、グラフ、画像、図形などのオブジェクトも、Excelの動作に影響を与えることがあります。セルの背景色、罫線、フォントの種類やサイズなどを細かく設定しすぎると、その情報がファイルに蓄積されてファイルサイズが肥大化し、シートの表示やスクロールが遅くなることがあります。

特に、実際にデータが入力されていない範囲まで不必要な書式が適用されている「最終行問題」はよく見られる現象で、ユーザーが気づきにくい点ですが、パフォーマンスに大きな悪影響を及ぼします。

また、シート上に多数の図形、画像、グラフが配置されている場合も、Excelはそれらの描画処理に時間を要します。これらのオブジェクトの数が多ければ多いほど、また、それぞれのファイルサイズが大きければ大きいほど、その影響は顕著になります。

特に、Webサイトなどからコピー&ペーストした画像は、圧縮されていない状態で挿入される場合があります。意図せずファイルサイズが大きくなり、動作に影響することもあるので注意が必要です。。

3. 外部参照とアドイン

他のファイルへの参照や、Excelの機能を追加・拡張するアドインも、パフォーマンスに影響を与えることがあります。リンクされた外部のExcelファイルや、Web上のデータ、データベースなどへの参照が多いと、Excelはそれらの参照先のファイルやデータソースの状態を常に確認しようとします。この確認作業に時間がかかるため、シートの更新や計算処理が遅れる原因となります。参照先のファイルが開かれていなかったり、ネットワークの接続が不安定だったりすると、さらにその遅延は顕著になるでしょう。

Excelの機能を拡張するアドインの中には、バックグラウンドで常に動作し、システムリソースを消費するものがあります。特に、古いアドインや、お使いのExcelのバージョンと互換性のないアドインは、Excelの安定性やパフォーマンスを著しく低下させる可能性があります。

4. Excelのバージョンとシステム環境

お使いのExcelのバージョンや、パソコンのスペックも動作速度に影響を及ぼします。最新のExcelは、以前のバージョンに比べて処理速度やメモリ管理が改善されていることが多く、より効率的に動作します。古いバージョンを使用している場合、最新の機能に対応しきれず、動作が遅くなることがあります。

また、パソコンのメモリ(RAM)不足も大きな原因の一つです。Excelは、大量のデータを扱う際に多くのメモリを消費します。パソコンのメモリが不足していると、OSはデータの一部を一時的にハードディスクに書き出す「スワップ」という処理を頻繁に実行し、これがExcel動作の遅延に直結します。さらに、複雑な計算を高速で行うためには、高性能なCPU(中央演算処理装置)が必要です。CPUの処理能力が低い場合、単純な操作でも時間がかかり、快適な作業を妨げることがあります。ストレージの種類も重要です。従来のハードディスクドライブ(HDD)と比較して、ソリッドステートドライブ(SSD)はデータの読み書き速度が格段に速いため、Excelファイルの開閉や保存、データの読み込みなどが高速になり、全体的なパフォーマンスが向上します。

5. ファイルの破損やウイルス感染

稀なケースではありますが、Excelファイルの破損や、ウイルス感染も動作を重くする原因となることがあります。予期せぬシャットダウンやファイル転送中のエラーなどにより、Excelファイルが破損することがあります。破損したファイルは、開くのに時間がかかったり、操作中にエラーが頻繁に発生したりすることがあります。

また、コンピュータウイルスやマルウェアがパソコンに感染している場合、それらがExcelのプロセスに影響を与え、Excelの動作を著しく遅くする原因となることも考えられます。

Excelが遅くなった際の対策

Excelが重いと感じたとき、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、具体的な対策を原因別に詳しく解説します。初心者の方でも実践しやすい方法を中心に紹介しますので、ぜひ試してみてください。

1. データの整理と最適化

データ量が原因でExcelが重くなっている場合は、以下の方法でデータを整理し、シートを最適化することで、パフォーマンスの改善が期待できます。

不要な行・列を削除する

実際にデータが入力されている範囲外の、空白の行や列もExcelは内部的に認識しており、これがファイルサイズや処理速度に影響を与えることがあります。特に、最終行まで書式が適用されてしまっている「最終行問題」は、見た目では気づきにくいですが、パフォーマンスに大きな悪影響を及ぼします。

具体的には、残しておきたいデータがある最終行より下の最初の行見出しを選択し、CtrlキーとShiftキーを押しながらENDキーを押すことで、その行からシートの末尾まですべての行を選択できます。その状態で右クリックして「シートの行の削除」を選択します。同様に、データがある最終列より右の最初の列見出しを選択し、CtrlキーとShiftキーを押しながらENDキーで列の末尾まで選択して「シートの列の削除」を行います。これらの操作後、ファイルを必ず保存し直すことで、ファイルサイズが小さくなり、動作が軽くなることが多いです。

必要最低限の範囲に書式を設定する

セル全体や広範囲にわたって書式設定を適用するのではなく、実際にデータが入力される可能性のある範囲のみに限定して書式を設定することが重要です。条件付き書式やデータの入力規則も同様で、必要最小限の範囲にのみ適用するように見直してください。

2. 計算式の見直しと効率化

複雑な計算式が原因でExcelが重くなっている場合は、以下の方法で計算式を見直したり、より効率的な方法に置き換えたりすることが有効です。

揮発性関数の使用を避ける

NOW, TODAY, RAND, INDIRECT, OFFSETといった関数は、シート上の他のセルの値が変更されるたびに、たとえ自身が直接変更されていなくても再計算が実行されてしまいます。

これにより、シート全体の再計算が頻繁に発生し、処理が重くなる原因となります。可能な限りこれらの関数の使用を避け、代替手段を検討しましょう。たとえば、「OFFSETの代わりに INDEX関数」を、「INDIRECTの代わりにCHOOSE関数を使用する」などです。

配列数式の乱用を避ける

列全体の参照を処理できる配列数式は非常に強力な機能ですが、その分、処理コストが高くなります。もし同じ結果が得られるのであれば、通常の数式やVBAユーザー定義関数を利用することで、全体の計算処理を分散させ、高速化できる場合があります。

参照範囲を限定する

VLOOKUPやSUMIFSなどの関数を使う際、参照範囲を必要以上に広くとると、Excelが検索する範囲が広がり、計算速度が低下します。たとえば、A:Aのように列全体を参照するのではなく、A1:A1000のように具体的な範囲を指定することで、検索範囲が狭まり、計算速度が向上します。

手動計算への切り替え

一時的にExcelの動作を軽くしたい場合は、計算モードを「手動」に切り替えることを検討してください。「ファイル」タブから「オプション」を選択し、「数式」カテゴリにある「計算方法の設定」で「手動」を選択することで、計算が自動的に実行されなくなります。これにより、大規模な計算を行う際にExcelが固まるのを防げます。

計算が必要な場合は、「数式」タブにある「再計算実行」または「シートの再計算」をクリックして手動で計算を実行します。作業が終了したら、必ず「自動」に戻すのを忘れないようにしましょう。

3. オブジェクトの最適化と管理

グラフ、画像、図形などのオブジェクトが原因でExcelが重くなっている場合は、以下の方法で最適化を図りましょう。

不要なオブジェクトの削除

シート上に不要な図形、画像、グラフ、テキストボックスなどがあれば、それらを削除することでファイルサイズが小さくなり、描画処理の負荷が軽減されます。

画像の圧縮

挿入されている画像のファイルサイズが大きい場合、Excelの画像圧縮機能を活用しましょう。圧縮したい画像を選択すると、「図の書式設定」タブが表示されます。その中の「調整」グループ「画像の圧縮」をクリックし、ダイアログボックスで適用範囲や解像度を選択して「OK」をクリックします。特に、Webページ用など、解像度を低くしても問題ない場合は、積極的にこの機能を利用してファイルサイズを小さくすることをおすすめします。

オブジェクトの数を減らす

複数のグラフを一つにまとめる、あるいは表を図形ではなくセルで表現するなど、オブジェクトの数を減らす工夫をすることも有効です。オブジェクトが多ければ多いほど、Excelの描画処理に時間がかかり、動作が重くなる傾向があります。

4. 外部参照とアドインの見直し

外部参照やアドインがExcelのパフォーマンスに影響を与えている場合は、以下の方法で見直しを行いましょう。

外部参照の削除または固定化

不要な外部参照は削除することが重要です。他のExcelファイルへのリンクや、Web上のデータへの参照など、現在使われていないリンクがあれば、それらを解除することで、Excelが外部データを確認する手間が省け、処理がスムーズになります。

もし必要な外部参照であっても、頻繁に更新されないデータであれば、参照先の値をコピーして値貼り付けを行うことで、参照を固定化できます。「データ」タブの「クエリと接続」グループにある「ブックのリンクの編集」から、不要なリンクを解除したり、リンクを値に変換したりできます。

不要なアドインの無効化

Excelの機能を拡張するアドインの中には、バックグラウンドで常に動作し、システムリソースを消費するものがあります。

使用していないアドインを無効にすることで、Excelの起動時間や動作速度が改善されることがあります。「ファイル」タブから「アドイン」カテゴリに進みます。「その他のアドイン」」から「Office アドイン」ダイアログへ進み、「マイ アドイン」タブをクリックすると、インストールされているアドインの一覧が表示されます。ここで不要なアドインのチェックを外し、「OK」をクリックすることで無効化できます。

5. Excelのバージョンとシステム環境の改善

Excelのバージョンやパソコンのスペックが原因で動作が重いと感じる場合は、以下の対策を検討することをおすすめします。

Excelの最新バージョンへの更新

可能であれば、Excelを最新のバージョンに更新しましょう。新しいバージョンでは、Microsoftが継続的にパフォーマンスの改善やメモリ管理の最適化を行っているため、古いバージョンに比べてより効率的に動作することが期待できます。

PCのメモリ増設

Excelで大規模なデータを頻繁に扱う機会が多い場合は、パソコンのメモリ(RAM)を増設することを検討してみましょう。メモリが増えることで、Excelがより多くのデータをメモリ上に保持できるようになり、一時的にハードディスクにデータを書き出す「スワップ」の回数が減るため、処理速度が大きく向上します。

SSDへの換装

パソコンのストレージが従来のハードディスクドライブ(HDD)の場合は、ソリッドステートドライブ(SSD)への換装も非常に有効な対策です。SSDはHDDに比べてデータの読み書き速度が圧倒的に速いため、Excelファイルの開閉や保存、データの読み込みなどが劇的に高速化され、全体的な快適性が向上します。

不要なアプリケーションの終了

Excelを使用する際は、同時に起動している他の不要なアプリケーションを終了させる習慣をつけましょう。これにより、Excelに割り当てられるシステムリソースが増え、よりスムーズに動作することが期待できます。

PCの再起動

長時間パソコンを起動し続けていると、一部のリソースが蓄積されて処理速度に影響することがあります。再起動によって、処理速度が一時的に改善することはあります。ただし、Excelの動作を安定させるには、不要なアプリの終了やバックグラウンド処理の見直しも効果的です。

6. ファイルの修復とセキュリティ対策

稀なケースではありますが、Excelファイルの破損や、ウイルス感染が動作を重くしている可能性も考慮する必要があります。

ファイルの修復

もし、特定のファイルだけが異常に重い、あるいは開くのに時間がかかるなどの症状がある場合は、ファイルが破損している可能性も考えられます。その際は、Excelの「開いて修復」機能を使用してみましょう。

「ファイル」タブをクリックし、「開く」を選択します。ファイルを選択するダイアログボックスで、開きたいファイルをクリックした後、「開く」ボタンの右にある小さな矢印をクリックし、「開いて修復」を選択します。これにより、Excelがファイルの修復をを試み、可能な限りデータを復元しようとします。

ウイルススキャン

パソコンの動作全体が遅い、不審なポップアップが表示されるなどの症状がある場合は、コンピュータウイルスやマルウェアに感染している可能性も考えられます。

お使いのウイルス対策ソフトでPC全体をスキャンし、ウイルスやマルウェアが検出されないか確認することをおすすめします。定期的なウイルススキャンは、セキュリティ対策だけでなく、パソコンのパフォーマンス維持にもつながります。

普段から心がけたいExcelファイル作成のベストプラクティス

Excelの動作が重くなってから対策を講じるよりも、最初から重くならないようなファイル作成を心がけることが、最も効率的でストレスのない方法です。ここでは、普段から実践できるベストプラクティスを紹介します。

シートの役割を明確にする

一つのシートに多くの役割を持たせるのではなく、データ入力用シート、計算用シート、集計用シート、グラフ表示用シートなど、用途別にシートを分けることで、ファイルの構成が分かりやすくなるだけでなく、それぞれのシートで処理されるデータ量が分散され、全体のパフォーマンス向上につながります。

範囲を限定した数式

前述の通り、数式を作成する際には、列全体や行全体を参照するのではなく、実際にデータが存在する、または今後データが追加されるであろう最小限の範囲を指定しましょう。これにより、無駄な計算を防ぎ、処理速度を向上させられます。

必要なデータのみを保持する

もう使わない古いデータや、すでに集計が終わった不要なデータは、別のファイルにアーカイブするか、思い切って削除することを検討しましょう。ファイルサイズが小さくなることで、開閉や保存の速度が向上します。

定期的なバックアップと最適化

重要なファイルは定期的にバックアップを取り、古いバージョンや不要なデータを削除してファイルサイズを最適化する習慣をつけましょう。

セルの結合を避ける

セルの結合は見た目を整えるのに便利ですが、データの並べ替えやフィルタリング、数式での参照を複雑にし、パフォーマンスに悪影響を与えることがあります。できる限りセルの結合を避け、代わりに「選択範囲内で中央」などの書式設定を活用することで、同様の視覚効果を得ながら、データの扱いやすさを維持できます。

重複した条件付き書式の確認

同じ範囲に複数の条件付き書式が設定されている場合、それぞれが再評価されるため処理が重くなることがあります。
「ホーム」タブの「条件付き書式設定」グループから「ルールの管理」を選択し「不要なルールや重複しているルールがないかを確認し、整理しましょう。

Excelの動作が重い原因を対策し、快適に使おう

Excelの動作が重くなる原因は、データ量の増加や複雑な計算式、不要な書式設定や外部参照、パソコンのスペック不足など多岐にわたります。原因を正しく把握し、ファイル構造の見直しやアドインの整理、ハードウェアの最適化などを行うことで、処理速度の改善が期待できます。普段から軽量で効率的なファイルづくりを意識し、Excelを快適に活用しましょう。


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