• 作成日 : 2025年10月27日

スプレッドシートの承認機能とは?ワークフロー構築と承認プロセスの自動化方法

スプレッドシートで承認機能を実装することで、申請から承認までのワークフローを効率的に管理できます。本記事では、Googleスプレッドシートを使った承認システムの構築方法から、承認フローの設計、Google Apps Script(GAS)による高度な自動化まで詳しく解説します。エクセルとの違いや、承認プロセスの可視化により業務効率を大幅に改善する方法を紹介します。

目次

スプレッドシートの承認機能とは何か?

スプレッドシートの承認機能とは、申請データの確認・承認・却下を体系的に管理する仕組みのことです。 Googleスプレッドシートでは標準機能に加えて、カスタマイズによって柔軟な承認ワークフローを構築できます。

承認機能の基本的な仕組みと構成要素

スプレッドシートでの承認システムは、主に4つの要素で構成されます。第一に申請者が入力する申請フォーム、第二に承認者が確認する承認画面、第三に承認状態を管理するステータス欄、第四に承認履歴を記録するログです。これらの要素を組み合わせることで、紙の申請書と同等以上の機能を持つ電子承認システムを実現できます。

エクセルとGoogleスプレッドシートの承認機能の違い

エクセル(Excel)では、マクロやVBAを使用して承認機能を実装することが一般的です。一方、Googleスプレッドシート(スプシ)では、リアルタイム共有機能とGoogle Apps Scriptを活用することで、より柔軟な承認システムを構築できます。特に、複数人での同時編集や、メール通知機能との連携において、Googleスプレッドシートの方が優れた利便性を提供します。

承認ワークフローの基本パターン

一般的な承認フローには、単純承認(1人の承認者)、多段階承認(複数の承認者が順番に承認)、並列承認(複数の承認者が同時に承認)の3つのパターンがあります。スプレッドシートでは、これらのパターンをセルの条件付き書式や数式を使って視覚的に表現し、承認状態を一目で把握できるようになります。

スプレッドシートで承認機能を設定する具体的な手順は?

承認機能の基本設定は、承認欄の作成、ドロップダウンリストの設定、条件付き書式の適用、承認権限の設定とシート保護という4ステップで完了します。

これらの設定により、視覚的に分かりやすい承認システムが構築できます。

STEP1:承認管理シートの作成と基本レイアウト

まず、承認管理用のシートを作成します。A列に申請番号、B列に申請日、C列に申請者名、D列以降に申請内容を配置し、最後の列に承認ステータス欄を設けます。ヘッダー行には項目名を入力し、フィルター機能を有効にすることで、承認状態別にデータを絞り込めるようにします。また、承認者名と承認日時を記録する列も追加しておきます。

STEP2:データ入力規則による承認ステータスの設定

承認ステータス欄には、データの入力規則を使用してドロップダウンリストを作成します。「申請中」「承認済み」「却下」「保留」などのステータスを選択できるようにし、誤入力を防ぎます。設定方法は、対象セルを選択して「データ」→「データの入力規則」から「リストを範囲で指定」または「リストを直接指定」を選びます。

STEP3:条件付き書式で承認状態を視覚化

承認状態を色分けすることで、一目で状況を把握できます。条件付き書式を使用して、「申請中」は黄色、「承認済み」は緑色、「却下」は赤色、「保留」は灰色に設定します。行全体に色を適用することで、より見やすい承認一覧表が完成します。また、期限切れの申請を自動的にハイライトする設定も追加できます。

STEP4:承認権限の設定とシート保護

承認者以外が承認欄を編集できないよう、シート保護機能を活用します。「データ」→「シートと範囲を保護」から、承認ステータス欄を選択し、編集権限を承認者のみに制限します。これにより、申請者は自分の申請内容を編集できても、承認ステータスは変更できない仕組みが実現します。

承認機能を導入することで得られるメリットとは?

承認機能の導入により、承認プロセスの可視化、処理時間の短縮、ペーパーレス化による業務効率化が実現できます。 これらのメリットは、組織の生産性向上に直結します。

承認プロセスの透明性向上と進捗管理

スプレッドシートで承認状態を管理することで、申請の進捗がリアルタイムで確認できます。申請者は自分の申請がどの段階にあるかを即座に把握でき、承認者も未処理の申請を一覧で確認できます。フィルター機能を使えば、「申請中」のみを表示して優先順位を付けることも可能です。この透明性により、承認の滞留を防ぎ、業務の流れがスムーズになります。

ペーパーレス化とコスト削減効果

紙の申請書を電子化することで、印刷コストや保管スペースを削減できます。また、過去の申請履歴も簡単に検索でき、監査対応も効率化されます。クラウド上のGoogleスプレッドシートを使用すれば、リモートワーク環境でも承認業務が可能になり、働き方改革にも貢献します。年間で数万枚の紙を削減できた事例も報告されています。

エラー防止と承認品質の向上

電子承認システムでは、必須項目の入力チェックや、金額の自動計算により、人為的なミスを大幅に削減できます。また、承認履歴が自動的に記録されるため、誰がいつ承認したかが明確になり、内部統制の強化にもつながります。条件分岐による自動承認ルートの設定により、金額や内容に応じた適切な承認者への自動振り分けも可能です。

Google Apps Script(GAS)で承認機能を自動化・高度化するには?

GASを活用することで、メール通知、自動承認、複雑な承認ルートなど、高度な承認システムを構築できます。 プログラミングにより、手作業では実現困難な機能も実装可能です。

承認依頼メールの自動送信システム

GASを使用して、新規申請時に承認者へ自動的にメールを送信する仕組みを構築できます。以下は基本的なメール送信スクリプトの例です。

javascript

function sendApprovalEmail() {

var sheet = SpreadsheetApp.getActiveSheet();

var lastRow = sheet.getLastRow();

var applicant = sheet.getRange(lastRow, 3).getValue(); // 申請者名

var content = sheet.getRange(lastRow, 4).getValue(); // 申請内容

var approverEmail = “[email protected]”;

var subject = “承認依頼:” + applicant + “からの申請”;

var body = “以下の申請が届いています。nn” +

“申請者:” + applicant + “n” +

“内容:” + content + “nn” +

“スプレッドシートで確認してください。”;

GmailApp.sendEmail(approverEmail, subject, body);}

多段階承認フローの自動制御

複数の承認者による段階的な承認が必要な場合、GASで承認フローを自動制御できます。第一承認者が承認すると自動的に第二承認者に通知が送られ、全ての承認が完了すると申請者に結果が通知される仕組みを実装できます。承認者の不在時には、代理承認者に自動的に振り替える機能も追加可能です。

承認期限管理と自動リマインド機能

承認が滞っている申請に対して、自動的にリマインドメールを送信する機能も実装できます。トリガー機能を使用して、毎日定時にスクリプトを実行し、申請から3日以上経過した未承認案件をリストアップして承認者に通知します。これにより、承認の遅延を防ぎ、業務の停滞を回避できます。

APIとの連携による外部システム統合

GASを使用すれば、他のシステムとの連携も可能です。例えば、承認完了後に会計システムにデータを自動送信したり、Slackに承認結果を通知したりできます。REST APIを使用することで、様々な外部サービスとの連携が実現し、承認プロセス全体の自動化が進みます。

承認機能の実装例と業界別活用パターンは?

業種や規模に応じた承認機能の実装例を参考にすることで、自社に最適なシステムを構築できます。 ここでは、代表的な活用パターンを紹介します。

経費精算承認システムの構築例

経費精算では、金額に応じた承認ルートの自動設定が重要です。例えば、1万円未満は課長承認、10万円未満は部長承認、それ以上は役員承認というルールをGASで実装します。レシート画像をGoogleドライブにアップロードし、スプレッドシートからリンクする機能も追加することで、証憑管理も一元化できます。

休暇申請管理システムの実装方法

休暇申請では、残日数の自動計算と承認後のカレンダー連携が求められます。スプレッドシートで休暇残日数を管理し、申請時に自動的に残日数をチェックする仕組みを構築します。承認完了後は、Google カレンダーに自動的に予定を登録し、チーム全体で休暇予定を共有できるようにします。

購買申請ワークフローの最適化

購買申請では、予算管理との連携が重要です。部署別の予算をマスターシートで管理し、申請時に予算残高を自動確認する仕組みを実装します。また、過去の購買履歴から類似商品の価格を参照し、適正価格かどうかをチェックする機能も追加できます。承認完了後は、発注書の自動作成まで行うことで、購買プロセス全体を効率化できます。

承認機能導入時の注意点とトラブルシューティングは?

承認機能の導入では、セキュリティ対策、パフォーマンス管理、ユーザー教育が重要なポイントとなります。 これらの点に注意することで、安定的な運用が可能になります。

セキュリティとアクセス管理の重要性

承認データには機密情報が含まれることが多いため、適切なアクセス管理が不可欠です。Googleスプレッドシートの共有設定を慎重に行い、必要最小限のユーザーのみにアクセス権を付与します。また、重要なデータは定期的にバックアップを取り、誤削除や改ざんに備えます。二段階認証の導入も推奨されます。

大量データ処理時のパフォーマンス対策

承認データが増加すると、スプレッドシートの動作が重くなることがあります。過去データのアーカイブ化、不要な数式の削除、画像ファイルの外部保存などにより、パフォーマンスを維持します。GASの実行時間制限はアカウント種別・トリガー種別で異なります(例:Google Workspaceの時間主導トリガーは最大30分、個人アカウントや単純トリガー/カスタム関数は30秒〜約6分など)。この制限を踏まえ、大量処理はバッチ化や分割実行、時間主導トリガーの活用などで設計してください。

ユーザートレーニングと運用ルールの整備

新しい承認システムを導入する際は、利用者への十分な説明が必要です。操作マニュアルの作成、動画による説明、FAQ の整備などを行います。また、承認期限や代理承認のルールなど、運用規程を明文化し、全員が同じ認識で利用できるようにします。定期的な利用状況の確認と改善も重要です。

スプレッドシートの承認機能を活用して業務プロセスを最適化する

スプレッドシートの承認機能は、申請から承認までの流れをシート上で一元管理できる柔軟な仕組みです。基本設定ではドロップダウンや条件付き書式を組み合わせて承認状態を明確にし、権限設定によって不正な編集を防止します。

さらに、Google Apps Script(GAS)を導入すれば、承認依頼の自動通知や多段階承認、リマインド機能の追加、外部システムとの連携など、手作業では難しい自動化が可能になります。


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