- 作成日 : 2025年8月25日
LN関数の使い方:エクセルで自然対数を計算する
エクセルで数学的な計算を行う際、自然対数を求めたいと思ったことはありませんか?「LN関数」は、自然対数を手軽に求められる関数です。自然対数は、科学や金融、統計などの分野でよく使われます。
この記事では、エクセル初心者の方にもLN関数の基本的な使い方から、具体的な利用シーン、他の関数との組み合わせによる応用例、そしてよくあるエラーとその対策まで、網羅的に解説していきます。
目次
LN関数の基本的な使い方
LN関数は、指定された数値の自然対数を計算する関数です。自然対数とは、底(てい)がネイピア数 e(約 2.71828)である対数のことを指します。数学の記号では ln(x) と書かれます。
LN関数の書式
LN関数の書式は以下の通りです。
=LN(数値)
数値: 自然対数を計算したい正の数を指定します。この「数値」は、真数(しんすう)と呼ばれます。
具体的な使用例
例えば、セルA1に「10」という数値が入っているとします。
=LN(A1) または =LN(10) の場合:
10の自然対数を計算し、約「2.302585」という値を返します。これは、e^2.302585… ≈ 10 となる数値です。
(または日本語で)これは、e の 2.302585 乗は約 10 であることを示す値です。
LN関数は、指定した数値が正の数である限り、正しく自然対数を求めます。
自然対数とは?
少し専門的になりますが、自然対数とは「ネイピア数 e を何乗したら、その数値になるか」を示す値です。
例えば、e^2 ≈ 7.389 なので、=LN(7.389) の結果は約 2 になります。
(または)例えば、e の 2 乗は約 7.389 なので、=LN(7.389) の結果は約 2 になります。
LN関数は、特に成長率の計算や、指数関数的な減衰を伴う現象の分析などで利用されます。
LN関数の利用シーン
LN関数は、単体で利用されることもありますが、多くの場合、特定の計算や分析の一部として組み込まれます。ここでは、LN関数がどのような場面で役立つのか、具体的な利用シーンを見ていきましょう。
1. データの成長率や減衰率の分析
経済成長、人口増加、放射性物質の減衰など、時間とともに指数関数的に変化するデータの分析にLN関数が用いられます。
例:年間平均成長率(CAGR)の計算
複数の期間にわたる成長率を平均化して算出する際に、LN関数が使用されることがあります。
CAGR=(期末値/期首値)^(1/年数)−1
この式をLN関数を使って変形し、線形回帰などで分析しやすくすることもあります。
2. 統計解析や確率分布の計算
正規分布や対数正規分布といった確率分布の計算において、LN関数が使われることがあります。特に、データの対数を取ることで、データの分布を正規分布に近づけ、統計的な分析を行いやすくする「対数変換」によく利用されます。
例:株価の変動率を分析する際に、日々の株価の対数を取り、その差分を計算してリターンを分析する
これは金融工学の分野でよく用いられる手法です。
3. 金融工学におけるモデリング
オプション価格の評価モデル(ブラック-ショールズ・モデルなど)や、リスク管理の計算でも、LN関数は基礎的な計算に使われます。
例:ボラティリティ(変動率)の計算
株価の対数リターンの標準偏差としてボラティリティを推定する際に利用されます。
4. 科学技術計算
物理学、化学、生物学などの分野で、指数関数的な関係を持つ現象を分析する際に利用されます。
例:pH値の計算(参考)
pHは水素イオン濃度の常用対数(底10)で定義されるため、Excelでは LN ではなく LOG10 関数を用います。
LN関数の応用例としては、例えば指数減衰の分析(半減期 t = LN(2) / λ の計算)などがあります。
LN関数の応用・他関数との組み合わせ
LN関数は、他の数学関数や統計関数と組み合わせることで、より高度な分析や計算が可能になります。
1. EXP関数(自然対数の逆関数)との組み合わせ
EXP関数は、ネイピア数 e を指定された数値で累乗する関数で、LN関数とは逆の関係にあります。
=EXP(LN(数値)) は、数値が正(>0) の場合に元の「数値」を返します。
=LN(EXP(数値)) は任意の実数の「数値」に対して元の「数値」を返します(ただし極端な値では数値誤差やオーバーフローに注意)。
この特性を利用して、指数関数的な増減を伴うモデルの構築や、対数変換したデータを元のスケールに戻す際に使用します。
2. LOG関数(任意の底の対数)との組み合わせ
LN関数は自然対数(底が e)ですが、LOG関数を使えば任意の底の対数を計算できます。
=LOG(数値, 底)
LN関数を使って任意の底 b の対数は、底の変換公式で表せます。
log_b(x) = ln(x) / ln(b)(Excel では =LN(x)/LN(b))
例:底が10の対数を計算する
=LN(A1)/LN(10) は、=LOG(A1, 10) と同じ結果になります。
この応用は、対数変換が必要な場面で、底を自由に変えたい場合に役立ちます。
3. SUMPRODUCT関数や配列数式との組み合わせ
大量のデータを処理する際や、特定の条件を満たすデータの対数を合計するような複雑な計算で、LN関数をSUMPRODUCT関数や配列数式と組み合わせることがあります。
例:特定の条件を満たす項目について、その数値の自然対数を合計する
=SUMPRODUCT(–(条件範囲=”条件”), LN(数値範囲)) は 通常の Enter で確定 できます(CSE 不要)。
数値範囲に 0 以下が含まれる可能性がある場合は、Microsoft 365 では次のように正の値だけに限定すると安全です。
=SUM(LN(FILTER(数値範囲, (条件範囲=”条件”)*(数値範囲>0))))
(FILTER が使えない環境では、事前に 0 以下の値を除く、または IFERROR で除外するなどの対策をしてください。)
LN関数のよくあるエラーと対策
LN関数は比較的シンプルな関数ですが、使用する際に注意すべき点があります。特に引数に関するエラーがよく発生します。
1. #NUM! エラー
このエラーは、LN関数に「負の数」または「ゼロ」を引数として与えた場合に発生します。
自然対数は、真数が正の数である場合にのみ定義されるため、負の数やゼロの対数は存在しません。
- =LN(-5)
- =LN(0)
対策:
LN関数を使用する際は、必ず引数に正の数を指定してください。
もし、計算結果が負になる可能性のあるセルや、ゼロになる可能性のあるセルを参照する場合は、IF関数やMAX関数などを用いて、引数が正の値になるように調整する必要があります。
例:負の値やゼロの場合は計算せずに空欄にする
=IF(A1>0, LN(A1), “”)
例:負の値やゼロの場合でも最小値を保証する
=LN(MAX(A1, 0.0000000001))(非常に小さな正の数を 下限として設定 してエラーを回避)
(注:この方法は負値や 0 を小さな正の値に置き換えるため、統計分析ではバイアスが生じる可能性があります。可能なら =IF(A1>0, LN(A1), “”) などで除外する方法も検討してください。)
2. #VALUE! エラー
このエラーは、LN関数に「数値として認識できない文字列」を引数として与えた場合に発生します。
- =LN(“abc”) (文字列を直接指定)
- A1セルに「データなし」のような文字列が入っている状態で =LN(A1)
対策:
LN関数の引数には、必ず数値、または数値に変換できるセル参照を指定してください。
もし、参照するセルに数値以外のデータが含まれる可能性がある場合は、ISNUMBER関数で数値かどうかを確認したり、IFERROR関数でエラー処理を行うことを検討してください。
例:参照セルが数値でなければエラー表示を回避(かつ 0 より大きいときのみ計算)
=IF(ISNUMBER(A1), IF(A1>0, LN(A1), “0より大きい数が必要です”), “数値ではありません”)
(数値文字列を扱う場合は VALUE/NUMBERVALUE で数値化してから判定すると確実です。)
自然対数の計算をLN関数で手軽に
LN関数は、ネイピア数eを底とした自然対数を求める関数で、Excelにおける指数関数の逆演算として幅広く活用されています。成長率や減衰率の分析、統計処理、金融モデリング、科学計算など、さまざまな分野で基本的な役割を担います。
この記事では、LN関数の基本構文や使用例に加え、EXP関数やLOG関数との組み合わせによる応用、SUMPRODUCTや配列数式との連携による高度な計算手法も紹介しました。また、#NUM!エラーや#VALUE!エラーの原因と対策も取り上げ、実務でつまずきやすいポイントへの対処法も解説しています。
LN関数を正しく理解し、他の関数とうまく組み合わせることで、より精度の高い数値分析やモデル構築が可能になります。ぜひ日々の業務や学習に取り入れ、データに基づく判断や予測に役立ててください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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