• 作成日 : 2025年8月25日

NOT関数の使い方:エクセルで条件を反転させる

エクセルで特定の条件を満たさないデータを抽出したり、条件分岐をさせたいと思ったことはありませんか?そんな時に役立つのが「NOT関数」です。NOT関数は、指定した条件を「ではない」と反転させる論理関数で、使いこなせばより複雑なデータ処理が可能になります。

この記事では、エクセル初心者の方にもNOT関数の基本的な使い方から、具体的な利用シーン、他の関数との組み合わせによる応用例、そしてよくあるエラーとその対策まで、網羅的に解説していきます。この記事を読み終える頃には、あなたはNOT関数を使いこなし、エクセルでの作業効率を格段に向上させることができるでしょう。

NOT関数の基本的な使い方

NOT関数は、シンプルながら使い方の幅が広い関数です。その役割は、指定した「論理式」の結果を反転させること。つまり、真(TRUE)を偽(FALSE)に、偽(FALSE)を真(TRUE)に変換します。

NOT関数の書式

NOT関数の書式は以下の通りです。

=NOT(論理式)

論理式:

真(TRUE)または偽(FALSE)と評価される式を指定します。これは、比較演算子(=, <, >, <=, >=, <>)を使った条件式や、他の論理関数(AND関数、OR関数など)の結果などです。

具体的な使用例

例えば、セルA1に「100」という数値が入っているとします。

  • =NOT(A1=100) の場合:
    • A1=100 は「真(TRUE)」と評価されます。
    • NOT関数がこの「真」を反転させ、「偽(FALSE)」を返します。
  • =NOT(A1>200) の場合:
    • A1>200 は「偽(FALSE)」と評価されます。
    • NOT関数がこの「偽」を反転させ、「真(TRUE)」を返します。

このように、NOT関数はたった一つの引数で、条件の真偽を簡単に逆転させることができます。

NOT関数の利用シーン

NOT関数は単体で使うよりも、IF関数やAND関数、OR関数など、他の関数と組み合わせることでより実践的に使えます。ここでは、NOT関数がどのような場面で役立つのか、具体的な利用シーンを見ていきましょう。

1. 特定の条件に「当てはまらない」データを抽出する

データの中から、特定の条件に合致しない行を絞り込みたい場合にNOT関数が役立ちます。

例:商品名が「鉛筆」ではないデータを抽出する

商品名数量
鉛筆10
ノート5
消しゴム8
鉛筆15

商品名が「鉛筆」ではない行を抽出する方法は次のとおりです。

  • オートフィルター:テキストフィルターで「<> 鉛筆(= 鉛筆ではない)」を指定します。
  • 関数を使う場合:ヘルパー列に =NOT(A2=”鉛筆”)(または =A2<>”鉛筆”)と入力し、TRUE の行だけをフィルターします。
  • 詳細設定フィルター:数式条件を使って同様に抽出できます。

2. 条件付き書式で特定の条件を満たさないセルを目立たせる

NOT関数と条件付き書式を組み合わせることで、「〜ではない」という条件でセルに書式を設定できます。

例:完了していないタスクのセルに色を付ける

タスクリストで「ステータス」列に「完了」と入力されていないセルを赤く表示したい場合、NOT関数を使用します。

3. IF関数で「〜ではない場合」の処理を分岐させる

IF関数は、「もし〜ならばA、そうでないならB」というように条件によって処理を分岐させる関数です。NOT関数を組み合わせることで、「〜ではないならばA、そうでないならB」という条件分岐が可能になります。

例:残業時間が5時間を超えていない従業員に手当を支給する

残業時間が5時間「ではない」場合に特別な処理を行いたいときに、NOT関数が有効です。

=IF(NOT(残業時間セル > 5), “手当支給”, “手当なし”)

NOT関数の応用・他関数との組み合わせ

NOT関数は、他の論理関数や情報関数と組み合わせることで、より複雑で柔軟な条件設定が可能になります。

1. AND関数やOR関数との組み合わせ

AND関数やOR関数は複数の条件を組み合わせる際に使用しますが、これらとNOT関数を組み合わせることで、「〜ではないかつ〜ではない」や「〜ではないまたは〜ではない」といった複雑な条件を作成できます。

例1:商品名が「鉛筆」ではなく、かつ数量が10個ではないデータを抽出

=AND(NOT(商品名セル=”鉛筆”), NOT(数量セル=10))

例2:商品名が「鉛筆」ではない、または数量が10個ではないデータを抽出

=OR(NOT(商品名セル=”鉛筆”), NOT(数量セル=10))

2. ISBLANK関数(空白セルを判定)との組み合わせ

ISBLANK関数はセルが空白かどうかを判定しますが、NOT関数と組み合わせることで「空白ではないセル」を判定できます。

例:入力済みのセルにチェックマークを付ける

=IF(NOT(ISBLANK(A1)), “〇”, “”)

3. ISERROR関数(エラー値を判定)との組み合わせ

ISERROR関数はエラー値を判定しますが、NOT関数と組み合わせることで「エラーではないセル」を判定できます。これにより、エラーでない場合にのみ特定の計算を実行するといった制御が可能になります。

例:エラーでなければ計算を実行する

=IF(NOT(ISERROR(A1/B1)), A1/B1, “エラー”)

(または、より簡潔に)=IFERROR(A1/B1, “エラー”)

NOT関数のよくあるエラーと対策

NOT関数自体はシンプルなため、直接的なエラーは少ないですが、組み合わせる関数の条件式によっては意図しない動作をすることがあります。

1. 引数の論理評価について

NOT関数は、引数を論理値として解釈して反転します。数値を渡した場合は 0 を FALSE、0 以外を TRUE とみなします。

  • 例:A1 が 0 のとき =NOT(A1) は TRUE、A1 が 5 のとき FALSE
  • 意図を明確にしたい場合は、明示的な比較にすると安全です(例:=NOT(A1=0) または =A1<>0)。
  • 文字列を直接渡すと論理値に解釈できず #VALUE! になることがあるため、ISBLANK や LEN などで論理式にしてから渡してください(例:=NOT(ISBLANK(A1)))。

正しい例: =NOT(A1=100)

2. 複数の条件を組み合わせる際の括弧の不足や間違い

AND関数やOR関数と組み合わせる場合、括弧の位置が重要になります。括弧の場所を間違えると、意図しない論理で評価されてしまいます。

誤った例: =NOT(A1=”商品A”, B1>10) (AND関数やOR関数なしで複数の条件を記述)

対策: 複数の条件を組み合わせる際は、AND関数やOR関数を適切に使用し、それぞれの論理式を括弧で囲むようにしましょう。

正しい例: =NOT(AND(A1=”商品A”, B1>10))

3. 文字列や数値の型の一致を確認する

比較演算子で文字列や数値を比較する際、厳密な型の一致が求められます。例えば、数値として入力された「100」と、文字列として入力された「”100″」は異なるものとして扱われることがあります。

対策: セルの書式設定や、TRIM関数(余分な空白を削除)、VALUE関数(文字列を数値に変換)などを使って、比較対象のデータの型を統一することを検討してください。

NOT関数は、条件を反転させて論理処理を行うための関数

NOT関数は、TRUEとFALSEを反転するシンプルなExcelの論理関数です。IF関数、AND関数、OR関数、ISBLANK関数、ISERROR関数などと組み合わせることで、「〜でない場合」や「空白でないとき」「エラーでないとき」などの条件を明確に処理できる点が特長です。

また、条件付き書式やデータ抽出、エラー制御など多くの業務シナリオで実践的に使えるため、NOT関数の仕組みを理解しておくことは、論理演算の応用力を高めるうえで非常に役立ちます。

論理式の記述や括弧の使い方に注意しながら、他の関数との組み合わせによる条件反転のテクニックをマスターすれば、より正確で柔軟なデータ処理が可能になります。日常のExcel作業のなかで、NOT関数を上手に活用してみましょう。


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