- 更新日 : 2025年11月25日
ワークフローシステムの選び方|比較ポイント7選と費用相場、注意点
ワークフローシステムは、申請・承認・決裁などの業務プロセスを電子化し、業務の滞留防止や内部統制の強化に役立つ重要なツールです。しかし、機能や操作性、導入方式は製品ごとに大きく異なるため、自社に最適なシステムを選ぶにはポイントを押さえた比較が大切です。
当記事では、主要な機能の基礎知識から、企業規模や目的に応じた選び方、費用相場、導入までの流れ、注意点までを体系的に解説します。
目次
ワークフローシステムとは?
ワークフローシステムとは、社内で行われる申請・承認・決裁などの一連の業務プロセスを電子化し、効率的に管理するための仕組みです。紙やExcel、メールによる運用では、承認の遅延や対応漏れが起きやすく、プロセスの可視化も困難でした。
ワークフローシステムを導入すると、申請内容の標準化、進捗のリアルタイム把握、承認の自動通知などが可能になり、業務のスピードと品質が向上します。経費精算、勤怠管理、稟議など幅広い業務に適用でき、企業全体の生産性向上と内部統制の強化に貢献します。
ワークフローシステムの主な機能
ワークフローシステムには、申請・承認業務を正確かつ効率的に処理するための多面的な機能が備わっています。
| 申請フォーム作成機能 | 入力必須設定や選択肢制御などにより、記載漏れや誤入力を防ぎ、申請内容の品質を均一化できます。 |
|---|---|
| 承認フロー設定機能 | 金額基準・申請区分・部署などに応じた条件分岐や、並列承認・代理承認・自動スキップなど複雑なルート設計が可能です。これにより、承認プロセスの滞留を防止し、業務全体の処理速度を向上させます。 |
| 履歴管理・検索機能 | すべての申請・承認履歴を自動記録し、ステータス・申請者・期間などで検索できます。進捗状況の確認が容易になり、監査や内部統制の際の証跡としても活用できます。 |
| 権限管理機能 | ユーザー・部署・ロール単位で閲覧範囲や操作権限を細かく制御できます。機密性の高い文書へのアクセスを限定でき、不正閲覧や誤操作を防止する上で大切な役割を果たします。 |
| 外部システムとの連携機能 | 経費精算ツール、勤怠管理システム、チャットツール(Teams・Slack)などとデータ連携が可能です。申請データの自動反映や通知の自動化により、業務全体のシームレスな運用を実現します。 |
ワークフローシステムの選び方【7つの比較ポイント】
ワークフローシステムは、機能や運用方式によって適性が大きく異なります。企業規模・目的・使いやすさ・セキュリティ・サポート体制まで幅広く比較し、自社に最適なシステムを選びましょう。ここでは、ワークフローシステムの選び方を紹介します。
企業規模との適合性
ワークフローシステムは、企業規模に合わせて最適な選択が変わります。中小企業であれば、導入負荷が少なくスモールスタートできるクラウド型が向いており、初期コストを抑えつつ必要な範囲から利用を開始できます。一方、社員数が多い大企業は、部門ごとに承認ルールが異なり、複雑なフローが発生しやすいため、高度なカスタマイズ性を備えた製品が適しています。
ユーザー数増加時のライセンスモデルや拠点追加時の拡張性も大切な比較ポイントです。企業規模に応じた柔軟性や処理性能を持ったシステムを選ぶことで、長期的な運用負担を減らせます。
導入目的を満たせる機能の網羅性
ワークフローシステムは、導入目的に合わせて必要な機能が異なるため、目的と機能の一致が重要です。たとえば、「承認の滞留を解消したい」場合は通知機能やモバイル承認が必須となり、「申請書の標準化」が目的ならフォーム作成の柔軟性や入力制御機能が欠かせません。
経費精算や勤怠管理など複数の業務を統合したい場合は、テンプレートの豊富さや他業務モジュールとの連携性がポイントになります。単に機能数が多いだけではなく、自社の課題を確実に解決できる機能が揃っているか、優先度に基づいて評価しましょう。
既存システムとの連携性
ワークフローシステムは単体で使うだけではなく、会計、勤怠管理、SaaS、基幹システムなどとの連携が求められるケースが多くあります。CSV連携に加え、APIやWebhookなどでリアルタイムにデータ連携できるかは、業務効率に大きく影響します。ユーザー情報を人事システムから自動同期できれば、異動時の更新作業も軽減可能です。
さらに、チャットツール(TeamsやSlack)との通知連携、スプレッドシートへの自動書き込みなどの機能があると、運用の自動化が進みます。導入前に「どこまで連携できるか」を必ず確認しましょう。
操作性(UIの分かりやすさ)
操作性は定着率に直結するため、システム選定で重視すべきポイントです。申請者、承認者、管理者のいずれにとっても直感的に操作できるUIであるかが重要です。画面遷移が複雑であったり、入力項目が見づらいと、申請ミスや承認の滞留が発生しやすくなります。モバイル利用が多い企業は、スマホ画面でも見やすく操作しやすいデザインかを確認する必要があります。
また、管理者がフローやフォームを容易に作成できるかどうかも大切で、ノーコードで設定できる製品は運用負担を大幅に減らします。実際の操作画面をデモで確認することが効果的です。
フロー設定の柔軟性
企業の承認ルールは多岐にわたるため、フロー設定の柔軟性は不可欠です。金額基準、部署、申請内容、雇用区分などに応じた条件分岐が設定できるか、並列承認・代理承認・自動スキップなどの高度なフローに対応しているかを確認すべきです。
また、組織変更や人事異動が頻繁な企業では、管理者が自社でフローを編集できるかが運用効率に直結します。視覚的なフローデザイナーを備えた製品であれば、専門知識がなくても迅速に設定変更でき、属人化を防ぎやすい点がメリットです。
セキュリティレベル
申請書には個人情報や機密情報が含まれるため、セキュリティは最も重要な項目です。通信の暗号化、データのバックアップ、多要素認証、IP制限などが標準で備わっているか確認しましょう。さらに、ISO27001・SOC2などの国際規格に準拠している場合はセキュリティレベルが高く、企業として安心して運用できます。
アクセス権限を細かく設定できるか、操作ログを完全に記録できるかといったポイントも内部統制に直結します。クラウド型の場合はベンダー側のセキュリティ運用体制も必ず確認すべきです。
サポート体制の充実度
サポート体制も、スムーズな運用のために欠かせない比較ポイントです。導入時の初期設定支援、操作レクチャー、フロー設計の相談など、どこまで対応してくれるかを確認しましょう。
また、運用開始後に問い合わせをしやすいかどうか、回答速度が速いかどうか、専任の担当者がつくかどうかなども重要です。FAQ・ヘルプページ・操作マニュアルが充実しているか、チャットサポートや問い合わせ窓口の時間帯なども評価基準になります。サポートが手厚いサービスほど定着がスムーズで、トラブル発生時も安心です。
ワークフローシステムの費用相場
ワークフローシステムの費用は、導入方式(クラウド型かオンプレミス型)によって大きく異なります。ここでは、ワークフローシステムの費用相場を紹介します。
クラウド型の料金体系
クラウド型ワークフローシステムは、月額課金制が一般的で、1ユーザーあたり数百円~1,500円前後の価格帯が多い傾向があります。初期費用は無料または数万円程度に抑えられることが多く、サーバー構築・保守コストが不要なため、小規模企業や部署単位での導入にも適しています。
また、利用ユーザー数や必要な機能を後から柔軟に追加できる点も特徴です。アップデートやセキュリティ対策はベンダー側で自動実施されるため、運用負荷を最小限にしながら利用できる料金体系と言えます。
オンプレミス型の料金体系
オンプレミス型は、自社サーバーにシステムを構築するため、初期投資が高額になりやすい方式です。ライセンス費用は数十万~数百万円程度となるケースが多く、加えてサーバーやネットワーク機器の費用、構築作業費、保守契約費などが発生します。年間の保守費用はライセンス費の15~20%程度が一般的です。
また、カスタマイズ要件が多い場合は追加開発費が必要となり、運用コストがさらに増加します。高い自由度とセキュリティ要件を求める大規模組織に向いた料金体系です。
初期費用と月額費用の目安
クラウド型の初期費用は0~10万円程度、月額は従量課金またはユーザー課金が一般的で、数千円~数十万円まで利用規模で幅があります。一方オンプレミス型は、初期構築費として数百万円~1,000万円超になる場合もあり、月額ではなく年間保守費として一定額が発生する構造が中心です。
クラウドは導入しやすさと運用負荷の低さ、オンプレミスは自由度とデータ管理面での優位性が特徴のため、自社の予算・運用体制・セキュリティ要件を踏まえて費用構造を比較しましょう。
ワークフローシステム導入の基本的な流れ
ワークフローシステムの導入は、目的整理から要件定義、製品比較、環境構築、社内定着まで段階的に進めることで、スムーズな運用開始と失敗防止につながります。
導入目的と課題の明確化
導入を成功させるには、まず「何を改善したいのか」を明確にすることが不可欠です。紙やExcelによる申請の滞留、承認プロセスの属人化、ミスの多発、内部統制の不備など、現場で発生している課題を洗い出します。
さらに、導入目的を「承認速度の向上」「監査対応の強化」「リモートワーク対応」など具体的に設定することで、後の要件定義や製品比較が行いやすくなります。目的が曖昧なまま製品を選ぶと、期待した効果が得られにくいため、最初のステップとして特に大切です。
必要な機能と要件の定義
現場で求められるフローや承認ルールを整理し、必要な機能を具体化します。たとえば「条件分岐が必要」「モバイル承認を必須とする」「外部システムと連携したい」など、運用シーンを踏まえた要件設定が必要です。
また、セキュリティ要件、ユーザー数、データ保存ポリシー、運用体制などの非機能要件もまとめます。これにより、複数製品の比較を行った際に、必要な機能が過不足なく搭載されているかを評価しやすくなり、導入後のミスマッチを防ぎます。
製品の比較・選定とトライアル
要件が整理できたら、複数のワークフローシステムを比較し、自社に最適な製品を選びます。クラウド型かオンプレミス型か、機能の柔軟性、操作性、連携性、セキュリティ、コストなどを総合的に評価しましょう。
多くの製品は無料トライアルを提供しているため、実際の画面操作や使用感、承認フローの作成しやすさを確認しましょう。現場担当者にも試用してもらい、定着のしやすさや業務適合性を検証することが、導入後の失敗を防ぐポイントになります。
導入(環境構築とフロー設定)
製品が決まったら、アカウント作成や権限設定などの環境構築を行い、実際に承認フローをシステム内に設定します。クラウド型の場合は、初期設定が数日で完了することも多く、テンプレートを利用すれば短期間で主要フローを構築できます。
条件分岐や並列承認を含む複雑なフローがある場合は、業務部門とIT部門が連携してルールを正確に反映させましょう。設定後はテスト運用を実施し、想定どおりの動作や通知の正確性を確認します。
社内への周知と運用開始
システム導入後は、利用者への周知・研修を行います。マニュアル配布、操作説明会、動画チュートリアルなどを活用し、申請者・承認者それぞれが迷わず利用できる状態を作ります。運用開始後は、問い合わせ窓口の設置やFAQ整備などを行い、スムーズな定着をサポートします。
また、実際の運用状況を定期的に確認し、フローの改善や不要ステップの見直しを行うことで、より効率的な運用が可能になります。
ワークフローシステム導入時の注意点
ワークフローシステムを効果的に運用するためには、事前の業務整理から現場の使いやすさ、導入範囲の適切な設計、運用体制の明確化までを総合的に検討しましょう。ここでは、ワークフローシステム導入時の注意点をいくつか紹介します。
既存の業務フローをすべて洗い出しておく
導入前に現状の申請・承認プロセスを詳細に把握し、どこで滞留が発生しているか、どの手順が属人化しているかを明確にする必要があります。業務フローの全体像を整理することで、どの部分を自動化すべきかが判断しやすくなり、不要なステップの削減や重複作業の解消にもつながります。正確な業務洗い出しは、要件定義やフロー設定の質を大きく左右するため、導入準備に必須な工程です。
現場の担当者が使いやすいかを重視する
ワークフローシステムは、申請者・承認者・管理者など多くのユーザーが日常的に利用するため、「使いやすさ」は定着率を左右します。操作が複雑だったり、画面が見づらかったりすると、申請ミスや承認遅延の原因になります。実際の操作画面を必ずデモやトライアルで確認し、現場メンバーのフィードバックを反映することが欠かせません。直感的なUIとモバイル対応も評価ポイントになります。
スモールスタートで段階的に導入する
最初から全社に一気に展開すると、想定外の運用負荷や設定ミスが発生するリスクがあります。そのため、まずは利用頻度が高い申請書や特定部署で運用を開始し、問題点や改善ポイントを洗い出した上で対象範囲を広げる方法が効果的です。スモールスタートにより、ユーザー教育やフロー調整を無理なく進められ、安定した運用基盤を構築しやすくなります。
導入後の運用・メンテナンス体制を決めておく
ワークフローシステムは導入して終わりではなく、組織変更や業務ルールの見直しに合わせてフローを更新し続ける必要があります。担当者を明確にしておくことで、承認者変更、権限管理、設定修正などを適切に行えます。
また、問い合わせ対応窓口やマニュアル整備を行うことで、利用者の定着が促進されます。クラウド型の場合はベンダーのアップデート情報も確認し、継続的な運用改善につなげましょう。
ワークフローシステムで業務効率化を一気に進めよう
ワークフローシステムは、申請・承認・決裁といった社内プロセスを電子化し、業務の標準化と可視化を実現する仕組みです。申請フォーム作成、承認フロー構築、履歴管理、権限設定、外部ツール連携などの機能を備え、紙やメール運用で発生しがちな滞留やミスを防ぎます。
製品選定では、企業規模との適合性、目的を満たす機能、操作性、セキュリティ、連携性、サポート体制が重要です。また、導入時は業務整理、現場の使いやすさ、スモールスタート、運用体制の整備が成功のポイントになります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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