- 作成日 : 2025年8月25日
DEGREES関数の使い方:ラジアンを度に変換する方法
DEGREES関数は、角度をラジアン単位から度単位に変換する関数です。三角関数の計算結果の表示、CADデータの角度変換、測量データの処理など、角度の単位変換が必要な場面で使われます。
例えば、エクセルの三角関数はラジアンで計算されるため、その結果を一般的な度数表記に変換したい場合に便利です。
本記事では、DEGREES関数の基本的な使い方から実践的な活用方法、他の関数との効果的な組み合わせまで、わかりやすく解説していきます。
目次
DEGREES関数とは
DEGREES関数は、ラジアン(弧度法)で表された角度を度(度数法)に変換する数学関数です。1ラジアンは約57.2958度に相当し、この変換は180/π(パイ)を掛けることで実現されます。
エクセルの三角関数(SIN、COS、TANなど)はすべてラジアン単位で動作するため、一般的な度数表記との変換が頻繁に必要になります。DEGREES関数を使用することで、この変換を数式で簡単に行うことができ、計算結果をわかりやすく表示できます。
DEGREES関数の基本的な使い方
関数の構文を理解する
DEGREES関数の構文は非常にシンプルです。
=DEGREES(角度)
角度には、ラジアン単位の数値またはセル参照を指定します。
基本的な使用例
実際の使用例を見てみましょう。
A1セルに「1」(1ラジアン)が入力されている場合:
=DEGREES(A1)
この結果は約「57.2958」度となります。
πラジアンを度に変換する例:
=DEGREES(PI())
この結果は「180」度となり、πラジアンが180度であることが確認できます。
よく使用される角度の変換
主要な角度の変換例を確認しましょう。π/2ラジアン(90度)、π/4ラジアン(45度)、2πラジアン(360度)など、頻繁に使用される角度の変換は覚えておくと便利です。
=DEGREES(PI()/2) ‘ 結果:90
=DEGREES(PI()/4) ‘ 結果:45
=DEGREES(2*PI()) ‘ 結果:360
DEGREES関数の実践的な利用シーン
三角関数の計算結果の表示
工学計算や物理シミュレーションで三角関数を使用した後、結果を度数で表示する場合に活用できます。例えば、2つのベクトルの角度を求める際、ACOS関数の結果はラジアンで返されるため、DEGREES関数で変換して表示します。
複雑な計算式の最終結果を、技術者や設計者が理解しやすい度数表記に変換することで、コミュニケーションの効率が向上します。
CADデータの処理
CADソフトウェアから出力されたデータがラジアン形式の場合、エクセルでの分析や報告書作成のために度数への変換が必要になります。建築図面の角度情報や機械部品の設計データを処理する際に、DEGREES関数が役立ちます。
大量の角度データを一括変換することで、設計レビューや品質チェックの効率が大幅に向上します。
測量・地理情報の処理
GPS座標や測量データの処理において、方位角や仰角の変換に使用されます。地理情報システム(GIS)から取得したデータをエクセルで分析する際、角度の単位変換は頻繁に必要となります。
緯度経度の計算や、2地点間の方位角の算出結果を、一般的な度分秒形式に変換する前段階としてDEGREES関数を使用します。
DEGREES関数の応用テクニック
度分秒形式への変換
DEGREES関数の結果をさらに度分秒形式に変換する場合:
=INT(DEGREES(A1)) & “°” & INT((DEGREES(A1)-INT(DEGREES(A1)))*60) & “‘” & ROUND(((DEGREES(A1)-INT(DEGREES(A1)))*60-INT((DEGREES(A1)-INT(DEGREES(A1)))*60))*60,0) & “””
この数式を使えば、10進数の度を度分秒の形式に変換して表示できます。
角度の正規化
360度を超える角度を0-360度の範囲に正規化する場合:
=MOD(DEGREES(A1), 360)
回転角度の累積値を扱う場合などに便利に使えます。
符号付き角度の処理
-180度以上180度未満([-180,180))の範囲で角度を表現する場合:
=MOD(DEGREES(A1)+180, 360)-180
(※180°は -180°として表されます)
方位角や回転方向を考慮する計算で使用されます。
DEGREES関数のよくあるエラーと対策
数値以外の入力
DEGREES関数に数値以外の文字列を指定すると #VALUE! エラーになります。未入力の空白セルを参照した場合は 0 とみなされ 0 が返ります。なお、参照先が空文字列(例:式が “” を返す)である場合は #VALUE! になります。
(空白セルは空欄のままにしたい場合の例:=IF(LEN(A1)=0,””,IFERROR(DEGREES(A1),”角度を入力してください”)))
エラー処理を含む数式:
=IFERROR(DEGREES(A1), “角度を入力してください”)
または、
数値チェックを事前に行う:
=IF(ISNUMBER(A1), DEGREES(A1), “”)
極端に大きな値
非常に大きなラジアン値を変換すると、表示が科学的記数法になることがあります。
TEXT関数で表示形式を制御:
=TEXT(DEGREES(A1), “0.00”)
精度の問題
浮動小数点演算による誤差が蓄積する場合があります。
ROUND関数で適切な桁数に丸める:
=ROUND(DEGREES(A1), 4)
DEGREES関数と他の関数との組み合わせ
RADIANS関数との相互変換
度からラジアンへの逆変換を含む往復変換の例:
=DEGREES(RADIANS(A1))
この数式は理論的にはA1と同じ値を返すはずですが、浮動小数点誤差により微小な差が生じることがあります。データの検証や、単位変換の妥当性チェックに使用できます。特に、外部システムとのデータ交換で単位の整合性を確認する際に有効です。
ASIN/ACOS/ATAN関数との組み合わせ
逆三角関数の結果を度で表示する例:
=DEGREES(ASIN(A1)) & “度”
逆三角関数の結果を度で表示する例:
=DEGREES(ASIN(A1)) & “度”
=DEGREES(ATAN2(X座標, Y座標))
(※これは x軸=東を基準にした角度。範囲は -180〜180°)
方位角(北=0°、時計回り 0〜360°)が必要な場合:
=MOD(90 – DEGREES(ATAN2(X座標, Y座標)), 360)
ASIN関数で求めた角度(ラジアン)を即座に度に変換して表示します。測量計算や物理シミュレーションで、sin値から角度を求める場合によく使用されます。ATAN2関数との組み合わせでは、2次元座標から方位角を度単位で求めることができ、ナビゲーションシステムの開発などで活用されます。
SIN/COS/TAN関数での度数入力
度数で入力された角度を三角関数で計算する例:
=SIN(RADIANS(A1)) ‘ A1は度単位
=COS(RADIANS(A1)) * 長さ
ユーザーが度単位で角度を入力し、内部でラジアンに変換してから三角関数を適用します。これにより、一般的な度数表記での入力を受け付けながら、正確な三角関数計算が可能になります。建築設計での傾斜計算や、機械工学での力の分解計算などで頻繁に使用されるパターンです。
PI関数を使った特殊角の処理
πの倍数で表される特殊角を度に変換する例:
πの倍数で表される特殊角を度に変換する例:
=DEGREES(PI()/6) & “度(π/6ラジアン)”
=DEGREES(k*PI()/n) (例:k=1, n=3 → 60)
※もし「度→ラジアンにしてから定数を掛けたい」意図なら:
=RADIANS(値)*定数
30度、60度、90度などの特殊角を扱う際に、PI関数と組み合わせて使用します。数学的に重要な角度を正確に表現でき、教育資料の作成や理論計算での使用に適しています。また、周期関数のグラフ作成時に、x軸のラベルを度数表示にする際にも活用できます。
ROUND関数での表示精度制御
角度を指定した精度で表示する例:
=ROUND(DEGREES(A1), 2) & “°”
=TEXT(TRUNC(DEGREES(A1)) + SIGN(DEGREES(A1))*IF(ROUND(ABS((DEGREES(A1)-TRUNC(DEGREES(A1)))*60),0)=60,1,0),”0″) & “度” & TEXT(IF(ROUND(ABS((DEGREES(A1)-TRUNC(DEGREES(A1)))*60),0)=60,0,ROUND(ABS((DEGREES(A1)-TRUNC(DEGREES(A1)))*60),0)),”00″) & “分”
(TRUNCで度の整数部を取り、分=小数部×60 を四捨五入。分=60のときは度へ繰り上げ)
測量や航海での角度表示では、適切な精度での表示が重要です。ROUND関数と組み合わせることで、用途に応じた精度で角度を表示できます。2番目の例では、度と分に分けて表示し、より読みやすい形式を実現しています。
IF関数での象限判定
角度から象限を判定する例:
=CHOOSE(QUOTIENT(MOD(DEGREES(A1),360),90)+1,”第1象限”,”第2象限”,”第3象限”,”第4象限”)
(※軸上の扱いが必要なら、別途 MOD(DEGREES(A1),90)=0 を検出して「軸上」と表示)
角度がどの象限に属するかを判定し、ラベル付けします。三角関数の符号判定や、回転方向の分析、座標系での位置判定などに使用できます。複雑な幾何学計算の結果を分類し、視覚的に理解しやすくする際に有効です。
DEGREES関数の実務での注意点
入力値の検証
角度データを扱う際は、入力値が適切な範囲内にあるかを確認することが重要です。特に、ラジアンと度を混同して入力されることがあるため、妥当性チェックを実装しましょう。
例えば、入力値が2πを大きく超える場合は、度単位で入力された可能性があることを警告するような仕組みを作ることができます。
単位の明示
計算結果には必ず単位を表示し、ラジアンなのか度なのかを明確にしましょう。特に、複数の人が使用するスプレッドシートでは、混乱を避けるために重要です。
セルの書式設定やコメント機能を活用して、各列がどの単位を使用しているかを明示することを推奨します。
計算精度の管理
連続的な変換や計算により、丸め誤差が蓄積する可能性があります。最終結果の用途に応じて、適切な精度で丸め処理を行いましょう。
工学計算では通常4桁程度、表示用では2桁程度の精度で十分な場合が多いです。
DEGREES関数で角度を度に変換する
DEGREES関数は、ラジアンで表された角度を度単位に変換するための関数です。
三角関数の結果表示、CADや測量データの処理など、角度を度数表記に揃えたいときに使われます。
他の関数と組み合わせることで、さまざまな角度計算をスムーズに行うことができます。
単位や精度に注意して使うことで、実務に適した形で角度を整理できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
LEFT関数とRIGHT関数の使い方をわかりやすく解説
ExcelやGoogleスプレッドシートでデータを扱う際、LEFT関数とRIGHT関数は非常に便利なツールです。これらの関数を使用することで、文字列の先頭や末尾から特定の文字数を抽出することができ、データの整理や加工がスムーズに行えます。特…
詳しくみるエクセルのシート削除ショートカットとは?まとめて行う方法も解説
エクセル(Excel)で不要なシートを削除するなら、ショートカットキーを使えば作業効率が大幅にアップします。 いちいち右クリックして「削除」を選ぶ必要はありません。Alt → H → D → Sというキー操作だけで、マウスを使わずに素早くシ…
詳しくみるエクセルの検索機能の使い方をわかりやすく解説
エクセルは、膨大なデータを扱うツールとして非常に便利ですが、その中から必要な情報を素早く見つけ出すためには検索機能を使いこなすことが重要です。この記事では、エクセルの検索機能の基本的な使い方から、便利なショートカットや実際の利用シーン、検索…
詳しくみるAND関数の使い方は?OR関数、IF関数との組み合わせ方を解説
AND関数は、Excelやスプレッドシートにおいて、複数の条件を同時に判定するための強力なツールです。特定の条件がすべて満たされているかどうかを確認する際に利用されますが、単体使用だけでなく、OR関数やIF関数と組み合わせることで、条件を柔…
詳しくみるエクセルで案件管理は可能?活用のポイントや注意点を解説
案件ごとの進捗や情報を整理する「案件管理」は、営業や業務管理の効率化に欠かせない作業です。専用ツールを使わずに、エクセルで手軽に管理を始めたいと考える方も多いのではないでしょうか。 本記事では、エクセルの初心者でも取り組みやすい案件管理の基…
詳しくみるSTDEVA関数の使い方:文字列や論理値を含むデータの標準偏差を計算する方法
STDEVA関数は、数値だけでなく文字列や論理値も含めて標準偏差を計算するエクセルの統計関数です。通常のSTDEV関数とは異なり、TRUE=1、FALSE=0として計算し、文字列は0として扱います。アンケート結果の分析や、欠損値を含むデータ…
詳しくみる