- 作成日 : 2025年7月9日
サーバー共有の方法は?NAS・クラウド・ファイルサーバーの違いと選び方
社内のファイル共有は、NAS、ファイルサーバー、クラウドなど、選択肢が多く「自社にはどれが最適か分からない」という声も少なくありません。
本記事では、サーバー共有の基本から、代表的な共有方法(NAS・ファイルサーバー・クラウド)の違い、それぞれのメリット・注意点までをわかりやすく解説します。社内のデータを安全かつ効率よく共有する方法を検討している方に向けて、リモートワーク対応やセキュリティ対策、トラブル時の対応などもあわせて紹介しています。
目次
サーバーの共有とは?
サーバーの共有とは、社内やグループ内でファイルやデータをネットワーク経由で管理・共有できる仕組みです。パソコン同士を直接つなぐ必要がなく、サーバーにアクセスすることで、誰でも同じファイルにアクセスできます。
これにより、データの一元管理が可能になり、ファイルのやりとりがスムーズになります。例えば、資料をメールで何度もやりとりする必要がなくなり、常に最新版のファイルを全員が確認できるため、業務の重複や混乱を防ぐことができます。
また、個人のパソコンにファイルを保存しなくても済むため、端末の容量不足を気にせず作業できるのも利点です。ファイルはすべてサーバーに集約されているので、バックアップも取りやすく、紛失のリスクも減らせます。
サーバーの共有方法とファイル共有の種類
サーバーの共有を使えば、社内や拠点間でのファイル共有が効率よく行えます。共有方法は、社内ネットワークを使う方法とインターネット経由の方法に大きく分かれます。
パソコンの共有フォルダを使う
Windows 10や11には標準のファイル共有機能があります。特別なソフトは不要で、同一ネットワーク内ならすぐ使えます。
操作は、フォルダを右クリック →「プロパティ」→「共有」でユーザーを設定。アクセス時は コンピュータ名フォルダ名 と入力します。
設定は簡単ですが、パソコンの電源が切れていると使えず、ユーザーが増えると管理が煩雑になります。また、同一ネットワーク前提のためリモートワークには不向きです。
専用のファイルサーバーを構築する
社内ネットワーク内に専用のファイルサーバーを設置することで、安定したファイル共有が可能になります。サーバー機には Windows Server や Linux(Samba)などを使用し、アクセス権限をユーザーごとに細かく設定でき、操作履歴の記録など、高度な管理が行えます。
この方法の強みは、セキュリティや管理機能を自社に合わせて柔軟に構築できる点です。また、サーバーは常時稼働が前提なので、誰かのパソコンの電源オンオフに関わらずアクセスできる点も大きなメリットです。社内の情報共有量が多い企業にとっては、もっとも安定した方法といえるでしょう。
ただし、次のような点に注意が必要です。
- ITの専門知識を持つ担当者が必要
- サーバー機器の導入コストがかかる
- 定期的な点検やソフトウェアのアップデートが必要
- 停電や災害時に備えたバックアップ体制を自社で整える必要がある
- 容量や機能を拡張する場合は、ハードディスクの増設や設定変更が必要
ファイルサーバーは高い自由度が魅力ですが、そのぶん運用の責任も発生します。社内にIT担当者がいる、または外部のサポート会社と契約している場合におすすめの方法です。
NASで共有する
NAS(ネットワーク対応HDD)は、コンセントとLANケーブルでつなぐだけで使える手軽な共有方法です。WindowsやMacなど複数のOSからアクセスでき、特別な知識がなくても設定画面から共有フォルダを作成できます。価格も比較的安価で、予算を抑えたい場合に適しています。
BUFFALOやSynology、QNAPなどの製品があり、市販されているNASを社内に設置するだけで、複数のパソコンからファイルを共有できます。
ストレージ容量の拡張やRAID構成でのデータ保護にも対応しています。
ただし、NASにもリスクがあります。
- 機器自体が壊れると全データにアクセスできなくなる
- RAID構成でも同時に複数のHDDが故障するとデータが消失する可能性がある
- データ復旧には専門業者が必要になる場合がある
- ファームウェアの更新は自分で行う必要がある
- セキュリティ設定(特にリモートアクセス時)を誤ると、不正アクセスの原因になる
外部からアクセスする際にはVPNや2段階認証の導入を推奨します。
クラウドストレージで共有する
クラウドストレージは、インターネット上にファイルを保存し、場所や端末を問わずアクセスできる共有方法です。代表的なサービスには、Google Drive、Microsoft OneDrive、Dropbox、Boxなどがあります。
これらのサービスを使えば、オフィスでも自宅でも、スマートフォンやタブレットからでも、同じファイルにアクセスできます。導入も短時間で完了するため、リモートワークや在宅勤務との相性が良く、多くの企業が導入を進めています。
クラウドストレージは、インターネットさえあればどこからでも使え、PC・スマートフォン・タブレットなど端末を問わずアクセスできます。自動でファイルを同期・バックアップでき、社内での共同編集にも対応しているため、リモートワークにも適しています。
ただし、使いやすい反面、社内ルールがなければ「個人アカウントでの共有」などのシャドーITが発生しやすく、情報漏えいのリスクが高まります。
リスクを避けるには、以下の対策が有効です:
- 法人向けクラウドの利用と管理者によるアクセス制御
- 利用可能なサービスの明示と社内教育
- 利用ルールの明文化と周知
- 利用状況のログを定期的に確認
クラウドは便利な反面、「誰が何を共有しているか」を見える化し、しっかり管理することが前提です。
リモートワークでのサーバー共有
働き方が多様化する中、リモートワークでも安全かつ快適にファイルをやりとりするためには、サーバーの共有環境を外部からも利用できるように整備する必要があります。ここでは、自宅や外出先などオフィス外からでもサーバー共有を活用する方法を紹介します。
VPNで社内サーバーに安全にアクセスする
リモート環境で社内のサーバーにアクセスするには、VPN(仮想プライベートネットワーク)を使う方法が一般的です。VPNを使うことで、自宅のパソコンでも社内ネットワークに接続したのと同じような環境が再現され、社内サーバーの共有フォルダに直接アクセスできます。
VPNによるサーバー共有のメリットは次の通りです。
- 社内にいるときと同じフォルダ構成にアクセスできる
- 特別なアプリを使わず、WindowsのエクスプローラーやMacのFinderから利用できる
- 通信が暗号化されるため、第三者にデータを盗み見られにくい
ただし、VPNの導入には専門知識が必要です。設定や管理を誤ると、かえってセキュリティが弱くなる場合もあるため、導入前に十分な準備が必要です。また、大容量ファイルのやり取りでは通信が遅くなることもあるため、利用環境に応じた回線や機器の見直しも検討しましょう。
クラウド型サービスとサーバー共有を併用する
VPNの代わりに、クラウドストレージを使ってファイルをやり取りする方法もあります。Google DriveやOneDriveなどを使えば、インターネット環境さえあれば、どこからでもアクセスできます。
このときも「自社サーバーで一元管理するべきファイル」と「クラウドで一時的に共有するファイル」を切り分けることで、安全性と利便性を両立できます。
例えば、以下のような運用が効果的です。
- 社内の基幹データは社内サーバーで管理(VPN経由でアクセス)
- 外部との共有が必要な一時ファイルや大容量データはクラウド経由でやりとり
- クラウド利用は会社指定のサービスに限定し、シャドーITを防止
クラウドは便利な反面、社内ルールを定めずに運用するとセキュリティリスクにつながります。必ず管理者が利用状況を把握し、ログ管理やアクセス制限を行う仕組みを用意しておくことが求められます。
サーバー共有のセキュリティ対策
ファイル共有は便利ですが、セキュリティ対策を怠ると、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まります。ここでは、サーバー共有を安全に運用するために押さえておくべき基本的な対策を紹介します。
アクセス権限を細かく設定する
共有フォルダごとに、誰が「閲覧だけ」「編集も可能」などの操作をできるかを決めることで、不要な操作や誤操作を防げます。
プロジェクト単位や部署単位で権限を割り振ると、実際の業務に即した制御がしやすくなります。
「最小限のアクセス権にとどめる」という考え方も重要です。例えば、社内全員が使う共有フォルダであっても、関係のない部署には閲覧権限のみとすることで、情報の持ち出しや改ざんのリスクを減らせます。
また、アクセス権限は一度設定して終わりではなく、人事異動やプロジェクトの終了に応じて定期的に見直すことが大切です。権限が残ったままの「不要アカウント」は、セキュリティの抜け穴になりやすいです。
強固なパスワードと多要素認証を導入する
簡単に推測されるパスワードや、使い回しは危険です。以下のようなルールを設けると安全性が高まります。
- 英数字と記号を組み合わせた10文字以上のパスワードを使用する
- 社員に対してパスワード管理ソフトの利用を推奨する
- 業務用アカウントには個人用とは異なるパスワードを設定する
さらに、多要素認証(MFA)を導入すれば、ID・パスワードだけでは突破されない仕組みになります。スマートフォンの認証アプリや、メール認証、物理キーなどの組み合わせが効果的です。
面倒に感じる対策ですが、「なぜ必要なのか」を丁寧に説明し、社内の理解を得ることで、形だけのルールにせず実効性ある対策として運用できます。
ファイルの暗号化とアクセスログの管理
ファイルを暗号化しておけば、万が一流出しても第三者に内容を読まれる心配がなくなります。特に機密情報や個人情報を扱う場合は必須です。OSの標準機能やサードパーティ製のソフトでも対応可能です。
また、アクセスログを記録すれば、「誰が」「いつ」「どのファイルに」アクセスしたかを把握できます。Windows Serverでは「監査ポリシー」を設定することで操作履歴を自動記録できます。
不正アクセスや内部不正が起きたときも、ログが残っていれば、原因調査や再発防止策に役立ちます。
ファイアウォールとウイルス対策を併用する
ファイアウォールは、外部ネットワークとの通信を監視し、不正なアクセスをブロックします。社内に導入しているルーターやOSに標準で搭載されていますが、適切に設定されていないと意味がありません。
ウイルス対策ソフトも必ず導入し、社内ネットワークに接続されているすべての端末を保護する必要があります。USBメモリの使用を制限したり、メール添付ファイルの自動スキャンを設定するなど、ルール作りも重要です。
大規模な組織や複数のセキュリティ機能をまとめて管理したい場合は、UTM(統合脅威管理)の導入も選択肢になります。
サーバー共有にアクセスできない時の解決策
サーバーの共有を使っていて「突然アクセスできなくなった」「他の人は使えているのに自分だけ接続できない」といったトラブルは珍しくありません。
ここでは、よくある原因とその確認方法・対処法を紹介します。
ネットワーク接続を確認する
まずはパソコンが社内ネットワークまたはVPNに正しく接続されているか確認します。特にWi-Fi環境の場合は、一時的な接続切れやルーターの不調も疑われます。
また、アクセスできないのが自分だけか、他の社員も同様かを確認することで、サーバー側の問題かクライアント側の問題かを切り分けやすくなります。
共有設定やアクセス権を見直す
自分のパソコンで共有先が見えない場合、Windowsの「ネットワーク探索」や「ファイルとプリンターの共有」が無効になっている可能性があります。設定画面から以下を確認しましょう。
- 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「ネットワークの詳細設定」→「共有の詳細設定」で、ネットワーク探索とファイル共有が有効になっているか確認
- ネットワークプロファイルが「パブリック」になっている場合、「プライベート」に変更
また、フォルダのアクセス権が変更された可能性もあります。共有フォルダの「プロパティ」→「共有」または「セキュリティ」タブから、アクセス権限の再確認を行います。
ファイアウォールやウイルス対策ソフトの影響を確認する
セキュリティソフトが共有通信を「不正アクセス」と誤認し、通信をブロックすることがあります。外部製のウイルス対策ソフトを使用している場合、ファイル共有を許可する設定が有効になっているかを確認しましょう。
一時的にファイアウォールを無効化して接続できるか確認し、原因がセキュリティ設定にあるかどうかを切り分ける方法もあります。
サーバー本体やNASの状態を確認する
ファイルサーバーやNASの電源が入っているか、ネットワークに正常に接続されているかを確認します。再起動することで解消するケースも多いため、一度シャットダウンと再起動を試してみるのも有効です。
また、NASの機器本体にエラーランプが点灯している場合や、ファンの異常音がある場合は、ハードウェアの故障の可能性も考えられます。
エラーメッセージと対処のマニュアル化
Windowsの場合、共有フォルダにアクセスできないときには「ネットワークパスが見つかりません」「アクセスが拒否されました」などのメッセージが表示されます。これらのメッセージを記録して、社内のIT担当者に伝えることで、問題の特定がスムーズになります。
また、よくある原因と対処法をマニュアル化しておけば、ユーザー自身が基本的なチェックを行えるようになり、トラブル対応の時間短縮にもつながります。
中小企業と大企業のサーバー共有の最適な選び方
中小企業と大企業では、予算やITリソース、求める機能、セキュリティの考え方が異なるため、それぞれに合った運用方法を選ぶことが大切です。
中小企業向けのサーバー共有の方法
中小企業では、コストと手軽さが重視されます。NAS(ネットワークHDD)は導入が簡単で費用も抑えられますが、故障時の対応やリモートアクセスの設定は自社で行う必要があります。
クラウドストレージは初期費用がなく、月額制で始めやすいため、中小企業にとってより良い選択肢でしょう。セキュリティやメンテナンスをサービス側が行うため、IT担当者が少なくても安定して運用できます。
大企業向けのサーバー共有の方法
大企業では、セキュリティと柔軟な管理機能が重視されます。オンプレミス型のファイルサーバーは、自社のセキュリティポリシーに沿って細かく制御でき、情報管理が厳格な組織に適しています。
また、法人向けクラウドストレージも有効です。多要素認証や暗号化機能があり、大量のデータや多数のユーザーにも対応可能です。拡張性に優れており、変化に強い共有環境が作れます。
企業規模にかかわらず、サーバー共有において共通して大切なのは、次の3点です。
- アクセス権限の適切な設定
- 定期的なセキュリティの見直し
- 万が一に備えたバックアップの実施
導入のしやすさと運用後の管理負担、そしてセキュリティ対策のバランスを見ながら、最適な共有方法を選びましょう。
サーバーの共有は使いやすさと安全性のバランスが大切
サーバーの共有は、ファイル管理を効率化し、社内外でのスムーズな情報共有を可能にします。Windowsの共有フォルダ、NAS、ファイルサーバー、クラウドストレージなど、用途や規模に応じた選択が必要です。
中小企業はコストと手軽さを、大企業は高度な管理とセキュリティを重視する傾向がありますが、どの環境でも「アクセス権の管理・バックアップ・セキュリティ対策」の3点は欠かせません。
自社の働き方に合った方法で、使いやすく、安全なサーバー共有環境を整えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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