- 作成日 : 2025年8月25日
RATE関数の使い方:ローンや投資の利率を逆算する方法
RATE関数は、定期的な支払いがある金融商品の利率を計算するエクセルの財務関数です。ローンの実質年率の確認、投資商品の利回り計算、リース料率の算出など、様々な金融計算で活用されています。月々の支払額や期間、借入額から利率を逆算できるため、金融商品の比較検討や適正価格の判断に活用されることがあります。
本記事では、RATE関数の基本的な使い方から実践的な活用法、計算がうまくいかない場合の対処法まで、具体例を交えて詳しく解説します。
目次
RATE関数の基本的な使い方
RATE関数とは
RATE関数は、一連の定期的な支払いと現在価値・将来価値から、期間あたりの利率を計算する関数です。PMT関数やPV関数、FV関数と組み合わせて使用される財務関数群の一つで、既知の条件から未知の利率を求める際に使用します。
この関数は反復計算によって解を求めるため、初期推定値を適切に設定することで、より確実に正しい結果を得ることができます。ローンの実質年率や投資の内部収益率(IRR)に近い概念を扱います。
基本構文と引数の詳細
RATE関数の構文:
=RATE(期間, 定期支払額, 現在価値, [将来価値], [支払期日], [推定値])
- 期間:支払い回数の合計(ローンなら返済回数)
- 定期支払額:毎期の支払額(通常は負の値)
- 現在価値:現在の価値、ローンなら借入額
- 将来価値(省略可能):最終的な残高、省略時は0
- 支払期日(省略可能):0=期末払い、1=期首払い、省略時は0
- 推定値(省略可能):利率の推定値、省略時は0.1(10%)
基本的な計算例
住宅ローンの金利を逆算する例
借入額3000万円、月々10万円、35年(420回)返済の場合:
=RATE(420, -100000, 30000000)*12
結果:約1.99%(年利)
月利を年利に変換するため12を掛けています。
自動車ローンの金利確認:
借入額: 200万円
月々の支払い: 4万円
返済期間: 5年(60回)
=RATE(60, -40000, 2000000)*12
結果:約7.2(年利)
符号の重要性を理解する
RATE関数では資金の流れの方向を正しく表現することが重要です。
- 借入(受取):正の値
- 返済(支払):負の値
例:
=RATE(120, -50000, 5000000) ✓ 正しい
=RATE(120, 50000, 5000000) ✗ エラーになる(負の利率になるか、20 回の反復計算で収束せず #NUM! エラーになる)
- 初期投資:負の値
- 定期収入:正の値
- 最終受取:正の値
RATE関数の実践的な利用シーン
ローン商品の比較検討
複数の金融機関のローン商品を比較する際に、実質年率を統一的に計算できます。
A銀行とB銀行の住宅ローン比較:
A銀行実質年率: =RATE(360, -120000, 35000000-500000)*12
B銀行実質年率: =RATE(360, -118000, 35000000-300000)*12
諸費用を差し引いた実質借入額で計算することで、真の負担を比較できます。
総返済額も含めた比較表の作成:
実質年率: =RATE(期間, -月々支払, 借入額-諸費用)*12
総返済額: =月々支払*期間*-1
総利息: =総返済額-借入額
投資商品の利回り計算
定期的な配当や最終的な売却益を含めた投資利回りを計算できます。
投資信託の実質利回り:
初期投資: 100万円
毎月分配金: 3000円
5年後の評価額: 110万円
=RATE(60, 3000, -1000000, 1100000)*12
不動産投資の利回り計算:
物件価格: 3000万円
月額家賃収入: 15万円
10年後の想定売却価格: 2500万円
=RATE(120, 150000, -30000000, 25000000)*12
リース料率の算出
リース契約の実質的な金利を計算し、購入との比較検討ができます。
設備リースの料率計算:
設備価格: 500万円
月額リース料: 10万円
リース期間: 5年
残価: 50万円
=RATE(60, -100000, 5000000, -500000)*12
オペレーティングリースとファイナンスリースの比較:
実質料率の差を計算して、どちらが有利か判断。
教育ローンの検証
奨学金や教育ローンの実質的な負担を計算します。
奨学金の実質金利:
貸与総額: 400万円
月々の返済: 2万円
返済期間: 20年
=RATE(240, -20000, 4000000)*12
据置期間がある場合の計算:
据置期間中の利息を考慮した実質借入額で計算。
RATE関数の応用・他関数との組み合わせ
ゴールシークとの併用
目標とする支払額や期間から、必要な条件を逆算します。
- RATE関数で金利を計算する式を設定
- ゴールシークで月々の支払いが10万円になる金利を探索
目標利回りを達成するための条件:
=RATE(期間, 収入, -投資額, 目標額)
この結果が目標利回りと一致するよう、収入や期間を調整。
感度分析の実施
金利の変化が返済額に与える影響を分析します。
金利感度分析表:
基準金利: =RATE(360, -100000, 30000000)*12
金利+0.5%時: =PMT((基準金利+0.5%)/12, 360, 30000000)
月々の差額: ==ABS(金利上昇後)-ABS(基準返済額)
データテーブルを使った包括的分析:
行:金利の変化(-1%~+2%)
列:借入期間(20年、25年、30年、35年)
値:月々の返済額または総返済額
RATE関数のよくあるエラーと対処法
#NUM!エラーの解決
RATE関数でよく発生するエラーの一つで、解が見つからない場合に表示されます。
推定値の調整による解決:
=RATE(期間, 支払額, 現在価値, 将来価値, 0, 0.01)
推定値を0.01(1%)から始めて徐々に調整
符号の確認:
借入の場合: =RATE(期間, -支払額, +借入額)
投資の場合: =RATE(期間, +収入, -投資額)
収束しない計算への対処
反復計算が収束しない場合の対策です。
RATEは2回の反復で収束しないと #NUM! を返します。オプション画面の「反復計算」設定は RATE には作用しないため、以下の方法で対処します。
■ 推定値(guess)の調整
=RATE(期間, 支払額, 現在価値, 将来価値, 0, 0.01) ‘guess を 1% に設定
必要に応じて 0.05、0.10 など複数回試す。
■ 符号の確認
借入の場合 : =RATE(期間, **-**支払額, **+**借入額)
投資の場合 : =RATE(期間, **+**収入, **-**投資額)
代替アプローチ:
=IFERROR(RATE(…), “計算不可”)
手動での近似値探索:
試行1: =RATE(…, 0.05)
試行2: =RATE(…, 0.10)
試行3: =RATE(…, 0.15)
非現実的な結果への対応
計算結果が非現実的な値になる場合のチェックポイントです。
■ 単位の統一確認
名目年率(APR 相当)
月利 → 名目年利 : =RATE(…)*12
日利 → 名目年利 : =RATE(…)*IF(条件=”Actual/360″,360,365)
四半期 → 名目年利 : =RATE(…)*4
実効年率(EAR)
月利 → 実効年利 : =(1+RATE(…))^12-1
日利 → 実効年利 : =(1+RATE(…))^IF(条件=”Actual/360″,360,365)-1
四半期 → 実効年利 : =(1+RATE(…))^4-1
※Excel の `EFFECT` 関数でも計算可能です。
■ 妥当性チェック(例:月利を想定)
=LET(r, RATE(…), IF(ABS(r*12)>0.5,”要確認”, r*12))
RATE を一度だけ計算し、50 % 超なら入力ミスを疑います。
RATE関数で利率を逆算して判断材料に活用する
RATE関数は、Excelで定期的な支払額・期間・借入額などから利率を逆算できる財務関数で、ローン比較や投資判断、リース計算などに広く使われています。PMT関数やPV関数などと併用することで、複雑な金融商品の条件を整理し、実質的な負担や利回りを可視化することができます。
年利換算や符号の扱いに注意しながら使えば、ローンの実質年率や投資商品の内部利回りの参考として有効です。ゴールシークやデータテーブルを使えばシミュレーションや感度分析も可能で、計画や意思決定に役立ちます。
RATE関数は反復計算を行うため、収束しない場合の対処法や推定値の調整が重要です。また、符号の設定ミスや条件の不整合による#NUM!エラーの発生にも注意が必要です。条件を整えたうえで正しく使えば、RATE関数は資金計画における強力な分析ツールになります。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選【部署別紹介】
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
経理担当者向け
①Excel関数集 32選まとめブック
経理担当者の方をはじめ、ビジネスパーソンが知っておきたい便利なExcel関数集を初級~上級までギュッと網羅。新人社員の研修用などにもお使いいただけます。Google スプレッドシートならではの関数もご紹介しています。
②勘定科目・仕訳辞典(税理士監修)
勘定科目・仕訳に関する基本知識、および各勘定科目の仕訳例を具体的かつ網羅的にまとめた、50ページを超えるガイドを無料で提供しております。お手元における保存版としてでだけでなく、従業員への印刷・配布用としてもぜひご活用ください。
人事労務担当者向け
①入社・退職・異動の手続きガイドブック
書類の回収・作成・提出など手間のかかる入社・退職・異動(昇給・昇格、転勤)の手続き。
最新の制度をもとに、よくある質問やチェックポイントを交えながら、各手続きに必要な情報をまとめた人気のガイドですす。
②社会保険・労働保険の手続きガイド
企業において社会保険および労働保険の加入・喪失手続きは必ず発生し、手続きを誤れば保険事故が発生した際に従業員が不利益を被る可能性があります。
各保険の基本的な手続き方法を入社・退職・異動のシーン別にギュッとまとめた分かりやすいガイドです。
総務・法務担当者向け
契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
スプレッドシートのタブの追加や複製、表示されない時の対処法まで解説
Googleスプレッドシートの「タブ(シート)」を活用すると、1つのファイルで複数のデータを効率的に整理できます。タブの追加や複製で管理をしやすくしたり、色分けや並べ替えで見やすく整理することも可能です。 さらに、不要なシートの削除や、タブ…
詳しくみるQUARTILE関数の使い方:エクセルで四分位数を求めてデータ分布を分析する方法
QUARTILE関数は、データセットの四分位数を計算するエクセルの統計関数です。四分位数とは、データを小さい順に並べて4等分する境界値のことで、データの分布や散らばり具合を把握するために使用されます。売上分析、成績評価、品質管理、給与水準の…
詳しくみるスプレッドシートで文字列を結合するには?改行を含む場合まで徹底解説
Googleスプレッドシートで文字列を結合すると、氏名や住所の整形、商品コードの生成など幅広い業務に役立ちます。&演算子、CONCATENATE関数、CONCAT関数、TEXTJOIN関数といった複数の方法があり、それぞれに適した使…
詳しくみるエクセルのCOUNTIFS関数とは?使い方や複数条件の指定方法、応用例を解説
複数条件でデータを集計したい場合は、ExcelのCOUNTIFS関数(カウントイフス関数)が最適です。たとえば「営業部かつ女性」「80点以上かつ出席率90%以上」など、AND条件での集計を簡単に実現できます。 これまでフィルターや手作業で対…
詳しくみるスプレッドシートをPDFに変換するには?エクスポートや貼り付け方法まで解説
Googleスプレッドシートで作成した資料をPDFに変換すれば、レイアウトを崩さずに保存・共有できます。ソフトやブラウザの環境に左右されず、編集権限がない相手にも安全に渡せるほか、会議資料やレポートなどの印刷にも最適です。また、印刷用の資料…
詳しくみるMIN関数とは?最小値の取得から複数条件での応用まで使い方を徹底解説
MIN関数(読み方:ミン関数またはミニマム関数)は、エクセルで複数の数値データの中から最小値を簡単に抽出できる便利な関数です。 この記事では、エクセル初心者の方でも理解しやすいように、MIN関数の基本的な使い方から、ビジネスや日常生活での具…
詳しくみる



