- 作成日 : 2025年9月17日
スプレッドシートの条件付き書式カスタム数式とは?使い方と関数・条件を完全解説
Googleスプレッドシートの条件付き書式の標準機能では物足りない。もっと複雑な条件でセルを色分けしたい。そんな時に強力な味方となるのが「カスタム数式」です。複数の条件を組み合わせたり、他のセルの値を参照したり、関数を使った動的な条件設定が可能になります。
本記事では、Googleスプレッドシートの条件付き書式におけるカスタム数式の仕組みから、実践的な使い方、利用できる関数や条件の具体例までを、わかりやすく解説します。
目次
スプレッドシートの条件付き書式のカスタム数式とは
条件付き書式のカスタム数式は、数式の評価結果がTRUE(真)となったセルに書式が適用される仕組みです。標準の条件設定では「次より大きい」「テキストを含む」といった単純な条件しか設定できませんが、カスタム数式を使えば、複雑なビジネスロジックに基づいた書式設定が可能になります。
例えば、「売上が目標の80%以上なら黄色、100%以上なら緑色」といった段階的な評価や、「期限が3日以内かつ未完了のタスクを赤色で強調」といった複合条件も簡単に実現できます。さらに、他のセルの値を参照して「A列が『重要』ならその行全体を強調表示」といった、行や列をまたいだ条件設定も可能です。
カスタム数式は、IF、AND、OR、VLOOKUP、さらにはREGEXMATCHなどの多くの関数を利用できます。(一部の配列関数などは使えない場合があります。)
参考:Google スプレッドシートで条件付き書式ルールを使用する
なぜカスタム数式が必要なのか
実務では、単一の条件だけでなく、複数の要素を考慮した判断が必要になることが多々あります。例えば、在庫管理では「在庫数が発注点以下」かつ「リードタイムが長い商品」を優先的に発注する必要があります。このような複合的な判断を視覚的に表現するには、カスタム数式が不可欠です。
また、データの関連性を表現する場合にも有効です。売上データと目標値が別々の列にある場合、達成率を計算して色分けすることで、パフォーマンスを一目で把握できます。経費精算では、承認者のレベルに応じて金額の閾値を変えるといった、動的な条件設定も可能になります。
さらに、カスタム数式を使えば、メンテナンスも容易になります。条件の閾値を別のセルで管理し、そのセルを参照する数式を作成すれば、閾値の変更時に数式を修正する必要がなくなります。これは、頻繁に基準が変わる業務において特に重要です。
カスタム数式の仕組み
カスタム数式は、適用範囲の各セルに対して評価され、TRUEを返したセルに指定した書式が適用されます。ここで重要なのは、数式内でのセル参照の扱い方です。
絶対参照($A$1)を使用すると、すべてのセルで同じセルを参照します。一方、相対参照(A1)を使用すると、適用範囲内での相対的な位置関係に基づいて参照先が変化します。この仕組みを理解することが、効果的なカスタム数式作成の第一歩です。
例えば、B2:B100の範囲に条件付き書式を適用する場合、数式=$A2=”重要”は、B2セルではA2を、B3セルではA3を参照します。列を固定($A)して行を相対参照(2)にすることで、「同じ行のA列」を参照する動的な条件を作成できるのです。
カスタム数式の使い方
基本的な設定手順
カスタム数式を使った条件付き書式の設定は、以下の手順で行います。
まず、書式を適用したいセル範囲を選択します。単一のセル、行、列、または任意の範囲を選択できます。次に、メニューバーから「表示形式」→「条件付き書式」を選択すると、画面右側に条件付き書式の設定パネルが表示されます。
「セルの書式設定の条件」のドロップダウンメニューから「カスタム数式」を選択します。すると、数式入力欄が表示されるので、ここに条件となる数式を入力します。数式は必ず「=」で始まり、TRUE/FALSEを返すように作成します。
最後に、条件がTRUEの場合に適用する書式を設定します。背景色、文字色、太字、斜体、取り消し線など、様々な書式を組み合わせることができます。設定が完了したら「完了」ボタンをクリックして適用します。
単一セルの条件設定
最も基本的な使い方は、各セルの値に基づいて書式を設定することです。例えば、
売上データで10万円以上の値を強調表示する場合:
適用範囲:B2:B100
カスタム数式:=$B2>=100000
書式:背景色を緑に設定
この数式は、B2セルでは$B2>=100000として評価され、B3セルでは$B3>=100000として評価されます。$マークで列を固定することで、同じ列内での比較を確実に行えます。
より複雑な例として、
前月比で20%以上増加したセルを強調する場合:
適用範囲:C3:C100
カスタム数式:=AND($C3>$C2*1.2, $C2>0)
書式:背景色を黄色、太字に設定
この数式では、前の行との比較に加えて、ゼロ除算を避けるための条件も含めています。
行全体への条件適用
特定の条件を満たす場合に行全体を強調表示することで、重要なレコードを見逃さないようにできます。
例えば、
ステータスが「緊急」の行全体を赤色で強調する場合:
適用範囲:A2:Z100
カスタム数式:=$D2=”緊急”
書式:背景色を薄い赤に設定
ここでのポイントは、列番号の前に$を付けて列を固定し、行番号は相対参照にすることです。これにより、各行のD列の値に基づいて、その行全体に書式が適用されます。
複数の条件を組み合わせた例:
適用範囲:A2:Z100
カスタム数式:=AND($E2<TODAY(), $F2<>”完了”)
書式:背景色をオレンジに設定
この数式は、期限(E列)が過ぎており、かつステータス(F列)が「完了」でない行を強調表示します。プロジェクト管理や課題管理で、遅延しているタスクを一目で確認できます。
他のセルを参照した条件設定
カスタム数式の強力な機能の一つは、評価対象のセル以外の値を参照できることです。これにより、データ間の関係性に基づいた書式設定が可能になります。
目標達成率による色分けの例:
適用範囲:C2:C100(実績列)
カスタム数式:=$C2/$B2>=1
書式:背景色を緑に設定
追加の条件:
カスタム数式:=AND($C2/$B2>=0.8, $C2/$B2<1)
書式:背景色を黄色に設定
この設定により、目標(B列)に対する実績(C列)の達成率に応じて、100%以上は緑、80%以上100%未満は黄色で表示されます。
範囲を跨いだ条件設定
より高度な使い方として、離れた場所にあるデータを参照した条件設定も可能です。
マスターデータを参照した例:
適用範囲:A2:A100(商品コード列)
カスタム数式:=COUNTIF(廃番リスト!$A:$A,$A2)>0
書式:文字色を赤、取り消し線を追加
この数式は、別シートの「廃番リスト」に含まれる商品コードを自動的に識別し、視覚的に区別します。マスターデータの更新が即座に反映されるため、情報の一元管理が可能です。
動的な閾値の設定
ビジネス環境では、判断基準が頻繁に変更されることがあります。カスタム数式では、閾値を別のセルで管理することで、柔軟な運用が可能です。
設定例:
閾値セル:設定!$B$1(警告レベル:80)
設定!$B$2(危険レベル:50)
適用範囲:B2:B100(在庫数列)
カスタム数式:=AND($B2<=設定!$B$1, $B2>設定!$B$2)
書式:背景色を黄色(警告)
カスタム数式:=$B2<=設定!$B$2
書式:背景色を赤(危険)
この方法により、閾値の変更時に条件付き書式の数式を修正する必要がなくなり、運用が大幅に簡素化されます。
カスタム数式で使える関数・数式の条件
論理関数の活用
カスタム数式で最も頻繁に使用されるのが論理関数です。これらの関数を組み合わせることで、複雑な条件を表現できます。
IF関数:条件分岐の基本
=IF($A2>100000, TRUE, FALSE)
単純にTRUE/FALSEを返すだけなら、=$A2>100000で十分ですが、より複雑な条件では IF関数が有用です。
AND関数:すべての条件を満たす場合
=AND($A2>10000, $B2<TODAY(), $C2=”未処理”)
売上が1万円以上、期限切れ、かつ未処理の案件を強調表示する例です。
OR関数:いずれかの条件を満たす場合
=OR($D2=”緊急”, $D2=”至急”, DAYS(TODAY(),$E2)>30)
優先度が高い、または30日以上経過した案件を識別します。
NOT関数:条件の否定
=NOT(ISBLANK($A2))
空白でないセルを強調表示する場合に使用します。
文字列関数の活用
テキストデータの分析では、文字列関数が重要な役割を果たします。
SEARCH/FIND関数:部分一致の検索
=SEARCH(“重要”,$A2)>0
セルに「重要」という文字が含まれている場合に書式を適用します。SEARCHは大文字小文字を区別せず、FINDは区別します。
REGEXMATCH関数:正規表現による高度な検索
=REGEXMATCH($A2,”^[0-9]{3}-[0-9]{4}$”)
郵便番号の形式(123-4567)に一致するセルを識別します。
=REGEXMATCH($B2,”urgente?|急ぎ|至急”)
複数のキーワードのいずれかを含む場合に適用されます。
LEN関数:文字数による条件
=LEN($A2)>100
100文字を超える長いテキストを含むセルを強調表示します。
日付・時刻関数の活用
期限管理や時系列分析では、日付関数が欠かせません。
TODAY/NOW関数:現在日時との比較
=AND($A2<TODAY(), $B2<>”完了”)
期限切れで未完了のタスクを識別します。
WEEKDAY関数:曜日による条件
=OR(WEEKDAY($A2)=1, WEEKDAY($A2)=7)
土日のデータを強調表示します。営業日カレンダーの作成に便利です。
DATEDIF関数:期間の計算
=DATEDIF($A2,TODAY(),”D”)>90
90日以上経過した案件を識別します。
WORKDAY関数:営業日の計算
=$A2=WORKDAY(TODAY(),-1)
前営業日のデータを強調表示します。
数値・統計関数の活用
データ分析では、平均や標準偏差などの統計値との比較が有効です。
AVERAGE関数との組み合わせ
=$B2>AVERAGE($B$2:$B$100)*1.5
平均の1.5倍を超える異常値を検出します。
STDEV関数による外れ値検出
=ABS($B2-AVERAGE($B$2:$B$100))>2*STDEV($B$2:$B$100)
平均から2標準偏差以上離れた外れ値を識別します。
RANK関数によるランキング表示
=RANK($B2,$B$2:$B$100)<=10
上位10件のデータを強調表示します。
検索・参照関数の活用
他のデータとの照合や、マスターデータの参照に使用します。
VLOOKUP関数:マスターデータの参照
=VLOOKUP($A2,マスター!$A:$C,3,FALSE)>10000
商品マスターから単価を取得し、1万円以上の高額商品を識別します。
COUNTIF関数:重複チェック
=COUNTIF($A$2:$A$100,$A2)>1
重複データを強調表示します。データクレンジングに有効です。
MATCH関数:リスト内存在チェック
=ISNUMBER(MATCH($A2,承認者リスト!$A:$A,0))
承認者リストに含まれる名前を識別します。
配列数式と高度な条件
より複雑な分析には、配列数式や複合的な条件設定が必要になります。
SUMPRODUCT関数による複合条件
=SUMPRODUCT(($A$2:$A$100=$A2)*($B$2:$B$100>1000))>3
同じカテゴリで1000以上の取引が3件以上ある場合を識別します。
FILTER関数との組み合わせ(利用可能な場合)
=COUNTA(FILTER($B$2:$B$100,$A$2:$A$100=$A2))>5
同じグループに属するデータが5件以上ある場合を強調表示します。
これらの関数を組み合わせることで、ビジネスの複雑な要求に応える条件付き書式を作成できます。重要なのは、まず単純な条件から始めて、徐々に複雑な条件へとステップアップすることです。
カスタム数式を使いこなして、データを可視化しよう
Googleスプレッドシートで条件付き書式のカスタム数式を使うと、単純な条件では実現できない複雑なルールを反映した書式設定が可能になります。セルの値や他列のデータを参照して動的に色分けしたり、複数条件を組み合わせたりすることで、データの見やすさと分析精度が向上します。
重要なのは基本の仕組みを理解し、実際の業務データで少しずつ試すことです。カスタム数式を活用すれば、スプレッドシートをより実用的で効果的なデータ管理ツールとして使いこなせます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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