- 更新日 : 2025年8月25日
ERF関数の使い方:誤差関数を計算して統計分析を行う方法
ERF関数は、誤差関数(Error Function)の値を計算する統計関数です。正規分布に関連する確率計算や、品質管理における不良品率の推定、科学技術計算での誤差評価など、高度な統計分析で使用されます。例えば、製造工程での品質のばらつきを評価したり、測定誤差の影響を分析したりする際に活用できます。
本記事では、ERF関数の基本的な使い方から実践的な活用場面、具体的な計算例まで、初心者の方にも理解できるようわかりやすく紹介します。
目次
ERF関数とは
ERF関数は、ガウスの誤差関数を計算する関数で、確率論や統計学で使われます。誤差関数は、標準正規分布の累積分布関数と密接な関係があり、ある値が特定の範囲内に収まる確率を求める際に使用されます。
この関数の特徴は、積分計算を内部で行い、正規分布の範囲確率を数式で求められる点が特徴です。
たとえば品質管理において、製品の特性値が規格範囲内に収まる確率を計算したり、工程能力指数の評価に使用したりします。また、物理学や工学分野では、拡散現象や熱伝導の解析にも応用されています。
ERF関数の基本的な使い方
関数の構文を理解する
ERF関数には2つの形式があります。
基本形:
=ERF(下限)
範囲指定形:
=ERF(下限, 上限)
下限は積分の下限値、上限は積分の上限値を指定します。上限を省略した場合は、0から下限までの積分値が計算されます。
基本的な使用例
実際の使用例を見てみましょう。
A1セルに「1」という値が入力されている場合:
=ERF(A1)
この結果は約0.8427となります。これは、標準正規分布において −√2(約-1.414)から √2(約1.414)までの範囲に約84.27%のデータが含まれることを意味します。
範囲を指定する例も見てみましょう。
=ERF(0, 1)
この結果は約0.8427となり、0から1までの誤差関数の値を表します。
誤差関数の性質を理解する
ERF関数は奇関数の性質を持ち、ERF(-x) = -ERF(x)という関係があります。また、xが無限大に近づくとERF(x)は1に、xが負の無限大に近づくとERF(x)は-1に収束します。
実用的には、ERF(3)≈0.9999779となり、ほぼ1に等しくなります。ただし、標準正規分布で平均±3σの範囲に約99.73%のデータが含まれるかどうかを求める場合は ERF(3 / √2)≈0.9973 を用いる必要があります。
ERF関数の実践的な利用シーン
品質管理での活用
製造業では、製品の特性値が規格範囲内に収まる確率を計算する際にERF関数を使用します。例えば、ある部品の寸法が平均値を中心に正規分布に従う場合、規格上限と下限の間に収まる確率を求めることができます。
平均が100mm、標準偏差が2mmの部品で、規格が98mm~102mmの場合、規格内に収まる確率は標準化した値を使ってERF関数で計算できます。このような分析により、不良品率を予測し、工程改善の必要性を判断できます。
測定誤差の評価
科学実験や工業測定において、測定値の信頼性を評価する際にERF関数が役立ちます。測定誤差が正規分布に従うと仮定した場合、真の値が特定の範囲内にある確率を計算できます。
例えば、ある測定器の誤差が標準偏差0.1の正規分布に従う場合、測定値から真の値が±0.2の範囲内にある確率をERF関数で求めることができます。これにより、測定結果の誤差の範囲を確率的に表すことができます。
リスク分析での応用
金融分野では、投資リターンの変動リスクを評価する際にERF関数を使用することがあります。リターンが正規分布に従うと仮定した場合、特定の損失額を超える確率を計算できます。
ポートフォリオのリスク管理において、VaR(Value at Risk)の計算にERF関数を応用することで、統計的な視点からリスク水準を数値化できます。
ERF関数の応用テクニック
標準正規分布との関係
標準正規分布の累積分布関数(CDF)とERF関数の関係を利用した計算:
=0.5*(1+ERF(A1/SQRT(2)))
この数式は、標準正規分布で値がA1以下となる確率を計算します。
信頼区間の計算
平均からの偏差に対する信頼区間を求める場合:
=ERF(信頼水準/SQRT(2))*100 & “%”
例えば、1σの範囲(信頼水準1)では約68.27%、2σの範囲では約95.45%となります。
相補誤差関数の計算
相補誤差関数 ERFC(x) は
=1-ERF(A1) ‘ x が A1 に入っている場合で計算できます。
ただし、標準正規分布で「値が +z を超える片側確率」を求めるときは
=0.5*ERFC(z/SQRT(2))
を使用します(両側確率はこの値を 2 倍)。
√2 で割り、0.5 を掛ける点に注意してください。
ERF関数のよくあるエラーと対策
引数の範囲制限
ERF関数の引数は、計算可能な数値範囲内である必要があります。極端に大きな値を入力すると、計算精度が低下したり、エラーが発生したりすることがあります。
実用上は、引数の絶対値が5を超える場合、結果はほぼ±1に収束するため、それ以上の精度は必要ないことが多いです。必要に応じて、IF関数で範囲チェックを行いましょう。
数値以外の入力
引数に文字列が含まれている場合は #VALUE! エラーが発生します。
一方、空白セルは数値 0 として扱われるためエラーにはなりません(結果は ERF(0)=0)。エラー処理が必要な場合は、IFERROR ではなく IF(ISBLANK(セル), “”, ERF(セル)) のように空白セルを個別に判定すると安全です。
精度の問題
ERF関数の計算結果は、エクセルの内部精度(15桁)の制限を受けます。極めて高い精度が必要な科学計算では、専門的な数値計算ソフトウェアの使用を検討する必要があります。
ERF関数と他の関数との組み合わせ
NORM.S.DIST関数との連携
標準正規分布の累積分布関数(CDF) と組み合わせた使用例:
=NORM.S.DIST(A1, TRUE) – 0.5*(1+ERF(A1/SQRT(2)))
この計算結果は理論的には0になるはずで、両者の一致を確認することで、計算の妥当性を検証できます。
SQRT関数での標準化
データを標準化してERF関数を適用する例:
=ERF((A1-平均)/標準偏差/SQRT(2))
これにより、任意の正規分布に対してERF関数を適用できます。
IF関数での条件分岐
ERF関数の結果に基づいて判定を行う例:
=IF(ERF(A1)>0.95, “高確率”, IF(ERF(A1)>0.68, “中確率”, “低確率”))
AVERAGE関数とSTDEV関数での前処理
データセットから平均と標準偏差を計算し、ERF関数で確率を求める例:
=ERF((目標値-AVERAGE(データ範囲))/STDEV(データ範囲)/SQRT(2))
SUM関数での累積確率計算
複数の区間(正規化済みの下限 z_low と上限 z_high)に対する 標準正規分布の区間確率を合計する例:
=0.5*SUM(
ERF(下限1/SQRT(2), 上限1/SQRT(2)),
ERF(下限2/SQRT(2), 上限2/SQRT(2)),
ERF(下限3/SQRT(2), 上限3/SQRT(2)))
- 各 ERF(…) で z 値を √2 で割り、
- 区間ごとの差を ERF が返したあと 0.5 を掛ける
ことで、区間ごとの標準正規確率を正しく加算できます。
ERF関数の実務での注意点
データの正規性の確認
ERF関数を使用する前に、データが正規分布に従っているかを確認することが重要です。ヒストグラムの作成や正規性検定を行い、前提条件が満たされているかを検証しましょう。
正規分布から大きく外れたデータに対してERF関数を適用すると、誤った結論を導く可能性があります。
単位の統一
計算を行う前に、すべてのデータの単位を統一することが重要です。異なる単位のデータを混在させると、意味のない結果が得られます。
特に、標準化を行う際は、平均と標準偏差の単位がデータと一致していることを確認しましょう。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選【部署別紹介】
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
経理担当者向け
①Excel関数集 32選まとめブック
経理担当者の方をはじめ、ビジネスパーソンが知っておきたい便利なExcel関数集を初級~上級までギュッと網羅。新人社員の研修用などにもお使いいただけます。Google スプレッドシートならではの関数もご紹介しています。
②勘定科目・仕訳辞典(税理士監修)
勘定科目・仕訳に関する基本知識、および各勘定科目の仕訳例を具体的かつ網羅的にまとめた、50ページを超えるガイドを無料で提供しております。お手元における保存版としてでだけでなく、従業員への印刷・配布用としてもぜひご活用ください。
人事労務担当者向け
①入社・退職・異動の手続きガイドブック
書類の回収・作成・提出など手間のかかる入社・退職・異動(昇給・昇格、転勤)の手続き。
最新の制度をもとに、よくある質問やチェックポイントを交えながら、各手続きに必要な情報をまとめた人気のガイドですす。
②社会保険・労働保険の手続きガイド
企業において社会保険および労働保険の加入・喪失手続きは必ず発生し、手続きを誤れば保険事故が発生した際に従業員が不利益を被る可能性があります。
各保険の基本的な手続き方法を入社・退職・異動のシーン別にギュッとまとめた分かりやすいガイドです。
総務・法務担当者向け
契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
CORREL関数の使い方とは?エクセルで相関係数を求めよう
データ分析において、異なる変数間の関係性を把握することは非常に重要です。エクセルには、そうした相関関係を簡単に求めるための「CORREL関数」が用意されています。この関数を使うことで、2つのデータセット間の相関係数を迅速に計算することができ…
詳しくみるスプレッドシートで重複データに色付けするには?セルのカウント・削除・2列チェックまで解説
スプレッドシートで大量のデータを扱っていると、重複したデータの存在に気づかないことがあります。重複データは業務効率を下げるだけでなく、集計ミスの原因にもなりかねません。 本記事では、Googleスプレッドシートで重複データを視覚的に確認でき…
詳しくみるエクセルやGoogleスプレッドシートで#VALUE!を表示させない方法
エクセルやスプレッドシートを利用する際に、#VALUE!エラーが表示されることはよくあります。このエラーは、数値を期待しているセルに、文字列(テキスト)や空白など不適切なデータが含まれている場合に発生し、作業を中断させる要因となります。特に…
詳しくみるMIN関数とは?最小値の取得から複数条件での応用まで使い方を徹底解説
MIN関数(読み方:ミン関数またはミニマム関数)は、エクセルで複数の数値データの中から最小値を簡単に抽出できる便利な関数です。 この記事では、エクセル初心者の方でも理解しやすいように、MIN関数の基本的な使い方から、ビジネスや日常生活での具…
詳しくみるLEFTB関数の使い方:バイト単位で文字列を抽出する方法
LEFTB関数は、文字列の左端から指定したバイト数分の文字を抽出する関数です。通常のLEFT関数が文字数単位で抽出するのに対し、LEFTB関数はバイト単位で処理を行うため、全角文字と半角文字が混在するデータを扱う際に特に有効です。 例えば、…
詳しくみるスプレッドシートをデータベースとして活用するには?設計から運用まで完全ガイド
Googleスプレッドシート(Google Sheets)をデータベースとして構築・運用することで、コストを抑えながら効率的なデータ管理システムを実現できます。本記事では、正規化されたテーブル設計から、QUERY関数やVLOOKUPを活用し…
詳しくみる



