- 作成日 : 2025年9月22日
スプレッドシートの検索・置換をする方法 – 便利な正規表現や関数まで解説
大量のデータから特定の情報を見つけ出したり、一括で修正したりする作業は、バックオフィス業務の日常です。Googleスプレッドシートの検索・置換機能を使いこなすことで、これらの作業を効率的に進められます。
本記事では、企業のバックオフィス担当者向けに、基本的な検索・置換の方法から、正規表現を使った高度な活用法、関数との組み合わせまで、実務で役立つテクニックを詳しく解説します。顧客データの整理、商品コードの一括変更、レポートの誤字修正など、様々な場面で活用できる知識を身につけていきましょう。
目次
スプレッドシートで検索と置換をする方法
基本的な検索機能の使い方
スプレッドシートで検索を行う最も簡単な方法は、キーボードショートカットを使用することです。Ctrl + F(MacではCmd + F)を押すと、画面右上に検索ボックスが表示されます。ここに検索したい文字列を入力すると、該当するセルがハイライト表示され、Enter キーを押すごとに次の該当箇所に移動できます。
検索ボックスの右側にある上下の矢印をクリックすることでも、前後の検索結果に移動できます。また、「○件中△件目」という表示により、検索結果の総数と現在位置を確認できます。大量のデータから特定の顧客名や商品コードを探す際に、この基本的な検索機能だけでも十分な効果を発揮します。
詳細な検索オプションの活用
より高度な検索を行いたい場合は、Ctrl + H(MacではCmd + H)を押すか、メニューバーの「編集」→「検索と置換」を選択します。これにより、詳細な検索オプションを含むダイアログボックスが開きます。ここでは以下のような設定が可能です:
- 検索範囲の指定:「すべてのシート」「このシート」「特定の範囲」から選択できます。複数のシートにまたがるマスターデータを扱う場合は「すべてのシート」が便利です。特定の列や行だけを検索したい場合は、事前に範囲を選択してから検索機能を開くと、自動的にその範囲が設定されます。
- 大文字と小文字の区別:チェックを入れると、大文字小文字を厳密に区別して検索します。商品コードや社員番号など、大文字小文字が意味を持つデータを扱う場合に重要です。
- セル内容の完全一致:チェックを入れると、セルの内容が検索文字列と完全に一致する場合のみヒットします。部分一致ではなく、完全一致で検索したい場合に使用します。
置換機能の基本操作
検索と置換ダイアログボックスで、「置換後の文字列」欄に新しい文字列を入力することで、一括置換が可能になります。「置換」ボタンをクリックすると現在選択されている箇所のみが置換され、「すべて置換」ボタンをクリックすると、検索条件に合致するすべての箇所が一度に置換されます。
置換を実行する前に、必ず「検索」ボタンで該当箇所を確認することをお勧めします。特に「すべて置換」を使用する場合は、意図しない箇所まで置換されないよう注意が必要です。例えば、「株式会社」を「(株)」に置換する際、会社名以外の文章中の「株式会社」も置換されてしまう可能性があります。
検索・置換の履歴とやり直し
置換操作を行った後、結果が意図したものと異なる場合は、Ctrl + Z(MacではCmd + Z)で元に戻すことができます。ただし、「すべて置換」で大量の変更を行った場合、すべてを元に戻すのに時間がかかることがあります。重要なデータを扱う場合は、事前にシートをコピーしてバックアップを作成することを推奨します。
また、検索履歴は保存されないため、頻繁に使用する検索条件は別途メモしておくと便利です。特に正規表現を使用した複雑な検索条件は、再入力が困難なため、ドキュメントとして保存しておくことをお勧めします。
特殊文字の検索と置換
改行、タブ、スペースなどの特殊文字も検索・置換の対象にできます。これらは通常の文字として入力できないため、以下のような方法で指定します。
- 改行:検索欄に「n」と入力し、正規表現を有効にする
- タブ:検索欄に「t」と入力し、正規表現を有効にする
- 複数の連続したスペース:正規表現を使用して「 +”」と入力(スペースに量指定子を付ける)
住所データの整形や、CSVファイルから取り込んだデータのクリーンアップなど、特殊文字の処理は実務で頻繁に必要になります。これらのテクニックを習得することで、データ整理の効率が大幅に向上します。
スプレッドシートとエクセルとの検索と置換の違い
インターフェースと操作性の違い
GoogleスプレッドシートとMicrosoft Excelでは、検索・置換機能の基本的な概念は同じですが、インターフェースに違いがあります。Excelでは検索と置換のダイアログボックスがタブで分かれていますが、スプレッドシートでは一つのダイアログボックスに統合されています。これにより、検索から置換への切り替えがスムーズに行えます。
また、スプレッドシートの検索ボックスは画面上部に固定表示されるため、検索しながら他の作業を続けることができます。一方、Excelではダイアログボックスを閉じないと他の操作ができない場合があります。この違いは、大量のデータを扱う際の作業効率に影響を与えます。
検索オプションの違い
両者の検索オプションにはいくつかの違いがあります。Excelには「書式を検索」機能があり、特定の書式(色、フォント、罫線など)が適用されたセルを検索できます。スプレッドシートには書式検索機能はありませんが、条件付き書式で色分けして見分けやすくする方法があります。
一方、スプレッドシートの強みは正規表現のサポートです。Excelでは標準機能として正規表現を使用できませんが、スプレッドシートでは「正規表現を使用」にチェックを入れるだけで、強力なパターンマッチングが可能になります。これにより、より柔軟で高度な検索・置換が実現できます。
クラウドベースならではの特徴
スプレッドシートはクラウドベースのため、検索・置換の結果が自動的に保存され、共同編集者にもリアルタイムで反映されます。これは、チームで作業する際の大きな利点です。ただし、大規模な置換を行う際は、他の編集者に事前に通知することが重要です。
また、スプレッドシートでは変更履歴が自動的に記録されるため、置換操作の履歴を後から確認できます。また、スプレッドシートでは変更内容が自動的に記録されるため、置換操作を含む編集履歴を後から確認できます。「ファイル」→「版の履歴」→「版の履歴を表示」から、誰がいつどのような変更を行ったかを確認できます。これにより、誤った置換が行われた場合でも、原因の特定と復旧が容易になります。これにより、誤った置換が行われた場合でも、原因の特定と復旧が容易になります。
大量のデータを扱う場合
大量のデータに対して検索・置換を行う場合、両者でパフォーマンスに違いが出ることがあります。Excelはローカルマシンの性能に依存するため、高性能なPCでは非常に高速に動作します。一方、スプレッドシートはインターネット接続速度とGoogleのサーバー性能に依存します。
数万行を超えるデータで「すべて置換」を実行する場合、スプレッドシートでは処理に時間がかかったり応答が止まる場合があります。このような場合は、データを分割して処理するか、SUBSTITUTE関数などを使用して段階的に処理することを検討してください。
スプレッドシートの検索と置換で使える正規表現
正規表現の基本概念
正規表現(Regular Expression、略してRegex)は、文字列のパターンを表現するための強力な記法です。スプレッドシートで正規表現を使用するには、検索と置換ダイアログボックスで「正規表現を使用」にチェックを入れます。これにより、単純な文字列検索では不可能な、柔軟なパターンマッチングが可能になります。
例えば、電話番号の形式を統一したい場合、様々な表記(03-1234-5678、03(1234)5678、0312345678など)を一つのパターンで検索できます。正規表現を使用することで、d{2,4}[-()]?d{3,4}[-()]?d{3,4}のようなパターンで、これらすべての形式にマッチさせることができます。ただし全角記号や国際番号などには対応しないため、必要に応じて追加調整が必要です。
よく使用する正規表現パターン
実務でよく使用する正規表現パターンを紹介します。
- d:任意の1桁の数字
- d+:1桁以上の連続した数字
- d{3}:ちょうど3桁の数字
- d{2,4}:2桁から4桁の数字
- .:任意の1文字(改行を除く)
- .*:0文字以上の任意の文字列
- [あ-ん]+:ひらがなの連続
- [ァ-ヶ]+:カタカナの連続
- [a-zA-Z]+:英字の連続
- ^:行の先頭
- $:行の末尾
正規表現を使った実践的な置換例
郵便番号の形式統一 検索:(d{3})[-ー]?(d{4}) 置換:$1-$2 これにより、「1234567」「123-4567」「123ー4567」などをすべて「123-4567」の形式に統一できます。
全角数字を半角に変換 残念ながら、スプレッドシートの正規表現では文字クラスの変換はできないため、この場合は関数を使用する必要があります。ただし、特定の全角数字を検索することは可能です:[0-9]+
メールアドレスの検証
検索:^[A-Za-z0-9._%+-]+@(?:[A-Za-z0-9-]+.)+[A-Za-z]{2,}$
上記は“基本的な形式”をチェックするための実用的な正規表現です(ドメインはドットで区切られたラベルの並びを要求)。ただしRFCに完全準拠ではなく、すべての無効/有効パターンを厳密に判定するものではありません。顧客リストの一次スクリーニング用途として活用してください。
正規表現使用時の注意点
正規表現は強力ですが、複雑になりやすく、意図しないマッチングを引き起こす可能性があります。特に「.*」(任意の文字列)を使用する際は、予想以上に広い範囲にマッチすることがあるため注意が必要です。
また、日本語を扱う際は、文字コードの違いに注意が必要です。全角・半角の区別、ひらがな・カタカナの区別など、日本語特有の課題があります。置換を実行する前に、必ず検索で該当箇所を確認し、意図した通りにマッチしているか確認することが重要です。
スプレッドシートの検索と置換で使える関数
SUBSTITUTE関数:文字列の置換
SUBSTITUTE関数は、セル内の特定の文字列を別の文字列に置換する関数です。構文は=SUBSTITUTE(テキスト, 検索文字列, 置換文字列, [出現回数])です。検索と置換機能と異なり、元のデータを変更せずに、別のセルに置換結果を表示できます。
例えば、=SUBSTITUTE(A1,”株式会社”,”(株)”)とすると、A1セルの「株式会社」をすべて「(株)」に置換した結果を表示します。第4引数で出現回数を指定すると、n番目の出現箇所のみを置換できます。=SUBSTITUTE(A1,”部”,”課”,2)は、2番目に出現する「部」のみを「課」に置換します。
REGEXREPLACE関数:正規表現による置換
REGEXREPLACE関数は、正規表現を使用して文字列を置換する関数です。構文は=REGEXREPLACE(テキスト, 正規表現, 置換文字列)です。検索と置換ダイアログの正規表現機能を、関数として使用できます。
実例として、電話番号の形式を統一する場合:
=REGEXREPLACE(A1,”(d{2,4})[-(]?(d{3,4})[)-]?(d{3,4})”,”$1-$2-$3″)
これにより、「03-1234-5678」「03(1234)5678」「0312345678」など、さまざまな形式の電話番号を「03-1234-5678」の形式に統一できます。
SEARCH関数とFIND関数:文字列の検索
SEARCH関数とFIND関数は、文字列内で特定の文字列の位置を検索する関数です。SEARCH関数は大文字小文字を区別せず、FIND関数は区別します。構文は=SEARCH(検索文字列, テキスト, [開始位置])です。
これらの関数は、IF関数と組み合わせて条件付き処理を行う際に便利です: =IF(ISERROR(SEARCH(“重要”,A1)),””,”★”) この数式は、A1セルに「重要」という文字が含まれている場合に「★」を表示します。
TRIM関数とCLEAN関数:不要な文字の除去
TRIM関数は、文字列の先頭と末尾の空白を削除し、単語間の複数の空白を1つにする関数です。=TRIM(A1)のように使用します。外部システムからインポートしたデータの整形に欠かせません。
CLEAN関数は、印刷できない文字を削除する関数です。=CLEAN(A1)で、制御文字などの特殊文字を除去できます。これらの関数を組み合わせることで、データのクレンジングを効率的に行えます: =TRIM(CLEAN(A1))
SPLIT関数とJOIN関数:文字列の分割と結合
SPLIT関数は、指定した区切り文字で文字列を分割する関数です。=SPLIT(A1,”,”)とすると、カンマで区切られた文字列を複数のセルに分割できます。CSVデータの処理や、複合データの分解に使用されます。
JOIN関数は、複数のセルの内容を指定した区切り文字で結合します。=JOIN(“-“,A1:A3)は、A1からA3の内容をハイフンで結合します。住所データの結合や、複数の属性を一つのセルにまとめる際に便利です。
ARRAYFORMULA関数との組み合わせ
これらの関数をARRAYFORMULA関数と組み合わせることで、複数のセルに対して一括処理が可能になります。 =ARRAYFORMULA(SUBSTITUTE(A1:A100,”旧商品名”,”新商品名”)) これにより、A1からA100までのすべてのセルで置換処理を実行できます。
大量のデータ処理では、個別に関数をコピーするよりも、ARRAYFORMULA関数を使用する方が効率的です。また、データが追加されても自動的に処理範囲が拡張されるため、メンテナンスも容易になります。
スプレッドシートの検索・置換機能を活用しよう
Googleスプレッドシートの検索・置換機能は、単純な文字列検索から正規表現を用いた高度なパターンマッチングまで対応できる便利な機能です。大量データの一括修正や誤字チェック、コードの整形など、業務効率を大きく改善できます。
また、SUBSTITUTEやREGEXREPLACEといった関数を併用すれば、自動処理や柔軟な置換も可能です。正規表現利用時は意図しないマッチングを防ぐため、必ず検索で確認してから置換を実行しましょう。
検索・置換スキルを習得すれば、データ整理の時間を短縮し、チーム全体の生産性向上につながります。
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