- 作成日 : 2025年8月25日
SORTBY関数の使い方:複数の基準でデータを並べ替える方法
SORTBY関数は、指定した列(基準列)に基づいてデータを動的に並べ替える関数です。売上データの多角的な分析、成績表の順位付け、在庫リストの優先順位管理など、複数の基準でデータを整理する場面で活用されます。例えば、売上高の降順で並べ替えた後、同じ売上高の場合は利益率の高い順に並べるといった、複雑な並べ替えを簡単に実現できます。
本記事では、SORTBY関数の基本的な使い方から実践的な活用方法、他の関数との効果的な組み合わせまで、わかりやすく解説していきます。
目次
SORTBY関数とは
SORTBY関数は、Excel 365で導入された動的配列関数の一つで、指定した基準列に基づいてデータ範囲全体を並べ替えます。従来の並べ替え機能と異なり、元データを変更することなく、別の場所に並べ替えた結果を表示できます。また、数式として記述するため、元データが更新されると自動的に並べ替え結果も更新されます。
この関数の最大の特徴は、複数の並べ替え基準を簡単に指定できることです。第1基準で並べ替えた後、同じ値がある場合は第2基準、第3基準と順次適用できるため、複雑な並べ替えルールも一つの関数で実現できます。
SORTBY関数の基本的な使い方
関数の構文を理解する
SORTBY関数の構文は次のとおりです。
=SORTBY(配列, 基準配列1, [並べ替え順序1], [基準配列2, 並べ替え順序2], …)
配列は並べ替えたいデータ範囲、基準配列は並べ替えの基準となる列、並べ替え順序は昇順(1)または降順(-1)を指定します。
基本的な使用例
実際の使用例を見てみましょう。
A2:C10に社員名、部署、売上のデータがある場合:
=SORTBY(A2:C10, C2:C10, -1)
この結果は、売上(C列)の降順で全データを並べ替えます。
複数基準での並べ替え:
=SORTBY(A2:C10, B2:B10, 1, C2:C10, -1)
この場合、まず部署(B列)の昇順で並べ替え、同じ部署内では売上(C列)の降順で並べ替えます。
並べ替え順序の指定
並べ替え順序は数値で指定します。
=SORTBY(A2:D10, B2:B10, 1) ‘ 昇順(小さい順、A→Z)
=SORTBY(A2:D10, B2:B10, -1) ‘ 降順(大きい順、Z→A)
省略した場合は昇順(1)として扱われます。
SORTBY関数の実践的な利用シーン
売上分析での活用
営業成績の分析では、複数の視点からデータを並べ替える必要があります。例えば、地域別・月別・商品別の売上データを、売上高の高い順に並べ替えつつ、同じ売上高の場合は利益率の高い順に表示することで、優先的に注力すべき領域を特定できます。
動的な並べ替えにより、フィルターを使わずに様々な角度からデータを分析でき、意思決定のスピードが向上します。
成績管理と順位付け
学校や研修での成績管理において、総合点での順位付けはもちろん、同点の場合の優先順位も自動的に処理できます。例えば、総合点が同じ場合は数学の点数、それも同じなら国語の点数という具合に、複数の基準で公平な順位付けが可能です。
成績表を更新するたびに自動的に順位が再計算されるため、手動での並べ替えミスを防げます。
在庫管理の最適化
在庫管理では、在庫回転率、在庫金額、保管期間など複数の要因を考慮した優先順位付けが必要です。SORTBY関数を使用することで、例えば在庫金額が高く、かつ回転率が低い商品を上位に表示し、優先的に対策を講じるべき商品を特定できます。
季節商品では、シーズンまでの残り日数と在庫数を組み合わせた並べ替えにより、適切な在庫調整のタイミングを把握できます。
SORTBY関数の応用テクニック
条件付き並べ替え
以下のいずれかで、並べ替え基準も同じ条件で揃えます。
=SORTBY(FILTER(A2:C10, B2:B10=”営業部”),
FILTER(C2:C10, B2:B10=”営業部”), -1)
または(FILTER結果の3列目を基準にする場合)
=SORTBY(FILTER(A2:C10, B2:B10=”営業部”),
INDEX(FILTER(A2:C10, B2:B10=”営業部”), , 3), -1)
計算結果による並べ替え
元データにない計算値を基準に並べ替える:
=SORTBY(A2:C10, C2:C10/B2:B10, -1)
売上を人数で割った「一人当たり売上」で並べ替えます。
文字列の長さで並べ替え
商品名や説明文を文字数順に並べる:
=SORTBY(A2:B10, LEN(A2:A10), 1)
短い名前から長い名前の順に並べ替えます。
SORTBY関数のよくあるエラーと対策
#SPILL!エラーへの対処
原因の例:
- スピル先に既存データがある
- スピル先に結合セルが含まれている
- 数式が「テーブル」内にありスピル非対応
- スピル範囲がシート端を超える
- 配列のサイズが不確定(RANDARRAY/RANDBETWEEN など)
エラーの確認方法:
- 数式セルを選択すると、意図したスピル範囲が破線で表示されます。
- 表示されるエラー チェック アラートから[妨げセルの選択]を選び、ブロックしているセルを特定します。
(補足)別セルで通知したい場合:
- スピル元セル(例:E2)を別セルで参照して、=IFERROR(E2, “表示範囲を確保してください”)
とすると、参照側でメッセージ化できます(元セルの #SPILL! は解消されません)。
対処方法:
- スピル先の既存データを削除または移動する
- 結合セルを解除する
- テーブルなら[範囲に変換]するかテーブル外に数式を移動する
- スピル先がシート端を超える場合は数式の位置をずらす/対象を小さくする
- 別シートに結果を表示する
- 結果の一部のみを表示するなら、INDEX などで単一値出力にする
#VALUE!エラーへの対処
基準配列のサイズが配列と一致しない場合に発生します。
サイズチェックを含む処理:
=IF(ROWS(A2:C10)<>ROWS(C2:C10), “範囲のサイズが一致しません”,
SORTBY(A2:C10, C2:C10, -1))
動的な範囲指定での対処:
=LET(データ範囲, A2:C100,
基準列, INDEX(データ範囲, 0, 3),
SORTBY(データ範囲, 基準列, -1))
LET関数を使用することで、範囲の整合性を保ちやすくなります。データ範囲を変数として定義し、そこから基準列を抽出することで、サイズの不一致を防げます。
空白セルの扱い
基準配列に空白セルが含まれる場合の挙動に注意が必要です。
空白を最後に配置する処理:
=SORTBY(A2:C10, IF(C2:C10=””, 999999, C2:C10), 1)
空白を除外して並べ替え:
=LET(非空白データ, FILTER(A2:C10, C2:C10<>””),
SORTBY(非空白データ, INDEX(非空白データ, 0, 3), -1))
数値と文字列が混在する列では、空白セルが0として扱われるケースがあるため、意図しない並び順になる可能性があります。IF関数で空白に大きな値を割り当てることで、最後に配置できます。
文字列と数値の混在
基準列に文字列と数値が混在する場合、予期しない結果になることがあります。
データ型の統一:
=SORTBY(A2:C10, VALUE(C2:C10), -1)
エラー処理を含む変換:
=SORTBY(A2:C10, IFERROR(VALUE(C2:C10), 0), -1)
文字列として保存された数値は、VALUE関数で数値に変換してから並べ替えることで、正しい順序を得られます。変換できない文字列は0として扱うなど、適切なデフォルト値を設定することが重要です。
SORTBY関数と他の関数との組み合わせ
FILTER関数での条件付き並べ替え
特定条件のデータを抽出してから並べ替える:
(いずれも 推奨:CHOOSECOLS を使う例。CHOOSECOLS が使えない環境では INDEX(…,0,列番号) を使ってください。)
=LET(f, FILTER(A2:D10, D2:D10>100000),
SORTBY(f, CHOOSECOLS(f, 4), -1))
=LET(f, FILTER(データ範囲, (条件1)*(条件2)),
SORTBY(f, CHOOSECOLS(f, 基準列番号), -1))
売上が10万円以上のデータのみを抽出し、売上順に並べ替えます。FILTER関数と組み合わせることで、必要なデータだけを対象にした効率的な分析が可能になります。複数条件を掛け算で組み合わせることで、AND条件での絞り込みも実現できます。
UNIQUE関数での重複除去後の並べ替え
重複を除去してから並べ替える:
=LET(u, UNIQUE(A2:B10),
SORTBY(u, CHOOSECOLS(u, 2), -1))
=LET(u, UNIQUE(FILTER(A2:C10, C2:C10>0)),
SORTBY(u, CHOOSECOLS(u, 3), -1))
(参考:SORT を使うなら列番号指定で書けます
=SORT(FILTER(A2:D10, D2:D10>100000), 4, -1) / =SORT(UNIQUE(A2:B10), 2, -1) など。)
顧客リストから重複を除去し、購入金額順に並べ替えるなどの処理が可能です。UNIQUE関数で一意の値だけを抽出してから並べ替えることで、重複のないクリーンなデータセットを作成できます。マスターデータの作成や、レポート用のサマリー作成に有効です。
INDEX関数での上位N件の抽出
並べ替え後の上位データのみを取得:
=INDEX(SORTBY(A2:C10, C2:C10, -1), SEQUENCE(5), {1,2,3})
=LET(並替済, SORTBY(A2:C10, C2:C10, -1),
INDEX(並替済, SEQUENCE(MIN(5, ROWS(並替済))), 0))
売上上位5件のデータを抽出します。SEQUENCE関数で連番を生成し、INDEX関数で必要な行だけを取り出します。LET関数を使用することで、並べ替え結果を変数に格納し、エラー処理も含めた柔軟な処理が可能になります。
SCAN関数での並べ替え後の集計
並べ替えたデータの累計を計算:
=LET(並替データ, SORTBY(A2:C10, C2:C10, -1),
売上列, INDEX(並替データ, 0, 3),
SCAN(0, 売上列, LAMBDA(a,b, a+b)))
売上順に並べ替えた後、累積売上を計算します。SCAN関数を使用することで、動的な累計計算が可能になります。パレート分析など、累積比率を使った分析に活用できます。
XLOOKUP関数での順位検索
並べ替え結果から特定の順位のデータを取得:
=INDEX(SORTBY(A2:C10, C2:C10, -1), 3, 0)
=LET(s, SORTBY(A2:C10, C2:C10, -1),
XLOOKUP(検索名, INDEX(s, 0, 1), s))
「特定の人の順位を確認」する正しい例(位置を返す):
=LET(s, SORTBY(A2:C10, C2:C10, -1),
XMATCH(検索名, INDEX(s, 0, 1)))
売上3位のデータを取得したり、特定の人の順位を確認したりできます。動的な順位表を作成し、常に最新の順位情報を参照できます。
TEXT関数での書式設定付き並べ替え
並べ替えと同時に表示形式を整える:
=LET(元データ, A2:C10,
並替済, SORTBY(元データ, C2:C10, -1),
CHOOSE({1,2,3},
INDEX(並替済, 0, 1),
INDEX(並替済, 0, 2),
TEXT(INDEX(並替済, 0, 3), “#,##0″”円”””)))
金額に通貨書式を適用しながら並べ替えます。CHOOSE関数とTEXT関数を組み合わせることで、各列に異なる書式を適用できます。レポート用の整形されたデータを一度に作成できます。
SORTBY関数で複数基準の並べ替えを自動化
SORTBY関数は、指定した複数の基準に基づいてデータを動的に並べ替えるExcelの配列関数です。元データを変更せずに別の場所に並べ替え結果を表示できるため、売上分析や成績管理、在庫の優先順位付けなど、さまざまな場面で利用されています。
売上の降順や部署別の昇順など、複数条件での並べ替えを1つの数式で設定でき、FILTER関数やUNIQUE関数、LET関数と組み合わせることで、条件抽出・重複除去・表示形式の整形にも対応できます。
一方で、スピル範囲の確保、基準列とデータ範囲のサイズ一致、空白セルやデータ型の混在への対応といった、事前のデータ整備が必要になります。また、SORTBY関数は並べ替えを行う関数であり、順位付けや集計にはINDEX関数やSCAN関数などの併用が求められます。
機能の特性と制約を理解したうえで使用することで、データの整理や比較がしやすくなり、日常業務の効率化につながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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